ラブライブ! 若虎と女神たちの物語   作:截流

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どうも、截流です!

2019年初投稿にしておよそ3か月半ぶりの投稿です!


それではどうぞお楽しみください!!


59話 若虎と太陽

穂乃果と絵里の話が終わり、絵里が変えるのと入れ違いになる形で穂乃果の家にやってきた志郎は、雪穂に案内されて穂乃果の部屋にやって来た。

 

「いらっしゃい志郎くん、今お茶淹れるから座ってて。」

 

「ああ。」

 

 穂乃果の言葉に頷きながら志郎はゆっくりと腰を下ろした。

 

 

『・・・。』

 

 

 穂乃果の部屋が沈黙に包まれる。聞こえるのは穂乃果が淹れるお茶の音と、外から聞こえる夕暮れ時に鳴く烏の鳴き声やたまに通る車のエンジン音くらいで、志郎と穂乃果は無言であった。それもそのはず、志郎と穂乃果は彼女がスクールアイドルを辞めると宣言した後の言い争いから今日まで――部屋に入って挨拶するまで――のおよそ2週間余りにわたって一度も互いに声を掛ける事なく過ごしてきたのだから、志郎も穂乃果もどうやって話を切り出せばいいのか分からないのも当然であった。

 

「穂乃果!」

 

「志郎くんっ!」

 

『あっ・・・。』

 

 沈黙に耐えきれなくなったのかこのままではいけないと判断したのか志郎が穂乃果に声を掛けると同時に穂乃果も志郎に声を掛け、2人の声が同時に重なった。

 

「あっ、す、すまん・・・。」

 

「こっちこそごめん、志郎くん先いいよ。」

 

「でも・・・。」

 

「志郎くんが先だったから・・・。それに、まだ私言いたい事の整理がついてないから・・・。」

 

「穂乃果・・・。」

 

 穂乃果はあくまでも志郎に先を譲るつもりであると感じた志郎は少し狼狽していたが、穂乃果の目を見て覚悟を決めて深呼吸を一度した。

 

「穂乃果。俺、あの日からずっとお前に言いたい事があったんだ。」

 

「うん。」

 

 志郎の言葉に穂乃果が頷く。2人の脳裏にはあの日の言い争いが過り、穂乃果も志郎も互いに息を呑み込んだ。

 

「すまん穂乃果!!本当に俺が悪かった!!」

 

 志郎が出したのは謝罪の言葉だった。余計な言葉で飾ることなく、ただ純粋に「自分が悪かった」という自分の非を詫びる言葉と同時に土下座をした。

 

「し、志郎くん!?」

 

 穂乃果は驚いた。目の前にいた仲間がいきなり土下座をしたのだから驚くのは無理もない。もちろん止めようとも考えたが、志郎から迸る気迫に気圧されて穂乃果は1ミリも動けず、ただ志郎の謝罪を聞くことに専念するしかなかった。

 

「俺がバカだった!俺はお前が幼馴染みを、ことり達の事を大切に思っていたことは知っていたんだ!!それなのに・・・!それなのに俺はよりによってお前のその心を踏みにじってしまった!!μ'sを想うあまりお前を傷つけてしまった・・・!!」

 

 志郎は床に頭をこすりつけたまま謝罪の言葉を語り続けた。

 

「許してくれとは言わない!俺を恨んだままでも構わん!!俺は・・・、俺は・・・!ぐっ、うぅ・・・!」

 

 次第に志郎の声は震えていき、ついには肩を震わせ嗚咽し始めた。それだけ志郎はあの日の自分の失言を悔いていたのだ。

 

「志郎くん・・・。謝るのは私の方だよ。」

 

「・・・え?」

 

 穂乃果の言葉に志郎は思わず声をあげた。

 

「あの時の私は冷静じゃなかった。ことりちゃんがいなくなっちゃうって事で頭がいっぱいで何も考えられなかったんだ。志郎くんが私達の為に必死に頑張ってくれたのも、μ'sのことをすっごく大切に思ってるのも知ってたのにカッとなってあんな事言っちゃって・・・。ホントにごめん!!」

 

 穂乃果もまた志郎に向けて頭を下げた。

 

「私もずっと後悔してたんだ、志郎くんにひどい事言っちゃったって。でも気まずくって声を掛けられなかった・・・。今日志郎くんが家に来てくれなかったらずっと言い出すことができなかったよ・・・。本当にごめんね、そしてありがとう。」

 

「穂乃果・・・。」

 

「だからもう仲直りしよう、ね?」

 

「穂乃果・・・、すまん・・・!」

 

 穂乃果の提案を聞いた志郎の頬に再び涙が流れた。

 

「それにしてもなんか安心したなぁ。」

 

「何がだ?」

 

 志郎は穂乃果がふとこぼした言葉に首を傾げた。

 

「志郎くんも泣くんだなって。志郎くんは堂々としてて、私たちなんかよりもずっと強い印象があって涙も流さないようなイメージがあったからさ。でも志郎くんが泣いてるのを見て、志郎くんも私たちと同じなんだって安心しちゃったんだ。」

 

 穂乃果は自分が今まで心に思い浮かべていた志郎についての印象を語った。だが志郎はそんな穂乃果の言葉に、首を横に振った。

 

「俺は強くなんかないさ。幸雄やお前たちはそう言ってくれてはいるが、俺は弱い男だ。心も立場も弱い男だったからこそ強くあろうと、雄々しくあろうと振る舞い、ただひたすらがむしゃらに前へ前へと突き進むことしかできなかっただけにすぎないんだ。」

 

 志郎は自嘲するように自らの本音を穂乃果に明かした。だが、そう語る志郎の表情にはどこか安心感に近いものが滲んでいた。

 

「立場?」

 

 そう言って穂乃果が首を傾げると、志郎は忘れたものを思い出したかのように慌て、

 

「そうだ、お前に話したい事があったんだ!」

 

 と言った。

 

「話したい事?」

 

「ああ、お前やことり以外の7人にはもう話したんだがな。俺と幸雄の正体について穂乃果に話しておきたいんだ。これは俺が何故お前たちを支えようとしたのかという理由の根幹でもあるから、しっかり聞いてほしい。」

 

「・・・うん。」

 

 志郎の言葉に、穂乃果は彼の目を真っ直ぐ見ながら頷いた。

 

 

 志郎は穂乃果に、自分が武田勝頼の生まれ変わり――転生者――である事を明かし、武田勝頼として歩んできた生涯と、幸雄もまた自分と同じ転生者であることを語った。穂乃果は基本的に黙って聞いており、口を開くとすれば、所々に質問を挟み、志郎からの答えに頷くぐらいであった。志郎の話を聞く穂乃果の表情はまさに真剣そのものであった。

 

 

「―――とまぁ、これが俺たちの正体ってわけなんだが・・・。」

 

「どうしたの志郎くん?」

 

 志郎の言葉の端切れが悪いのに違和感を覚えた穂乃果は志郎にその理由をたずねた。

 

「いや、なんか少し意外だと思ってな。」

 

「意外?」

 

「ああ。こういう話をして一番大きなリアクションをするのが穂乃果だと思ってたもんだから、思いのほかリアクションが薄いというか、物分かりがいい感じなのに少し拍子抜けしてな。」

 

 志郎が軽く笑いながら答えると、

 

「うん、なんて言うか志郎くんが武田勝頼さんの生まれ変わりだって言った時に、やっぱりそうだったんだって感じがしたんだ。」

 

 と穂乃果は語った。

 

「やっぱり・・・?まさか穂乃果、お前俺が転生者だってこと分かっていたのか!?」

 

「ち、違うよ!?そうじゃなくって・・・。実は私も志郎くんに話したい事があるの・・・!」

 

「話したい事?」

 

「うん。実は私ね、学園祭の前の夜から不思議な夢を見るようになったの。」

 

 今度は穂乃果が志郎に自分がここ数日見続けて来た夢の内容を話し始めた。長篠の戦いを皮切りとした勝頼の後半生と、天目山で迎えた最期、そしてその後に勝頼の魂と対話したことを志郎に語った。

 

「―――それで私が志郎くんの名前を呼んだところで目が覚めたの。」

 

「なるほど・・・。まさか俺の、勝頼の魂がお前の夢に入り込んでたとはな。だがそれにしても何故武田勝頼が俺であると気づいたんだ?」

 

 穂乃果の話を聞いた志郎はなぜ穂乃果がその核心にまで至る事ができたのかを彼女にたずねた。

 

「夢の最後の所でね、勝頼さんが私に『負けるなよ』って言ってくれた時の笑顔が志郎くんとそっくりだったの。」

 

 穂乃果はその時見た勝頼の笑顔を思い出しながら志郎に理由を教えた。

 

「笑顔・・・か。」

 

 志郎は穂乃果の言葉を反芻するように呟いた。

 

「朝起きたら夢の事は忘れちゃってたんだけど、志郎くんの話を聞いたら思い出す事ができて、私の見た夢は夢じゃなかったんだって安心したんだ。」

 

 穂乃果は満面の笑顔を浮かべて志郎にそう言った。

 

「そうか・・・。」

 

「あ、そう言えば幸雄くんも志郎くんと同じ転生者なんだっけ?」

 

 穂乃果は突然話題を幸雄に関するものに変えた。

 

「ああ、真田昌幸と言ってな。俺のかつての家臣の1人だった。」

 

「すごいよね、何百年経った未来でまた会えるなんてさ。なんて言うかすごい絆を感じるよ。」

 

「言うほどの者でもないさ。お前や海未、ことりの3人の絆に比べればな。」

 

「ことりちゃん・・・。」

 

 志郎がことりの名を口にした瞬間、穂乃果の表情が曇った。志郎はそんな穂乃果の表情を見ると意を決したかのように深く息をしてから穂乃果に一言たずねた。

 

「ことりと仲直りしたいか?」

 

「え?」

 

「非常に勝手な話だとは思っているが俺はお前たちに仲直りしてもらいたいと思っている。μ'sの為にもだ。」

 

「でも、ことりちゃんはいなくなっちゃうんだよ?μ'sは9人じゃないとダメだもん。ことりちゃんがいなくなっちゃったらもうμ'sはμ'sじゃなくなっちゃうのに・・・。」

 

 穂乃果はことりと仲直りしても何も変わらないと言いたげに、志郎に語り掛ける。

 

「そうだな。確かにお前たちが仲直りしてもことりの留学は止められんだろう。だが、このまま喧嘩別れになるより、空中分解してしまうよりはいい結末だと思っている(・・・・・・・・・・・)。」

 

「え?」

 

 志郎の口から出た言葉に穂乃果は戸惑いを隠せなかった。どんな苦境を前にしても、穂乃果たちが挫けそうになっても諦めずに前に向かって歩いていた志郎らしからぬ言葉に、疑問を抱かずにはいられなかった。

 

「俺は正直なところこのままことりが留学してμ'sが解散してしまうような事態になったとしても、それはそれでこういう結末もあるのだろうと受け入れることはできた。だが、お前とことりがこのまま喧嘩別れになってしまうのはどうしても止めたいんだ。」

 

「どうして・・・?」

 

「お前たちには俺と同じ道を歩んで欲しくないからさ。」

 

「志郎くんと、同じ道・・・。」

 

 穂乃果の脳裏に、ここ数日に夢で見た勝頼の末路と、そこに至るまでの道筋がよぎった。

 

「俺はこの学校に来た時にこの学校の現状が武田家と重なって見えた。お前たちμ'sのメンバーと出会い、それぞれに俺の影を見た・・・。そして穂乃果自身にかつての、向こう見ずで無鉄砲で、いつも生き急いでいた頃の俺の姿を見たんだ・・・。」

 

 志郎は穂乃果たちと出会った時、そして彼女たちと過ごして行くうちに感じた気持ちを語り始めた。

 

「俺もまた、向こう見ずで無鉄砲で生き急いでて・・・、そして最終的に滅び去った。この学校も、お前たちもいずれは形こそ違えども俺と同じような道を進んでしまうのではないかと思ったんだ・・・!」

 

 言葉を紡いでいくうちに志郎の目から大粒の涙がこぼれ始めた。

 

「同じだ・・・。俺とお前たちは似ていた・・・。お前たち(・・・・)俺なんだ(・・・・)!だからこそ俺はお前たちに『惨めな滅びへの道』を歩ませたくなかった!俺はその一心でここまでやって来たんだ!」

 

 志郎が叫ぶように口にした言葉、これこそがかつて穂乃果にたずねられた「なぜ元々無関係なはずの志郎が音ノ木坂学院の廃校問題に向き合い、μ'sサポートに尽力したのか」という質問の答えだったのだ。

 

「志郎くん・・・。志郎くんはずっとそんな想いを隠して私たちを支えてくれたんだね・・・。ありがとう・・・!」

 

 穂乃果は志郎につられて泣きそうになったが涙を拭い、頭を下げて感謝の言葉を伝えた。

 

「穂乃果、ことりが旅立つのは明日だ。」

 

「え?」

 

「俺にはお前がどういう行動をとるべきか決める権利は無いし、ことりの留学を止められる力も無い。だが、お前の背中を押すことはできると思っている。」

 

「それってどういうこと?」

 

 穂乃果は思わず首を傾げた。

 

「お前とことりに残された時間はあとわずかだ。だからこそお前には後悔してほしくない。」

 

「・・・。」

 

 まっすぐ穂乃果の瞳を見つめ、真剣な表情で語る志郎に気圧されながらも、彼から目を逸らすことなく穂乃果は無言で志郎の言葉に耳を傾ける。

 

「今こそいつものように一歩を踏み出すべきなんだ。後悔しないように、たとえどんな結末が待っていようともな。そうしなければお前の心はかつての俺のように、武田家のように、少しずつ死んでいくだろう。」

 

「でも・・・!でも私は・・・。」

 

 穂乃果は不安そうにそう吐き出す。あの日以来ことりとは一度も言葉を交わしていないが故に抱く、当然の不安であった。今の穂乃果は不安に囚われていた。

 

「もしまたことりちゃんの想いを踏みにじっちゃったら、傷つけるようなことを言っちゃったらって思うと怖いの・・・。」

 

 穂乃果はそう言って涙を流しながら肩を震わせた。

 

「穂乃果・・・。」

 

 志郎は改めて穂乃果があの時ことりと喧嘩をしたことで心を痛めていたことを思い知った。そしてそんな穂乃果に無神経な事を言ってしまった愚かさに対する罪悪感や自己嫌悪が心の奥底から湧き出そうになったが、志郎はそれを振り払うかのように首を振って、穂乃果の双肩に優しく手を置き彼女に激励の言葉をかける。

 

「大丈夫だ穂乃果。傷つく辛さと人を傷つける辛さ、その2つを知ったお前ならもう同じ過ちは犯さないはずだ。」

 

「え・・・?」

 

 志郎の言葉に穂乃果は思わず顔を上げた。かつて見た夢の中で勝頼に言われた言葉にあまりにもそっくりな言葉だったからか志郎の顔と夢に見た勝頼の顔が重なってるように見えたのだ。

 

「安心しろ。こうやって穂乃果と仲直りできた俺が言うんだ、間違いないさ。きっといい方に向かう事をこの俺が保証しよう。」

 

「うん・・・!」

 

 志郎の心強い言葉に勇気づけられた穂乃果は涙を拭って笑顔で頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・。」

 

 志郎は陽が沈んですっかり暗くなった夜道を歩いていた。

 

「何とか穂乃果と仲直りできたな・・・。」

 

 志郎は夜空を仰ぎながら軽く息を吐いて呟いた。実際やり遂げてみると、色々気に病んでいた自分が馬鹿らしくなって来て、軽い笑みがその顔に零れてきた。

 

―――ヴー、ヴー。

 

 そんな時、志郎のポケットの中のスマホが鳴った。画面を開き、誰からの着信かを見てみると画面には幸雄の名が表示されていた。

 

「もしもし。」

 

『よぉ志郎。どうだい首尾は?』

 

 幸雄が軽口交じりに成果をたずねて来た。

 

「ああ、穂乃果とはうまく仲直りできたよ。で、そっちは何の用だ?ただ成果を聞くために掛けてきたわけじゃあないだろう?」

 

『ああ、そうだな。俺も世間話してるほど暇じゃあ無いのさ。明日発動する最後の策(・・・・)の仕込みに向けて忙しいんでね。穂乃果にはお前さんと仲直りして健全な精神状態でいてもらわなくちゃあならないからその確認さ。』

 

「そんな事だろうとは思ってたさ。安心しろ、穂乃果はちゃんと激励してきた。お前に言われた通りに(・・・・・・・・・・)な。」

 

 志郎が幸雄の言葉に応えると、電話越しに幸雄の口笛が聞こえて来た。

 

「・・・やっぱりあの策(・・・・)を発動するのか?」

 

『言われなくてもする予定だが何か問題でも?』

 

「お前の策が成れば必ず成功するのは分かってる。だが本当にそれで・・・、お前に泥をかぶせて(・・・・・・・・・)いいのかって思ってな。」

 

『おいおい、そんなことお前が心配する必要なんかねえって。俺はただこれが一番効果的かつ効率的だからこそそうするだけなんだからよ。お前はドンと構えて俺の報告と、穂乃果とことりが明日のライブに来るのを待ってりゃいいのさ。』

 

 志郎の不安げな言葉に幸雄は自信ありげに返した。

 

「分かった。お前がそう言うのであれば信じよう。」

 

『おう。じゃあ明日は任せるぜ志郎。』

 

「ああ。幸雄こそ、武運を祈る。」

 

 2人が言葉を交わすと通話が切れた。

 

(μ's復活計画もいよいよ大詰めか・・・。)

 

 心の中でそう呟き、夜空を見上げる志郎の瞳には様々な感情が入り混じっていた。

 

 

 

―――ことりが留学に旅立つまで、あと数時間




いかがでしたでしょうか?


ずいぶんと間が開いてしまいましたが、失踪せずに投稿しました!!


いよいよ志郎と幸雄の計画も大詰め、果たして幸雄の策とは!?穂乃果とことりは無事に仲直りできるのか!?そしてμ'sはどうなるのか!!?


それでは次回もまたお楽しみください!!
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