「じゃあ、これから俺たちの正体についてお前たちに話そう。」
『志郎(くん)たちの正体・・・?』
志郎の口から出た言葉に幸雄から既に大まかな話を聞いている真姫以外のメンバーが息を呑む。今まで気を許せる仲間として行動していた海未たちにとって、驚くのは当然の反応であった。
「俺たちの正体、それは・・・。」
『それは・・・?』
志郎が勿体ぶった様子でそう言うと海未たちは食い気味になって志郎の言葉に耳を傾ける。
「ちょっと待った志郎よ。」
「どうした?」
「ちょっと!!今ここで割り込むんじゃないわよ!」
そんな中幸雄が突然志郎を止め、水を差されたことににこが幸雄に向かって怒鳴った。
「ああ悪い悪い、水を差す気はなかった。ただ、俺たちの事を話す前に少しばかり基礎知識をレクチャーしたほうがいいと思ってな。」
『レクチャー?』
幸雄の言葉に当事者である志郎を含めた8人が首を傾げた。
「ああ。いきなりペラペラ話すだけってなら話は楽なんだが、これはペラペラ話すだけじゃすまない複雑な話でな。前もって知識を教えとかないと話に付いてこれない奴が出てきかねんと思ったのよ。」
「なんかすっごく馬鹿にされたような気がするわね・・・。」
「凛もなんか分かるにゃ・・・。」
幸雄が志郎の話に割り込んだ理由を説明すると、にこと凛が納得いかないと言わんばかりにそう呟いた。
「確かに、基礎知識は必要かもしれないわね。私も幸雄から先に少しだけ話を聞いたけどまだ理解が追い付いてないし。」
「真姫がそう言うのなら本当に複雑な話なんでしょうね。」
一方で真姫と海未は幸雄の話に同意していた。
「じゃあそんなわけで志郎、基礎知識については俺に任せてもらっていいかな?」
「ああ、俺じゃそこら辺は上手く説明できそうにないからな。頼む。」
「よっしゃ、じゃあ俺たちの正体に触れる前にちょっとした授業と洒落込もうか。」
志郎の許可を得た幸雄はパンと手を叩いて海未たちの注目を集めた。
「さて、突然だがお前ら前世って知ってるか?」
「前世ですか?知ってますが・・・。」
「私も一応知ってるわ。」
「愚問やね。」
「はい、知ってます。」
「流石に凛もそれは効いたことあるにゃ~。」
「にこだって知ってるわよそのくらい!」
「本当にあるとは思ってないけど知ってるわよ。」
どうやらこの場にいるμ'sのメンバーは全員前世という言葉の意味を知っていたようだ。
「なるほど、まあ高校生にもなれば一度は聞いたことあるわな。」
幸雄も教える手間が1つ省けたからか安心したような顔でそう言った。
「じゃあもう1つ質問。『転生』って知ってるか?こう書くんだけど。」
そう言って幸雄は2つ目の質問を繰り出すと共に黒板に『転生』の2文字を書いた。
『?』
「これは流石に現代の女子高生には馴染みが薄い単語だから知らないのも無理はねえか。」
絵里、花陽、にこ、凛の4人が首を傾げるのを見て幸雄は少し苦笑いしていた。
「転生ってゆうのは生まれ変わりの事やね。仏教とかだと人間は死んでもまた別の形で生まれ変わってそれを繰り返すって考え方があるんやで。」
「いわゆる輪廻転生ですね。」
『へぇ~。』
希と海未の解説に絵里たち4人は舌を巻いた。
「ま、あくまでも死生観の1つでしかないから本当かどうかわからないけどね。天国と地獄が本当にあるのかを議論するのと同じくらい考えるだけ時間を無駄にする内容よね。」
「あまりそういう言い方は良くありませんよ真姫。」
「そうやで、『現実は小説より奇なり』って言うくらいなんやからね~。」
「ヴェエ!わ、悪かったわよ・・・。」
いつものように皮肉を言う真姫に対して海未と希が忠告を入れる。特に希なんかは『わしわしMAX』の構えをとっていたため真姫は引き下がった。
「で、その転生ってゆーか生まれ変わりってゆーのがあんた達の正体になんか関係があるわけ?全然話が見えてこないんだけど。」
「そうだな、関係はあるっちゃあるんだが今はいったん置いといてもらおうか。」
幸雄は訝しげな様子のにこの言葉を軽く流して次の話題に移ろうとしていた。
「3つ目の質問で悪いがお前らは転生・・・、つまり生まれ変わりを信じるかね?」
『う~ん・・・。』
幸雄の質問に海未たちは思わず唸ってしまった。
「いくら前振りで触れたとはいえそんな事言っても答えるのは難しいだろ・・・。」
「まあこれはあくまでも信じてるか信じてないかの話だからな。じゃあメンバーを代表して絵里はどう思ってるよ?」
「わ、私!?そうね・・・。本当にあるかどうかは分からないけど、そういうのが本当にあったら色々ロマンチックよね~なんて思ったり・・・しない?」
突然幸雄に指名された絵里が戸惑いつつも自分の意見を述べたが、
「・・・ぷっ、スイーツ乙(笑)」
「な、笑う事ないじゃない!生まれ変わりとか全然よく分かんないのに真剣に考えたのよ!?」
「どうどう、落ち着け絵里。幸雄もそう笑ってやるな。」
幸雄に鼻で笑われた絵里が眼尻に涙を浮かべながら彼の肩を揺らして抗議するも、志郎が仲裁に入った。
「ゆっきーくん、えりちをからかうのはほどほどにしてやってね。えりち結構ハート脆いところあるんやから。」
「ぐすっ、エリチカもうおうち帰る・・・。」
「あーすまんすまん、思いのほか乙女チックな回答が来たもんでついやっちまったぜ。じゃあ気を取り直して次の話題に入ろうか。そんな訳で次はお前さんたちにこれを見て欲しい。」
幸雄はそう言うとノートパソコンを開いて海未たちに見せた。そこには1つの動画が映っていた。
「これは・・・。前世の記憶、ですか?」
動画の内容は前世の記憶を持っている人についてのテレビ番組であった。
「そ、この世に起きる不思議な現象の一つとしてこういう事例が何件かあるのさ。ちなみにこれはついこの前やってたのがネットにアップされたものだな。」
「どーせやらせか何かじゃないの?」
にこがそう言うと、
「ううん、これはやらせじゃないよにこちゃん!凛、たまたまこの前この番組見てたけどやらせとか作りものじゃないって言ってた!」
と凛が反論した。
「凛ちゃんの言う通りだよ。私もこれ見たけど、前世の記憶を持ってる人たちの言ってることを調べたら全部本当の事だったってやってたよ。」
そして凛と同じく番組を見ていたらしい花陽も凛の反論を補足するようにそう言った。
「つまり前世とは本当にあるという事なんでしょうか?」
海未は凛と花陽の言葉に首を傾げた。
「まあ間違いなくあると見て間違いはないだろうな。ただそれを科学的に証明する方法が無いんだけどな。」
「で、幸雄はなんでこんなものをあたしたちに見せたわけ?」
「もしかして、今の映像が志郎たちの正体と何か関係があるのかしら・・・。」
『え!?』
絵里の何気ない発言に志郎と幸雄、そして真姫を除く6人が驚きの声を上げる。
「あ~、けっこう惜しいところまで来たねぇ。だがそれはちょっと違うな。」
それに対する幸雄の答えはノーだった。だが完全なノーというわけでもなかった。
「違うってどういう事?」
「ていうかそろそろ勿体ぶってないで教えて欲しいにゃ!」
「まあまあそう焦るなって。今からその答え合わせをするんだからよ。」
花陽と凛を宥めた幸雄はさらに話を進めだした。そしてその口ぶりから遂に2人の正体の核心に迫る事が仄めかされていたからか、海未たちの表情は緊張に包まれた。
「今の映像で前世というものがあるって事を知ったお前さんらは俺たちがその前世の記憶を持った人間かもしれないという結論に辿り着いたみたいなんだがそれはちょっと違うんだわ。」
「違うって言うのはどういう事かしら?」
「前世の記憶を持ってるのは幼い子供が大半なんだよ。それも成長していくごとに少しずつ記憶が薄れて大人になる頃には完全にその記憶が消えてどこにでもいる普通の人間になっちまうそうなんだ。」
「確かにさっきの動画の番組に映ってたのも子どもやんね。」
「じゃあ志郎と幸雄は前世の記憶を持ってる人ってわけじゃないって事?」
「それは違うなにこ。俺たちには今でもはっきりと前世の・・・いや、生前の記憶が残っているんだ。」
『!?』
幸雄と絵里の仲裁以外でほとんど口を開いてなかった志郎が出した言葉に7人は驚きを隠せなかった。
「志郎、あなた今なんて・・・?」
「ああ、生前の記憶が残っていると言った。」
「ちょっと待ってください!生前って、それではまるで一度死んだかのような・・・。」
「志郎の言う通りさ、俺たちは
志郎の言葉に戸惑う海未に対して幸雄はそうはっきり告げた。幸雄の表情はさっきまでのどこかおちゃらけた雰囲気は鳴りを潜め、冷徹な雰囲気を纏ったものになっていた。
「一度死んでるですって・・・?」
「どういう事・・・!?」
絵里とにこの2人もかなり戸惑っていた。
「どういう事も何も、言葉の通りさ。ここで最初にお前らに質問した『転生』ってワードの出番よ。」
「転生・・・。つまり志郎くんたちは私たちよりも前の時代に生きていた人が生まれ変わったって言う事やね?」
希は転生という言葉から導き出した結論を2人に言い放った。
「流石は希、大当たりだぜ。」
「如何にもその通り。俺たちは過去の時代に生きていた人間がその当時の記憶を引き継いで生まれ変わった人間だ。そして俺たちはこれを転生者と呼んでいる。」
希の結論を受けて幸雄は彼女がその結論に至ったことを称賛し、志郎はそれに続く形で自分たちが何者であるかを海未たちに明かした。
「転生者・・・?」
「その転生者って言うのはさっきの前世の記憶を持ってる人と何が違うんですか?」
「お、良い質問だね花陽。さっきも言ったようにさっきの前世の記憶を持ってる人ってのは記憶しか持ってない上にその記憶が成長するごとに薄れてくただの普通の人でしかないんだが、俺たち転生者は記憶だけじゃなくてこの時代に生まれ変わる前の前世と同じ人格をそのまま残して生まれ変わってるのさ。」
「えっと、つまり昔の時代に生きてた人がそのまま生まれ変わったって事ですか?」
「その通り!ま、そのまんまっつっても流石に見た目は前世とは違うけどな。」
幸雄は花陽からの質問に答え、花陽が転生者とは如何なる存在であるのかを教えた。
「ちょっと待ちなさいよ。さっきの動画に映ってた人とあんた達がどう違うのかまだいまいち分かんないんだけど?」
「要するにデータだけを別のパソコンに移したのが前世の記憶を持ってる人で、データだけでなくそのパソコンが持つ機能も全てそのまま別の機体に移したのが俺たち転生者、というわけだ。」
いまいち合点の行かないにこに対して、志郎はパソコンを例に前世の記憶を持つ人間と転生者の違いを解説した。
「なるほど・・・、なんか分かったようなそうでもないような・・・。」
「じゃあ、あなた達が名乗っているその名前は偽名って事ですか!?」
「いやそれは違うな。俺たちが今名乗ってるこの名前は紛れもなくこの時代に生きている俺たちのものだ。あくまでも生前での俺たちの名前は、今頃墓の下で眠ってる前世の俺たちのものであり、俺たちが誰の転生者であるかを識別するための記号でしかないのだ。」
海未の疑問に対して答えたのは志郎だった。
「志郎くん今『俺たちが誰の転生者であるかを識別するため』って言ってたけど他にもその転生者って人たちがいるって事かにゃ?」
「それは・・・。」
「その通りだぜ凛、転生者は俺たち以外にもこの日本全国に存在している。現にこの町にも数人ほどいるし俺たちはそいつらと接触を果たしているんだ。」
志郎は凛の疑問に対して答えるのを躊躇ったが彼に代わって幸雄が疑問に答えた。
「おい、いいのかそれ話して。協定違反とかにはならんのか?」
「あ?別に俺たちは互いに他の転生者たちの正体を明かすのを禁じてはいるが、他にも転生者が存在することを明かすのまでは禁じちゃいねえんだよ。」
「協定違反っていうと何かしらの集まりがあるようね。」
絵里は志郎たちの会話から転生者が何らかのグループを組んでいる事を推測する。
「ああ、こればかりは詳しくは言えねえが俺たち転生者だけが集う集まりがあるのよ。集まりとはいっても特にこれといった決まりは無いしリーダーもいない、ただ単にどこの誰がこの時代にいるかを互いに把握してるだけの実体のないものだけどな。」
幸雄は転生者だけが集まるサイト『転生者の夢幻郷』についてをその名前を出すことなく海未たちに教えた。
「さっきからずっと話に出てきてる転生者って一体何なのよ。もう少しそれについて教えてくれてもいいんじゃない?」
ここにきて『転生者』という存在がどのような存在であるかについて疑問を抱いたのは真姫であった。
「確かに『昔の時代に生きていた人がそのまま今の時代に生まれ変わった』という事と『何かしらの集まりを組んでいて互いにその正体を把握している』っていう事以外ほとんど謎ですからね。そこのところを含めて転生者についていろいろ教えてもらえると幸いなんですが・・・。」
「どうする幸雄?」
志郎は幸雄に、海未たちに転生者についてどこまで話すべきかの判断を仰いだ。
「俺たちの事をこれからバラすんだ。この際話せるだけの事を話しちまうのも悪くはねえだろうな。」
幸雄は転生者についての情報を、知っている分だけ話すことを決意し、
「転生者について話す前に1つだけ約束してもらいたい。ここで聞いた話は誰にも漏らさないで欲しい。これを守ってくれるのであればここから先の話を続けよう。」
と志郎は海未たちに釘を刺した。
「分かりました。ですが穂乃果たちはどうするんですか?」
「穂乃果たちに対してはあとで俺たちの口から直接話す。それでいいな?」
「はい。」
海未が志郎の言葉に頷くと、幸雄に話を続けるように目配せをした。
「俺たちは自分たちのように過去の時代での生涯を終えてこの時代に生まれ変わった人間を『転生者』と呼んでいる。いつ誰が初めて転生を成し遂げたのかは分かって無いし、そもそも転生者については未だに謎だらけだ。」
「だが、そんな状況ではあるが転生者が複数人存在してることが把握できている現在では転生者について少しずつだが分かった事も出て来つつある。今からそれをリストアップしてやる。」
幸雄はそう言うとチョークを手に取り、黒板にその内容を書き始めた。
転生者の特徴
・生前の記憶は全て覚えている上に、自我もそのまま引き継いでる。
・だから生前持っていた技能や特技はそのまま使える。
・生前が如何なる人物だったかで個人の資質が変わってくる。
・戦闘能力は本人の鍛錬次第だが、少なくとも一般人よりは戦闘力がある。(個人差あり)
・一般人とはほとんど違いを持たないが、気配で見分けることができるらしい。
「・・・まぁリストアップできるのはこんな所かねえ。」
幸雄はチョークを置いてふぅと息をつきながら呟いた。
「つまり志郎くんたち転生者は『見た目は子供、頭脳は大人』をそのまんま経験してるって事でええんかな?」
黒板に書かれた転生者の特徴を見た希は体が縮んだ某高校生探偵と似た様なものなのかもしれないという結論を出した。
「ん~・・・。まあ間違ってないが色んな方面からお叱りを受けそうな例え方だな。」
希の言葉を聞いた志郎は思わず苦笑いしてしまった。
「あの、1つ気になった事があるんですが聞いてもいいですか?」
今度は花陽が何か気になる事があるのかおずおずと手を上げた。
「おう、どうした花陽。」
「あの、3つ目と4つ目に出てくる資質とか戦闘能力って一体何でしょうか・・・?」
「確かにそこは非常に気になりますね。まるであなた達が戦いに携わっていたかのように感じられるんですが・・・。」
花陽に続いて海未も疑問を志郎たちに向けて述べた。
「おっと、それに関しちゃ1つリストアップするのを忘れた項目があったな。」
幸雄はそう言うともう1つ黒板に転生者の特徴を書き足した。そこに記されていたのは―――
・転生者の前世は基本的におよそ400~500年前の人物に限られている。
―――というものであった。
「400年から500年前ですって?いつの時代よ?」
「だいたい1500~1600年頃ですから戦国時代になりますね・・・。」
「つまり志郎と幸雄は戦国時代の人がこの時代に生まれ変わったってこと!?」
「その通り!俺たちは秩序なき日本の戦国乱世を駆け抜けた群雄の1人なのさ!!」
絵里の言葉に対し、幸雄は自信満々な様子で答えた。
「転生者はどういう理由かは分からないが現在戦国時代と称されている時代に生きた武将たちがそのほとんどを占めているんだ。」
「じゃあ、志郎くんと幸雄くんも昔は戦国武将だったって事かにゃ!?」
凛が戸惑いながら志郎にそうたずねると、志郎は無言でそう頷いた。
「なるほどね、だったら書かれてる特徴の中に戦闘能力とかいう文字が見えてもおかしくないわね。」
「その通り、俺たちの資質は前世によって大きく左右されている。例えば策謀に長けた者がこの時代に転生すれば頭の回転に優れた人物になる可能性が高く、武勇に長けた者であれば優れた運動神経を持つ人物になる可能性が高くなるというわけだ。」
「とはいっても俺たち転生者にもいろいろ個性があるからな。中には今さっき志郎が触れたもの以外の才能を持つ奴だっていることもある。あと例外的にそこまで武勇に長けてない癖にこの時代に生まれ変わってから鍛錬しまくって志郎と互角の戦闘力を手に入れた野郎がいるのも確かな話さ。」
志郎と幸雄は3つ目と4つ目にある転生者の資質と戦闘能力について、政康の話を例に挙げて説明した。
「つまり志郎の身体能力が優れているのも、志郎の前世が武勇に長けた武将であったから、という事になるのでしょうか?」
「まあそうなるな。だがあくまでも志郎の身体能力が優れているのはこいつがこの時代で積んだ鍛錬と、『諏訪部志郎』という人間として生まれ持った肉体があるからこそだっていうのを忘れてやるなよ?」
幸雄が海未に説明した通り、志郎が高校生男子としてはあまりにも飛びぬけている身体能力を持っているのは転生者としての資質だけでなく、彼が生まれ持った肉体と、この時代で積んだ鍛錬の結晶である事は事実であった。幸雄はこの時代で彼と合流してからまだ半年程度しか経っていないにもかかわらずそれを見抜いていた。
「じゃあゆっきーくんはどんな特技を持ってるん?」
希が幸雄にたずねると、
「俺が備えてる資質といえば知略と、ありとあらゆるものを見通すこの炯眼くらいかね。」
と幸雄は左手で自分の頭を指差し、さらに右手の親指と人差し指で丸を作って右目の前に掲げて自分の持つ資質をアピールした。
「確かに幸雄は結構頭の回転が早いものね。やっぱり前世でも相当な策士だったのかしら?」
「自分で言うのもアレだがそんな風に考えてくれれば十分よ。」
絵里の言葉に幸雄は満更でもなさそうなドヤ顔をしていた。
「さて、ここまで長々と前置きの説明をしてきたところでいよいよお前らが待ち望んでいたショータイムの始まりだ!」
「遂に俺たちの前世での名、つまり正体を明かす時が来たと言うわけだな。」
『!!』
幸雄と志郎の言葉に海未たちは息を呑む。
「正体をバラすと言ってもそれで何かが大きく変わるわけじゃないからそこまで緊張しなくても大丈夫だぞ?」
志郎は緊張した面持ちの海未たちに対してそう言うものの、
「確かに大きな変化はないかもしれないけど、それでもやっぱりここまで話を聞いたら色々緊張しちゃうのよね。」
「絵里ちゃんの言う通りだにゃ。」
「一緒に過ごしてきた仲間が実は教科書に出てくるような歴史上の人物本人だったなんて聞いちゃったらびっくりするよね・・・。」
絵里と凛と花陽は志郎たちが転生者だったという事実にまだ慣れていない様子であった。
「いきなり慣れろって言うこと自体無理があんのよ。」
「そう言えば真姫は幸雄から先に話を聞いてんのよね。2人の正体はどんな奴なのよ?」
「どうって言われても・・・、さっき幸雄が他人を介して正体明かすのはナシって言ってたじゃない。」
「うっ・・・。」
「でもそうね・・・。幸雄に関しては歴史に詳しくないからよく分かんないってところかしら。志郎の正体は本人から聞いてのお楽しみですって。」
幸雄から先に正体を明かされていたという事で真姫はにこから志郎たちの正体がどんな人物であったかをたずねたが、曖昧な表現でごまかした。
「じゃあ、皆さんそろそろ雑談はストップしてくれ~。これから俺たちの真名開帳タイムが始まるんだからな。」
幸雄は手を叩いてこの場にいたメンバーの注目を集める。
「これから明かすのは、俺たちが天命を果たしその命を全うした身でありながらこの時代に新たな命、新たな身体、そして新たな名を与えられ転生してなおこの魂に刻まれた名である。」
志郎が正体を明かす前の前置きを厳かに語ると、海未たちは当然のことながら、幸雄でさえも居住まいを正して傾聴していた。
「そしてそれこそが、
(何ですかこの厳かな気配は・・・!?まさか志郎はこれを17年間誰にも見せずに生きて来たというのですか・・・!?)
(これが志郎くんの本来の姿ってわけやね・・・。)
(ハラショー、なんて厳かなの・・・。)
(志郎くんが話してるのをただ聞いてるだけなのに緊張するにゃ・・・!)
(さっきの幸雄の豹変っぷりもそうだけど、志郎の威圧感もとんでもないわね・・・。)
(ビビってんじゃないわよにこ・・・!いくら元戦国武将っつっても相手は私より1つ年下なのよ・・・!)
(ピャァア・・・!ちょっと怖いかも・・・。)
志郎から放たれる厳かな雰囲気を前に海未たちは額に冷や汗を浮かばせ、息を呑んだ。
「我が魂に刻まれた名は真田安房守昌幸!武田信玄公・勝頼公二代に仕えた武田二十四将が一将にして、信州真田家の当主である!!」
「我が魂に刻まれた名は勝頼・・・、甲斐源氏を祖とした甲斐武田家20代にして最後の当主にして諏訪大社大祝の血を受け継ぎし武田信玄が四男!武田四郎勝頼である!!」
遂にここに、2人の若き虎の真の名が明かされた。
いかがでしたでしょうか?
遂に志郎たちの正体がμ'sに明かされました。もちろん穂乃果ちゃんやことりちゃんにも後々に教える予定です。正体を明かした志郎たちを前に、海未たちは一体何を想い何を語るのか――――
ようやく複数あるこの物語の山場の1つに決着がつきそうです。次回からの展開からも目を離さず温かく見守っていただけると幸いです。
それでは次回もまたお楽しみください!