魔法少女リリカルなのはStrikerS -Another Sankt King- Re:   作:炎狼

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第四話

 聖が機動六課に正式加入となった夜。はやての発案通りちょっとした歓迎会が開催された。参加したのは言い出しっぺであるはやてを含めた彼女の守護騎士達と、なのは、フェイト、そして聖。

 

 話によれば他のスタッフは荷物を運び込んでいる者はいるらしいが、まだ六課の宿舎に入寮している者はいないらしい。とはいえ、本格的に六課の業務が開始されるのは二週間後なので当然なのかもしれないが。

 

 歓迎会では昼間に聖が会えなかったシグナム以外の守護騎士三人の紹介から始まった。なのはを隊長とするスターズ分隊の副隊長、鉄槌の騎士と呼ばれるヴィータ。

 

 管理局の医者であり、六課においてもその役割を担う湖の騎士と呼ばれるシャマル。そして管理局内において特定の役職や階級は持っていないが、はやての使い魔という形で六課に所属している、盾の守護獣ことザフィーラ。

 

 ちなみに、当初聖はザフィーラがしゃべれないものだと思っており、彼が自身の口で自己紹介をした時はギョッとした表情を浮かべていた。実際、そんじょそこらの大型犬以上の体躯を持つ彼がしゃべりだせば普通は驚く。

 

 自己紹介が終わったあとは、はやての音頭で乾杯し、注文したデリバリーの料理をつまみながら談笑を楽しんだ。聖もシグナムと剣術のことについて語りあい、非常に有意義な時間が過ごしていた。

 

 もちろんシグナムとだけ話しただけではなく、親交を深めるため全員と様々なことについて話し合った。そのようなことをしている内に時間はあっという間に過ぎ去り、歓迎会は深夜にまで及んでしまった。

 

 後片付けを済ませた聖達は、割り当てられている宿舎の部屋に分かれた。聖の部屋は隊長、副隊長の部屋がある階の一番端となっている。

 

 ちなみに、隣はなのはとフェイトの部屋らしい。歳の近い男女をこれだけ近くに置くのは大丈夫なのかとはやてに訊ねた所……。

 

『聖くんならそないな間違い起さへんやろー。まぁ起してくれてもええけどなぁ』

 

 と、悪戯っぽい笑みを浮かべられた。とりあえずその場は信用されているからだろうということで飲み込んだが、後々になってなのはとフェイトにも隣の部屋で大丈夫かと問うてみた。

 

『全然平気だよー。聖くんはその辺しっかりしてそうだし心配ないでしょ?』

 

『それにクロノが推薦した人なら私たちも安心できるし、なにより男の人の手が必要な時もあるでしょ?』

 

 といった具合に二人も対して気にはしていない様子だった。二人がそれで良いならばと聖もそれ以上は問わず、素直に自分の割り当てられた部屋へ引っ込んだのであった。

 

 本局から送った私物が配達されるのは明日とのことだったので、現在聖の部屋には元から設置されている大きめのベッドと、窓際に配置されたソファやらテーブルやらがあるだけだ。

 

 というかいくら隊長達が扱う部屋だからといってこんなに広くて良いのだろうか。なのはとフェイトは二人で扱うからいいとしても、聖からすればもう少し手狭でも十分だったのだが……。

 

「……まぁ四の五の考えてもしゃーなしか……」

 

 少量の私服やら音楽プレーヤーやらが入ったバッグをソファに放ると、執務官の制服の上着をハンガーにかけ、ネクタイを取ってからソファに座る。

 

 ソファの後ろにある大きな窓から月が見え、月明かりが差し込んでいる。ソファに身体を沈めながら大きく溜息をつくと、ブレスレットから外れた安綱がふわりと浮き上がる。

 

〈お疲れのようですね〉

 

「まぁ、な。六課に着いて戦力調査やって、シグナムさんと模擬戦やって、最後は歓迎会だったからな」

 

 苦笑しながら答えると、もう一度大きく息をついてから続ける。

 

「ここは本当にいいところだと思う。皆気さくに話しかけてくれるし、なにより優しい。だけど、俺はその優しさに甘えようとしてるばかりか、隠し事をしようとしてるってのがどうにも、な」

 

〈聖様、それは……〉

 

「わかってる。俺たちがやろうとしてることは、アイツ等を利用する形になることだ。その覚悟がないわけじゃないんだ。でも、実際に来てみると、こう心に来るものがあってな」

 

〈お一人で抱え込まないでください。これに関しては私も同罪です。全てを打ち明ける時になったら一緒に謝罪しましょう〉

 

「……ああ」

 

 思いつめた表情を浮かべながら指を顔の前で絡める。先ほどまでの歓迎会や、六課にやってきたばかりの時に見せた表情とは別の雰囲気を纏っている聖。瞳の奥底には自責とも取れる色が見え隠れしている。

 

 どこか許しを請おうとしているようにも見える彼の姿は、酷く儚げで今にも消えてしまいそうだ。

 

 そんな空気を払拭しようと思ったのか、安綱が声を発する。

 

〈はい。落ち込んだり自分を責めるのはそこまでです。それ以上行くと泣きそうなのでやめましょう〉

 

「誰が泣くか。もうガキじゃねぇんだ、そうそう泣いてたまるか」

 

 先ほどまでの重たい空気は消え、聖の表情はいつも浮かべているものに戻り、声にも覇気が戻った。

 

〈その意気です。では、今日もやりますか? 来るべき決戦に向けて備えておかねば〉

 

「ん、ああ。じゃあやるか……」

 

 安綱に言われ、聖はソファから立ち上がると目の前に浮き上がった安綱に右の掌を向ける。すると、彼の足元にベルカ式の魔法陣が展開し、ゆっくりと回転を始める。

 

「形成具合はどんな感じだ?」

 

〈6割方完了と言うべきでしょうか。万全と言うわけではありませんが、使おうと思えば使えるようになっています。私からすれば、これを使うときが来なければ良いのですが〉

 

「お前が俺の身体を案じてくれてるのはわかる。けど奴らと戦闘になるなら、コイツは確実に必要になるはずだ。だから今日もやるぞ」

 

 右手を安綱に向けたまま言うと、彼女も観念するようにコアの部分を一度光らせる。

 

 瞬間、安綱のコア部分から小さな光の球体が飛び出した。だがその球体が煌めいた瞬間、球体が弾けた。

 

 はじけた球体はやがて形を成して行く。その形は小さな人間のようだ。やがて光が掻き消えると、そこには身長約30cm程度の少女がいた。

 

 その姿はまるではやての家族であり、彼女の融合機であるリインフォースⅡのようだ。

 

 身長は小さくともその顔立ちは非常に端正で、頭は綺麗な卵型をしており、頭髪はオレンジっぽい色をしている。やや気の強そうな細めの眉の下には、エメラルドを思わせる碧色の瞳があった。

 

 服装は上半身は白の長袖のコートを思わせるデザインになっており、手首のあたりには金属部分がある。内側には藍色を基調としたインナーを着ている。下半身は白を基準としたミニスカートと、それを覆うように腰の辺りから藍色の腰マントが伸びている。

 

 目の前に現れた少女を見やり、聖は彼女の名を申し訳なさそうに呼んだ。

 

「……窮屈な思いさせて悪いな。『――――』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがデスクワークルーム。ただ、私たちが使うことはあんまりないかもしれないけどね」

 

 やや苦笑気味のなのはが肩を竦める。

 

 六課の正式稼動が二週間後であることをいいことに自室で惰眠を貪っていたところ、隣室のなのはが訪れてきたのが一時間前。現在、聖はなのはに連れられて六課の中を案内されている。

 

「決まったデスクがあるわけじゃないから、空いてる端末を起動して作業してね。ただ、端末を使うときにIDとパスワードが必要になるから、昨日渡された登録証はなくさないようにね」

 

「おう。けど、なんのパスワードなのかと思ったらそういうことだったわけか。他にこの登録証を使う時はあるのか?」

 

「あるとすればこれから案内する保管庫とか、資料室に入るとき時に使ったりするよ。あと、端末から特定のファイルにアクセスする時にも必要になるね。まぁ部屋に入るときは部屋の前に端末があるし、ファイルを開く時は入力画面が表示されるからすぐにわかると思うよ」

 

「ああ。わかった」

 

 聖が答えるとなのはは「それじゃあ次の部屋行くよー」と先導を再開した。

 

 彼女の後に続きながら懐から登録証を取り出す。やや硬めの材質、地球で言うならばプラスチックとアクリルの中間辺りの素材で作られたであろう登録証には、ミッドチルダの文字で聖の名前と年齢の他に出身世界と言った大まかな個人情報が刻まれている。

 

 それらの他に先ほどなのはが言っていたIDとパスワードがあり、裏面を見ると情報を読み取るための磁気ストライプがあるため、特殊な部屋に入るときにかざすかスライドさせるのだろう。

 

「そうだ。なのは、質問良いか?」

 

 先を歩くなのはに声をかけると、彼女は「んー?」と歩みを止めずにこちらを見やった。

 

「六課の隊舎には部隊長室の他に各隊の隊長の私室みたいなのはないのか?」

 

「うーん、一応あるにはあるけど殆ど使わないと思う。私たち前線のメンバーは内勤よりも実動任務が主になってくるから、私室を使う機会が少ないからね。六課がどういう風に構成されているかはわかるよね?」

 

「ああ。前線部隊としてスターズとライトニング、そして俺が組まれてる。んで、はやてが指揮する後方支援の『ロングアーチ』。その他に『バックヤード』がいるんだよな」

 

「そう。ただ、前線に配属される新人達はまだまだ現場経験のない子達。だから、私たち隊長がメインでやるのは新人達の指導かな。もちろん内勤業務もあるときはあるけどね」

 

「なるほどな。……うん? ちょっと待て、隊長がメインでやるのは新人達の指導って言ってたけど、もしかしてそれって俺も含まれてたりしてる?」

 

 自身のことを指差しながら問うと、なのははニコリと笑って頷いた。

 

「やってもらうよー。フェイトちゃんは勿論、シグナムさんやヴィータちゃんだってやってくれるんだから。聖くんだけ例外なんて扱いはないからね」

 

「マジか……。俺、指導なんてできるかわからねぇぞ。今まで指導係なんて勤めたことないし」

 

 若干顔が引きつり気味にいうと、前方からはなんとも軽い感じの笑い声が聞こえた。

 

「そんなに心配しなくても大丈夫だよー。聖くんに全部丸投げはしないし、訓練の時には教導官の私が絶対いるから。指導して欲しい時はあらかじめ言うからそのときだけ準備しておいてくれれば大丈夫」

 

 サムズアップをしながら言ってくるなのはであるが、指導経験などない聖からすればどう教えたものかと今から悩んでしまいそうになる。

 

 そもそも執務官を志したのも、基本的に誰にも縛られずに単独行動で様々な事件を担当できるからであり、後輩たちに技術を説く必要がないと考えていたからだ。まぁ、クロノ隊にいた時点で単独行動はできなかったが。

 

 とはいえクロノ隊にいた時は直属の上司であるクロノから任務を通達されて、単独で現場に出向くことが多かった。そのため実質単独行動をしていたといっても過言ではないだろう。

 

「ちゃんと指導できるか不安?」

 

「少しな。人付き合いが苦手ってわけじゃないんだが、人に教えを説くほど出来た人間でもないからな」

 

「そうかな? でもクロノくんは結構聖くんのことを褒めてたよ。僕の部隊の中でも聖を信頼している隊員は多いって」

 

 それなりの期間彼の下で働いていた身であるが、そのような事実があったとは初耳であった。大方、クロノが調子に乗らせないようにあえて伏せていたのだろうが。

 

「だから自信もっていいと思うよ。意外にも教える才能があるかもしれないし、何事もチャレンジチャレンジ! あっ、でも指導で気をつけて欲しいのが、細かい事で叱ったり怒鳴ったりすることね。それをやってる暇があったら、模擬戦で徹底的に打ちのめしてあげて。そうした方が教えられる側も学ぶことが多いから」

 

「はいよ。まぁその辺は安心してくれ。俺の親父もそういう人でな、剣の稽古の時はひたすら打ちのめされた経験しかなかったけど、怒鳴られたことはない。だから俺も新人達を怒鳴ったりはしないさ」

 

「ならよかった。そうだ、聖くんのこともっと聞かせてくれない? 今言ってたお父さんとの稽古のこととか。昨日の夜はしっかり聞けなかった部分もあったし」

 

「いいぜ。減るもんでもないからな、そんじゃあ何から話すかね……」

 

 聖はなのはに隊舎の中を案内されながら自分が今まで経験した事件のことや、地球の両親のこと、父親との剣の稽古について話した。

 

 昨日会ったばかりの二人であるが、和気藹々とした様子はまるで古くからの友人のようであった。恐らくそれもなのはの柔和な人柄と、聖の竹を割ったような真っ直ぐとした性格があってこそのことだろう。

 

 

 

 

 

 昼過ぎ、六課の案内を終えたなのはは聖と別れて寮の私室へ戻り、個人用端末を操作していた。

 

〈楽しそうですね。マスター〉

 

 傍らに置いていた真紅の宝玉の状態で待機している彼女の愛機『レイジングハート』が声を発した。

 

「そう?」

 

〈ええ。白雲執務官と話している時からずっと頬が緩んでいましたよ〉

 

「アハハ、聖くんとのお話楽しかったからねぇ。色々聞けて勉強にもなったから自然とね」

 

〈ならばよかったです〉

 

 満足げなレイジングハートであるが、なのはは「ただ……」と少しだけ憂うような表情を見せた。

 

「聖くん、たまーに悩んでるような顔になるんだよねぇ。やっぱり指導経験がないから新人達の教育が上手くできるか心配なのかな?」

 

〈何事も初めてなものは不安が付き物です。貴女もそういう経験はあったでしょう?〉

 

「確かにそうだね。いきなり上手くできる人なんていないし、私たちも含めて新人達と一緒に成長できたらいいかな」

 

 よし。と納得した彼女は端末のモニターを複数展開して二週間後から始まる新人達の訓練メニューの準備に取り掛かった。

 

 モニターには所属することになっている四人の新人達の情報と、彼等に応じた訓練メニューが表示されていた。

 

「さぁて、新人達の訓練メニュー、がっちり考えるよー」

 

 

 

 

 

 なのはが自室で訓練メニューを考えているのと同じ時間帯、聖の姿は六課の隊舎の外にあった。

 

 彼の前には隊舎や寮の外壁と比べるとやや暗めの配色がなされた建物があった。それも一つではなく、似たような形状のものが横に連なるようにして四つほど並んでいる。

 

 ここは六課所有の格納庫であり、隊員達の私物や、六課の外部へ行く際に使用する車両などが保管されているらしい。

 

「さすがにでかいな」

 

〈格納庫とは本来そういうものです。ところで聖様、なぜ格納庫に?〉

 

「はやての話じゃ私物も入れといていいって話だったからな。街に出る時の足でも入れて置こうかと思って、その下見にきてるわけ」

 

 聖は視線を海を挟んだ先にある街に移す。六課の近くにはリニアレールのターミナルがあるため、街へ行く際のアクセス自体には困らない。とはいえ、出かける度にリニアレールを使うというのもいささか面倒なので、街へ行く際に使う足としてバイクでも買おうかと考えているのだ。

 

 管理局に入ったばかりの頃にクロノから「ミッドチルダに行った際に免許がないと何かと不便だろう」といわれ、短期でバイクの免許は取得した。だが、その後は殆ど本局勤めだったこともあってか自前のバイクは持っていないのだ。

 

〈しばらく運転もしていませんが、大丈夫ですか?〉

 

 やや訝しげな声音で問うてくる安綱に対し、聖は若干頬を引き攣らせる。

 

 確かに彼女の言うとおりだ。本局勤めが長かったこともあり、免許を取ってからバイクに乗ったのは任務中、他の世界で乗ったときがせいぜいだ。

 

 ペーパードライバーというわけではないが、勘を取り戻すのには少々時間が必要かもしれない。

 

「まぁバイク買って何日か慣らし運転すりゃあ自然と思い出すだろ。問題はどこでバイクを買うかだな……」

 

〈目星すらつけていなかったとは……。職務以外のことに関しては本当に行き当たりばったりですねぇ。お母様が見たらさぞ落ち込まれることでしょう〉

 

「母さんは関係ねぇだろが。ったく……」

 

 相棒にいたいところ突かれややバツが悪そうに猫背になりながら聖は格納庫の横を歩き始める。が、しばらく歩いたところでカランという金属音が足元から聞こえてきた。

 

 視線を移すとそこにはモンキーレンチが転がっていた。先ほどの金属音は聖がレンチを蹴った際に出た音だったのだ。

 

「なんでこんなトコにレンチが?」

 

 疑問に思いつつもレンチを拾い上げる。すると、空いていた格納庫の扉の奥から「おーい」という若い男性の声が聞こえてきた。

 

 さすがに無視することも出来ないので、格納庫の中に一歩足を踏み入れる。格納庫の中には明りが灯っており、中をしっかりと照らしていた。

 

 照らされた格納庫の中は空っぽかと思いきや、聖の前には深い緑色の塗装がなされたヘリが鎮座していた。

 

「これって確か輸送用のヘリ、だっけか?」

 

「JF704式輸送ヘリ。陸で使われるヘリの中じゃ最新モデルだ」

 

 聖の漏らした声に答えるように、先ほどこの中から聞こえた声と同じ声の主が現れた。

 

 緑の作業服の上から黒のジャケットを羽織った男性は、聖よりも若干背が高い。年齢は二十代前半から中盤と言ったところだろうか。

 

 男性は自慢げな表情を浮かべつつ、掌を向けてきたので聖は持っていたレンチを彼に手渡した。

 

「サンキューな。持ってくるときに落としちまったみたいでな」

 

「そうか。ところで、アンタは?」

 

「っと、自己紹介がまだだったな。俺はヴァイス・グランセニック。六課ではヘリパイロットを担当することになってる。階級は陸曹だ。アンタは……っと、コイツは失敬、執務官だったか」

 

 ヴァイスは聖の着ている服に気付いたようで少々バツが悪そうな表情を浮かべた。けれども聖は首を横に振った。

 

「敬語はいいよ。階級が執務官っつっても俺の方がアンタよりも年下だろうし、なにより敬語って苦手でな」

 

「そう言ってもらえると助かるぜ。んじゃ、俺のほうも敬語なしで頼むぜ。で、お前さんの名前は?」

 

「白雲聖だ。階歳は19。よろしくな、ヴァイス」

 

「こちらこそだ、聖」

 

 互いにニッと笑みを浮かべ、軽く握手を交わした。手を離した後、ヴァイスが「ふぅん」と感心したような表情を浮かべる。

 

「なんだよ?」

 

「いや、19で執務官ってぇとフェイトさんと同じなんだなぁって思ってよ。ホントにこの部隊は優秀な奴らが揃ってるみたいで、平凡な俺にゃあ肩身が狭いぜ」

 

 首をすくめながら言うヴァイスであるが、聖は若干呆れたように息をついた。

 

「肩身が狭い、ねぇ。実際アンタが六課に配属されたのだって、実力が高かったからだろ。平凡なんてこたぁないんじゃねーの?」

 

「ハハ、こいつは一本とられた気分だな。ところで、お前さんはなんで格納庫に来たんだ?」

 

「六課の施設把握とか見学とか色々だ。お前は?」

 

「俺はもちろんコイツの整備だ。部隊長から搬入されたって聞いて、いてもたってもいられなくなっちまってよ。バイクですっ飛んで来たってわけだ」

 

 爛々と輝く瞳で目の前のヘリを見るヴァイスであるが、それよりも気になる単語を彼が発したのを聖は聞き逃さなかった。

 

「ちょっと待て、バイクって言ったか?」

 

「ん、ああ。アレだ」

 

 親指を立てて示した方には、赤を基調とした色合いのバイクがあった。外見的にはミッドでもポピュラーなタイプだ。

 

 大きさ的には中型のバイクと同程度で、デザインは地球で言うところのフルカウルバイクが最も近いといえるだろう。

 

「なんだ、バイクに興味あんのか?」

 

「んー、興味っつーか、こっちでの移動手段として欲しくてな。ミッドの免許は一応持ってるんだが、ずっと本局勤めだったからさ。バイクを使うことなんてなかったんだけど、一年間はこっちにいるわけだし、その間ずっとリニアを使うのもどうかと思ったわけよ」

 

「なるほどな、確かに持ってりゃあ色々と便利だぜ。それで、見せのアテとかはあるのかよ」

 

「ネットで色々見て目星はつけてるけど、まだどうにもって感じだなー。とりあえずこの二週間以内には買いたいって思ってる」

 

 空間モニタを呼び出していくつか目星をつけた店をヴァイスに見せると、彼は「ふむ」と口元に手を当てて考える素振りを見せた。

 

 しばらくして彼は「よし、わかった」と頷くと聖に向き直ってこう告げた。

 

「じゃあ俺の行きつけの店を紹介してやるよ」

 

「いいのか?」

 

「おうよ。せっかく同じ部隊にバイク乗りがいるんだ、紹介して損はねぇ。店の場所とHPのURL送ってやっからメールのアドレス教えろよ」

 

「ああ」

 

 聖はヴァイスに指示されたとおりに自身のメールアドレスを彼に教えた。そして一分と経たないうちに彼からメールが送られてくる。

 

 メールを開くと行き着けだというバイク店のHPにつながるURLが貼られていた。

 

「店長には俺から連絡しといてやっから近いうちに行って見ろよ。着いたら俺の紹介で来たって言えば色々教えてくれるはずだぜ」

 

「ああ、わかった。けど、なにからなにまでわるいな」

 

「気にすんな。同じ部隊の男同士仲良くやろうや」

 

 バシバシを背中を叩いてくる彼は気持ちのよさげな笑みを浮かべている。聖もそれにつられながら笑みを零す。

 

「っと、言い忘れてたが、店に行く前に好きなバイクのデザインとか決めとくといいぜ。すんなり買えるからな」

 

「了解だ。それじゃあそろそろ行くわ。まだ見ておきたいところもあるし」

 

「ああ。それじゃあまたな。今度ヘリのテスト飛行にご招待してやるよ」

 

「そん時はメールしてくれ、楽しみにしてるからよ。それじゃあまたな」

 

 軽く腕をあげた聖は格納庫から出て次の施設へと足を向けた。

 

 その歩みはどこか軽やかで時折満足そうな鼻唄を聞こえてくる。そんな主に安綱が声をかける。

 

〈ご機嫌のようですね〉

 

「まぁな。いいとこ紹介してもらってよかったぜ。ヴァイス・グランセニック、アイツとは友達になれそうだ」

 

〈そうですね。ヴァイス様もどこか聖様と似ているところがあるような気がしますし、類は友を呼ぶというやつでしょうか〉

 

「さてな、けどあんまし知り合いのいない六課で、いいヤツにめぐり合えたと思うぜ」

 

 

 

 

 

 聖がいなくなった格納庫ではヴァイスがヘリの整備をしていた。彼もまたどこか満足げで聖と同じように鼻唄を交えながら整備を行っていた。

 

〈ご機嫌ですね〉

 

「そう見えるか。『ストームレイダー』」

 

 彼が呼ぶと、ヘリの操縦席に取り付けられたドッグタグを模したデバイス、『ストームレイダー』が答える。

 

〈はい。白雲執務官との会話の後から気分が明るくなっているようです〉

 

「まぁ歳も結構近かったしなぁ。それに嫌みったらしくなくていいヤツそうだと思ったからよ。後はバイクに興味があるってのも俺としちゃあ嬉しかったな」

 

〈そうですか。では、彼とは良い関係を築くことをオススメ致します〉

 

「最初っからそのつもりさ。アイツとは信頼しあえる仲間になりてぇしな。もちろん他の隊長さん達も含めてだが」

 

〈では彼等からの信頼を損なわないように、ヘリをしっかりと整備しなくてはいけませんね〉

 

「おう。お前も頼むぜ、ストームレイダー(相棒)

 

 ヴァイスはヘリの整備をしながらこれから始まる六課での生活に胸をはせるのであった。




遅すぎる更新。

はい、お疲れ様でした。
約七ヶ月ぶりの投稿となりますかね?
最近ちょっと精神的に病んでまして、なかなか筆が乗っておりませんでした。お待たせしてしまって大変申し訳ありません。

今回はリメイク前にはなかったヴァイスとの初の絡みを書いてみました。ティアナにバイクを貸してたシーンがあったので、もしかしたらヴァイスはバイク好きなのかなーって勝手な妄想でございました。

あとなにげに前半で新規要素がでておりましたね。安綱から出てきた小さな少女と。
一体……なにウンなんだ……。

さて、次回はいつになるかわかりませんが、とりあえず他のロングアーチスタッフとの絡みか、聖王教会での話しをやりたいですね。本当にいつになるかはわかりませんが……。

ではまた次回も楽しんでいただければ幸いです。
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