ラブライブ! 若虎と女神たちの物語   作:截流

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 どうも、截流です。

 長々とお待たせしましたがようやく最新話更新です!あと今回の話だけはアンチ・ヘイト要素があるかもしれませんのでその辺ご容赦いただけると幸いです。



 それではどうぞお楽しみください!!


61話 比興者と惰弱者

「どうして幸雄くんがここに・・・!?」

 

 穂乃果がことりを迎えに行くべく学校を飛び出して空港に向かって行くのとほぼ時を同じくして、空港ではことりが本来そこにはいないはずの幸雄と対面していた。

 

「よおことり。せっかくなんだ、ちったぁ話でもしようぜ?」

 

 幸雄はことりの問いに答えることなく、ただいつものようにへらへらと笑いながら彼女に話しかける。

 

「私、今日日本を発つって事以外誰にも言ってないのに・・・」

 

「そうだな、俺もそれ以外な~んにも情報は知らなかったさ。だが、お前さんならこっちに来るだろうなって思ってお前さんが来るよりも早くここに来てちょっと張ってたのさ」

 

「どうして?私がここじゃない方の空港に行ってたかもしれないのに・・・、それに私がもう飛行機に乗ってたかもしれないのにどうして待ってたの!?」

 

 常識を考えればことりの言うように別の空港に行く可能性や既に旅立っている可能性があったというのにこの時間にここにやってくることを確信していたかのように待っていた幸雄の行動が理解できなかったことりは叫ぶように幸雄に問いかけた。

 

「そりゃあ俺だって予想が外れるかもって考えはしたさ。だがな―――」

 

と、幸雄は何事もないかのように彼女の言葉に答えると、手に持っていた何か(・・)を天井に向かって投げ、

 

「所詮人生の選択なんぞ博打に過ぎんよ。当たればよし、当たらなくともそん時ゃそん時さ。だが俺だって適当に選んでるわけじゃあない。いろんな可能性を仮定し、吟味し厳選し、どれが最も正しいか自分に利をもたらすかを考えて選んでる。今日この時だってそうさ」

 

 落ちて来たものを掴み、それをことりに見せながら自分の人生観を語った。

 

「サイコロ・・・?」

 

 幸雄の手に握られていたのは3つのサイコロだった。出目はそれぞれ4、5、6であった。

 

「ふむ、シゴロか。いい目だな、まさにドンピシャでことりと鉢合わせた俺を象徴するかのような出目だ」

 

 幸雄はサイコロの出目を見て楽しそうに呟く。余談だがシゴロとはサイコロ3つを使いその出目で争う賭博、チンチロリンにおいて上から3番目に良い出目であり、出すのはなかなか難しい。

 

「あ、それで幸雄くんはどうしてここに来たの?」

 

 ことりが思い出したように幸雄にここに来た理由をたずねた。

 

「せっかくの門出に誰も見送りに来ないなんて寂しいだろ?そんで俺が見送りに来たってわけよ、個人的に色々話したい事もあるしな」

 

「でも・・・」

 

「なぁに、お前さんが乗る便が出るまで・・・、というか搭乗時間まではまだ余裕あるだろ?」

 

「う、うん。少しだけなら・・・」

 

 ことりの了承を得た幸雄は待ってましたとばかりに語り始めた。

 

「今から俺はお前にとっちゃ非現実的で到底信じられないような事を話す。一応お前以外のメンバー全員に話してあるからその辺は安心して聞いてほしい」

 

「何を話すの?」

 

「俺たちが何者なのか・・・。その正体を、な」

 

 幸雄はニヤリと笑いながらことりにそう言った。

 

 

 

 幸雄は自分と志郎が戦国武将の生まれ変わりである『転生者』で、この時代に生まれ変わる前は真田昌幸と言う戦国武将としてその生涯を全うしたことを簡潔に話した。そして志郎がどうして音ノ木坂学院の廃校問題に穂乃果たちと共に立ち向かったのか、何故μ'sに力を貸したのかという事についても語った。

 

 

 

「―――これがお前たちに明かせる俺たちの全てさ」

 

「そうなんだ・・・。びっくりしちゃった」

 

「まあ、いきなりクラスメートが自分は戦国武将の生まれ変わりだなんて言い出してびっくりしねえ奴なんざいねえわな」

 

「でもどうしてそんな秘密を私に話してくれたの?」

 

「お前さんとはここで最後になりそうだからな」

 

 ことりの素朴な質問に対して幸雄はそれまで彼女と和やかに談笑していた雰囲気から一変、冷徹な声で応えた。

 

「最後?」

 

 幸雄の冷徹な声色とその言葉に反応したことりの顔を見て幸雄は、心の奥底でしめたとほくそ笑むも、表情を変えずにそのまま話を続ける。

 

「ああそうだ。お前さんは俺たちが卒業するくらいまでは戻ってこないんだろう?」

 

「う、うん」

 

 幸雄の意図がいまいち掴めないことりは戸惑いながら頷く。

 

「俺たちだって大学以降の進路は別々になるんだ。なら他の連中ならともかく、今年の春に転入したばっかりのぽっと出の俺たちとなんかあっという間に疎遠になっちまうだろ」

 

「そ、そんな事ないよ!志郎くんも幸雄くんも大事な友達だから疎遠になんて・・・!」

 

 幸雄の言い放った言葉にことりは若干食い気味に反論するも、幸雄はあからさまに大きなため息をついて、

 

「な~るほど、お前さんもあれか。『変わらぬ友情』なーんてものを信じちゃってるクチか」

 

と、呆れと蔑みを混ぜたような表情で皮肉るような口ぶりでそう言った。

 

「それってどういう・・・」

 

 ことりは幸雄の言葉に嫌悪感を感じるも、それを表に出さず幸雄に問いかける。

 

「いやぁ、前々から思っちゃいたがお前さんずいぶんとおめでたい感性をしてるなと思ってな。」

 

「え・・・?」

 

「だってよぉ、いつの世だって人の心ってもんは些細な事で変わっちまうのが真理だってのに、その人の心から生まれる友情が絶対不変のものだって愚直に信じてるなんておめでたい以外の何物でもないだろうがよ!」

 

 幸雄はまるでことりを嘲笑するかのようにそう言い放った。

 

「やめて!何がおかしいの幸雄くん!?」

 

 ことりは幸雄の言葉に耐えかねてそう抗議するが、

 

「んな事言われてもなぁ・・・。現に穂乃果と喧嘩別れしたまんま仲直りすらできてねえ、その不変の友情とやらが現在進行形で崩壊に向けてまっしぐら状態なお前さんに言われてもな~んの説得力も感じねえなぁ。」

 

「っ・・・!」

 

 幸雄は動じるそぶりさえ見せることはなく、ことりが言いくるめられる形になった。それもそのはず、幸雄はことりと同い年ではあるもののそれはあくまでも『武藤幸雄』と言う人物としての話で、彼自身は『真田昌幸』として65年にわたる生涯を全うし、合わせて82年にもなる歳月を生き続けて来たのだ。

 

 17年しか生きていないことりと比べればベテラン中のベテランである幸雄が舌戦で不利になる事はよっぽどの事態がなければありえないだろう。

 

「俺は確かに忠告したはずだぜ、早いうちに打ち明けといた方がいいってな。なのにお前さんは相変わらずうじうじぐだぐだと穂乃果に打ち明けなかったからこうなったんだろうがよ」

 

 先ほどまで嘲笑していたところから一変して、冷徹な表情で幸雄はことりに現実を突きつける。

 

「此度の事で薄々思ってたんだがよぉ・・・、お前ってバカ野郎だよな」

 

「・・・」

 

 幸雄の言葉にことりは反論できずに黙りこくってしまった。

 

「ふん、言い返すこともできねえか。そりゃそうだよな、さっき俺が言ったことは全部事実だもんなぁ!」

 

「・・・」

 

 幸雄はさらに語気を強めてことりを詰るようにそう語っていたが、それでも反論するそぶりを見せないことりに対し幸雄は苛立ちを感じ始めていた。

 

「・・・前言撤回だ。お前は馬鹿野郎ですらない。惰弱なんだお前は!」

 

 幸雄は志郎の前でさえ出したことのないような大声で胸ぐらを掴まんばかりにことりにそう言うその表情は怒りに染まっていた。

 

「μ'sが発足してからずっとお前らを見て来たが、一番気に食わなかったヤツが1人だけいた。それがお前だよ南ことり」

 

「私・・・?」

 

 ことりは戸惑った様子で幸雄の言葉に反応する。彼女自身、普段はお茶らけたような表情や言動をしている幸雄がここまで激しく人に怒りを向ける姿を見るのは初めてだから無理もない話だった。

 

「お前はいつも何かを決める時、自分の意思ではなく他人の意思を尊重していたな」

 

「う、うん」

 

「それはとても素敵な事だろうよ、確かに美徳だと俺も思う。だがそれは自分の意思があって初めて成立するものなんだ。お前には自分の意思というものがいつだって存在していなかった」

 

「そんな事―――」

 

「いいや、その通りだ!現にお前は留学の件だって『穂乃果がどう思うか』とうじうじ思い悩んでいただろう。お前は自分の意思で決定すべき事すら他人の意思に委ねようとしていた!」

 

 ことりは幸雄の言葉に反論しようとするも、幸雄の剣幕と怒気に押し負けてしまった。

 

「お前は自分の意思で動くことのできない臆病者だ!否、むしろ臆病者という言葉さえお前には高尚すぎる!お前は惰弱な人間だ!!俺が最も忌み嫌う存在だ!!」

 

 幸雄はついに我慢できなかったのかことりの胸ぐらを掴み、自分の内面に燻らせていた怒りと憎悪を言葉に乗せて叩き込んだ。そして何度か肩で息をして呼吸を整えると、ことりから手を離しまた語り始めた。

 

「・・・臆病者は決断するまでの過程が長く、決断することを躊躇いこそすれど、必ず己の意思で決断するもんだ!だがお前はどうだ!?お前は今までいつだって『誰々がやりたいなら』って言っていただろう?それこそがお前を惰弱たらしめるものだ!!自分(・・)自我(・・)も持たずいつも人に委ねてばかりのお前が惰弱でなく何だと言うんだ!?」

 

「それは・・・」

 

 ことりは反論できなかった。今までの自分の行動を振り返ってみれば確かに幸雄の言う通り、決断する場面において他のメンバーの意思に阿る所があったのは否定できない事実であったからだ。

 

「そういえばバカ野郎(・・・・)で思い出したが、μ'sにはお前以外にもう1人特大の大バカ野郎がいたなぁ」

 

 幸雄はふと何かを思い出したかのように指をパチンと鳴らすとそれまでの真剣な表情から一変してニヤニヤ笑いながらことりに語りかける。

 

「・・・?」

 

 いきなり幸雄の様子が変わった事にことりはまた戸惑いを隠せない様子だったが、幸雄はそれにはお構いなしといった様子で目を細め、ニヤリと口角を上げてその人物の名を告げる。

 

「穂乃果だよ」

 

「!?」

 

「だってそうだろ?あいつ自分の幼馴染みが分っかりやすく思い悩んでたのにそれに気付きもせず、さらには志郎たちの忠告に耳を傾けず無茶な練習を行って体を壊して学園祭を台無しにし、ラブライブを棄権する羽目になった上に、最終的にはお前と喧嘩した後スクールアイドルを辞めるとほざいた奴がバカ野郎じゃないわけ―――」

 

「それ以上穂乃果ちゃんを悪く言わないで!」

 

 幸雄の言い様に不快感を感じたことりは幸雄に初めて本格的な抵抗の意を示した。

 

「バカ野郎の片割れであるお前に反論する資格なんざねえよ。それにな、お前は知らねえだろうがあいつのせいでμ'sは崩壊したんだぜ?」

 

「えっ!?」

 

 幸雄の言葉に驚愕することりの表情を見た幸雄はわずかにニヤリと笑い心の奥底でしめたと呟き、さらに畳みかけるように語り始める。

 

「お前はしばらく休んでたんだ、知らねえのも無理はない。穂乃果がスクールアイドルを辞めたってほざいた時、海未と喧嘩になってよ。んで志郎も穂乃果に辞めるのを思い留まらせようとしたが失敗、首魁である穂乃果がいなくなった以上活動を続けてても意味がねえって事で俺たちは解散(・・)したのさ」

 

「嘘!だって海未ちゃんはみんなで心の整理をつけるために活動を休止したって・・・」

 

「なんだ海未のやつ、こんな所で妙な気ィ遣いやがって。まぁ幼馴染みに気を遣う気持ちも分からんでもないが、現実はちゃんと伝えるべきだぜ。よく考えても見ろよ、活動休止なんて言ってるがスクールアイドル活動してるのがにこ、凛、花陽の3人だけっつうメンバーの半分にも満たない状態で他の連中は練習にすら参加してねえ、こんなのどっからどう見ても実質解散してるようなもんじゃねえか。違うか?」

 

「それは・・・」

 

 幸雄が流れるように並べ立てた正論を前にことりは反論できなかった。もっとも、この時既にことり以外のメンバーが志郎の説得によりμ's復活の為に結集し動き始めているので幸雄の言っていることは嘘になる。だがそれこそが幸雄の策であった。幸雄は嘘の情報(実際昨日までは彼の言う通りの状態ではあったのである意味では本当ではあるが)を用いてことりの心をかき乱しているのだが、それだけが彼の狙いではない。

 

 そしてことりの様子を見て幸雄は、さらなるダメ押しとして切り札を抜く。

 

「あいつは度し難いバカ野郎だぜ、あの日あいつなんて言ったと思うよ?『私がスクールアイドルさえやって無ければこんな事にはならなかった』だぜ?」

 

「穂乃果ちゃんがそんな事言うわけ・・・」

 

「いや、確かに言った。これが証拠さ」

 

 幸雄はことりに向かってボイスレコーダーを突き出し、録音を再生した。ボイスレコーダーからはあの時の屋上でのやり取りが流れてくる。

 

「・・・!」

 

 録音を聞かされたことりの表情が絶望に染まる。もちろん幸雄の攻勢は止まらない。

 

「俺たちはここまで来るのに色んな奴らを巻き込んできたよな。それなのにあいつは・・・、よりにもよって発起人であるあいつが『こんな結果になるならやらなきゃよかった』なんて言い放ちやがったんだぞ!?あいつは自分だけならともかく、他のメンバーや最初からついて来た海未やお前、志郎の努力さえも否定したんだぞ!!人の努力や夢を散々否定しやがった挙句に今まで積み上げてきたものをいとも簡単に投げ捨てやがった奴がバカ野郎じゃないわけねえだろうが!!」

 

 幸雄は歪な笑顔を浮かべながらことりをまくし立てる。

 

「最初はあいつなら天さえも掴めると信じ、約束を果たすに相応しい(・・・・・・・・・・・)と思ったが故に志郎と共にお前らに付いて来たが、こんな馬鹿馬鹿しく実にくだらない結末で終わるとは思いもしなかった!人を見る目には自信があったが穂乃果がこれほど度し難い大バカ野郎だと見抜くこともできなかったとは俺も衰えたもんだ!!はっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!」

 

 そして幸雄は絶望に打ちひしがれることりを前に、とどめを刺すかのように笑い声をあげ始めた。彼女の想いをすべて否定して打ち砕かんとするように、これでもかと言わんばかりに大仰に呵々大笑する。

 

「俺も志郎もとんだ茶番に付き合わされたもんだ!まったく、貴重な花の高校生活を半年近くも無駄にしちまったんだからな!!ははははははははははははははは!!!」

 

 幸雄の悪趣味で下卑た嘲笑が空港のロビーに響き渡る。その異様な光景を目にした通行人は眉を顰め、ひそひそと同行者とその不快なさまを語ったりしていたが、幸雄にとってはただ見てるだけで自分の行いを咎めも止めもしない凡人の非難の眼差しなど気にも留める価値もなかった。

 

(―――さて、ここまでは俺の計画通り。だいぶ煽りすぎた感もあるがことりめ、どう動く?)

 

 呵々大笑している中で幸雄は脳内で冷静に思考を重ねていた。ことりの心を揺さぶるために露悪的に振る舞い、嘘と真実を巧みに混同させた情報で攪乱し、彼女自身と穂乃果を嘲笑する。ここからことりがどう動くかで全てが決まると幸雄は考えていた一方で、前日に志郎が彼に掛けた言葉が脳裏をよぎった。

 

 

 

―――もし成功したとしてもお前とことりの仲は確実に決裂する事になるぞ!!

 

 

 

 それは幸雄のこれからを案ずる言葉であった。もし仮に彼の策が成り、ことりが留学を取り止めて戻って来たとしてもことりとの間に決して埋まる事のない溝ができてしまうのではないかと、志郎は危惧していた。

 

(どうなろうったって大丈夫さ、俺は比興者なんだからな。今さら誰か一人だろうが九人だろうが嫌われたってどこ吹く風だぜ。お前がいて、果たすべき約束があるかぎりな・・・)

 

 幸雄は心の中でそう呟く。彼の覚悟はとうに決まっていたのだ。故に腹をくくり、策を企てたからには最後までそれを全うする。それこそが武藤幸雄の比興者としての矜持だった。そして彼が大笑しながら様々な思いを馳せていたその時―――

 

 

 

      パシーーーーン

 

 

 

 幸雄の嘲笑をかき消すかのように、乾いた打撃音が響く。

 

「―――え?」

 

 幸雄は突如として響いた打撃音と、自分の頬に突然生じた鈍い痛みに驚愕し、何が起こったのかを確認するために前を見ると、そこには―――

 

 

 

「・・・。」

 

 

 

―――右手を振り抜いた状態て肩で息をしていることりが立っていた。




 いかがでしたでしょうか?

 まさか原作キャラをここまでこき下ろす文を書く日が来るとは思いもしませんでしたね・・・。穂乃果ちゃん推しとことりちゃん推しの皆様にこの場を借りて謝罪させていただきます。

 まぁなかなか書くことが無かった幸雄の内面を書けた貴重な回なので反省はあっても後悔はありません!!あと次回以降でちゃんとフォローはしますので・・・w



 それでは次回もまたお楽しみください!!
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