ドラゴンクエスト―ダイの大冒険―最善の勇気―   作:神仁

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――待たせたな!!あっ、待ってないってそうですか、はい……(´・ω・`)


第3話―魔獣咆哮!!並び立つ勇者!!―

 

 

「ご来場の皆さん!!ついにロモス武術大会も大詰め!!決勝進出選手8名が出揃いましたぁっ!!!」

 

そんな舞台上の司会の言葉により、会場内はヒートアップ。

長かった武術大会予選が終わり、いよいよ決勝戦である。

 

「それでは――我が国で最強を誇る8名のファイターたちをご紹介しましょう!!」

 

司会の台詞と共に、舞台上に次々と選手が上がっていく――。

 

まず現れたのは、今大会優勝候補筆頭とまで言われた男――戦士ラーバ。

その怪力豪腕から繰り出される剣の一撃は破壊力抜群、容易く武器を吹き飛ばし、相手を場外に叩き落とす――その巨体に似合わぬ機敏な動きは、正に熟達した戦士そのもの。

 

続いてやってきたのは魔法使いフォブスター。

 

多種多様な魔法の数々は強力無比――並み居る戦士達を文字通り寄せ付けず、圧倒してみせた。

 

次に舞台上に上がったのは狩人のヒルト。

 

日頃の狩りで培った弓矢の腕前は、正に百発百中――相対する戦士達の腕や脚を正確に居抜き、戦闘不能へと追い込んだ。

 

雄叫びと共に舞台上に現れたのは格闘士(レスラー)のゴメス。

 

この世界では非常に珍しい、格闘士という肩書きのゴメス――。

その怪力もさることながら、特筆すべきはそのレスリングテクニック。

投げ技、間接技――その見た目とは裏腹に豪快にして繊細なテクニシャン。

 

――ちなみに、チウの予選一回戦の相手が彼であり、チウはレスリング技を見るまでもなく破れ去ったのであった……。

 

観客の声援に手をあげて答えるのは騎士バロリア。

 

全身に騎士の鎧を纏った――文字通りの騎士。

特定の国に仕えているワケではないので、自由騎士と言ったところか。

 

その疾風の如き剣捌きは正確無比――例え重厚な全身鎧を纏った相手でも、鎧の隙間を狙って切り裂く卓越した技量を持つ。

 

ふらふらとおぼつかない足取りで壇上に上がるのは、謎の実力者ゴーストくん。

 

予選中、その実力を感じさせないのらりくらりとした動きで敵を翻弄――ここまで勝ち上がってきた、今大会一のダークホースである。

徒手空拳であるため、武闘家の類ではないかと思われるが、そのお化けの仮装も相俟って実力のみならず、その正体すらも謎に包まれている。

 

そして今大会の紅一点――武闘家のマァム。

 

その動きは俊敏にして鮮烈――相手の一撃をひらりひらりと避ける。

更には、大の男を豪快に殴り飛ばす剛力も併せ持つ。

今大会にて、その力を持って予選を圧倒的な早さでクリアしていき――結果として予選を最も早くにクリアしている。

 

そして最後に――。

 

「正に今大会優勝の最有力候補と言えるでしょう!!私も予選最終戦には胸が暑くなりました!!漆黒の貴公子――イオリィィィッス!!」

 

「フハハハハハハハハッ!!トウッ!!」

 

――幾分私見を交えた司会の紹介と共に、高らかと響く笑い声が木霊する。

会場内へとダッシュで入場――そして高らかに跳躍!!

 

舞台の中央に着地――スックと立ち上がり――。

 

「待たせたな!!漆黒の貴公子イオリス、今此処に降臨!!さぁ、貴様ら!!思う存分讃えるがよいっ!!!」

 

ビッ!!と、サタデーでナイトでフィーバーなポーズを取るイオリス。

それだけで会場内はドッカンドッカンである。

キャーイオリスサーンってなもんである。

 

――漆黒の貴公子イオリス。

 

その実力は他の参加者を圧倒しており、予選の試合のほとんどを一瞬で片付けている。

その為、素人目にも――また多少武芸をかじった者にも、実力の全容を把握出来なかった――予選最終戦を見るまでは。

 

予選最終戦、かつて赤き衣に身を包み純白の野に降り立った――現在赤き装具を身に纏ったユースケとの試合で、その実力の全容が顕になった。

 

その戦いは、軽く人知を越えちゃったりする程のモノであり、その実力をまざまざと見せ付けた。

 

決勝進出を果たした8名の中でも、突出した実力を持つイオリス。

 

予選もマァムに次いで二番目の早さでクリアしている――ちなみに、何故ほとんどの試合を一瞬で片付けたイオリスが、予選抜け二番目の早さだったかと言うと、ユースケとの試合が長引き過ぎたのが原因である。

 

とにもかくにも、役者は出揃った――ロモス大武術大会決勝戦の開始が刻一刻と迫りつつあった。

 

***********

 

「全く、派手好きな奴だなぁ」

 

俺は闘技場の観客席――その高台の部分からイオリスの登場を見ていた。

――きっと、司会の人に紹介された時にイオリスのテーマソングでも鳴っていたに違いない――うほっ、これは良い闇・勇・者www

 

「と、それはそうと……おっ、居た!」

 

俺は周囲を見渡し――お目当ての存在を見つける……どうやら観客席の最下段にいるみたいだ。

 

「よっ、ほっ、はっ――と」

 

軽快な足取りで階段を駆け降り、お目当ての人物たちのところまで赴く。

丁度隣が空いている様だ――。

 

「よっ、隣いいかい?」

 

「あっ!アンタは――!!」

 

友好的に挨拶したら、なんか緑色の服を来た鉢巻きの少年に指を指されて驚かれた――。

 

「ユースケ君!!ダメじゃないかアイツに負けたりしちゃあ!!!ほらっ、あんなに調子に乗ってる!!」

 

「ようチウ。そうは言うけど、イオリスは強かったしなぁ……全力出して負けたんだから仕方無いさ」

 

悔しい気持ちが無いわけじゃないけど、全力を出し切っての負けだから――不思議と一週間分の便秘が解消されたくらい、スッキリしてるんだよな。

イオリスは何故か納得してないみたいだけど――本当に変わり者だよな、アイツ。

 

「と、そっちの二人は初めまして、だよな?改めて自己紹介する程じゃないけど……俺はユースケって言うんだ。よろしくな」

 

「うん!さっきの試合見てたよ!!おれはダイ、よろしく!!」

 

そう言ってにこやかに握手を交わす俺とダイ。

やはり、握手は万国共通のコミュニケーションスタイル――それが異世界でも変わらないんだね。

 

「オレはポップってんだ。見ての通りの魔道士さ」

 

魔道士の若人――ポップとも握手を交わす――何でバツが悪いというか、気まずいみたいな顔してるんだ?

 

「つーか、アンタもあのイオリスってのもトンデもないよなぁ……ぶっちゃけ、アンタとマァムが戦うなんてことにならなくてホッとしてるぜ……そのかわり、あのイオリスが残っちまったけど――」

 

ナハハと、力無く笑うポップを見て俺は何となく理解した。

 

「二人はマァムと知り合いだったんだな……まぁ、さっきの試合で一緒に観戦してたし、そんな気はしてたけど」

 

「おれとポップとマァムは、同じ先生に弟子入りしてたんだ」

 

「先生?」

 

「勇者アバンって言えば、アンタも名前は聞いたことあるだろう?」

 

勇者アバンって、確かマトリフさんが言っていた――!そうか、それじゃあ――。

 

「それじゃあ君らがアバンの使徒って奴か――!」

 

「へへっ、オレらもちったぁ有名になったかな?」

 

「おれたちって言うより、アバン先生が有名なだけじゃあないの?」

 

得意気に語るポップに、ダイはやんわりと突っ込みを入れる――それを聞いて「ウッセッ!」と、反論にならない様な反論をしている――なんと言うか。

 

「二人とも、随分付き合いが長いんだなぁ……」

 

「ピィ〜……」

 

仲が良いというかなんと言うか……………ん?

 

「……」

 

「ピッ?」

 

……あー、うん。とりあえず一言。

 

「なんぞコレ?」

 

「ピ?」

 

それはこの世界のスライムと呼ばれる存在によく似ていた……違うのは体色が金色で羽が生えていること。

 

そのスライムモドキは、俺と目が合い、小首を傾げる様な仕草をとっていた――首なんか無いけど、そんな感じってことだ。

 

しかも、そんじょそこらのスライムより表情が豊かに見える。

なんと言うか、スライムが全体的にニンマリした表情をしているのに、コイツは普通に表情を形作っている――。

 

改めて言おう。

 

「なんぞコレ?」

 

「ピィ〜?」

 

お互い不思議そうな顔で見つめあう――目が合った瞬間好きになる曲が流れてきそうな勢いだ。

 

い、いや、確かになんか可愛いけどさ……。

 

「そいつはゴメっつって、確かゴールデンメタルスライム……だったっけか?」

 

「うん!ゴメちゃんはおれの初めての友達で、おれたちの仲間なんだ!」

 

成る程、大体分かった。

 

「よろしくな、ゴメちゃん」

 

「ピィ♪」

 

か、可愛い……どこぞの鉈を振り回す少女じゃないが、お持ち帰りしたくなるぞ。

 

「………」

 

ん?ダイが俺の方を見てる――視線が下だな……ダイが見てるのは腰の辺り――俺の剣(クゥ・ラージュ)、か?

 

「コレが気になるのか?」

 

俺はクゥ・ラージュを腰の剣帯から外してダイに掲げて見せた。

 

「あ、うん……その、良い剣だね!」

 

何故か煮え切らない態度を示すダイに、俺は首を傾げるが――。

 

「実はオレたち、ダイが使える武器を探して此処に来ててさ――」

 

ポップから説明された話だと、ダイは物凄い力を持っているが、その力のせいで並大抵の武器は直ぐに壊れてしまう――この大会の賞品の『覇者の剣』ならと、大会に参加する為にロモスにやってきたが、受付参加時間を過ぎていて参加出来ず、諦めかけていたところで修行の為に別れていた仲間であるマァムと再会――覇者の剣の獲得を託したらしい。

 

……で、さっきの俺とイオリスの試合で、俺の剣とイオリスの武器を見て――ダイは何かビビッと来たらしい。

 

「ユースケの剣、近くで見て改めて思ったけど本当に凄い剣だ――だから、気になってさ」

 

「まぁ、この剣は『勇気の聖剣』なんて呼ばれてる位だから、その覇者の剣にも負けないかも知れないけど――」

 

ちなみにイオリスの持っている武器では虎徹が気になったらしい――。

漆黒の剣は微妙だとか。

 

聞いたところによると、覇者の剣はオリハルコンで作られているそうだ――クゥ・ラージュは高純度のミスリル銀で作られているから、材質の格では落ちるかも知れないけど、それでも負けないと思えるのは、クゥ・ラージュが『ただのミスリル銀製の剣』では無いから……だと思う。

 

それをダイも感じたんだろうな――だから気になった。

 

「……持ってみるか?」

 

「えっ!?良いの!?」

 

「あぁ、この剣……クゥ・ラージュは大事な剣だからあげることは出来ないけど――気になるんだろ?」

 

クゥ・ラージュは、俺とあの世界との――みんなとの絆の証、繋がりだと思ってる。

だから、出来るなら渡したくは無いけど――もし、クゥ・ラージュがダイを認めるようなら……まぁ、考えるしかないよな……会ったばかりだけど、ダイも悪い奴じゃないし本気で困ってるみたいだし。

 

「ほれ、持ってみ」

 

「う、うん――」

 

ダイは心なし緊張した面持ちでクゥ・ラージュを受け取った―――が。

 

「うわっ!?」

 

受け取った瞬間、ダイはクゥ・ラージュを取り落としそうになった――受け取った右手が、まるで重量物を抱えたみたいにガクンと下がっていた。

 

「お、おい大丈夫かダイ!?」

 

「あぁ、大丈夫――だけど」

 

心配するポップを余所に、ダイは気を入れ直したのか見た目軽々と鞘に入ったクゥ・ラージュを掲げて見せた。

 

「――うん、やっぱりだ」

 

ダイはクゥ・ラージュを見て頷いて――。

 

「これ、ありがとう」

 

「もう良いのか?」

 

「うん、持ってみて凄い剣だって改めて思った――けど、この剣はおれには使えないと思う。たぶんだけど――この剣はユースケに持っていて欲しいんじゃないかな?……おれも剣を持ってこんなことを思ったのは、初めてだけどさ」

 

「そうか――」

 

俺はダイからクゥ・ラージュを受け取った―――うん、やっぱり吸い付く様に馴染む……改めて、この聖剣は俺の一部みたいなモノなんだと実感する。

 

「てことは、やっぱり覇者の剣を手に入れるしかないってワケかぁ――こりゃあ是が非でもマァムに勝ってもらわなけりゃ――」

 

「あっ!!ああぁーーっ!!?」

 

「っ!?んだようるせぇなぁ――。一体なにが………ぬああぁーーーっ!!?」

 

何やら納得していたポップや、俺とダイの耳を劈くチウの叫び声にポップが反応して、チウが指差す舞台上に視線を送った――すると。

 

イオリスとマァムが――見つめあってる、様に見える。

マァムが微笑ましそうに優しい眼差しで――イオリスは赤面しながらも熱い眼差しで。

 

……多分、健闘を誓い合ってるとかなんだろうけども。

 

「こらぁ!!貴様ぁ!!マァムさんの女神の様な微笑みを向けられるとか、ずるいぞぉ!!」

 

「コラァ!!お前ら近すぎだぁ!!もっと離れろってぇ!!」

 

……なんか騒いでるチウとポップ。

その気持ち、分かりすぎるぜ……。

まぁ――。

 

「マァムはともかく、イオリスの方はマァムに一目惚れっぽいからなぁ――」

 

「「なぁにいいいぃぃぃぃぃっ!!?」」

 

「近い近い近い……!!」

 

俺の発言に、目をひんむいて詰め寄ってきたチウとポップ――ってか恐いから!!

 

――まぁ、イオリスの奴は『らしくない』けどな。

アイツは思い込んだら試練だろうがなんだろうが、我が道を突っ走る奴だ――リィムに愛してしまったのだ、とか口走りやがった時に、俺はその衝撃で吐血してしまったことを覚えている――。

 

「「………ん?」」

 

と、互いに互いを見やる二人――。

 

「おまえ、会った時から気に入らなかったが……マァムさんに気があるな?やめときたまえ、おまえとマァムさんでは釣り合わないよ。マァムさんにはもっとハンサムで、キュートな、僕みたいな男じゃないと――」

 

「なぁに言ってやがるこのネズ公が。幾らマァムでもオメェみたいなチビネズミを相手にするかよ――マァムが優しくしてくれてんのを勘違いしてんじゃねぇのかぁ?」

 

なんか、火花が散ってるなぁ……。

 

「やけに絡んでくるなぁ……さてはお前、マァムさんの昔の男だな?元カレって奴だろう?きっと、マァムさんがお情けで付き合ってくれていたのを勘違いして、しつこく付きまとっているんだねぇ……あぁ、可哀想なマァムさん!」

 

「テメェ!!勘違いはどっちだコノヤロウ!!だ、大体、オレとマァムは付き合ってなんかだな……」

 

「まぁ良い。ボクは女性の過去には拘らない主義だからね――……」

 

そう言うなり、チウは着ている道着の中を漁り――。

 

「ほら、これでマァムさんのことは諦めてくれたまえ」

 

1G金貨を二枚……2ゴールドをポップに向かって差し出した。

 

「こ、の……!!」

 

あぁ、ポップがプッツンしそう……というか、してる。

その握り締めた拳を今にも降り下ろしそうだ――今回のはチウの自業自得だし、黙って見ていても良いんだけど……俺としても一つ言っておきたかったので、口を挟むことにした。

 

「――つまりチウにとって、マァムは2ゴールド分の価値しか無いってことだな」

 

カチコーン……と、場が凍り付いた様な気がした。

 

俺を除く面子、チウもポップもダイもゴメちゃんも……そして、近隣にいた他の観客すらも。

 

ギギギギ……と、錆びた機械の様に顔をこちらに向けてきたチウは、何故か汗だくになりながら言葉を紡いだ。

 

「ななな、なにを言うのかねユースケ君、ボボ、ボクのマァムさんへの愛は山よりも高く、海よりも深いんだよ……?」

 

「――でも、2ゴールドじゃあ、ひのきの棒も買えないよな?」

 

「…………」

 

絶句――開いた口が塞がらないって、こういうことを言うのかね。

 

ダイとゴメちゃんは、タハハ……って感じで苦笑い。

ポップに至っては振り上げた拳を解いて、その手で頭を掻きながらチウに冷たい視線を送っている――。

 

「ま、待ちたまえ!!ぼ、ボクは別に2ゴールドぐらいでマァムさんへの愛を表したつもりはないぞっ!!これは……そう!このヘッポコ魔道士が金でマァムさんを売るような極悪非道か確かめる為であって――」

 

「へっ、どんな薄情な連中だって2ゴールドじゃ動かねぇっつーの」

 

「ワザワザ諦めろって言うくらいだから、自分の最善を尽くすのが普通だよなぁ……」

 

尚も反論するチウに、ポップと俺がカウンターを食らわせてやる……すると。

 

「あが……が……ボクは……ボクは……」

 

最早グウの音も出ない様で、そのままフリーズしてしまった。

どうやらアイデンティティー的な何かが崩壊したらしい……おつ!

 

「もう二人とも、イジワルは止めてやれよ……かわいそうだろ?」

 

「ピィ〜……」

 

「けっ、下らねえことしてきたコイツが悪いんだよ――」

 

「俺は全くそんな気は無かったんだけどさ――まぁ、インガオホーって奴さ」

 

チウには少し悪かったかも知れないけど、ダイたちとは少なからず打ち解けられたから、結果オーライだね。

 

「それはそうと、マトリフさんは元気かい?まぁ、あの人が元気じゃないところなんて想像がつかないけど」

 

「アンタ、師匠を知ってるのか?」

 

ふと気になったので、聞いてみたら……師匠?マトリフさんがポップの?――ポップは勇者アバンの弟子じゃなかったっけ?

 

「知ってるも何も、マトリフさんから勇者アバンやアバンの使徒について教えて貰ったのさ」

 

俺は武術大会に参加する前にカール王国に訪れたこと、王国の惨状、そしてそこでマトリフさんに出会い――まぁ、色々手伝わされたことを説明した。

 

「そりゃあなんと言うか……師匠らしいというか……」

 

「気になったんだけど、ポップはアバンさんの弟子なんだろ?なのに、マトリフさんが師匠なのか?」

 

タハハと苦笑いを浮かべるポップに、それとなく気になったことを聞いてみる。

 

なんでも、魔法のことを色々教わって、敬意を込めて自発的に師匠と呼ぶようにしたらしい。

ただ、先生はアバンさんだけだからって拘りもあったからだとか――それだけアバンさんって人が慕われる様な人柄をしていた――ってことか。

 

「まぁ、変な拘りだとは思うけどな」

 

「ほっとけっての!」

 

なんて、談笑をしていると――何故かダイの表情が暗くなっていることに気付いた。

カール王国の惨状、それを起こしたのが魔王軍のドラゴン軍団らしいってことを話した辺りから……だった気がする。

 

その話をしたらポップも驚いた顔をしていた……ちなみにポップが言うには、そのドラゴン軍団は『超竜軍団』という魔王軍の一軍らしい。

 

他にも氷や炎で出来たモンスターが中心の『氷炎魔団』や、魔道士や妖術士みたいなモンスターが中心の『妖魔士団』とか、色々あるらしい。

 

と、話が脱線しそうになった――。

 

「こうして会って分かったよ――あの時にテランの方から感じた物凄い力の片割れ……それがダイなんだろう?そりゃあ生半可な武器じゃ直ぐに壊れるわな」

 

「……う、うん」

 

……何故だ、話題を変えようと思って話を振ったのに、余計に落ち込んだ様に見える――わけがわからないよ!

 

「ま、まぁ、そう言う事情なら仕方無いよな――もし、イオリスが勝って覇者の剣を貰ったら、ダイに譲ってやるように頼んでみるよ」

 

「マ、マジか!?」

 

「真剣と書いてマジと読むくらいマジ。俺もイオリスも武器には困ってないしね」

 

正直、イオリスはごねるかも知れない――というか確実にごねるだろうけど……多分、マァムが頼んだら一発だと思う。

良くも悪くも分かりやすい奴だからなぁ……ん?お前が言うなって?

安心しろ、自覚はある!

 

「よかったじゃねぇかダイ!」

 

「う、うん、ありがとうユースケ!」

 

――良かった。どうやら少しは気が紛れたらしい。

なんか地雷を踏んだ臭い俺としては大変喜ばしい。

 

「まぁ、イオリスが勝てればの話だけどな」

 

「そうだな、マァムが勝っちまえばそんな必要もないもんなっ!」

 

それもそうだけど――俺が懸念してるのは悪いけどマァムじゃない――あのオバケの格好をした選手……ゴーストくんだっけ?

 

正直、実力が分からない――イオリスが負けるとは思えないけど、勝てるとも言い切れない。

ある程度の実力なら、気配から分かるようになったんだけどなぁ……よっぽど上手く気配を隠してるのか、それとも――。

 

もし、ゴーストくんとぶつかったら――この試合、予想できないぞ?

 

「で、マトリフ師匠のことだよな――師匠は……まぁ、元気だぜ?流石にもう良い歳だから、無理は出来ないらしいけど――」

 

ポップから、俺たちと別れた後のマトリフさんの足跡を聞くことが出来た――何でも、大きな戦いがあって疲れきっていたダイたちに、魔王軍の司令官が直々に奇襲を仕掛けてきたらしい……何でも物凄ぉく卑怯な策を用いてきたらしい――けど、何故かそれがどんな策かは教えてくれなかった……なんかポップの目が泳いでたのが気になった。

 

とにかく、あわや全滅というところに駆け付けてくれたのがマトリフさんらしい。

 

魔王軍の司令官――魔王ハドラーというらしい――と、魔法の勝負になったけど、魔力ではマトリフさんが上回っていたそうだ――。

 

……まぁ、俺でも分かるくらい魔力がデカイ人だからな……納得。

けど、ハドラーは自分の部下に加勢させて形勢を逆転――その年齢から、自分の魔力の大きさに身体が着いてこれなくなっていたマトリフさん。

 

危うく全滅というところを、ダイが駆け付けて敵を撃退したらしい。

 

なんと言うか、俺たちが知らないところで色々なことが起きてるんだなぁ――当たり前だけど。

 

「無事なら何より、だよな」

 

――ちなみに、何故にこんな長く談笑出来たのかと言うと――舞台上でイオリスが問題を起こしていたからに他ならない。

 

その問題とは……。

 

***********

 

「お互い正々堂々、頑張りましょうね」

 

「う、うむ!!手加減は無用だぞ!!」

 

私の光魔法『格好いいポーズ』を観客にアピールした後、舞台上のマァムと言葉を交わしていた。

 

――の、だが……ち、近い!!近いぞマァム!!……いい匂いだなぁ……では無いっ!!!

何を言ってるのだ私はっ!!!!

 

――だが、新しい恋に生きるのも――悪くないか……リィムさん、振り向いてくれなかったしなぁ……アプローチの仕方が悪かったんかな?

 

ガンガン行き過ぎはいかんのかも知れん………って、いい加減にせんか私よ!!!

 

「イオリス?顔が赤いけど……大丈夫?」

 

「ホアッ!!?だ、大丈夫だ!!問題無い!!」

 

なんと、私が自己と葛藤している間にマァムが更に距離を詰めてきていた……向こうは心配していたのだろうが……し、心臓に悪いっ!!

 

「こらぁ!!貴様ぁ!!マァムさんの女神の様な微笑みを向けられるとか、ずるいぞぉ!!」

 

「コラァ!!お前ら近すぎだぁ!!もっと離れろってぇ!!」

 

五月蝿いぞ外野共!!離れたいのは山々だが、離れるタイミングを無くしていたのだ!!……離れるのが勿体無かったのもあるが。

 

「ほれこの通り、私は大丈夫だ。だから安心するが良い!!ヌゥーハハハハハハッ!!!」

 

「そう?なら良いけど……」

 

だが、折角のタイミングなので、離れてもらうことにする――か〜な〜り〜、勿体無いが……。

 

ふと、選手の内の何人かが観客席の更に上に展示されている剣を眺めて何やら言っている。

 

司会が言うには、あれが覇者の剣らしいが……。

 

「すげぇ――こりゃあ、いただきだぜ!」

 

「ふっ、お前には使い道はあるまい――私が貰っておいてやろう」

 

「そうはいかねぇ、使い道がなくてもあれを売ればとんでもねぇ金になるからな!!」

 

等と話しているのは、格闘士ゴメスと騎士バロリア……だったか。

 

ふむ――どうでもいいが。

 

「あのようなナマクラを欲しがるとは、物好きな連中だな」

 

「あ?なんだって?」

 

――どうにも聞こえたらしい。

ゴメスがこちらに振り返った。

――聞こえる様に言ったつもりは無いのだがな……耳の良いことだ。

 

「あのようなナマクラを欲しがるとは物好きな連中だ――と、言ったのだ」

 

今度は聞こえる様に話す――今度は他の連中にも聞こえたらしい。

 

「ナマクラって……どういうことなの、イオリス?」

 

私の一番近くに居たマァムが疑問を浮かべていた……なので、簡潔に答えることにする。

 

「そのままの意味だ。伝説の剣と聞き及んでいたが、とんだ眉唾ではないか。遠目からでも分かる――あの剣はナマクラだ」

 

正確には、ナマクラという程に酷い物ではないが――伝説の一振りにはどうしても見えん。

 

「ハッ、これだから剣に疎い者は困る――覇者の剣とは、この国の者なら誰もが知る伝説の剣だ――よく見ろ、あの威容を――紛うことなき伝説の印。多少腕は立つ様だが、目利きは出来ぬ様だな?」

 

「ほう……貴様は目端が利くのだな。ならば、我が愛刀を見るがいい――貴様の目にはどう映る?」

 

バロリアが私を見下した様に――というより、実際に見下したのだろう。

鼻で笑って誇る様に語りおったので、私は我が愛刀――虎徹を鞘から引き抜いた。

 

この虎徹はユースケが所持していた物を、奴に加勢し魔王軍と戦った折りに譲り受けた物だ。

 

この虎徹は――ユースケの所持する聖剣や、我が師より譲り受けた魔剣の様に特殊な素材で作られているわけでは無い。

 

只々人の手で、鋼を鍛えに鍛え――たどり着いた刀剣の極地。

その刀身に一切の飾り気は無く、刀という斬ることに特化した得物でありながら、頑強さをも窺わせる――。

 

ユースケの聖剣に勝るとも劣らず、我が魔剣よりも勝る――人が至った最高傑作。

 

「う、ぬぅ……!!」

 

バロリアとやらは、我が愛刀を見て唸った――言うだけはあって本当に目端が利くようだ。

 

「貴様も剣士の端くれならば、我が愛刀の内包する物が読み取れよう――改めて聞くぞ?――我が愛刀と覇者の剣を名乗るあの剣と……どちらが優れているのかを、な」

 

「そ、そんなことは……」

 

決まっている――とは、言えないのだろう。

奴も剣を扱う者――只の鋼が昇華された名刀と比べても、あの剣が伝説の名を冠するには至っていないのだと――。

 

「……一つ聞くが、お前は何故そんなにハッキリとナマクラと判断出来るんだ?確かにお前のその剣の凄味は本物だ――だが、あの覇者の剣を前にそこまで自信に満ちて答えられる理由は……?」

 

そう聞いてきたのは口髭を生やした巨漢――戦士ラーバだったな。

恐らく奴は、『ナマクラと断定する根拠』を聞いているのだろうな――。

 

「言葉を返すが、あの剣に我が愛刀の様な凄味があるか?」

 

「ぬっ……」

 

「――とは言え、貴様が言いたいのはその凄味の差を、何故的確に見抜けるのかを聞きたいのだろうがな……」

 

舞台上と剣を展示している場所とは随分と距離がある――遠目で、その様な凄味の差を見抜けるのか――?

 

普通なら、これだけ近くで見て初めて凄味を見分けることが出来る――或いは手に取って初めて気付くこともザラだ。

 

だが、私なら見抜くことが出来る――何故ならば。

 

「我が愛刀――銘を虎徹と言うが……一度、虎徹の偽物を掴まされたことがあるからだ」

 

「な、なに……?」

 

私の答えにラーバを含む、舞台上の全員が呆気に取られているが――。

 

「聞こえなかったのか?偽物を掴まされたことがあるから、本物を見抜くことが出来る様になったのだ」

 

――あの時の屈辱は未だに忘れられんぞ……!!

 

以前――魔王軍に籍を置いていた頃、ユースケらとの戦いに連戦連敗を重ねる様になった私は、伝説に残る武器を探すことにした――武器を一新すれば今度こそ勝てると思ったのだな。

 

私はあちらこちらを探し回り、伝説の海賊――ブラックタイガー団の船長が所有していたという銘刀・虎徹に行き当たった――。

 

そして――私はブラックタイガー団の隠し財宝が眠る洞窟を記す宝の地図を、1万ゴールドもの大金を叩いて買った!!

 

そして、潜った洞窟の奥で見付けた『徹』の字が記された刀――私は狂喜乱舞し、直ぐ様ユースケらとの再戦に赴いた――そこで、私は手に入れた刀を振るった。

 

――しかし、しかしだ……。

 

その刀は奴等にカスリ傷以下のダメージしか、与えられなかったのだッ!!!

 

そして、奴等にボコボコにされる中、私は混乱していた――私の力と技、そこに銘刀の力が備わって最強になる筈だったのに……と。

 

そこで、私は気付いてしまった……刀に記された徹の字が、虎徹の徹では無く――徹子だったことを。

 

私は奴等に負けたあと、苦し紛れに徹子を奴等に投げつけて戦略的撤退を慣行したのだが……当然、投げたら強力な攻撃になる――などということも無く……ポインッ、なんて間抜けな音でぶつかり墜落する始末。

 

後に私は文献を調べた……そして私が手に入れた刀が虎徹では無く、刀匠・白柳徹子が趣味でテキトーに作ったナマクラ刀だっだのだと――知ってしまった。

 

――それ以来、二度とあの時の過ちを繰り返さぬ様に、武具の目利きを鍛えたのだ。

 

その甲斐あって、今では武具の持つ雰囲気から凄味を見抜き、それが『本物』であるかを見抜ける様になったのだ。

 

……偽物を掴まされたのでは無く、私が勝手に勘違いしただけだと?

細かいことは気にするなッッ!!!!

 

とにかく、異世界云々、魔王軍云々を抜かして、その辺の事情を大雑把に説明した。

特に魔王軍云々は、この世界ではややこしいことこの上ないからな。

 

「けっ!!要するにテメェは騙されたんだろ?そんな奴の言葉を誰が信じるかよ!」

 

「――信じる信じないは貴様らの好きにするが良い。だが、私は偽物を掴まされ、結果として痛い目を見たからこそ真贋を見分ける眼を得た――その事実に何の偽りも変わりもない。何、ナマクラとは言ったがそれは我が愛刀や魔剣に比べたら――の話だ。貴様ら有象無象が使っている武器よりは、アレはよっぽど上等だろうよ――おっと、貴様はアレを売りたいのだったな?まぁ、それなりの金にはなるのではないか?」

 

ゴメスは納得していなかったらしく、この私を嘘つき呼ばわりしてきた――まぁ、良い。

信じる信じないは当人の自由――。

 

「テメェ――ちっとばかし予選で派手に暴れたからって、イイ気になってんじゃねぇのか?」

 

「この私を有象無象扱いとは、ナメられたモノだな……!」

 

「あまり侮らないで欲しいものだな……」

 

むっ……なにやら空気が険悪になった気がする。

ゴメスとバロリア……それと魔道士のフォブスター……だったか?

 

この三人が突っ掛かって来た――言葉には出さないが、ラーバと未だに一言も発さぬ狩人のヒルトも、不愉快だという気配を発している……あのオ○Qモドキはどうだか分からんが……。

 

――やれやれ、血の気が多いことだ。

誰のせいなのやら――。

まぁ……。

 

「弱い犬程よく吠えると言うが……そうキャンキャン吠えずとも、まもなく試合が始まるのだ……嫌という程に実力の差という物を知ることになろう。もっとも、一人で勝つ自信が無いというなら済まなかった――私としては纏めて相手をしてやっても良い「イオリスっ!!」イダダダダダダダッ!!!??な、何をするかマァム!!」

 

私が、場を盛り上げてやろうとしていたらマァムに頬をつねられた……何を言ってるのか分からんと思うが――結構痛いぞ。

 

「ちょっと来て」

 

「な、何を怒る必要があるか?私は奴等を焚き付けることでこの場を盛り上げてやろうと「いいから来なさい」アッハイ」

 

マァムと私の実力には、かなりの開きがある筈なのだが――私の中のゴーストが『ヤバイよヤバイよ、まじヤバイよ!!』と、○川 哲○並に囁くので――此処は大人しく従うことにする。

……人間、直感に従うのも時には大事なことなのだ。

 

で……選手の集団から少し離れた場所にて。

 

「――さっきの話、本当?」

 

「う、うむ!この試合は大勢の者が見ているからな!!天下に我が力を示す良いチャンスであるし、ユースケの奴とも約束を――」

 

「そっちじゃないわ――覇者の剣がナマクラだ……って話よ」

 

「――あぁ、そっちか……こんなことで嘘をついても仕方あるまい。ナマクラ――とは言わぬまでも、伝説の武具の一振りとはどうしても思えんな」

 

私はマァムの疑問に答えることにする――どうにも私が思っていた内容と違うようだが……。

 

しかし、だ。

 

「だがマァムよ。例え覇者の剣がナマクラだろうとそうでなかろうと、お前には然程関係あるまい?そも、腕試しの為にこの大会に参加したのであろう?」

 

そう、武闘家であるマァムは優れた剣など必要としない筈なのだが。

 

「……事情が変わったのよ。私は絶対に覇者の剣を手に入れなければならなかった……ん、だけどね」

 

ふむ……腕試しに来ていると語っていたマァムが心変わりした理由はなんだ……?

よもや、ゴメスの様に金儲けが目当てではあるまいし……。

 

「マァムよ、一体何があったというのだ?私で良ければ聞いてやるが……」

 

「――実は、ね」

 

マァムは少し考えた後に、私に理由を話そうとした――。

 

「それでは、今大会の主催者であるザムザどのから、決勝トーナメントの説明をしていただきましょう!!」

 

しかし、タイミングの悪いことに今から決勝の詳細を説明するという……いや、私が選手たちを煽ったりしていたので、これでも見計らって空気を読んでいたと言うべきか……。

 

「止むを得んな――詳しい話は試合が終わってからにしようか――折角勝ち上がったのだから、優勝して私の力を知らしめておかなければな――」

 

それがユースケとの約束にも繋がる――何より。

 

「マァムよ……約束通り正々堂々と――雌雄を決しようではないかっ!!」

 

この眼前の少女との約束を――果たすことにもなる。

 

「――そう、ね。迷いを抱えて良い勝負ができるわけないし――わかったわ、気を引きしめて――全力を尽くさせてもらうわっ!!」

 

「うむっ!!!」

 

マァムも気持ちを切り替えたのだろう――覇者の剣を求めている理由は知らぬが、本来の腕試しという目的を思い出した――否、再確認したというところか。

ならば私も気を引きしめて掛からねばなるまい――しかし……。

 

今、司会に紹介された男――ザムザと言ったか。

一見、神官風の男だが……なんだ、この感覚は――奴が発する気配……以前に何処かで――。

 

***********

 

「――諸君、よく勝ち残った。想像以上のメンバーで私は大いに満足している――国王陛下にご提案申し上げ、この大会を開いた甲斐があった……」

 

観客席の中央辺りに現れた、神官っぽい男が口上を述べ始めた――。

この大会の主催者らしいけど……。

 

「なんか、嫌な感じだな……」

 

俺はこの気配を以前にも感じたことがある……。

 

「ユースケも、わかる?」

 

「ダイもか?」

 

どうやら、アイツの異様に気付いているのは俺とダイ――それと舞台上のイオリスだけの様だ。

 

アイツ、あのザムザとか言う奴が出てきてから思い切り渋面になったもんな――。

 

「――さて、それでは最後のステージを整えよう」

 

そう言って説明を始めたザムザが言うには、舞台の端々に8つの宝玉が埋まっているから、各々好きな物を選べとのこと。

 

――確かに、舞台端にはピンポン球サイズの宝玉がハマっているのが見える……。

なんか、文字も書かれているみたいだけど――。

 

それぞれが宝玉を手に取って行く――。

 

「ちょっと待って、変だわ……!!」

 

何やらマァムが慌て出した……何でも、宝玉には英字が書かれているらしいけど、それはアルファベット順でも無ければ同じ文字がある訳でもない……。

 

「そりゃあ確かに、対戦相手を決めようが無いわな……」

 

「アンタ、よく聞き取れるなぁ――」

 

「耳は良い方だからな」

 

ポップに驚かれたけど、そんなに驚くことも無いだろう――。

何せ、俺たちが居る観客席は下段にあるから、舞台からは比較的近いし――小さな声も拾えるのは、耳が良いからだって自慢出来るか……って。

 

「ガメオベアとか――悪趣味過ぎるだろ」

 

「ガメ、オ?」

 

「いや、あの宝玉の文字を読める様に並べ替えたらGAME OVEAってなったらしい――」

 

等とダイたちに説明していたら――。

 

「こりゃあ何の冗談でえっ!!」

 

「冗談も何も、見た通りの意味さ――遊びは……ここで終りだぁっ!!!」

 

あのザンギエ……じゃなくて、ゴメスがザムザに噛み付いた――けど、次の瞬間っ!!!

 

「なっ、なんだッ!!?」

「ウオォオッ!!?」

 

宝玉が嵌まっていた穴から、突如として突起物が競り上がって来て――。

 

「と……閉じ込められる……!!!」

 

突起物に張り付いた傘状の膜が広がって――舞台上の選手たちを覆い隠そうとしていた――って、暢気に状況確認してる場合か俺っ!!

 

「ちょ――ッ!!」

 

俺は咄嗟に飛び出そうとしたが――そこで見た。

不敵な笑みを浮かべるイオリスの姿を――。

 

あんにゃろう……何か企んでるな。

 

そう思った次の瞬間には、舞台上は巨大な球体状の膜に覆われて、中の様子が分からなくなってしまった――。

 

「「「ああああぁぁぁっ!!?」」」

 

「な、なんとっ!?」

 

ダイとポップ、それに放心状態だったチウ――そして、迎賓席だと思う場所に居た王様っぽい人も、驚きを隠せない様子だった――。

 

ザムザが嘲笑を上げながら跳躍――球体状の膜に覆われた物体の頂点付近に着地した。

 

「ザムザどの……これはどういうことじゃっ!!!」

 

「ご協力感謝しますロモス王!!これで我ら魔王軍も大いに助かるっ!!」

 

わけがわからないよっ!!な、王様はザムザを問い質すけど――……今、魔王軍とぬかしおったか?

 

「魔王軍、だと……!?貴様は――!!!」

 

「キィーヒッヒッヒッ!!!」

 

耳障りな笑い声と共に、ザムザは身体に悪そうな色の煙に包まれた――そして、出てきたのは……。

 

「ま、魔族――!!?」

 

魔術師風と言えば良いのか学者風と言えば良いのか、そんな装いに変わって肌の色が血色悪くなったザムザが現れた――何を言ってるんだか分からないと思うから、簡単に説明するけど――ザムザは人間じゃなく……魔族だったんだよっ!!!!

 

な、なんだっry

 

しかし、魔族か――道理で感じたことのある気配だと思ったぜ――!!

 

「我が名はザムザ!!しかしその正体は人間では無いっ!!!妖魔士団長ザボエラが一子――妖魔学士ザムザ!!!」

 

「妖魔学士ザムザ!!?」

 

「ザボエラの息子だってぇ!!?」

 

「知っているのか雷……ポップ!?」

 

「魔王軍の軍団長の一人だ!!俺を罠に嵌めやがったのもザボエラなんだっ!!」

 

「あぁ、口に出すのも憚られる様な恐ろしい罠にお前を嵌めてきたって言う、あのザボエラだなっ!!」

 

「お、おう……」

 

またポップの目が泳いだ……バッシャバッシャとクロールしていた。

まぁ、それはともかく……。

 

ザムザは嬉々として説明した――捕らえた人間は『超魔生物学』とやらの実験用のモルモットにするのだと――。

 

人間は生命力があるから好都合とか、魔王軍に逆らう人間を一気に奪えて一石二鳥とかなんとか……イラッとする態度を取ってくれた――アイツはきっと友達いないな!!

 

「そしてロモス王!!貴様の命を奪えれば言うことは無しっ!!!」

 

「ぬぅ!!?」

 

ザムザは何やら手の平に魔力を貯めながら、物騒なことを宣う。

 

王様の護衛をしていた兵士二人が盾になる様に前に出たけど――駄目だ、アレを喰らったら王様も兵士たちも死んじまう!!!

 

俺は咄嗟に飛び出そうとして――。

 

「ポップ!!」

 

「おうよっ!!!」

 

同じ様に飛び出して――『飛んで』行った二人を見て、そんな暇なんて無いのに唖然としてしまった……。

 

響く爆音――ザムザの放った魔法が着弾した音だ。

しかし――。

 

「なにっ!!?」

 

王様は勿論、兵士二人も無事だった――ダイが身を挺して庇ったんだ。

肝心のダイには、傷一つ無い。

 

その後ろでは、万が一に備えてか――ポップが王様の前に出て盾になっていた。

 

――というか、二人が間に合いそうに無かったら流石に唖然となんてしてないって――いや、マジで。

 

――まぁ、それはそうと。

 

「なぁ、チウよ――あの二人、飛んだよな?」

 

「……飛んだねぇ」

 

俺だってジャンプは出来るけど、あの二人はこう……飛行したワケだよ。

 

「……どうやって飛んだんだ、アレ?」

 

「そんなこと、僕に聞かれても……たぶん呪文じゃないの……?」

 

チウにも分からないらしい……世の中、そのとき不思議なことがおこった!!――なぁんて状況が本当にあるんだなぁ……。

 

「なっ、なんだお前は……!?」

 

「ダ、ダイ!!ポップ!!お前たちも来とったのか……!?」

 

どうやら、ダイとポップは王様と知り合いらしいな――王様も、二人の登場に安心してるみたいだ……。

 

「ダ、ダイだとぉっ……!?」

 

一方のザムザは驚愕に顔を歪ませて、青い顔を更に青くしていた――。

どうにも、ダイの名前は魔王軍にも知れ渡っているみたいだ……。

 

まぁ、ダイくらいの実力者ならそれも当然なんだろうな……勇者って、敵側からしたら悪目立ちするんだろうし――。

 

「……って、考えてる場合じゃない!!」

 

「ど、何処へ!!?」

 

「決まってるだろ!!舞台上に捕まった選手たちを助ける!!――イオリスの奴が何かやらかすとは思うけど、一応なっ!!」

 

そう言って俺は今度こそ観客席から飛び出す――ザムザはダイたちに任せておけば問題無いと思うけど……。

 

……あの野郎が驚愕に顔を歪めたのは一瞬で――次の瞬間には、笑っていやがった。

 

おまけに呟いた言葉が、一石二鳥が三鳥になるかも知れない――だ。

 

……気を付けろよダイ、ポップ。そいつ、何かあるぞ……!!

 

俺は内心でそう思いながら、直ぐ様舞台上の球体に駆け付けたのだった――。

 

***********

 

一方その頃――舞台上に捕らわれた選手達は脱出を試みていた――だが。

 

「くそっ、冗談じゃねぇっ!!!魔王軍なんぞに捕まってたまるかよおッ!!!」

 

ゴメスがその剛腕を振るっても――。

 

「どけっ!!」

 

バロリアが疾風の如き突きを繰り出しても――それらは悉く跳ね返された。

 

「こ、これはただの檻ではないぞ……!!」

 

挙げ句の果てにはフォブスターの魔法すら通用しない始末……。

 

「……生きてるよ、この檻」

 

「えっ!?」

 

ゴーストくんの発言にマァムを始め、選手一同が驚愕を顕にした。

 

「ふむ……」

 

約一名……この男、イオリスを覗いて。

 

「ふんッ」

 

ボッ!!!と、音を置き去りにした裏拳を放つ。

音速を超えた拳打が与えた衝撃は、壁に余すこと無く伝わり―――吸収された。

 

「成る程……ゴムの様な弾力性で攻撃を弾く――いや、吸収しているのか。その上に高い再生能力を持っているらしいな……受けたダメージを回復している。おまけに魔法攻撃すらも無効化するとはな――差し詰め、生体牢獄と言ったところか……」

 

今度は壁を撫でながら、そんなことを呟く。

 

「だが生きているのなら、殺すこともまた出来る筈だが……」

 

周囲を見回し、そして天井を見上げる――。

 

(周囲の支柱を砕くか、或いは集約点である天井をぶち抜くか……)

 

しばし考え込み、幾つかの解決策を模索するイオリス――。

 

一方牢獄の外では、激闘の火蓋が切って落とされようとしていた――。

 

***********

 

「ポップ!!王様を安全なところへ逃がしてくれ!!」

 

「おうよ!!任せろ!!」

 

ポップと王様、護衛の兵士二人はその場を離れた――王様達を戦いに巻き込むまいという、ダイの意思だ。

 

「お前の相手はおれだっ!!!」

 

ダイは纏っていたマントを投げ捨てて構える。

臨戦体勢は整った様だ――しかし。

 

「キヒ……キィーヒッヒッヒッ!!!」

 

ザムザは警戒するでもなく――笑い出した。

 

「な、何がおかしいんだっ!?」

 

「おかしいんじゃない、嬉しいのさ……正直、お前が出てきた時は内心ヒヤッとしたが、本物の『竜(ドラゴン)の騎士』の力が見られるならば、こんなに喜ばしいことは無い――」

 

ザムザは語る――超魔生物学とは、超魔――魔族を超える者を生み出す為の研究であると――そして、その目標到達点は竜の騎士――その戦闘形態である『竜魔人』なのだと――。

 

「お前の父、バランが竜魔人の姿を見せた時、我々は確信した!!これだっ!!これこそが超魔生物学の到達点なのだと!!まさに神が造りたもうた究極の生物兵器と呼べる存在だとなっ!!!」

 

「へ、兵器だとぉ……!?」

 

「ククッ……その為には実験材料が必要だ――それがこいつらさ」

 

怒気を発するダイを尻目に、ザムザは得意気に語りながら足元の檻を踏みつける。

 

「いちいち実験の度に我が魔族の手下を犠牲にするわけにはいかんのでな、使い捨てのモルモットには体力の強い人間がピッタリなんだよ!!ウヒャハハハハッ!!!」

 

「な、なんてクズ野郎だっ……!!」

 

王様を避難させたポップにも、ザムザの高笑いは聞こえたらしい――嫌悪の視線と共に言葉を吐いた。

 

「そ、そんなことは俺が許さないぞっ!!!」

 

「ヒヒ……まぁ、せいぜい怒って戦うんだな――俺は見たい!お前が本気を出した時の力を……!!お前はまさに、飛んで火に入る夏の虫!最高のサンプルなんだぁ!!」

 

猛るダイに、平然とダイを煽るザムザ。

一触即発とも言える中、ザムザはトドメの一言を――。

 

「お前の親父みたいな……化物を造るためのなあぁぁっ!!キィーヒッヒッヒッ!!!」

 

解き放った――。

 

「―――――ッ!!!!」

 

そしてダイの怒りは頂点に達し――。

 

「だっ、だま「キャオラァッ!!!」れ、え、えぇ……?」

 

爆発して飛び出そうとした瞬間、奇声と共に飛来した何かによって、ダイの怒りの矛先は奪われた――。

 

「めごっぱぁっ!!?」

 

それは紅い鎧を着ていた、それは黒髪長身の男だった――それは、ザムザの顔面へ綺麗に飛び膝蹴りを喰らわせていた。

 

吹っ飛び、闘技場の壁に激突するザムザ――代わりに檻の頂上に着地したのは――。

 

「ユ、ユースケ!!?」

 

我らがヒーロー、勇者ユースケその人であった。

 

「悪いダイ。あまりにも腹が立ったから、思わずやっちゃったZE☆」

 

テヘペロ、とかやっても全然可愛くないが――悪びれもなく言ってのけるユースケは、きっと大物であろう。

 

「き、貴様ぁ……!!!」

 

「どうだ、俺の光魔法『シャイニングウィザード』の味は?」

 

「魔法って、思い切り蹴りとばしただけじゃねぇかあぁっ!!!」

 

怒りを顕に立ち上がるザムザに、会心のドヤ顔を向けて宣うユースケ――そんなユースケの理不尽ぶりに、ポップもツッコミを入れざるを得ない。

 

差し詰め、『ユースケ君のシャイニングウィザードォ!!ザムザ君が吹っ飛ばされたああぁぁっ!!!』と、言った状況であろうか。

 

「様式美って奴さ、気にするなっ!!」

 

「アンタなぁ……」

 

ニヤリと言ってのけるユースケに、ポップも思わず脱力――。

 

(しかし、平然と立ちやがったな……確かに俺はイオリスやピータン程、無手が得意なわけじゃないけど――)

 

冗談めかしながらも、ユースケは相手の戦力を計っていた。

 

(魔族だし、ギャグ入ってたし、アレくらいじゃ死なないだろうけど――ほとんどダメージ無しかよ……)

 

若干メメタァ!!な思考をしていたが、反面ユースケの瞳には真剣味が滲み出ていた――。

 

ユースケは基本、旅の中で培った我流の剣術と魔法を得意とし、格闘術はイオリスや、仲間であったピータン程に得意ではない。

 

それでも、その高次元で鍛え上げられた肉体から繰り出される一撃は普通の人間や、並のモンスターなら致命傷になっても可笑しくない物だ。

 

しかしザムザは鼻血や、口を切っての出血はあれど、打撃によるダメージは――ほぼ皆無であった。

 

「ククッ、貴様は確か予選最終戦で大暴れしていた方の片割れか……キヒッ、良いぞぉ……貴様も良いモルモットになりそうだ……!!」

 

「――随分と余裕みたいだけど、俺やダイたちが居るのにどうにかなると思ってるのかよ?てか、お前陰険過ぎ。絶対友達いないだろ?」

 

「四面楚歌とでも言いたいのか?俺にとって、竜の騎士だろうとなんだろうと物の数ではない――って、最後のは関係ないだろうがああぁぁっ!!!!」

 

「あっ、もしかして図星?そうだよなぁ、ニートやってた俺だって友達くらいいたもんな――きっと、ザムザ君は研究研究で友達も作れず、陰険な性格だから誰も寄り付かなかったんだな――で、一人ぼっちの『ぼっち飯』を食う羽目になってるんだな――ねぇ、ぼっちってどんな気持ち?ねぇ、どんな気持ち?」

 

「い、言わせておけばぁ……!!!」

 

「そこは『物を食べる時はね、なんというか、救われていなきゃ駄目なんだ――独りで、静かで、豊かで……』くらいの返しをしてくれよ――まだまだ未熟だな!!」

 

「知るかああぁぁっ!!?」

 

ユースケの言動に振り回されっぱなしのザムザ――ポップも、ダイも、王様達すらも、ポカーンとした表情を浮かべていた。

ザムザの余裕の仮面は既に剥がれ、最早完全にユースケワールドに呑み込まれていた。

 

「こ、こうなったら(?)貴様ら纏めて相手してくれるわ!!かかってくるがいいっ!!!」

 

「ふぅーははははっ!!浅はかなり妖魔学士ザムザ!!貴様のその台詞によって、貴様の運命は確定された!!!最早、貴様は我が手の平の上ッ!!貴様の敗北という世界線は揺るぎないものとなったのだッッ!!!」

 

臨戦体勢を整えるザムザに、ユースケはズビシッ!!と指差した。

――ユースケさんが楽しそうで何よりです。

 

「なんか、どっちが悪者なのか……分からなくなってきたぜ……」

 

ポップの疲れた様な一言に、王様と護衛の二人も深く頷いた。

 

「で、そっちはどうだチウ?」

 

「うぇ?」

 

そう言ってユースケは、ザムザとは別の方向に視線を落とした。

それに釣られてダイも、ポップも、ザムザもその視線を追った。

 

「だ、だめだよユースケ君……この僕の拳も、鋭い牙も通じないよぉ……」

 

「ピピィ〜……」

 

そこにはすっかり疲弊しながらも、諦めきれずに檻を剥がしに掛かろうとしているチウの姿があった。

近くにはゴメちゃんも一緒だ。

 

「ゴ、ゴミがぁ……!汚い手で俺の生体牢獄(バイオプリズン)に「そぉいっ!!」ぬぐぅ!!?」

 

チウが檻を触っているのが気に入らないのか、チウに向けてメラ系最上位呪文、『メラゾーマ』を放とうとしたが――ユースケの『フリーズストーム』によって邪魔された。

 

「お前の相手は俺たちだろう?余所見している暇があるのか?」

 

「き、貴様……さては、さっきからの妙な言動はこの俺の意識をその下等生物から逸らすためだったのか……だが、無駄なことだ!!!我が生体牢獄は、傷を付けることはおろか破ることなど不可能なのだからなぁっ!!!」

 

「えっ?」

 

「えっ……?」

 

ユースケの行動とその裏を読んだザムザだが、それでも尚、勝ち誇った態度を見せる……が、ユースケが浮かべたのはクエスチョンマーク。

 

周囲に沈黙が訪れる……。

 

「――その通り!!これは作戦!!作戦だったのさ!!けど、無駄かどうかなんてやってみなけりゃ分からないさ!!ウ○コが出そうで出ないからって、諦めずにトイレに籠れば会心の快便を捻り出せるかも知れないじゃないかッッ!!」

 

「絶対嘘だぁ!!しかも、例えが汚ぇぇっ!!!?」

 

思わず声を大にしてツッコミを入れたポップは悪くない――否、寧ろ正しい。

 

「え、えっと……」

 

「――落ち着いたか?」

 

「えっ?」

 

「俺には、ダイが何を抱えているのかなんて分からないよ。ドラゴンの騎士とか、超魔生物学とか、さーっぱりさ――でもダイが本気で怒ったのだけは分かった」

 

視線をチラリとダイに向けてから、再びユースケはザムザを見下ろして、続けた――。

 

「その怒りをぶつけるなとは言わない。むしろ、思い切りぶつけてやれば良い――けど、怒りで我を失うことだけは絶対にしちゃあ駄目だ!!――俺の友達もさ、親の仇を前にして一人で敵の城に突っ込んで行って……最後には敵の良いように利用されちまった……あの時は、本当に辛かったなぁ……」

 

「ユースケ……」

 

「だからさ、冷静になれってことだよ。ソイツは絶対何かを企んでる……だから冷静に、後悔の無いように全力投球しようぜってことさ!一人じゃ難しいかも知れないけど、ダイには仲間が居るだろ?俺も手伝うからさ――幸い、向こうも纏めて相手するつもりだったみたいだから、卑怯とは言わないだろうし」

 

仲間――ポップも、臨戦体勢を整えている。

マァムも、檻の中で活路を見出だそうとしている――。

ユースケは、冷静さをダイに思い出させる為に、あんな態度をとったのだと、ダイは理解した――。

 

「――わかったよ。ユースケの力を貸してくれ!!!」

 

「OK!!その言葉を待ってたぜっ!!」

 

ユースケとダイは互いに笑い合い、戦闘体勢に入った。

それを見て、ザムザは大いに嘲笑った。

 

「キィーヒッヒッヒッ!!無駄だ無駄だ!!何人で来ようとなっ!!!」

 

「さっきも言ったけど、やってみなけりゃ分からないだろ?」

 

「まぁ、良い……竜の騎士の力と共に、貴様の力も試してくれよう!!このザムザ様の研究の、モルモットに相応しいかどうかをなぁっ!!!」

 

「そうか、よっ!!!」

 

言うが早いか、ユースケは強烈な踏み込みを以て瞬時にザムザへ肉薄――聖剣を抜き放った。

 

「ぐぬぉ!!?」

 

それを咄嗟に避けることが出来たザムザは、堪らず空中へと飛翔する――。

 

「逃がすかッ!!!」

 

「ふんっ!『イオラ』ッ!!」

 

ユースケは追撃のフリーズストームを放つが、ザムザは中級爆裂系呪文『イオラ』で迎撃――フリーズストームを相殺してのけた。

 

「ぬぅ……」

 

「クックックッ――先程の剣撃もさることながら、このザムザですら知らぬ呪文――何より、俺の呪文と相殺するだけの魔力!!素晴らしい!!実に素晴らしい!!!――が」

 

大仰にユースケを皮肉混じりに誉め称えた後、両手を大きく広げ――ザムザは語った。

 

「俺は先の貴様の試合を見ていたぞ……貴様は高々度に跳び上がれる程の跳躍力を持っているが『飛べない』――飛行呪文である『トベルーラ』が使えないのだぁ!!!キィーヒッヒッヒッ!!地を這う虫ケラなぞ、こうして距離を保てば恐るるに足りんっ!!!」

 

「……ご高説どうもありがとう。確かに俺は、空を自由に飛べたりはしない――カエルやバッタみたいに跳ね回るのが精々さ……けどな」

 

ユースケはブスッとした表情から一転――構えを取りながら、ニヤリと不敵に笑う――。

 

「何かを忘れちゃいませんか、ってんだ」

 

「オオオォォォッ!!!」

 

「なっ……ぬおぐぅ!!!?」

 

得意気だったザムザは、横合いからの衝撃に吹き飛ばされ――再び闘技場の壁に激突していた。

 

――そう、『飛翔してきた』ダイに殴り飛ばされたのである。

 

「俺は飛べなくても、ダイは飛べるんだぜ?……お前は、俺が空を飛べないことを虚仮にしてくれたが――空に『飛ばされた』とは考えなかったのかね?」

 

ザムザに斬り掛かったユースケだが……その攻撃は、空中への回避を誘発するための物だったのだと――そう言ってのけたのだ。

 

「っしゃあ!!一気に畳み掛けるぜ、ダイ!!!」

 

「ああ!!!」

 

二人の勇者は、ザムザに休む暇を与えずに責め立てるという選択をした。

 

それは二人とも、気付いていたからだ――。

 

ユースケの膝蹴り、ダイの拳――致命傷になり得る打撃が、ほぼダメージになっていないことを――。

 

――ザムザの表情が、何処までも此方を嘲笑っていることを。

まるで、勝ちを確信したかの様に――。

 

何かある――そう確信したが故に、ユースケは舞台上の選手の救出よりも、ダイへの加勢を優先したのだから……。

 

激闘の火蓋は、切って落とされたばかりである――。

 

***********

 

「でりゃああぁぁぁっ!!!」

 

「おごっ、がはっ、おおぅ……!!?」

 

怒涛のラッシュ……一撃一撃が破城鎚の様な威力を秘めた、ダイの全力の拳がザムザを容赦無く叩きのめす――!

 

「ダイッ!!」

 

「!!せりゃあぁぁっ!!!」

 

ダイは呼ばれた方向へ、ザムザを殴り飛ばす――その先には……。

 

「――烈・激我允ッ!!!」

 

闘気の刃を構えて待ち構えるユースケの姿があった――!!

 

「ぬゴああぁぁっ!!?」

 

聖剣から射出された闘気の刃は、違うことなくザムザに命中――鋭い斬撃により、魔族特有の青い血を撒き散らしながら観客席に叩き落とされた――。

 

「やっ、やったぞ!!」

 

「むううっ……なんという力じゃっ!!ダイがここまでレベルアップしていたとは……!!!」

 

ダイたちやユースケ、それに舞台上に捕らえられた選手一同を除いて唯一、会場内に残っている王様と護衛の二人はあまりの圧倒的光景に、思わず手に汗を握っていた。

 

「それに、あのユースケって人の強いこと強いこと!!!」

 

「これなら楽勝!!むしろザムザが可哀想なくらいだぜ!!!」

 

「………」

 

王様達が興奮する中、ただ一人――ポップは厳しい表情を浮かべていた。

 

確かに状況はダイ達が有利だ……一方的と言っても良い。

だが、それでも不安は拭いきれない――。

 

「ユースケ、どう思う……?」

 

「真っ二つにするつもりで、撃ち込んだんだけどなぁ……」

 

ユースケの横に着地して、何やら会話を交わすダイ――二人とも、ポップと同様、厳しい表情だ。

 

それもその筈――。

 

「――ヒッ……ヒヒヒヒヒッ……!!今のは、効いたぞ……少ぉしなぁ……!!」

 

何度倒しても……ザムザは、平然と立ち上がってくるのだから――。

 

「勇者さまっ!!チャンスですっ!!!」

 

「一気に攻めこめーっ!!!」

 

傍目に見れば、ザムザは追い詰められている様に見える――王様達が声援を送るのも頷けるだろう――だが。

 

「……へ、変だぜ!?」

 

ポップには分かる――ずっとダイと一緒に戦ってきたポップには。

 

「ダイの竜の力は本気になりゃあ、山を砕き、大地を割るぐらいすげぇ破壊力なんだ――いくら魔族が人間より強い身体を持ってるからって、五体満足でいられるわけがねえ!!……なのに、あいつは……あちこち傷付いちゃいるが身体その物は全くの無事だ!!ダイだけじゃねぇ……ユースケも技の威力って意味じゃ、ダイに引けを取らないくらいの技を繰り出してるんだ……それなのに――!!」

 

ただの魔族が……規格外の攻撃をまともに浴び続けて、平然と立ち上がる異常性――それはポップは勿論、直に戦っている二人には顕著に感じていることだった。

 

「こりゃあ、もう一人くらい助太刀が必要かもね――チウ、そっちのほうはどう――」

 

おどけて見せながら、然り気無くチウの様子を伺うユースケ――すると、そこには……。

 

「って、どうしたんだよチウ!?滅茶苦茶震えてるじゃないか!!」

 

「わ、わからないよ!!?なんだか知らないけど、アイツを見てたらシッポが勝手にふるふる言い出したんだ……!!」

 

檻を開けようと足掻く動きを止め、ザムザを見てぶるぶる震えるチウの姿があった……!!

 

「ヒヒッ……そこのネズミは正しい……元来、動物というのは本能的に強い者には逆らえん様に出来ているからなぁ……」

 

「「!?」」

 

「貴様らも不思議に思っているのだろう……?『ただの魔族』である筈のこの俺の身体が、何故砕けないのか、何故切り裂けないのかを……キヒヒヒヒッ!!!」

 

ザムザが不気味に嘲笑う――あちこちからは打撃による血を流し、ユースケの熱血斬りによる傷は、斜め横に身体を大きく抉る様な傷痕を残している――。

 

しかし、それでも五体満足――四肢は砕けず、身体は繋がっている――挙げ句の果てには、喋るだけの元気もある。

 

「――こうなったら!!」

 

言うが早いか、ダイは拳を掲げる――。

 

「はあああぁぁーーっ!!!」

 

手の甲には光輝く、竜の紋章――その光は次第に強くなり、ダイは臨界にまで達したそれを――。

 

「『紋章閃』!!!」

 

放った――!!!

 

『紋章閃』

 

竜の騎士の必殺技の1つであり、その威力は山を砕き、貫く――。

竜の紋章を象った光線は、寸分違わずザムザに命中――しかし。

 

「ううっ!!?」

 

「マジかよ……!?」

 

そこには、やはり平然と立ち尽くすザムザの姿があった――そして、既にボロボロだった衣服は紋章閃の直撃を受けて胴体部分が弾け飛んでいた。

 

――そして、それはザムザの驚異の秘密を曝すことになる。

 

「「ああっ!!?」」

 

それを目の当たりにした者達は、驚愕に声をあげた。

服の下から現れたのは、普通の身体では無かった……それは、怪物の身体だったのだ。

 

「まさか……あいつ自身が既に……!!?」

 

「そう!!超魔生物は既に90%近くまで完成していたのだ!!このザムザ自身をベースにしてなぁ!!!闘気を操る力と、大猿系モンスターの柔軟な皮膚組織を以てすれば、その程度の攻撃はわけもなく捌ける!!!!」

 

ポップの疑問は、ザムザ自身が誇る様に語ることで答えとした。

そして――。

 

「貴様らの力は充分に見せてもらった!!返礼に見せてやろう!!100種類以上のモンスターの長所ばかりを取り入れて造り出された――究極の魔獣の力をっ!!!!」

 

その言葉を皮切りに、ザムザは変質していく――瞬く間にその肉体は変化していき――。

 

「グワラァアアッ!!!」

 

もう魔族の学士の姿は無く、そこにあったのは……巨大な魔獣の姿だけであった――。

 

***********

 

う・ん・ち・く☆〜ユースケの仲間編1〜

 

○ピータン

 

ユースケと共に戦った仲間で、親友とも言える存在。

勇者アルシオンの息子で、とある城の兵士として働いていた。

 

ユースケの仲間になってからは、共に苦楽を分かち合ってきた。

 

戦士でありながら、多少の魔法も使いこなす。

最大の必殺技は、父の弟子より伝授されたアルシオンスラッシュ。

 

ある時、父アルシオンの仇である魔将の一人、ザビエルの存在を知り――ザビエルの元に単身乗り込むも、死霊術により操られた父の骸と戦わされ、辛くもこれを撃破するが――父を手に掛けた悲しみの隙を突かれ、ザビエルに殺される。

 

その後、ザビエルの元に乗り込んできたユースケ達の前に、死霊術で操られて敵対――ユースケ達に倒される。

 

だが、悲しみにくれるユースケの隙を再びザビエルが突こうとした際に、最後の力を振り絞ってユースケを庇い、完全な死を遂げた――。

 

その際の怒りと悲しみによって、ユースケはピータンが修得していたアルシオンスラッシュで、ザビエルを討ち果たしている。

 

尚、ユースケ達が魔王やその裏に蠢く闇そのものを倒した際に、すひんくすの力によって復活を果たしている。

 

 




去年の内に更新すると言ったな?――あれは嘘だ!!

――いやすみません、本当に仕事が忙しくて……合間でサムライやったりハンターやったりしてたのは秘密うわなにをするやめry

――今後も不定期更新ですが、それでも宜しければお付き合い戴けたら幸いですm(__)m
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