今回でいよいよ合宿編も幕引き!前回のあとがきで宣言したように今回は若干短めになっておりますが、それをご承知の上で楽しんでくださったら幸いでございます!
それではどうぞお楽しみください!!
――――もしこれから先、困ってる人がいたらその知恵で助けてあげてください。
少女の声がした。
その声は穂乃果ののでも、海未のものでも、ことりのものでも、花陽のものでも、凛のものでも、真姫のものでも、にこのものでも、希のものでも、絵里のものでも無かった。
μ'sの誰でもない少女の声が誰かに語りかけていた。
――――おいおい、俺の正体は知ってるだろ?困ってる奴がいたとしても俺が力を貸してやる保証なんざどこにもないぜ?
少女の声に反論する少年の声がした。
その口調からは捻くれてはいるが、どこか一本気な性格が見え隠れしている。その証拠に、少女の真っ直ぐな眼差しから目を背けることなく垂れ目の三白眼で少女の目を真っ直ぐ少年は見据えながら反論していた。
――――確かにそうだとしても、・・・くんはとても優しい人だからきっと大丈夫です。
少女はそう言って少年に微笑みかけた。その笑顔は、眩しくて可憐だったがひとたび触れると消えてしまいそうなほどに儚く見え―――――
「・・・!!」
夢が覚めた。汗だくで飛び起きたのは幸雄だった。
「はぁ、はぁ・・・。ふう。」
幸雄はしばらく肩で息をしていたが、一度深く息を吸って呼吸を整えた。
「あの時の夢か・・・。ちくしょう、あれからもう1年は経ってるってのに・・・。未練がましいにもほどがあるだろうよ武藤幸雄・・・。」
幸雄は右手で自分の顔を覆いながら自分に言い聞かせるように呟き、時間を確認するために壁にかかっている時計を見た。
「ふあぁ、5時ちょっと前か。ちっと早いが起きるとしよう・・・。」
幸雄はそう言って立ち上がり、背伸びをして部屋を見回した。他のメンバーはまだ夢の中にいるようだったが、
「あれ、真姫と希と志郎がいねえな。」
そう、この3人は先に起きていたのか部屋にいなかった。幸雄は顔を洗いに行きがてら3人を探しに行ったが、3人とも別荘内にはいなかった。
「志郎が日課のランニングに行ってるのは確実だとして、希と真姫はどこに行ったんかね?」
幸雄は顔を洗ってから、玄関に向かい彼女たちが外出しているかを確認した。
「希と真姫の靴がねえ。やっぱ外に出てたか。」
幸雄はそう呟くと、靴を履いて外に出た。
「さて、どこにいるのかねえ。あのお二人さんは。」
外に出たはいいものの、どこに行ったかあてがないので幸雄は門を出たところで考え込んでいると、
「おはよう幸雄、お前も起きたか。」
と志郎が走り寄って来た。
「おはようさん。日課のランニングかい?」
「まあな。俺は今終わったところだがお前もやってみるか?」
「遠慮しとくわ。それより希と真姫を知らねえか?起きたらいなくなってたんだが・・・。」
「ああ、2人ならさっき砂浜で見かけたぞ。」
志郎は砂浜の方を指差しながらそう言った。
「そうか、ありがとよ。」
「2人に何か用事でもあるのか?」
志郎は首を傾げながらたずねたが、
「いやなにも。朝起きていきなりいなくなってたら誰だって心配するだろうよ。」
「ははは、幸雄らしくないことを言うな。」
「うるせー。これだけ長く関わってりゃ情も移るだろうよ。」
幸雄はそう言うと砂浜の方へ走っていき、志郎もその後を追った。
時は少し遡って、幸雄が起きる少し前・・・。希は日が昇り始めている海を見ていると、そこに真姫がやって来た。その気配に気づいた希は振り向くと、
「お、早起きは三文の徳。お日様からたーっぷりパワーをもらおっか。」
と真姫に微笑みながら話しかけた。
「どういうつもり?」
真姫はそれに対して、怪訝な表情で返した。この合宿の一連での希の真姫に対する行動の真意を聞き出そうとしているのだろう。
「別に真姫ちゃんの為やないよ。」
希はただ一言そう言ったが、真姫はその言葉に隠れた希の真意が読み取れず、表情は怪訝なままだった。
「海はいいよね。見ていると大きいと思っていた悩み事が小さく思えて来たりする・・・。」
希は海を見ながら淡々と語った。
「ねえ真姫ちゃん。」
「ん?」
「うちな、μ'sのメンバーの事が大好きなん。うちはμ'sの誰にも欠けて欲しくないの。」
希は、真姫に自分の想いを打ち明け始めた。
「確かにμ'sを作ったのは穂乃果ちゃんたちだけど、うちもずっと見てきた。何かあるごとにアドバイスもしてきたつもり。それだけ思い入れがある。」
そう語る希の表情も口調も穏やかなものであった。だが、その言葉を通して希のμ'sに対する想いの強さを真姫は確かに感じていた。
「ちょっと話すぎちゃったかも。みんなには秘密ね?」
希はいたずらっぽく笑って人差し指を口の前に立てながらそう言った。真姫はそんな希の様子を見て、顔をほころばせると、
「めんどくさい人ね、希。」
と言った。
「あ、言われちゃった?」
希も一本取られたのかそう言い返すと、
「どっちもお互い様だっての。」
「ああ、まさに似た者同士だな。」
と別荘の方から声が聞こえた。2人が声のした方に振り向くと、そこには志郎と幸雄が立っていた。
「あれ、2人ともいつの間に起きてたん?」
希が2人にたずねると、
「俺はさっき起きたばっかさ。志郎はランニングしてる途中でお前らが砂浜にいるのを見かけたらしい。」
幸雄はにひひと笑いながらそう答えた。
「志郎も幸雄も、盗み聞きなんてなかなかいい趣味してるわね。」
真姫は志郎と幸雄にそう言うが、真姫の顔が笑顔なのと口調が明るいのを合わせると、咎めるというよりは友達に対する皮肉交じりの軽口に近いものだと志郎と幸雄は感じた。
「盗み聞きは趣味じゃないが、生憎俺さまは目が利くだけじゃなくて耳も達者でね。」
真姫の軽口に対して、幸雄もいつものようにへらへら笑いながら軽口を返した。
「真姫もだいぶ打ち解けてきたみたいだな!」
「そ、そうかしら。」
志郎の言葉に真姫は少し戸惑うが、
「・・・そうかもね。」
と笑顔で言った。
「3人ともええ感じやん。」
希は3人のやり取りを見ながらそう呟くと、
「な~に他人事のように言ってんだよ!」
と幸雄は希の肩を軽くたたき、
「希だって、その仲間の1人じゃないか。」
と志郎がはにかみながらそう言うと、
「ふふ、そうやね。」
と希もそう言って笑った。
「真姫ちゃーん!希ちゃーん!志郎くーん!幸雄くーん!!」
4人が戯れていると、穂乃果が4人を呼びながら走って来た。もちろん、その後ろには海未やことり、凛に花陽、そしてにこと絵里も一緒に走って来ていた。
「おせーぞお前ら~!!」
幸雄は穂乃果たちに向かってそう叫び、
「やっと全員集合だな。」
志郎は真姫と希に向かって笑顔で言った。志郎の言葉に、真姫と希は笑顔で頷いた。
そして穂乃果たちμ'sと、そのサポート役である志郎と幸雄、合わせて11人の仲間たちは、波打ち際で手を繋ぎながら朝日が昇るのを眺めていた。
「ねえ、絵里・・・。ありがとう。」
真姫が絵里に照れくさそうな笑顔でお礼を言うと、
「ハラショー!」
絵里はウインクをしてその言葉に応えた。
(この合宿は大成功みたいだな・・・。)
絵里と真姫のやり取りを横目で見ていた幸雄は心の中で感慨深そうに呟いた。
(みんな実に清々しい笑顔をしているな。俺たちもこの笑顔を絶やさないように、全力で支えなくてはいけないな。)
志郎はμ'sのみんなの顔を見回しながら考えていた。
(そして高坂穂乃果・・・。人を惹きつける力においては俺に比べると天地の差があるほどに優れているが、長篠以前の俺と同じような危うさも感じ取れる・・・。故に何があっても俺と同じ轍を踏ませるわけには――――)
「どうしたの志郎くん、穂乃果の顔そんなにじっと見て?」
「え?あ!な、何でもない!何でもないぞ・・・!」
志郎は穂乃果の顔を見つめていたのをよりにもよって本人に指摘されたことに顔を赤くしながらひどく動揺した。
「・・・?変な志郎くん。」
穂乃果はそんな志郎の様子を見て言うと、太陽が水平線から完全に顔を出した。
「よ~っし!ラブライブ出場に向けて、頑張るぞ~!!」
『おお~!!』
穂乃果が昇る朝日に向かって宣言すると、11人で繋いだ手を振り上げながら皆で海と太陽に叫んだ。こうして合宿を機に、μ'sはさらに団結を深めてさらなる高みへと飛び立つのだった。
―――だが、その過程でμ'sにはもちろんのこと、志郎の身にも大きく険しい試練が立ち塞がることになるという事は、ここにいる誰もが知る由も無い。
いかがでしたでしょうか?
我ながら合宿編ではギャグ描写に力を振り切った感がありますね。スベってなかったかな・・・?
合宿編が幕を下ろし、この物語の最大の山場の一つである文化祭編が次回からいよいよ始まる―――と、言いたいところですが次回はちょっと本編から逸れてある人物が主人公となるオリジナル回を1話だけ挟む予定となっております!
しかもその話はただ本編から逸れるだけの小話ではなく、二期編で巻き起こるこの作品オリジナルの山場の導入の一部も兼ねているので、是非ともご期待ください!もちろんμ'sのあの娘も出て来ますよ!!(ここ大事)
それでは次回もまたお楽しみください!!