ラブライブ! 若虎と女神たちの物語   作:截流

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どうも、截流です。

今回は新キャラ登場祭りラストです!さて、最後の参加者は何者なのか・・・。



それではどうぞお楽しみください!!


28話 将星、秋葉原に結集す 後編

なんだかんだで集合場所に集まった志郎たちは、幸雄が予約を取っていたファミレスに移動し、そこで会食をすることになった。

 

「はーい、そんな訳で互いに自己紹介も済んだことだし本来なら出会うはずもなかった俺たちが一堂に会するのは類を見ない奇跡だってことでそれを祝して乾杯したいと思いまーす。」

 

「いよ!待ってました!!源次郎のオヤジ殿!」

 

「御託はいいからさっさと乾杯しろ真田。」

 

「うるせーなー、今からするんだってば。んじゃあ色々急かされてるし、1人遅刻してる奴がいるけど気にしないで乾杯するぞ!では勝頼さま…じゃなくて志郎!音頭は任せた!!」

 

「はぁ!?何で俺が!?」

 

いきなり乾杯の音頭を任された志郎は動揺した。

 

「いやーだっていくら俺が主催者だからってなぁ。やっぱここは主である志郎に華を持たせるのが筋かと思ったんだが。」

 

「ええ…。」

 

「確かに音頭をとるのに相応しい大名と言えば消去法で俺か志郎になるが、主催者たる真田の主である志郎に任せるのが妥当だな。」

 

政康が幸雄に同意する。

 

「あ、そこは良景くんと夢路くんスルーしちゃうんだ…。」

 

渚が苦笑いしながら言うと、

 

「いや、僕はそういう面倒くさいの苦手だから別にいーよ。」

 

「俺はそもそも大名っつっても一年ちょいしかやってなかったから微妙だから、勝頼どの…じゃなくて志郎さんでいいっすよ!」

 

良景も夢路も志郎が音頭をとるのに賛成のようだ。

 

「あまりこういうのはやった事ないから不格好かもしれんが…。よし、では400と数十年の時を経てこの時代に相見えた事を祝して、乾杯!」

 

『かんぱー…。』

 

志郎の音頭でみんなが乾杯をしようとした瞬間、

 

「すいません遅れました〜!その乾杯待ってくださ〜い!!」

 

と言って1人の青年が志郎たちが座ってる席に駆け込んできた。青年は眼鏡を掛けており、少し気弱そうな雰囲気だが顔立ちは整っており、一言で言うと優男といった印象であった。

 

「随分とタイミングのいい登場だな、無論悪い意味でだが。何者だ貴様?」

 

興を削がれたからか政康は不機嫌そうにその青年に声をかけた。

 

「おお、なんだ思ったより早い到着じゃないか中納言どの。」

 

「ええ…、遅れるとは言いましたがなるべく皆さんを待たせないようにしようと思ったので…。その六文銭、『比興者安房守』さんですよね?」

 

青年は肩で息をしながら幸雄に問いかけた。

 

『おうとも。俺が『比興者安房守』こと主催者の武藤幸雄だ。まあ俺の正体はわかるだろ。」

 

「なあ幸雄、この人が最後の参加者の『ボンボン中納言』さんなのか?」

 

「ああそうだ。どれ中納言どの、せっかくだからさっさと自己紹介してくれ。みんな早く乾杯したがってるからよ。」

 

幸雄は青年に自己紹介をするように促した。

 

「私は『転生者の夢幻郷』で『ボンボン中納言』と名乗っている吉田 輝久(てるひさ)という者です。前世は安芸毛利家の当主にして長州藩の藩祖の毛利輝元でした。」

 

青年こと輝久は自己紹介をすると丁寧に頭を下げた。

 

「中納言と聞いて何者かと思ったがまさかあの元就公の孫だったとはな・・・。」

 

志郎は意外そうな表情をしていた。

 

「志郎は誰だと思ってたん?」

 

「うむ、中納言でボンボンって言うと徳川秀忠あたりかと思ってた。」

 

「あ~、なるほどね。確かにそう思うわな。」

 

幸雄は志郎の解答を聞いて頷いた。

 

「でもすごいわね、まさか東の大国である北条家の当主と西の大国である毛利家の当主が一堂に会するなんて。」

 

渚が政康と輝久を交互に見ながら言うと、

 

「えっと、そちらの方が前世では北条家の当主だった方ですか?」

 

「ああそうだ。俺の前世は北条氏政である。弟が世話になったな輝元どの。」

 

政康はニヤリと笑いながら輝久に語りかけた。

 

「なんだ政康、お前の弟と輝元どのに何か所縁があるのか?」

 

志郎が政康にたずねると、

 

「もちろん、所縁があるのは氏規さ。なあ輝元どの?」

 

政康が輝久にそう言うと、輝久の顔がみるみる青くなっていく。

 

「え、ええ・・・。そうですね・・・。」

 

返事をする輝久の目は泳ぎまくっていた。

 

「何があったし。」

 

「ふん、氏規が上洛した際にこやつが『田舎者と食事するなんて片腹痛いわ』なんぞとのたまって氏規を笑ったと本人から聞いてな・・・。」

 

幸雄が理由を聞くと政康はそう答えた。志郎は政康から軽く殺気が漏れてるのを察した。兄弟仲が良かったとされる北条氏政からしたら弟が侮辱されたのはブチ切れ待ったなしの案件だったのだろう。

 

「その節はホントすいませんでした!!でもあの時はホントに腹が痛かったんです!!」

 

輝久が土下座せんばかりの勢いで謝りだす。

 

「ごめんで済んだら惣無事令なんぞ要らんわ!!腹イタはしょうがないとして笑ったのは事実なんだろう!?」

 

「うっ、事実です・・・。ですがあの後隆景叔父上に盛大にシメられたのでほんとに反省してるんですってば~!!」

 

毛利輝元は、叔父であり教育係でもあった小早川隆景に度々折檻されながら育ったことが記録に残っており、どうやら本人の弁ではその後も隆景に折檻されたようであった。

 

「まあまあ政康、本人もこう言ってることだし許してあげてもいいんじゃないか?」

 

「ふん、流石に俺もそこまで鬼ではないわ。まあその後に報いを受けたのならばこちらとしても溜飲が下がるからな。」

 

政康は志郎の仲介や輝久の当時のその後の話を聞いて怒りを収めた。

 

「んじゃあとりあえず気を取り直して乾杯しますか!」

 

「そうだな。じゃあ乾杯!」

 

『かんぱ~い!!』

 

 

 

 

 

「だからぁ!あそこで秀元どのと広家どのが動いてくれたら俺ら長宗我部隊も暴れられたんですよぉ!!」

 

「しょうがないじゃないですか!こっちもまさか広家が内府どの(徳川家康)に内通してるなんて思いもしないですよ!」

 

「ったく少しは統制ぐらいまともに取れねえのかよ!せっかくこっちは上田で秀忠の隊を足止めしてたっつうのによ!」

 

「うう、それは・・・。」

 

乾杯してからしばらく経った頃、幸雄と輝久と夢路が激論を交わしていた。

 

「なんか疎外感を感じるな。」

 

「しょうがないわよ、私たちはとっくに死んでたんだから。」

 

「俺の甥っ子の氏盛とか旧臣達が参加してたのはみんな知らんよな。」

 

「うちなんかだいたい朝倉滅亡と越前の一向一揆のゴタゴタで一族と旧臣の大半が死に絶えたから生き残りがいるだけ御の字だよ政康さん。」

 

関ヶ原以前に死んでいた志郎、政康、渚、良景は、西軍の三人組をよそにのんびりと話していた。

 

「それにしてもよくよく見ると俺たち、ろくな勝ち組がいなくないか・・・?」

 

ふと志郎がそう言うと、

 

「確かに負け犬揃いだのぉ。」

 

議論が終わったのか幸雄がメンバーの顔を見回しながらそう言った。

 

 

『あ゛!?』

 

 

これには志郎を含めた幸雄以外のメンバーが怒気を孕んだ声を出すのも無理のない話である。

 

「ちょっと待て真田。貴様なに他人事のように言ってるんだ。」

 

政康が抗議すると、

 

「いやいや、事実だろ。だってほら・・・。」

 

武田勝頼:織田信長に攻められ滅亡(甲州征伐)

 

北条氏政:豊臣秀吉に攻められ滅亡(小田原征伐)

 

朝倉義景:勝頼と同じ(一乗谷炎上)

 

鶴姫:陶隆房(晴賢)率いる大内水軍を撃退するも、兄と恋人の死を嘆き入水自殺

 

毛利輝元:長州藩を築くも、領地はほとんど没収される。おかげで後世に暗愚、凡将の評価を残してしまう。

 

長宗我部盛親:関ヶ原の戦いの戦後に改易。大坂の陣で豊臣方に参戦しお家再興を志すも敗北。落ち延びるも捕まり斬首。

 

 

幸雄はメンバーの末路を列挙した。

 

「確かに事実だがお前も大概だろうが!!」

 

「真田家はちゃんと残ったし俺自身も徳川軍撃退したから負け組じゃねーし!」

 

幸雄は政康に反論するが、

 

「でもお前最終的には九度山に追放されてそのまんまそこで寂しく死んでいったよな。」

 

「うぐっ!」

 

志郎に痛いところを突かれ、ぐうの音が出せなくなっていた。

 

「確かによくよく考えてみると負け組というかあまりいいとはいえない末路を辿ってる者が多いな。」

 

「そう言えば俺はまだあの掲示板に入ったばかりで分からないんだが他にはどんな奴がいるんだ?」

 

「うーん、とりあえず呼んだけど来れなかったメンツだと三好長慶とか山中鹿之助とかがいるな・・・。」

 

「鹿之助どのはともかく日本の副王とまで呼ばれた長慶公もいるのか・・・。」

 

「まああの人は弟と息子を失ってるからね。」

 

志郎たちは他の転生者たちの事を語り始めた。

 

「ねえ、私それに関して思う所があるんだけど言って良いかな。」

 

「ん?何かあるのか鶴崎さん。」

 

「ええ、これはあくまでも私の想像でしかないんだけどさ。私たちがこの時代に蘇ったのって神様がチャンスをくれたからなんじゃないかなって思ってるの。」

 

「神様のチャンス?」

 

幸雄は首を傾げた。

 

「うん。ほら、私たちって自分で言うのもアレなんだけどあまりロクな人生とは言えないから、神様が前の人生でロクな目に合わなかった分の清算をさせてくれてるんじゃないかなって思ってるの。」

 

渚がそう語ると、

 

「なるほど、清算ねえ。」

 

「まあ僕は前世も今も楽しんでるから関係ないけどね。」

 

「お家再興はもう叔父上の末裔がやってくれたからいいけど確かに楽しめなかったからな!」

 

「まあ、面白い考え方ではあるな。」

 

「清算か・・・。確かに渚さんの言う通りだな。」

 

志郎たちはこぞって渚の考えに賛同した。

 

「あはは・・・。これはあくまでも私の考えだから・・・。そう言えば負け組じゃない転生者っているのかしら?」

 

渚は照れ臭そうに笑い、別の話題を切り出した。

 

「あ、それなら私に任せてください!」

 

そう言って話に乗り出したのは輝久だった。

 

「そう言えば中納言どのも俺や志郎のように直接他の転生者と接触したことがあるんだったな。」

 

「はい、多分今の時間なら通話を繋げられると思うので繋げてみますね!」

 

輝久は幸雄の言葉に応えながら、スマホの通話アプリを起動させる。

 

「その転生者って誰なんですか?」

 

志郎が輝久に彼と接触したという転生者が何者なのかをたずねた。

 

「私が出会った転生者の名前は熊田 広樹と言って、その正体は私の従弟の吉川広家だったんですよ。」

 

輝久が志郎の問いにあっけらかんとして答えると、

 

「血の繋がった親族が転生するんですか!?」

 

志郎は驚いた。

 

「まああくまでも親族だったのは前世の話で今は生まれた場所も育った環境も全然違う他人なんですがね。最初あった時は親族だった頃の名残なのかすぐに彼だと分かりましたよ。」

 

「流石は毛利家、三本の矢の教えの家なだけに親族の絆は時代が変わっても変わらないのね。」

 

「まあ、両川がいなくなった瞬間ガバガバになったがな。その点では我ら北条に劣るな。」

 

「もう、政康くんったら空気読もうよそこは。」

 

「あっ、繋がりました!さっそく話してみましょう。おーい広家・・・。」

 

輝久がスマホに向かって呼びかけると、

 

『おいコラ輝ぅ!!てめえ仕事中に通話するんじゃあねえって前にも言っただろうが!!』

 

と怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「あ!すいません、そっちも休みかと思ったので・・・。ほら今日曜日じゃないですか。」

 

『あ!?こっちは日曜だろうが休みなんざねえよ!こちとらやりたくもねえ子守で忙しいんだ。』

 

「子守?広家・・・じゃなくて広樹、また職を変えたんですか?」

 

『変えてねえよ。一応こっちに雇われてからこの仕事一筋なんでね。』

 

「そう言えば広樹、実は今他の転生者たちと一緒にいるんですが・・・。」

 

『なに?俺たちの同類がそこにいるのか。』

 

「ええ、よかったら何か一言・・・。」

 

『ふん。おい、そこにいるあんたら。顔は見えねえし名前も知らんがうちのボンクラ主君が世話になってるな。俺は熊田広樹ってもんだ。俺の前世が何者だったかはそこのボンクラから聞いてるだろ。』

 

「ボンクラって凄い物言いだな・・・。」

 

志郎たちは広樹の輝久に対する態度に呆気に取られていた。

 

「言葉は乱暴ですが悪い奴ではないんですよ。この前まではヤクザに下っ端として所属していましたが・・・。」

 

『おい輝、余計な事言ってんじゃねえよ。』

 

「広樹さんってヤーさんだったんすか・・・。」

 

幸雄がそう言うと、

 

『あくまでも昔の話さ。今は足洗ってるし、今の職場に雇われて転職する前にそこは潰しておいた。』

 

と広樹は返答した。

 

「ヤクザを壊滅させたって何をしたんですか・・・。」

 

志郎が引き気味に言うと、

 

『潰したっつっても内部情報を洗いざらいに警察に匿名でリークしただけさ。』

 

「で、今はどこで働いてるんですか?」

 

『今はちょっとした縁で小原ってホテルチェーンの会長に雇われててな。今はそこのお嬢の子守をさせられてんのよ。』

 

「小原・・・。ホテル・・・?マジか、調べてみたら海外にも進出してる大型のリゾートホテルチェーンじゃねえか!しかもそこの会長の子の子守って勝ち組確定コースじゃ・・・!」

 

政康は広樹の働いてる場所を調べて一人衝撃を受けていた。

 

『まあ、給料はいいがお嬢はお転婆だし、休みはないしで高給取りも楽じゃねえってこったな。休みはヤクザだった頃の3分の1にも満たねえ。』

 

広樹はそう言って乾いた笑いを浮かべた。

 

「というか広家どのは歳いくつなんすか?結構職歴凄いことになってるっスけど。」

 

『俺か?俺はそこにいるボンクラと同じ二十歳さ。大学に通ってる輝とは違って高校中退してから即アウトロー入りよ。』

 

夢路の問いに広樹はどこか感傷的に答える。

 

「広樹、せっかく手に入った職なんだから途中でやめたらだめですよ。」

 

『うるせえな・・・。別にやめるつもりはねえよ・・・っておっと、お嬢が帰って来たな。そんじゃあ切らせてもらうぜ。』

 

「はい、仕事頑張ってくださいね!」

 

『はいはい。ああ、あと輝は次会った時は一発シバかせてもらうからな。』

 

「なんで!?」

 

『決まってんだろ。大事な休憩時間を世間話で費やしちまったからだよ!じゃあな!!』

 

その言葉を最後に通話は途切れた。

 

「なんつーか、けっこう破天荒な人だったな。」

 

「ああ、かつての従弟だったとはいえ元主君に対してあの態度だからな。」

 

「二十歳とはとても思えない経歴の持ち主だったわね・・・。」

 

志郎と幸雄と渚は半ば呆然としていた。

 

「そうかな。僕の場合は景鏡なんか露骨に『朝倉の当主に相応しいのはこの私だ!』なんて言ってたから親族が素直に従ってくれるだけありがたいと思うけどね。」

 

今までほぼ我関せずな状態だった良景が口を開いた。

 

「そう言えば広家どのは今じゃ『毛利を改易間近に追い込んだ裏切り者』か『毛利を救った忠義者』かで評価が分かれてるけど輝元どのからしたらどうなんすか?」

 

関ヶ原で成り行きであるとはいえ毛利家と共に西軍についた夢路は輝元にたずねた。

 

「そうですね・・・。はじめは彼の行動を恨みはしましたが長州に入ってから時間が経つほどに彼の行為が毛利のためにどれだけ大きかったのかが骨身にしみていきましたね・・・。それに彼のおかげで幕末には私たちの子孫が200年越しに徳川を破ることができましたからね。」

 

夢路の問いに輝久は何とも言えない面持ちで答えた。その表情には様々な感情が入り乱れていた。

 

(毛利輝元・・・。暗愚な君主とこき下ろされてはいるものの、あの怒りに感謝、そして野心が見え隠れする表情はどう見てもそんじょそこらの凡人にできるもんじゃねえ・・・。環境が環境だっただけに自らの才を磨くことが出来ず、祖父のような謀略の才も、父のようなやるときはやる決断力こそ受け継がれはしなかったが、やはり彼も毛利の当主に相応しい策士だったんじゃねえかな。生まれが違えば恐らく底の見えない策士になっていただろうな・・・。良景とはまた違った意味で掴み所がねえ奴だ。)

 

幸雄は彼の表情から輝久の掴み所の無さを感じ取り、

 

(自分で言うのもなんだが、少なくとも俺は輝元どのよりは武将としての才は間違いなく優れていた。だが将としての才が劣っていた輝元どのがなぜ大名として俺より優れていた理由がなんとなく分かった。あれは父上や穂乃果のような強烈なカリスマではなく、『ほっといておけない』と人に思わせることができる『徳』があるのだ。だから毛利が没落した後も益田元祥や毛利秀元、清水景治といった能臣が献身的に毛利を支え続けたのだろうな。広家どのもあんな態度をとってはいるが彼もまた輝元どのの『徳』に惹かれたからこそ、のちに裏切り者と誹りを受けることを分かったうえで毛利を守るためにあの行動に出たのだろうな。)

 

志郎の方は、輝久からにじみ出る『人の上に立つ者の才』を感じ取っていた。

 

「そう言えば輝久さんって二十歳ってことは大学生なんですよね?将来はどんな仕事をしようと思ってるんですか?」

 

渚は輝久に将来のことをたずねた。実に高校生らしい質問である。

 

「一応教師を目指してますね。」

 

 

『え!?』

 

 

「・・・そんなに驚かなくてもいいんじゃないですか?」

 

志郎たちのリアクションに輝久は苦笑いする。

 

「いやだって、ねえ・・・。」

 

「ああ・・・。」

 

輝久以外のメンバーは言葉を濁してはいたが輝久が教師に向いてない、と言いたいのは表情から見て明らかだった。

 

「何故輝久さんは教師を目指そうと?」

 

志郎がたずねると、

 

「塾の講師のアルバイトを高校生の頃にやってたんですが、その時に教えていた生徒の子から『先生の教え方すごく分かりやすい!』って言ってもらえたことがあるんですよ。その時思ったんです、『こんな私でもできることがあるんだ!』ってね。それから教師になるために猛勉強してるんです!」

 

輝久は今までの弱気そうな雰囲気ではなく、自信満々な様子で語った。

 

「なるほど、確かに輝久さんの人柄なら皆から好かれる教師になれると思いますよ。」

 

志郎は輝久にそう言った。それは自分よりも人を惹きつける才に長けた者に向けた敬意の言葉でもあった。

 

 

 

 

 

 

会食は夕方になるまで続き、気が付けば17時になっていた。

 

「じゃあ、参加者の中に小学生がいるってことでとりあえず今日はこの辺で解散だ!」

 

幸雄は主催者として再びメンバーを仕切った。

 

「実に面白くて愉しい会合だったよ。またやれるといいね。」

 

「いやーなかなか面白い組み合わせだったな!このメンバーで戦場を駆けられたら楽しかっただろうなあ。じゃあな!」

 

「またどこかで会えるといいですね。」

 

「いや、輝久さんと僕はいずれどこかでまた会うと思うよ。」

 

「え?それってどういうことですか?」

 

「さあね。」

 

良景と夢路、そして輝久はそう言って駅に向かっていった。

 

「じゃあね、志郎くんに幸雄くん。またどこかで会いましょ。」

 

「ああ、またメイド喫茶で・・・あべし!」

 

幸雄は渚にひっぱたかれていた。

 

「志郎、このあと空いてるか?」

 

「どうしたんだ政康、藪から棒に。」

 

「お前に話したいことがあるのだ。俺たちの学校のことでな。」

 

「・・・。」

 

志郎は政康の言葉に息を呑んだ。

 

「分かった。行こう。」

 

志郎は覚悟を決めた表情で政康に応えた。

 

「じゃあ志郎!俺はしばらくアキバを散策して帰るわ!」

 

「ああ、また明日な幸雄。」

 

幸雄は志郎と別れると秋葉原の喧騒の中に消えていった。

 

 

 

 

 

「なあ志郎。今は楽しいか?」

 

「なんだよこんなところでいきなり。」

 

オフ会が終わって解散した後、志郎と政康はある公園に来ていた。

 

「お前のことを気にかけてる奴がいるんでな、それで聞いてみただけさ。」

 

「・・・秋山か。あいつはどうだ?元気にしてるか?また誰かにいじめのターゲットにされてないか?」

 

志郎は脳裏に浮かんだ旧友の現状を政康にたずねた。

 

「質問に質問で返すんじゃあない。まあ、あいつもお前がいなくなったことで自分の身は自分で守るべきだと考え研鑽を積んでいる。少なくともお前がいた頃よりはたくましくなってるさ。」

 

「そうか・・・。ならよかった。」

 

政康から旧友の近況を聞いた志郎は安堵のため息を漏らした。

 

「で、結局どうなんだ?」

 

「ああ、楽しんでるとも。向こうが少しばかり退屈だったせいかこっちは刺激的な事ばかりさ。」

 

「そうか。しかし羨ましいぞ志郎!!」

 

「な、なんだよいきなり叫んで。」

 

「お前はあのμ'sがいる学校に通ってるんだぞ!しかもあそこは生徒数が少ないからメンバーの誰かと同じクラスになってる可能性も高いし、羨ましいことこの上ないぞ!!」

 

「なあもしかして政康・・・。お前まさかあいつらのファンだったりするのか?」

 

志郎が恐る恐る政康に質問すると、

 

「如何にも!俺はμ'sのファンだ!!それより貴様!μ'sに対してあいつらとは何様だ!!」

 

政康は堂々と答えてさらに志郎に詰めよる。

 

「いやだって、俺と幸雄はあいつらの・・・μ'sのサポートをしてるんだからそうなるだろ。」

 

「な、な、ななな・・・。なにいいいいいい!??μ'sのサポート役だと!!?」

 

志郎の言葉を聞いた政康は今までの態度からは想像できないような素っ頓狂な叫び声をあげた。

 

「羨ましい!羨ましすぎるぞ貴様ああああ!!!」

 

「落ち着けよ政康。ちなみに推してるメンバーは誰だ?」

 

「推しメンは園田海未さんだ!余談だが俺はμ'sが3人だった頃から応援してるぞ!」

 

「3人だった頃って、最初の頃からじゃねえか!!しかしお前にそんな趣味があったとはな・・・。」

 

志郎は政康がμ'sのほぼ最古参と言って良いほどのファンだったと知って驚きを隠せない様子だった。

 

「まあ俺とて元々スクールアイドルに興味があったわけではないが、真田の奴に掲示板で勧められてな。」

 

「あいつネットで布教活動してたのか・・・。海未を推してるって言ったよな。サイン頼んでやろうか?」

 

「いや!それはいい。俺は貴様の施しは受けん!彼女のサインを受け取るならばこの俺が自ら『サインをください』と礼を尽くして頼むべきだからな!!」

 

政康はそう言ってドヤ顔でふんぞり返る。

 

「ははは・・・ファンの鑑だなお前は。それより、こんな世間話をするためにわざわざ二人っきりになったわけじゃあないんだろう?本当の用件はなんだ。」

 

志郎はひとしきり笑うと、武田勝頼だった頃の険しい表情で政康を睨んだ。

 

「・・・お前に忠告しておきたいことがあってな。」

 

「忠告だと?」

 

「ああ。お前、退学の原因となった騒動で殴った奴らのこと覚えてるか?」

 

「ああ、確か7人ほどだったか。今でも忘れられないくらい不快な連中だった。」

 

「お前が追放されたも同然の形で転校していった後の奴らがどうなったか教えてやろうか?」

 

「・・・頼む。」

 

「お前がボコボコにしたスクールカーストの上位だった連中の大半はお前に対してトラウマができたらしくお前の名前の一部を聞いただけで慌てふためくようになっていた。だがお前が転校してからはその症状も収まり、校長から釘を刺されたのにも関わらず連中は以前と変わらずカーストの下位に位置する奴を虐めて楽しんでいた。もちろん、今まで以上に教師から隠れてな。」

 

「クズめ・・・。」

 

志郎は不快感に顔を歪める。

 

「まあ本題はここからよ。そこで秋山と俺が手を組んでいろいろ調べあげた結果、いじめ以外にもまあ色々やってる証拠が出てきてな。校長にそれを突き出してやったら見事に全員退学になりおったわ。」

 

政康はニヤリと笑いながら話した。

 

「あの秋山があいつらを追い詰めただと!?」

 

「さっきも言ったがあの事件をきっかけに秋山はかなり成長した。あいつはなかなかの大物になるぞ。」

 

「それで、忠告ってなんだ?」

 

志郎は政康の言っていた『忠告』が何なのかをたずねる。

 

「うむ。貴様に恨みを抱いてる奴がいる、思い当たりはあるはずだ。」

 

「俺に恨み・・・。神崎か・・・!」

 

志郎の頭に浮かんだのは、秋山を虐めていたカースト上位組のリーダーとも言える、『神崎』という男の顔だった。

 

「察しがいいな、その通りだ。神崎は他の連中が貴様に対するトラウマが植え付けられたのにもかかわらず全く平気だったし、何より問題なのは退学させられてからだった。」

 

「退学させられてから?何かあったのか。」

 

「ああ、神崎は退学させられた後もそれを認めずに学校に押し入ってきてな。『何もかも全部、諏訪部が悪いんだ!!あいつのせいで俺はこんな目にあったんだぞ!!』って喚き散らすのだ。」

 

政康はその状況を思い出しながらため息をついて言った。

 

「逆恨みもいいところだな。自分が蒔いた種であろうに。」

 

志郎もまた呆れながらそう言う。

 

「それだけならいいんだが、実は秋山が神崎に闇討ちされてるんだ。」

 

「なんだと!?秋山は大丈夫なのか!!」

 

「心配には及ばん。秋山の奴は2度といじめられぬように体も鍛えていたからなんとか抵抗し、人が通りかかったので大事に至ることは無かった。」

 

「そうか、秋山は無事だったか。」

 

「ヤツは去り際に『いつか諏訪部とてめえを血祭りにあげてやる!!』って言っていたそうだ。」

 

「俺と秋山を血祭りにか・・・。」

 

「ああ。」

 

「なあ、政康。神崎と秋山は転生者なのか?」

 

志郎は神崎と旧友の秋山も自分と同じ転生者なのかをたずねた。

 

「転生者の見分け方は俺はお前が去った後に知ったんだが、どうやら気配が違うらしい。」

 

「気配だと?」

 

「ああ。この時代の人間に比べると俺たちの気配はかなり研ぎ澄まされてるらしい。まるで刃物のようだとのことだ。」

 

政康が言うには、転生者と普通の人間とで気配が違うらしい。

 

「どこで聞いたんだよそんな話。」

 

「あの掲示板に杉谷善住坊の転生者がいてな、そいつがそう言っていたのだ。」

 

「杉谷ってあの信長を暗殺しようとした甲賀の忍びの?」

 

「ああ。忍びが言うのだから間違いはあるまい。それで俺も二人の気配を探ってみたが二人ともこの時代の人間と同じ気配をしていた。」

 

「そうなのか。」

 

「だがヤツを侮らないほうがいいぞ。」

 

「分かってる。神崎はあの時唯一俺に頑強に抵抗していたからな。傷こそつかなかったがなかなか危うい場面もあったし、何より頭も切れるらしいからな。」

 

「とにかく神崎は動き出している。気を付けたほうがいい。」

 

「分かってる。奴との因縁は俺の手でケリをつけなければならないからな。」

 

「それだけじゃない、神崎の目的はお前への復讐だ。ひょっとしたらμ'sが狙われる可能性も・・・。」

 

「それ以上言うな。」

 

志郎は威圧感を孕んだ声で政康の言葉を遮った。

 

「・・・忠告はしたぞ。」

 

「ああ。」

 

「まあ、何かあったら連絡しろ。知恵の一つくらいは貸してやる。」

 

「すまない、恩に着る。」

 

志郎はそう言って公園から去っていった。

 

 

(あの学校から追放されてなお、過去と向き合わねばならんとは・・・。もしヤツがμ'sを狙うとならば、俺はそれを断じて阻止してみせる!)

 

 

 

志郎はいつの間にか日が沈み、月の出ていた空を見上げながら心の中で決意した。

 

新たな仲間との出会いの影に、志郎のこの時代における最大の危機の種火が迫りつつあった。




いかがでしたでしょうか?

志郎と幸雄の新たな仲間(?)たちとの出会いが、この先どのような形で物語を動かすことになるのか・・・。そして、志郎と政康の密会で語られた『神崎』という男はどの様に志郎の前に立ちはだかるのか・・・。それはまだまだ先の話。

いよいよ次回からはアニメ本編に戻って合宿回のスタートです!μ'sのメンバーの水着姿に対して志郎と幸雄はどんなリアクションをとるのか!?というかその前に作者の一番の推しである花陽ちゃんの誕生日が控えてるのでそっちを書かなくては!!

感想や意見があったらドシドシ書いてください!!



それでは次回もまたお楽しみください!!
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