マイクラな使い魔   作:あるなし

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階段と溶岩と無限水源

 誘引および催淫のために小麦を育てなければ。

 かつてない動物王国を妄想するに至ったマイン・クラフトは農業の開始が急務であるとの認識をもったが、ふと周りを見てみると、破壊された大部屋には自分の他にピンク頭しかいないことに気づいた。

 

「……まずは、壊れたものを運び出しておいて。私は必要なガラスの枚数と机の数を確認するわ」

 

 何やらピンク頭が肩を落として破壊の跡を見て回っている。よく見ると全体的に煤けておりダメージを負った様子だ。通常のクリーパーであれば身体の砕け散る所業であるから、ピンク頭の頑丈さに驚くばかりだ。

 

「はぁ……どうして、いつもいつも、わたしは……」

 

 割れた窓を前にして、ピンク頭が首を振った。あるいは爆発の結果が納得いかないのかもしれない。

 わかる話だ。地形をえぐり取ってこその爆発であろうに、見たところ机だの椅子だのと物品が吹き飛んだだけである。マインもまたTNTの使い手として破壊後の風景に美学を感じていたから、思わずピンク頭の頭頂部をポンポンと撫でていた。

 

「な、ななな、何をっ!?」

 

 顔を赤くして叫んできたから、マインは速やかに間合いを空けた。

 危ない。起爆行動に入ったのかもしれない。耐爆の壁は……必要ないようだ。棒も出さず、どこかしおらしい態度にも見える。だがもう触れるまいと思う。気の迷いで爆殺されていたらダイヤ装備が幾らあっても足りるものではない。

 

「べ、べべ別に、落ち込んでないんだから! か、勘違いなことしないでよね!」

 

 マインは溜息を吐いた。先程の動物あるいはモンスターたちも珍しくてたまらなかったが、このピンク頭のクリーパーもどきも相当に物珍しい存在ではある。よく鳴くことであるし。

 まあ、いい。所詮はクリーパー的何か。破壊に限った美学など片手落ちにすぎない。

 ぐるりと大部屋を見回して、マインは不敵に笑んだ。TNTの使い手である以上に、マインは生粋の建築者である。いや、建築狂いである。創造の美学にこそ魅せられた者である。

 

「え!? ええっ!? な、何が起きて……!?」

 

 廃材を一気に回収、すぐにも机や椅子を設置していく。石材が主であるから容易なものだ。窓もひび割れたものなどはさっさと壊して外し、新たなガラスを入れる。何しろ拠点制作の小休止中にここへ来たのだ。アイテムスロットには建材がたっぷりと入っている。

 

 ああ……楽しいなあ。創造と破壊と創造こそが人生だ。

 

 マインは慣れた作業に没頭しつつ、これまでの冒険を思い出していた。破壊された建築物の修復などよくあることなのだ。クリーパーは忘れた頃にやってくる。照明の管理が甘かった頃にはしょっちゅうだった。

 

「あ、あああ、あんた……ま、魔法使い……だったの?」

 

 一通り大部屋を修復し終えると、ピンク頭がヨロヨロと近づいてきた。震えている。マインはゾッとした。ピンク頭は爆発するつもりかもしれない。

 

「で、でも杖を使わなかった……『錬金』した感じでもなかった……ま、まさか先住魔法? でも耳が尖ってないし……」

 

 一定の距離で止まった。マインは警戒を解かない。いよいよもって爆発するのかもしれないと思う。

 

「あんた……いったい……」

 

 また近づいてくる。これはもうヒットアンドアウェイの対クリーパー用白兵戦をしなければならないか。

 アイテムスロットからダイヤソードを出そうとした、その時だった。

 

「ミス・ヴァリエール! ここにいましたか!」

 

 扉を開け放って緑色の頭部の村人もどきが現れた。そして鋭い目つきで大部屋を見渡した。

 

「全て完璧に直されている……ヴァリエールの『錬金』のわけもなし……これはやはり……」

「ミス・ロングビル、いったいどうし……は! あ、あの、これはその、魔法を使ってはいけないとは言われたんですけど、でも……」

「そんなことはいいのです。すぐに来てください。オールド・オスマンがお呼びです」

 

 緑色頭がグイと近寄ってきたから、マインは近寄られた分だけ退いた。戦闘態勢に入っているゆえの行動だ。

 

「貴女の使い魔の行ったことについて、主従立ち合って頂いた上で確認したいことがあるとのことです」

 

 言うなり背を向けて歩き出した。とりあえず放っておいたが、振り返って追従を催促している風である。小麦で家畜を誘導している時のマインと似ている。

 まあ、ついていってみるか。

 奇特にもマインがそう考えたのは、気分がいいからであった。先ほど、この緑色頭は大部屋の修繕具合を見て称賛の態度を示していた。建築物を愛する者に悪い者はいない。

 そしてつれられていった草原で、マインは有頂天気分を味わうことになった。

 

「す、凄い……ただの木のテントだと思ってたのに、まさか、こんなに地下が広かったなんて」

 

 ピンク頭が呆然としつつもマインの仮拠点を褒め称えている。

 

「え、これは畑? え? こんなところで、どうして……」

 

 そこは実験農場だ。量産体制に入る前に種を増やすために用いる予定の耕地である。

 

「地上ならまだしも、地下をかくも大規模に作り変える……しかもそれが一晩のこととは……とてつもないことじゃ」

 

 白頭白鬚の村人もどきも唸るようにマインの仮拠点を絶賛している。

 

「これは……まさか、何ということじゃ……マグマを蓄えておる! 湧き出たわけでなし、『土』と『火』の『ライン』……いや、『土』と『火』と『火』の『トライアングル』……いやいや……」

 

 それは溶岩バケツの中身を出したものだ。要らないアイテムを処分する焼却炉である。 

 

「これは宝箱? あ、開かない……『ロック』がかかっているわけでもないのに、何てことだい」

 

 緑色頭が苛立たしげながらもマインの仮拠点を誉めそやしている。

 

「な、何さこれ、水が勝手に湧き出して……マジックアイテムがあるわけでもなしに!」

 

 それは流水を温泉かけ流し風に仕立てた水浴び場だ。囲いの角のところでは無限に水を汲める。

 

「「「説明してほしい」」」

 

 いやあ、照れるな。仮拠点であってもこだわりや遊び心って出ちゃうからさ?

 マインは満足げにウムウムと頷き、三者三様の興奮を受け止める度量を見せたのだった。

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