1ヶ月ぶりの更新です!
それではどうぞお楽しみください!!
「武田勝頼と真田昌幸・・・。それが志郎と幸雄の正体なのですね。」
「ああ。」
「そーいうこったな。」
海未が志郎と幸雄に確認するようにたずねると2人は迷う事なく頷いた。
『・・・。』
保健室が重苦しい空気に満ちて沈黙した。今まで苦難を共にしてきた仲間たちが普通の人間ではない上に、過去の時代に生きた人間であると明かされては、流石のμ'sのメンバーもどのような反応をとればいいのか当然分かるはずないのだから。
「ねえ、少し聞いてもいいかな?」
「どうした凛?」
「質問か?何でも聞いてくれや。」
沈黙を破ったのは凛だった。何か聞きたいことがあるそうで、志郎と幸雄が彼女に自分たちに向ける質問を問うように促すと凛はこう言った。
「武田勝頼と真田昌幸って、誰?」
『ぐはっ!!!!』
「ちょっ!志郎、幸雄!?大丈夫!?」
凛が志郎と幸雄に向けてそう言い放ってからの数秒にわたる沈黙の後、志郎と幸雄が突然吐血をするような素振りでへたり込むのを見て絵里が2人に駆け寄った。
「い、いや~・・・。予想の範囲内とはいえ、実際に言われるとなかなかショックなもんだな・・・。」
「ああ、そういうものは気にしないと思っていたが意外と堪えるなこれは・・・。」
志郎と幸雄は乾いた笑いを浮かべながら震え声でそう言った。
「え?どういう事?凛なんか悪いことしちゃったかにゃ?」
凛は2人の様子を見て慌てるも、
「いやいや、凛は悪くねえよ。」
「むしろこの場合悪いのは俺たちだ。俺たちの名が後世に広く伝わって無いのは俺たちの生き様や功績がその程度に過ぎなかったのだからな・・・。」
「これが知名度の差ってヤツか・・・。」
志郎と幸雄は自嘲的に笑いながら凛を慰めた。
「武田勝頼の方は教科書に載ってるじゃない。」
「誰だっけ?」
「織田信長に長篠の戦いで敗れた人よ。この前の日本史の授業で習ったじゃない。」
「ぐほぁッッ!!」
今度は志郎が悶え始めた。
「ヴェエ!?ど、どうしたっていうのよ!?」
これには真姫もどういうことなのか分からず動揺を隠せないようだ。
「うん・・・。確かにそれは真実なのだが・・・。それを言われるとまるで俺が『長篠で信長に負けたザコキャラか中ボス』みたいな感じがして・・・うっ。」
「ちょっと西木野さ~ん!志郎の事泣かすのやめなさいよ~!!それ志郎にとっちゃ地雷ワードなんだからな!」
「そ、そんな事言われたってどうすりゃいいのよ!!」
と、少しの間志郎と幸雄と真姫による茶番のようなものが繰り広げられていた。
「武田勝頼については教科書に載ってるから何となくわかったけど、真田昌幸は知らないわね・・・。」
「確かに教科書にも名前載っとらんしね。」
「真田昌幸というのは大坂夏の陣で徳川家康の本陣に突撃したことで名を遺し、戦国最後の英雄と謳われる真田幸村の父親の名前ですね。」
『へぇ~。』
昌幸が何者なのか分からずに首を傾げていた絵里たちに海未が解説すると、彼女以外のメンバーが海未の博識ぶりに驚いていた。
「流石は海未ってところだが、そいつは少し違うな。」
「え!?そうなんですか?」
幸雄が脇から補足を入れると海未は上ずった声を上げた。
「そもそも『真田幸村』なんて男は実在しないのさ。幸村っつーのは後世に書かれた講談で付けられた名前がそのまま広まったものでな。俺の次男の本当の名は信繁だ。信玄公の弟君である信繁公のような立派な
「初めて知りました・・・。」
「まあ、源次郎の本当の名はここ数年で研究が進んでようやく明らかになったからな。歴史に詳しいわけでもない奴が知らんのも無理ねえ話さ。」
訂正こそすれど怒りも嘲りもせず。そこには普段の幸雄からは感じられない大人っぽさを、海未たちは感じていた。
「なんか、大人っぽいですね・・・。」
「そりゃそーよ。俺はただでさえ64年も生きた上にさらに17年も上乗せしてるんだから大人っぽいのは当然のことよ!」
「老成してる、とも言えるぞ。俺たちは中身の年齢だけならじいさんと呼ばれても仕方ない年齢なんだよな。」
それに対し幸雄はドヤ顔で、志郎は苦笑しながらそう言った。
「そう言えば、さっき志郎さんが言っていた『自分の名前こそがμ'sのサポートに携わる理由の答え』って一体どういう事なんでしょうか?」
花陽が何気なく問いかけたその言葉を受けて志郎と幸雄の表情が張り詰めた。
「そうね、確かにそれが一番気になるわね。」
絵里もその言葉に同意して頷く。
「さて志郎、ここからはお前の時間だ。包み隠さずあいつらに話してやれ。」
幸雄は志郎にそう言うと、彼の肩をまるで背中を押すように優しく叩いた。
「ああ、そうだな。これを語らねば、俺がどうしてここでμ'sの為に力を振るうのか、それを説明することができないからな。」
志郎はそう言うとベッドから降り立った。
「志郎・・・!」
「大丈夫だ海未、もう十分休んだ。」
心配そうに声を上げる海未に対して志郎は笑って彼女を制止する。
「さて、さっきも言ったが俺がμ'sのサポートに尽力する理由は俺の名にある。だが、それは文字通りの意味ではなく、『武田勝頼という存在であった』という所に理由がある事を示している。」
「それってつまり、『武田勝頼』として送った生涯に理由があるって事なのかしら?」
「いかにも。寧ろその生涯こそが俺を突き動かす原動力であったと言っても過言ではない。だが、お前たちは俺がどのような生涯を送ったのかを知らない。」
「ええ、そうね。だから私たちはあなたが『諏訪部志郎』として生まれ変わるまでに、どんな道を歩んできたのかを知りたいの。」
志郎と絵里、かつてぶつかり合った2人が問答を繰り返す。
「ああ。俺はそれを教えるために今ここに立っている。なぜ元々この学校に縁もゆかりもないのに廃校問題に真剣に向き合ったのか、スクールアイドル『μ's』のサポートに尽力したのか、そして今や崩壊寸前となったμ'sになぜそこまで執着心を抱くのか。その全ては俺の・・・、武田勝頼の生涯にあるのだ。」
『・・・。』
「だからこそこの場で全てを話そう。武田勝頼が如何なる人間であったか、どのような生涯を送って来たのかを・・・。」
志郎は一呼吸おいてから厳かに、海未たちにそう言い放った。
―――俺は天文15年、西暦にして1546年にこの世に生を享けた。
その一節の言葉を始まりの言葉として、志郎は『武田勝頼』として歩んだ自らの生涯を語り始めた。
父である信玄と母の諏訪御料人の婚儀が周りから望まれたものではなく、山本勘助の知恵を借り重臣たちを言いくるめてようやく認められたもので、父と母の間に愛があったのかどうかは分らなかったこと、そして幼いうちに母に先立たれたこと。
17歳で元服するも、兄たちとは違って武田家の通字である『信』の字ではなく、母の実家の諏訪家の通字である『頼』の字を与えられ、『諏訪勝頼』と名乗るように命じられたこと。
しかも実際に継いだのは母の実家である諏訪大社の大祝を務めた諏訪本家ではなく、かつて高遠を支配していた分家の高遠諏訪家であったこと。
諏訪においては武田の子だと眉を顰められ、また武田においても諏訪家の血を引くが故に武田を滅ぼすために生まれ変わった諏訪大明神の化身だという噂を立てられ、肩身の狭い身の上であったこと。
それでも武田のために戦うと誓い、初陣からずっと手柄を立てるために無茶と言える突撃を繰り返した。勝頼はいつか武田の先陣として戦うことを夢見ていたこと。
長兄の義信が信玄への謀反の罪で幽閉され、そして非業の死を迎えたことで勝頼自身が家督を継ぐように言われたこと。
父の元で『武田勝頼』として帝王学を学ぶも、父が急逝したこと。
そしてその場で勝頼が言い渡されたのは『お前は陣代であり当主にあらず。息子の信勝の元服と共に隠居せよ』という非情な宣告を受け、父からは最後まで武田の子として認めてもらえなかったことを実感させられたこと。
父の死後は自分が武田の当主であることを家中に認めてもらうために信長や家康を相手に果敢に戦いを挑み、勝利を挙げ続けたこと。
それでも勝頼を認めていたのは側近や、四名臣といった僅かな者しかいなかったこと。
それに焦りを感じ、長篠で信長と家康に決戦を挑み大敗を喫して多くの家臣を失ったこと。
それからは武田の立て直しに尽力し、北条との同盟を強化して新しく妻を娶ったこと、そして彼女と過ごした日々が短くも温かいものであったこと。
上杉の跡目争いに北条氏政からの要請で介入するも、財政難だったために上杉景勝からの金銭工作を受けて兵を退き、そのせいで北条との同盟が破れたこと。
関東で氏政と死闘を繰り広げ、北条家を追い詰める一方で徳川との戦いが徐々に不利になり、遂に遠江における重要拠点である高天神城を見殺しにするような形で失ってしまったこと。
そして度重なる戦いで領内が消耗し、それを理由に一門や譜代の家臣が次々と離反してそれを突かれる形で織田、徳川、北条の総攻撃を喰らい、滅亡したこと――――
志郎は37年に及ぶ自らの生涯を、まるで寝物語を子供に聞かせる親のように海未たちに言い聞かせた。いつもは騒がしいにこや凛も、この時ばかりは静かに、そして真剣な表情で聞き入っていた。
彼の生涯を見て来た幸雄は途中までは沈黙を貫いていたが、最後の方には周りから見えないように肩を揺らして小さく嗚咽を漏らしていたのが志郎には見えた。もちろん、話を聞いていたμ'sのメンバーの大半も彼と同じように肩を震わせていたのも。
「―――そして俺は桂が自ら喉に突き立てた短刀を用いて自害し、俺の『武田勝頼』としての生涯は終わりを告げたのだ。」
『・・・。』
志郎は自らの自害の様子を語り話の幕を閉じた。保健室の中には重苦しい沈黙が広がっている。
それもそのはず、何せ語られたのは普通の人が戦国武将と言われて連想するような心が躍るような英雄譚でも、予測できない展開にハラハラさせられる権謀術数の渦巻く政争や謀略劇でもなく、37年にわたってただ1人の将が血と土地の呪縛に囚われ、父の影を追い続け、報われることのない人生をひた走ったまさに悲劇そのものといえるものだったのだから・・・。
「・・・花陽。なぜ泣く?」
志郎は肩を震わせ、嗚咽する花陽に問いかける。
志郎には彼女が涙を流す理由が分からなかった。彼からしてみれば、『自分は生まれながらにして大名たる資格が無かったのにもかかわらず、運命のいたずらでお鉢が回って来たから頑張ってみたものの、全てが裏目に出て全てを失った。自分の生涯は最後まで周りに翻弄された茶番のようなものであった』という形で語っただけだった。簡単に言えば『あの頃の俺はバカだった』と若者に話す老人のような心境だったのだ。
だがそれなのに花陽は、話し終わる頃には涙を流していた。
「何故だ。何故涙を流す?分からない、俺はただの道化だ。武田と諏訪という2つの血の呪われた宿業に囚われ、甲斐という閉塞した土地からも出る事ができず、追いつくことのできない父の影を追い続けた挙句の果てに武田家を滅ぼした男だぞ?そんな男の生涯に呆れ、嘲笑う場面こそあれど涙を流すような要素があるとは到底思えん。それなのに何故・・・。」
志郎は困惑していた。彼女たちにとっては全く縁もゆかりもない話で涙を流す感性が理解できなかった。理解できない故に志郎はどの様な言葉をかければいいのかが全く分からず、ただ問いかけることしかできなかった。
「なんでって・・・。だって、辛いじゃないですか・・・!志郎さん・・・いいえ、勝頼さんは勝頼さんなりに一生懸命戦って、一生懸命生きたのに、それなのに、その頑張りが認められなかったどころかその終わりが信頼していた人に裏切られて、奥さんと息子さんも亡くして、すべて失うなんてやりきれないじゃないですか!悔しいじゃないですか・・・。」
「花陽、お前・・・。」
花陽が涙を流しながら勝頼の生涯の果てに対する心情を吐き出すさまを見て志郎は言葉が出なかった。
「お前は心の底から武田勝頼という男の生涯とその末路に対して真摯に向き合い、その上で涙を流しているのか。縁もゆかりもない他人、しかも自分より遥かかこの時代に生きた男に対して・・・。」
「志郎、お前が自分を無能だとこき下ろす気持ちは分からなくもねえ。実際のところ、お前さんは信玄公の負債を背負っていたという擁護できる点があるとしてもカバーしきれないくらいの大ポカをやらかしちまった事もそれなりにある。」
幸雄は志郎の肩に手を置きながら諭すように語り掛ける。
「だがな、それでもお前さんは最期まで諦めることなく自分にできる事をこなして戦い抜いた。確かに武田崩れ(甲州征伐の別称)じゃ一門や譜代の者たちはほとんどお前さんから離れていったが、それでも弟である盛信どのや、側近だった釣閑斎どのや勝資どの、遠ざけられながらも馳せ参じた小宮山内膳どのや鬼神の如き武勇を見せた土屋惣蔵といった最期まで勝頼さまに尽くした面々がいるのもまた事実。何故彼らが滅びの道を歩むあなたに最期まで付き従ったのか、お分かりか?」
「・・・。」
幸雄の問いに対し、勝頼は何も答えなかった。
「それは勝頼さまが、如何なる苦境に立とうとも諦めることなく真正面からそれに向き合って戦い抜き、その姿に心を打たれたからだ。志郎、お前は自分に人望が無いと言っていたがそれは間違いだ。確かにお前さんには信玄公や穂乃果のような数多の人間を惹きつけるような絶対的なカリスマは無いが、それでもお前さんには見ている人の心を揺さぶるひたむきさがあったんだ。」
「確かに、幸雄の言う通り志郎は何事にも真剣でした。」
「ええ、ほとんど交流の無かった私に対しても真摯に向き合ってくれたしね。」
「あたしが志郎に協力するって言ったのもあんたの死に物狂いで踊る姿に魅せられたからだってさっきも言ったでしょ。」
穂乃果やことり、そして幸雄と共にμ's結成当時から彼が彼女達の為に奔走する姿を見て来た海未や、やらなければならない事とやりたい事の板挟みに苦しんでいたところを彼女に対する敬意に満ちた志郎の温かい言葉に心を救われた絵里、そして真っ向から志郎とぶつかり合うことでその想いと覚悟、そして夢に対する執念の強さを知ったにこの、志郎の強く頼もしい姿を間近で見た3人が幸雄の言葉に頷いた。
「そして今も変わらねえお前さんの真っ直ぐな姿に心を打たれている奴が既にここに集まっている。勝頼さまの37年の生涯は決して無為なものじゃなかったんだ。だからもうちっと胸を張れ!お前は誰よりも強くて優しい男なんだからよ。」
幸雄はそう言って志郎の胸を軽く小突いた。
「幸雄、みんな・・・。ありがとう。」
志郎は幸雄や海未たちに頭を下げた。
「なあに、礼には及ばねえさ。なあみんな?」
『ええ(うん)!』
志郎の礼に対し、幸雄たちは笑顔でそれに応える。
「花陽もありがとうな。お前のおかげで色々と心が楽になった気がするよ。」
志郎はそう言って花陽の頭を撫でる。その顔はまるで子を慈しむ父親のような安らかな表情をしていた。
「は、はい!えへへ・・・。」
花陽もまた志郎に頭を撫でられると照れ臭そうに、そしてどこか嬉しそうに微笑みを浮かべていた。
「みんなでいい雰囲気になってるところ悪いんだけど、結局志郎が私たちをサポートするようになった理由が分からないままじゃない。」
『あ。』
「あって・・・。私が言うのもなんだけどみんな忘れてたの?」
「真姫ちゃんだって人の事言えないにゃ。」
「うるさいわね。」
話を本題に戻そうとした真姫に対して凛がツッコミを入れると真姫はバツが悪そうな顔をしていた。
「確かにそうやね。志郎くん・・・ううん、勝頼さんの一生に答えがあるって言っても結局よく分からんじまいやったし。」
希も真姫の言葉に同意すると他のメンバーたちもそれに同意するように頷く。
「だってよ志郎。お前さんの口からはっきりと伝えるべきだぜ。」
「ああ。」
志郎は幸雄の言葉に応えると、呼吸を整える。
「俺がお前たちのサポートに尽力した理由は、この学校やお前たちに対して武田家や、かつての俺である武田勝頼の姿を重ねていたからなんだ。」
「私たちに勝頼さんの姿を、ですか?」
「ああ。とは言っても全員ってわけじゃなくてあくまでも一部の、俺がかつての自分と似ていると感じたものを持っているメンバーに対して重ねていただけなんだがな。」
「それっていったい誰なんですか?」
「にこ、真姫、絵里、そして穂乃果の4人だ。」
海未の問いに対して志郎は、今までの出来事を思い返しながら4人の名前を挙げた。
「私たちのどこに勝頼さんと似ているところを見出したの?」
「・・・まずにこには、孤立したり行く先に道が見えなくなっても諦めることなく意地を貫く姿に、そして真姫には生まれついての身分とそこから着いて来る義務とやりたい事の狭間で心のうちで葛藤している姿にかつての俺の一側面を見出したのだ。」
絵里が問いかけると志郎はまずにこと真姫について語った。志郎は、にこの諦めの悪さと意地を貫き続ける心の強さにかつての自分の心意気を、そして真姫が誰にも見せなかった葛藤に自分の出自を呪ったかつての自分の姿を重ねていたと言う。
「絵里は次第に状況が悪化している中、誰にも頼る事ができずに1人で全てを背負おうとしていたその姿にかつての自分の生き様を見た。正直な話、あのままでは絵里が俺と似たような末路に向かってしまうのではないかと思って凄くひやひやしたものだ。」
志郎が絵里に見たものは生き様であった。
武田勝頼はその出自故に心の底から信頼し、頼る事ができる者が少なかった。故に彼もまた状況が次第に悪化していく中でも誰にも救いを求める事ができずにほとんど1人で斜陽の武田家を支えざるを得なかった。
そんな経験を持つ志郎だからこそ絵里の孤軍奮闘する様に敬意を感じ、彼女の想いに真摯に向き合う事ができたのだった。
「志郎があの時私に話してくれたのは他でもないあなた自身の、勝頼さんだった頃の話だったのね。」
「ああ、そうなるな・・・。」
絵里の言葉に志郎は顔を赤くしながら頷く。
(今になって思い出してみると、あの時すごく恥ずかしい事してたよな・・・。)
「そう言えば志郎さん、真姫ちゃんの家で真姫ちゃんと似ていた人の話をしてたけどそれってもしかして・・・。」
花陽が絵里の言葉を聞いてかつてμ'sに入る前に真姫の生徒手帳を彼女の家に届けた時に志郎が真姫に語った話を思い出すと、
「・・・。」
志郎はそれに対しても顔を赤くして頷いた。
「志郎くんはどうして顔を後ろに向けてるにゃ?」
「言ってやるな凛。人には誰しも自分の行いを悔いる時があるのさ。」
志郎が何故顔を赤くしてるのか分からない凛に対して幸雄は軽く笑いをこらえながら諭すようにそう言った。
「とにかく!話を戻すぞ。最後に穂乃果についてだが、あいつに関しては若い頃の・・・、長篠に敗れるまでの俺の姿を重ねていたのだ。」
志郎はなんとか話しの軌道を戻し、穂乃果について語り始めた。
「若かった頃の勝頼さんの姿を・・・ですか?」
「そうだ、あいつは若かった頃の俺に似ている。猪突猛進で、これと決めたことに対して止まることなく突き進もうとするところなんかが特にそうだった・・・。」
「確かに、勝頼さまの若い頃も穂乃果みたいにガンガン前に出まくってたからねえ・・・。仮にも大名の息子が初陣の城攻めで先陣に立って敵将と一騎討ちした挙句にそいつを討ち取るなんてよっぽどだぜ?」
志郎の言葉に対して幸雄が補足を入れる。実際史実においても武田勝頼は若い頃に、無茶だと言える戦績を数多く上げている。
初陣の箕輪城攻めをはじめ、滝山城攻めでの師岡山城守との一騎討ち、小田原攻めの
「昔の志郎くんって結構アグレッシブだったんやね・・・。」
「初陣で敵将の首を上げるなんて凄まじいですね・・・。」
「ちなみにそれをやったのは数え年で18歳の頃だったな。」
『18歳で!!?』
志郎のアグレッシブすぎる戦績に希と海未が驚愕しているところにさらにその当時の年齢を教えたらメンバー全員が大声で驚いた。
「ほ、穂乃果ちゃんと同じくらい・・・。というかそれよりもアグレッシブだよぉ・・・。」
「今の志郎からは考えられないわね。」
「まあ、志郎の今の性格は長篠に敗れて色んな意味で成長したことの証のようなもんだからなぁ。」
幸雄は若干引き気味の真姫に対して志郎の性格についてフォローを入れた。
「とにかく、俺はあいつの性格に危うさを感じていた。いずれ俺と同じように大きな挫折を味わうのではないかとな。」
「それに志郎とは違ってあいつは普段は底抜けに明るくてポジティブなだけに、色々溜め込んだり追い詰められたりした時に来る反動がヤバい・・・と志郎は見越していたわけだ。」
「幸雄の言う通りだ。一学期のうちはそれほど危ういと感じることはなかったが、学園祭に向けての練習を始める頃にそれが顕著になっていたのだ。」
「確かに、あの頃の穂乃果はなんて言うか何かに駆り立てられてるような感じがあったわね。」
「学園祭で使う曲を決める時も志郎が反対してたのはそーゆーことだったってわけね?」
「ああ、そうだ。」
真姫とにこの言葉に志郎は頷く。
「それに今だから言えるがあの時はことりが留学について悩んでたみたいなんだが穂乃果はそれに気づいてなかったようだから、それを気づかせようとしたんだが・・・。」
「流石にその場でそれを指摘すると全員に動揺がうつって悪影響を及ぼしかねんと思って志郎を止めたんだが、まさかそれが裏目に出るとは思わなんだわな。俺としたことが判断を誤るとは衰えたもんだ。」
幸雄はその時の事を思い出しながらバツが悪そうな顔をしていた。
「幸雄の判断は間違ってはいなかった。あの時俺が穂乃果を無理やり諫めていたらそれこそ状況が悪化していたのかもしなかったのだからな。」
「とにかく、志郎たちが私たちの為に水面下でいろいろ頑張ってくれてたってのはよく分かったわ。」
「ええ、そして志郎が私たちに協力してくれている理由も分かりました。」
にこと海未の言葉に他のメンバーたちも頷いている。
「であれば、海未たちも俺たちに協力してくれるのか!?」
志郎は食い気味に海未に問いかける。
「ええ、志郎が私たちの事をそこまで強く想ってくださっているのならそれに報いるのが私たちにできる事ですからね。私も喜んで協力させてもらいます!」
海未は志郎の手を握って力強くそう言った。
「そう言えば幸雄がμ'sに協力してるのかまだ聞いてなかったわね。」
「俺か?俺は志郎の親友として、そして臣下として乗らない手は無いと思ったからさ。ま、それは建前でμ'sについてけば色々と面白い事が体験できそうだと思っただけなんだがね。」
真姫の問いかけに対して幸雄は笑いながら答える。
「そう。それはともかくとして私も協力するわ志郎。私がμ'sに入る道を示してくれた恩はきっちり返さなくちゃね。」
「え~、聞いておきながらそれはともかくってちょっと悲しいぜ真姫~。」
幸雄は自分の発言を軽く流されたことに対して猫なで声でツッコんだがそれもまたスルーされていた。
「もちろんうちも協力させてもらうで。絵里ちはどうする?」
海未と真姫に続いて協力を申し出た希は絵里に対してどうするかたずねるが、
「・・・。」
絵里は何か思いつめたような表情で口をつぐんでいた。
「・・・えりち?」
そんな絵里の様子を見て希は心配するように声を掛ける。
「・・・私は反対よ。」
『え?』
思いもよらない絵里の言葉にその場にいた彼女以外の8人が驚いた。
「悪いけど、私は
「なに・・・!?」
「おいおいマジか・・・。」
μ's復活のために奔走する志郎と幸雄の前に最も意外な伏兵、絢瀬絵里が立ち塞がる。果たして志郎たちはμ'sの復活を成し遂げられるのだろうか―――
いかがでしたでしょうか?
ここ最近スランプ気味でなかなか筆が進まなかったのですが、何とか少しずつ書き進めて更新することができました!
自分の過去、そしてそこに秘められた自分の真意を話し海未たちに協力を求める志郎の前にまさかの絵里が立ち塞がった!彼女は一体何を想って志郎たちの前に立ち塞がったのか?次回を乞うご期待!!
感想評価よろしくお願いします!!
それでは次回もまたお楽しみください!!