更新がだいぶ遅れましたが、またこうして何とか最新話を投稿することができました。
それではどうぞお楽しみください!!
「協力することができないって、どういうことだ・・・!?」
志郎は突然の事態に困惑していた。
「言った通りよ。私は今の志郎には協力できない・・・それだけよ。」
絵里はμ'sに入る前のような冷たい声で志郎にそう言い下す。
「分からん・・・。いったいどういう事なんだ!?絵里はこのままでいいって言うのか!?」
「そうやでえりち。理由があるなら言ってくれた方がええよ。」
志郎は納得できない様子で絵里に詰め寄り、希はそんな志郎を片手で遮って制しつつ絵里を諭すように彼女に理由を話すように言った。
「理由・・・。そうね、希の言う通り理由も言わずに一方的に言うだけじゃズルいものね。」
絵里は希の言葉にも一理あるといった様子で軽くため息をつく。
「いや~、さすがの俺さまも絵里が反対するとはこれっぽっちも思ってなかったからびっくりしちまったぜ。んで、志郎に協力できない理由とやらを出来るだけ簡潔に教えてくれるとこっちとしてもありがたいんだよね。」
幸雄がいつもの調子に戻って絵里に問いかける。常にいくつもの手を考えて策を練る幸雄でも、今回の絵里の行動は予想外だったようで、絵里に投げかけた問いには言葉通りの意味だけでなく、どうして絵里がその考えに至ったのかに対する純粋な興味もあった。
「ええ、この際だから包み隠さず言わせてもらうわ。それは・・・。」
『・・・!』
絵里の言葉に志郎たちが息を呑む。果たして彼女の口から何が語られるのか、その場にいた誰もがそれに関心を示していた。
「まず1つ目は、志郎が無茶をしすぎてることね。」
「うっ。」
「志郎の何事にも一生懸命なところはとても素敵なところだと思うわ。でも穂乃果が1つの事に熱中しすぎて周りが見えなくなるように、志郎はその想いが強くなりすぎるあまりに無茶をしすぎるのが良くないと思うわ。ただでさえ今日それで倒れてるんだから、これ以上何かをやらせたら取り返しのつかないことになる時が来ると私は考えてるの。」
絵里は何事にも熱心に取り組む志郎の情熱を、長所にもなるし短所にもなると分析してみせた。そしてそれがいずれ志郎を破滅させてしまうのではないかという危惧を志郎たちに伝えた。
「思った以上に志郎の分析が正確すぎて結構ビビるわ・・・。で、反論はあるかね志郎?」
絵里の分析に驚嘆した幸雄は志郎に冗談交じりに反論を促してみるも、
「ここまではっきり的確に言われると反論のはの字もできないな・・・。」
と志郎自身はお手上げな様子であった。
「そしてもう1つは、これがあなたの『本当にやりたいこと』なのか確証が持てないってところかしらね。」
「志郎くんの・・・。」
「本当にやりたいこと?」
「・・・。」
絵里の言葉の意図が読めないのか希と海未は首を傾げた。朝に志郎の本音を聞いた幸雄は何も言わず黙っていた。
「何言ってんのよ?本当にやりたい事じゃなかったら志郎があそこまで本気出すわけないじゃない。」
志郎と激闘を繰り広げたにこが絵里の言葉に反論する。仲間がいなくなっても再びスクールアイドルとして羽ばたく時を志して2年間彼女以外誰もいないアイドル研究部を守り抜いて来たにこの言葉の重みは尋常でないほどの重みを帯びていた。
「それともあんたは志郎の想いが嘘だって言いたいわけ?」
「そうじゃないわ、私は志郎を否定したいわけじゃないの。ただこれが本当に志郎が望んでやっていることなのかが知りたいだけなの。」
詰め寄るにこに対して彼女の目を真っ直ぐ見据えながら絵里は毅然と語る。
「なるほど、そういう事だったのか。」
絵里の意図を知った志郎はそう短く呟くと、絵里の側に歩み寄った。絵里もまた志郎の方を向き、志郎と絵里は真正面から対峙する形で互いの目を見つめ合う。
そこには言い知れぬ威圧感があった。何が始まるというわけではないにしても、まるで合戦が始まる前の睨み合いのような、静かな緊張感が保健室に満ちていた。
「ねえ志郎、私がμ'sに入る前に話していたことって覚えてるかしら?」
「え?あぁ、覚えてはいるがなぜ今その話が出てくるんだ?」
志郎は絵里が突然、かつて様々な気持ちに押しつぶされそうになった彼女を慰め、その固く閉ざした心を解きほぐした時のことを話題にあげてきたことに戸惑った。
「あの時あなたは私に『やりたいと思うならやってみればいい』って言ってくれたわよね。何も成し遂げられなかった私に志郎は『もう独りで抱え込まなくっていい』言ってくれた・・・。あなたはそうやって私の心を救ってくれたの。」
「絵里と志郎の間にそのような事があったのですね。」
「だがよぉ、それは俺たちへの協力を拒む理由としちゃああまり筋が通ってないように見えるぜ?」
「ええ、確かに根拠としちゃ弱いかもしれないわね・・・。」
絵里は幸雄の言葉に対してそう言って頷くが、
「でもだからこそ私は今の志郎に協力できないの!ここで志郎を止めなかったら、いつの日か志郎が頑張りすぎて壊れちゃう時が来るかもしれないって思っちゃうから・・・。だから私は敢えてこうやって志郎の前に立つの。」
と、幸雄と志郎に対して自分の想いを吐露した。
「私の心を救ってくれたから、『やりたいことをやればいい』って背中を押してくれたから・・・。そんなあなたが使命感に駆られて、誰かのために無茶をして壊れそうになるのを見てるのは嫌なのよ!!」
「絵里・・・。」
志郎は彼女の言葉で、自分の在り方が誰かに不安を抱かせているという事実を改めて思い知らされた。μ'sに心置きなく活動してもらうべくサポートするべきはずの自分がメンバーに不安を抱かせているという矛盾に志郎は思わず戸惑った。
「一つだけ聞かせて志郎。これは本当にあなたが心の底からやりたいと思っていることなの?それとも『やらなくてはいけない事』だからやってるの?」
「・・・。」
絵里は1つの質問を志郎に突き付けた。志郎はその質問の重さを理解しているが故に言葉を発することができなかった。
「もし、これが志郎の本当にやりたい事だって分かれば私はあなたを止めないわ。でも、そうじゃなければ私はどんな手を使ってでもあなたを止めるわ。」
絵里は志郎の目を真っ直ぐ見据えて志郎に宣告した。
―――参ったな、あの目は本気だ。答え方次第じゃ完全に絵里とは決裂してしまう。この計画は穂乃果とことり以外の7人全員の協力が無ければ2人の説得という次の段階に進めない・・・。
志郎は思い悩んでいた。まさか自分が絵里の心を開くために彼女にはなった言葉が何十倍もの重みを伴って帰って来るとは思いもしていなかったからだ。
―――これも因果応報か。自分が発する言葉の重み、発した言葉がどれだけ人に影響を与えるかを考えもせず、
志郎は心の中で自嘲する。人の心を救った果てに得たものが自分に立ちはだかる壁とはあまりにも皮肉な話だと彼は心の中で苦笑する。
―――否。だからこそ答えねばならない、彼女に誠意を見せねばならない。俺はただ使命感に、武田勝頼としての贖罪に引きずられているのではなく、諏訪部志郎として抱く思いがあるのだと。
志郎は覚悟を決めた。その表情に、迷いは微塵もなかった。
「正直なところ、俺が穂乃果たちを・・・μ'sをサポートしようと思ったのはあいつらやこの学校に武田家や俺の影を重ねて『俺たちと同じ末路を辿らせてはいけない』と言う使命感を抱いたからだというのは否定しない。」
『・・・。』
志郎が自らの想いを語るのを、絵里たちは静かに聞いていた。
「ぶっちゃけてしまえば二学期に入って、学園祭の準備を進めてる間も・・・。いや、むしろ今もその使命感は消えることなく俺の心の中に根付いてると言ってもいいだろうな。」
「・・・。」
絵里の表情が次第に険しくなっていく。志郎の使命感から来る無茶な行動を止めようとしている彼女の心中を想えばそうなるのも当然だと言える。
「おい志郎・・・!」
幸雄は諫めるように志郎に声を掛ける。志郎のため、そしてμ'sのために策を練っていた幸雄はここで絵里の協力を得られなければ計画が頓挫することになる事を十二分に理解していたので、絵里の心証を害するようなことは言うなと言外にほのめかしていた。
「こればかりはどうしても誤魔化すことはできん。俺がμ'sと共に歩んできた道はその使命感が無ければ紡ぐことはできなかったものであると同時に、これから先にお前たちと共に行く道を紡ぐためにも必要なものなんだ。」
「なるほど。志郎くんにとってうちらと一緒に進んできた道と、志郎くんの心の底にある使命感は表裏一体で切り分けて考えられるものじゃないって事なんやね?」
希が確認するようにたずねると志郎は無言で頷く。
「そう、なら話は終わりね。志郎が『やらなくてはならない』って言う想いで行動してる以上、私はあなたに協力することはできないわ。」
絵里は冷淡にそう言って保健室から去ろうとした。だが―――
「だが、今の俺は使命感に引きずられているわけじゃあない。
志郎が静かに言い放ったその言葉に絵里はぴたりと足を止める。
「確かにきっかけも、原動力も俺も使命感から来てるものだというのは事実だし、否定する気もない。俺にとってこの使命感はμ'sのサポーターとしての俺と言う存在を証明するアイデンティティと言えるようなものだからな。」
「それは結局あなたが使命感に縛られているという事になるんじゃないのかしら。」
志郎はそう問いかける絵里の言葉に対し、静かに首を横に振ると再び口を開いた。
「確かにそうかもしれないな。でも、俺はお前たちと共に歩んでいくことで使命感ではない想いを、前に進むための原動力を手に入れたんだ。」
「その原動力って言うのは何かしら。」
「それは・・・夢だ。」
『夢?』
志郎が出した言葉に、その場にいた幸雄以外の7人が首を傾げた。
「俺は武田勝頼として生きた37年と、諏訪部志郎として生きて来た17年、合わせて54年にわたる年月の中で俺は
「夢を抱いたことが無い・・・ですって?」
「おいおい、じゃあお前さんの信玄公を超えるっていうアレは一体何だったってんだよ?」
志郎の言葉に絵里と幸雄が驚く。しかも勝頼だった頃の志郎を知っている幸雄はかつて彼が抱いていた父を超えるという志が夢ではないことを今になって初めて知り、大いに戸惑っていた。
「あれは夢ではない。俺は父上が遺した武田家を・・・父上を神格化しているお前たちをまとめるためには父上を凌駕するほどの実力を持つ大将になる必要があった。そんな使命感から俺は父超えを目指していたのだ。」
「そう、だったのか・・・。俺は勝頼さまのお心さえ見通せてなかったというわけか・・・。」
「そう言うな幸雄、かつてのお前は父上と比べるのではなくありのままの俺を見て俺に仕えてくれた数少ない男だ。それだけで俺は十分嬉しく思っている。」
理解していたと思っていた勝頼の心情が実は全く違っていたという事実に対して項垂れる幸雄を、志郎はかつて自分を色眼鏡で見ることなく真摯に仕えてくれたことを挙げて彼を慰めた。
「志郎・・・いや、勝頼さま・・・。有り難きお言葉、かたじけのうございます。」
幸雄はそんな志郎に対して声を震わせながら、真田昌幸として志郎に礼を言った。
「さて、話を戻そうか。54年にわたって夢を抱いたことのない俺だったが、穂乃果たちと出会い、μ'sのサポーターとして共に歩んでいくにつれて少しずつ俺の胸に
志郎は穂乃果たちと出会い、彼女たちのサポートを買って出てμ'sと共に歩んできた日々を思い出しながら、言葉を紡いでいく。
「ああ、初めはこれが俺の抱いた夢だという自覚はなかった。だが、俺はこの学校を廃校から救うという偉業を成し遂げ喜びに満ちたお前たちの顔を見て、自分の願望・・・夢を初めて自覚できた。」
「それで、お前さんの夢とは一体何なんだ?」
幸雄が志郎に問いかけると、志郎は一瞬口をつぐみ息を整える。そのわずかな沈黙の後に彼は幸雄や絵里たちを真っ直ぐに見据えるように目を見開き、告げた――――
「俺の夢・・・。それはこれからもお前たちμ'sと共に歩み、お前たちがμ'sとして何を成し遂げるのか、その果てには何があるのか・・・。お前たちの夢の行く末をこの目で確かめ、そして『夢を成し遂げる』とはどういうことなのかを、この身を以て
志郎の夢、それはμ'sの軌跡を見守る事。そしてそこから夢を成し遂げるとは如何なることなのかをその目で確かめることだった。
かつて志郎は音ノ木坂学院の廃校が撤回され、歓喜に沸く穂乃果たちを見て眩しいと感じた。それは彼が志半ばで倒れたことと、54年にわたる二つの人生の中で彼女たちが語るような『夢』を一度も抱いたことが無かった事から来る衝撃を表したものだった。
そして、夢の1つを成し遂げた彼女たちの姿を目に焼き付けた志郎の胸中には新たな願望、夢の種が芽吹いていた。
―――もっと穂乃果たちμ'sの歩みをこの目に刻みたい。あいつらが歩んだ道の果てには一体何が待っているのだろうか?それを俺は何としてでも確かめたい。夢とは、それを成し遂げた先には何があるのかを!!
ことりの留学発覚、それに伴う穂乃果のμ's脱退からの活動休止、そして穂乃果との仲違いといった心に影を落とす出来事が連続していたことで志郎はその夢を忘れかけていた。だが、父晴彦や政康の激励により志郎は自分自身がやるべき事、そして自分の胸に芽生えた夢を思い出し、それを成し遂げるために再び動き出したのだ。
「それが、志郎の『やりたいこと』なの?」
「ああ。お前たちという存在に依存しなければならない情けないものではあるが、これがれっきとした俺の『やりたいこと』だ。」
志郎は照れ臭そうに笑いながら絵里に語った。
「人というのは自分の夢のために全力を注ぐのだろう?だからこそ俺はお前達の為だけではなく、自分自身の夢を叶えるためにこの命、この魂を燃やすのだ。それこそが俺がお前たちと共に歩むために必要な事であり、そしてお前たちの夢を追う事ができるという喜びの発露でもあるんだ。」
「志郎・・・。」
「情けない夢だと笑われてもいい、傲慢な夢だと
志郎はそう叫ぶように言うと、救いを求め神に縋るかのように絵里の手を握った。
「えっちょっ、志郎!?」
絵里は突然志郎に手を握られたことで顔を赤らめながら戸惑うも、軽く咳払いして気分を落ち着かせ、
「あなたにも夢があるのは分かったわ。でも、ことりは留学するって自分の意思で決めたのよ。それを覆すのはとても難しいし、不可能かもしれない。もし私が協力してもそうでなくってもあなたの夢はここで終わってしまうかもしれないのよ?それでもあなたは前に進み続けるって言うの?」
と、諭すように志郎に問いかけた。志郎はその絵里の言葉に対して一瞬沈黙するも、
「ああ、確かにμ'sの復活はできないかもしれん。だがそれでも俺は穂乃果とことりの絆を再び繋ぎ止めたい。俺の夢がかなわずともあいつらが喧嘩別れにさえならなければそれでもいいと思ってる。それに元はと言えば俺がこうして動き出した本来の目的がそれだったのだが、幸雄に焚きつけられてμ's復活などという大言壮語を掲げてしまったのだがな。」
と、笑顔を浮かべながらそう答えた。
絵里は志郎が笑顔で語った言葉を聞いて子抜けしたような表情をしていたが、志郎の言葉が終わると軽くため息をついた。
「はぁ、分かったわ。そこまで言うなら協力するわ。」
絵里がそう言うと、
「本当か!?ありがとう、ありがとう・・・!」
と志郎は泣きながら絵里の手を握って礼を言った。
「もう、泣かないでよ子どもじゃないんだから。」
絵里は苦笑いしながら志郎の背中をさすった。
―――あの時とは正反対ね。あの時は泣きじゃくる私を志郎が優しく抱きしめてくれたけど、まさかその逆をやる時が来るとはね。
絵里は志郎の背中をさすりながらμ'sに入る前の出来事を思い返していた。
「まったく志郎ってば涙もろすぎじゃない?あたしとの時だって泣いてたんだからねこいつ。」
「それだけ志郎くんの情が深いってことやん。」
「希の言う通りですね。」
それを見てにこと希と海未が微笑ましそうに話していた。
「とにかく、協力するのはいいけどその代わり2つ私たちと約束してちょうだい。」
「ん?分かった、何でも言ってくれ。」
「まず今日みたいな無茶は絶対しないでちょうだい。そして何事もとまではいわないけど、1人で抱え込まないでみんなに相談して欲しいの。」
絵里は指を2つ立てて真剣な面持ちで志郎に約束の内容を伝えた。それを受けて志郎は少し戸惑ったような表情を見せたが、
「分かった。できるだけ守れるように努力しよう。」
と頷いた。
「ふぅ、何とか一件落着だな。それで海未、希、真姫。お前たちはどうするんだ?」
『え?』
志郎と絵里の話も無事に終わり和やかな雰囲気になってたところに、いきなり幸雄に話を振られた海未と希と真姫は驚きの声を上げる。
「どうするって何がよ?」
「決まってんだろ?志郎に協力するかどうかさ。この計画は穂乃果とことりを除いた7人全員の同意が無けりゃ次に進まねえんだ。今のところどうするか決めてねえのはお前ら3人だけだ。もちろん強制する気はねえし、するもしないもお前たちの自由さ。」
「もしうちらがしないって言ったらどうするん?」
「そりゃもう手詰まりだろ・・・と言いたいところだがそん時はそん時でまた別の策を練るさ。もっともことりの出立は明後日だから悠長にしてる暇はねえんだがな。」
希の問いに対して幸雄はケラケラと笑いながら答え、
「で、どうする?」
そして垂れ目の三白眼で3人を見つめて問いかけた。その表情にはさっきのおどけた様子は微塵もなく、その眼光には策士・真田昌幸を思い起こさせるような気迫に満ちていた。
「もちろん、うちは最初っから協力するつもりやったで。カードもそう告げとったしな!」
希はタロットカードを幸雄に見せながらいたずらっぽい笑顔で言った。彼女が幸雄に差し出したカードはさかさまに向けられた死神であった。逆位置の死神のカードを示す暗示には『新しいスタート』、『起死回生』といったものがある。
「へえ、さかさまの死神か・・・。縁起がいいねえ。海未はどうだ?」
幸雄はそのカードを見て不敵に笑い、海未に問いかける。
「穂乃果とことりがこうなってしまったのには私の責任もあります。結果がどうなるかは分かりませんが、あの二人の幼馴染みとして、そしてμ'sのメンバーとして、私にも協力させてください!!」
海未はバラバラになってしまった幼馴染みの絆を取り戻すという意志を掲げて幸雄に宣言した。
「残るは真姫だけだな。で、どうする?」
「私は・・・。」
真姫は一瞬言葉に詰まるが、
「私はことりの留学を止める事ができるとは思ってないわ。でも・・・、でも!もし本当に9人で、μ'sとしてまた歌って踊る事ができる、そんな可能性があるとしたらほんのちっぽけなものでもいい!私はそれに縋りたい!!」
と、自分の想いを赤裸々に幸雄にぶちまけ、
「だから、何をするかは知らないけど、成功させなきゃ許さないわよ!」
と2人に向けていつもの勝ち気な表情でそう言った。
「みんな・・・。本当にありがとう!!」
志郎は再び声を震わせて幸雄たちに頭を下げる。
「頭を上げてください志郎、私たちは仲間なんですから。」
「そうそう海未の言う通り!こういう時こそ仲間ってのは大切なのよ!まさに『人は城、人は石垣』ってな!!」
「ああ、そうだな。」
海未と幸雄の言葉に頷き、志郎は顔を上げた。
「よし!!7人の協力が得られたって事でようやく次の段階に進めるな!」
「そう言えばこれから志郎くんたちは何をするのかにゃ?」
幸雄がガッツポーズをしているのをよそに、凛が首を傾げていた。
「おお、それについて話さなきゃだったな。」
凛の言葉を聞いて幸雄はハッとしたような顔でそう言ってから、彼女たちに計画の大まかな筋を教え始めた。
「次のターゲットは穂乃果だ。今奴はスクールアイドルを辞めて凡人に戻っておる。それをどうにかしてスクールアイドルへの道に引き戻す必要があるのだ。」
「それって結構難しいんじゃないかしら?」
絵里が幸雄の策に難色を示すも、
「ふふふ、それに関しては既に調略を進めておるから安心せい。」
幸雄は不敵な笑みを浮かべてそう答えた。何か対策があるようだ。
「そして、俺はそれと並行する形で穂乃果に謝りに行く。いや、行かねばならないのだ。俺はあの日穂乃果に心無い言葉を浴びせ傷つけてしまった。それがこの状況を引き起こした元凶でもある・・・。」
志郎は穂乃果がスクールアイドルを辞めるといったあの日、それを止めようとして彼女を傷つけてしまったことを、そしてその時の穂乃果の涙に濡れた怒りの顔を思い出し、それを悔やみながら言葉を紡ぐ。
「だからこそ俺は穂乃果に謝りたい!!この状況を生んだけじめではなく、1人の人間として、彼女の心に傷を付けてしまったことを詫びて、償いたいのだ・・・!」
そう語る志郎のは拳は血がにじむほど強く握られていた。
「熱くなってるところに水を差すのは申し訳ないが今日は止めてくれよ志郎。」
「何故だ!?」
文字通り水を差すように幸雄にたしなめられた志郎は納得いかない様子で幸雄に詰め寄る。
「お前さっき絵里と『無茶はしない』って約束したばっかりだろ。お前さっきまでぶっ倒れてたこと忘れたのか?それと時間的にも今からあいつんちに長話しに行くのは褒められたもんじゃないだろ。」
「うっ。」
幸雄の非の打ち所のない反論に志郎はぐうの音も出なかった。事実、時計は17時に差し掛かっており、そろそろ下校の時間が迫っていた。
「だから志郎、穂乃果に謝りに行くのは明日の夕方にしとけ。明日の放課後には俺の調略も実を結んでるだろうしな。」
「ことりの方はどうするのですか?」
次に声をあげたのは海未だった。確かにこの一見の中心人物であることりをどうするかでこの後のμ'sの成り行きが決まるのだから彼女をどうするかという意見が上がるのは当然のことだった。
「ことりは当日俺がどうにかする。」
『当日!?』
幸雄の言葉を聞いた志郎以外のメンバーは驚きの声をあげた。
「当日って、ことりちゃんが出発する前ですよね!?」
「それでどうやって説得すんのよ!?」
「この俺を誰だと思っておる。戦国の世に名を残した有数の智将、真田安房守昌幸ご本人だぞ?ことりを説得するための手札などとうに揃っておるわい!」
幸雄は自分に詰め寄るにこや花陽、そして表情に焦りの色を浮かべているメンバーに対してまるで『大船に乗ったような気分で任せてくれ』と言わんばかりに堂々と大見得を切ってみせた。
「そんなわけでお前さんらは明後日のライブの準備を進めてくれ。」
「ちょっと!!明後日はにこたちがライブする予定だったんですけど!?」
本来ことりの出発の日に凛と花陽との3人でライブをする予定だったにこが納得いかないといった様子で幸雄に詰めかかった。
「そのライブを『μ's復活ライブ』にするんだよ!!にこもそっちのほうがいいだろ!?」
「ま、まあそうなんだけどね・・・。分かったわよ!でも、もしことりの説得が失敗したらわかってんでしょうね?」
にこが幸雄を睨みながらそう言うと、
「その時の責任は俺と幸雄が全て負う。だから頼む。」
と言って志郎が幸雄と共に頭を下げた。
「ふん、やるからにはしっかりしなさいよね。」
にこは突き放すような態度でそう言ったが、言葉尻にはまるで2人を激励するような態度がこもっていた。
「さて、じゃあそんなわけで明日はお前ら7人はライブに向けて動いてくれ!」
『うん(ええ)!!』
海未たち7人は志郎の言葉に揃って頷いた。
「じゃあ本日は解散!志郎はさっさと帰って明日のためにゆっくり休めよ!」
保健室からぞろぞろと志郎たちが出て行く中、幸雄はそう言って志郎を見送ると、
「ああ海未!絵里!!少し話がある。」
と海未と絵里を引き留めた。
「まず海未なんだがお前さんにちょいと策を授けたいんだがいいか?」
「え、ええ。倫理にもとるようなものでなければ構いませんが・・・。」
「なに、そんなもんじゃねえよ。策って言うのはな・・・。」
幸雄は海未の言葉に苦笑いした後、彼女に耳打ちで何かを伝えた。
「本当にそれだけでいいんですか?」
幸雄の策を聞いた海未は訝し気に幸雄にたずねる。
「ああ、その後の事はお前さんに任せる。お前さんは穂乃果の幼馴染みだから適任だと思うんだが・・・。」
「まあ、断る気はありませんよ。ただ聞いてみたかっただけです。」
「おう、じゃあな。頼んだぜ。」
「はい。」
幸雄と海未が何らかの密約を交わし、幸雄が彼女を見送ると、絵里の方を向いて彼女に語りかけた。
「さて・・・。」
「私には何の用があるのかしら?」
「・・・お前さんに話がある。出来れば二人っきりでしたい話がな。」
幸雄のいつもより低い声色と垂れ目の三白眼から発せられる鋭い眼光に、絵里は自分の表情が自然と引き締まっていくのを感じた。
夕陽が差し込む廊下に、幸雄と絵里は静かにたたずむ。
いかがでしたでしょうか?
何とか絵里ちゃんの協力が得られたと思ったら今度は幸雄が絵里ちゃんと二者面談!?どうなるμ's復活計画!!そして穂乃果ちゃんはいつ再登場するのか!?次回こうご期待!!(そして感想求む!!)
あとこれからの活動について活動報告を投稿するつもりですので読んでくださると幸いです。
それでは次回もまたお楽しみください!!