報われない男の物語   作:羽付き羊

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8話「ご注文のパートナーは現在留守にしております」

あの後、断崖の奥へ進むと洞窟があったのでそこで一晩を過ごした。

解毒剤の為にこのまま進むのも手ではあるけど、サバイバル形式なら体力の温存は必須だろうと感じたからだ。

 

全裸で焚き火をして服を乾かして寝る。

別に全裸じゃないと眠れないとかじゃなくて普通に濡れた服のままだと体力が奪われやすいと思ったから仕方ない。

そりゃ海で着衣水泳しちゃった訳だから身体中がベッタベッタになってる。できればシャワーとか浴びたいがないもんはないから諦めるしかないじゃんね?

 

……それにしても他の人がいるかも知れないところで全裸になるのは嫌だなぁ。

理にはかなっているかも知れないけどモラルというか心情的には凄く嫌だわ。

でも生き延びる為には体力が必要だし、寝ておくてしよう……

 

特に何事もなく翌朝になり、第一チェックポイントがあるであろう場所に着くと誰もいなかった……

 

あれ?

確かにここが第一チェックポイントって二次試験の説明された時に聞いた筈なんだけど誰もいないとかマジか?

 

不安に駆られながらも奥に進むとその場から撤収しようとしている女王騎士の人がいた。

 

「えっ?まだ受験者いたの?」

 

なんか驚いてた。

いや俺の方が驚きなんですけど?

なんでチェックポイントに人がいないんだよ!

 

「い、いや、あのね?この第一チェックポイントはもう私しか試験官はいないのよ。一応確認の為にね残ってたんだけど……どうしようかしら?もう他の受験者は第二チェックポイントに行っているからアナタだけしかいないし……」

 

「いや、サバイバルと言われて特に時間制限も言われてなかったので7日までに辿りつけるようにしていたんですけど……」

 

実は解毒薬は数が限られているらしい。

だからこそ急がないといけないのは分かっていたけど、まさか第一チェックポイントで詰むとは思ってもみなかった。

コッチは命がかかってくるので慎重にならざるを得ないからそりゃ少しは遅くなるよね?

 

それで何?ここでリタイアできるの?

リタイアできて解毒剤はもらえるなら全然OKだし、というかむしろラッキーなんだけどなぁ……

 

「あ~、隊長ですか?実はですね……まだ受験生がいたのですが……ええ、そうですねもう後には来ないかと…リタイアさせますか?えっ、残りですか?そうですね、予想より人数が少なかったので後6つほどは残っています」

 

「遅くなった理由ですか?受験生が言うには、サバイバルだからこそ7日間で目的地に着くようにしていたと言っていますね……え?そうですね、目付き悪い感じの……えぇ!?ボルト家のディファイ君なんですか!?……もっと凛々しいかと思ってました」

 

余計なお世話だよ!

 

「はい、はい、そうですね。例外は認めないし私情は挟まないのが入団試験の掟ですもんね」

 

「えっ、それって……確かにそうですもんね、なら仕方ないですね」

 

電話の会話越しに聞くと何やらリタイアできそうな感じの会話をしている。

いやリタイアするにしても解毒薬をくれないと困るからそれだけは本当に考慮して欲しいんだけど……大丈夫かな?

 

「ええっと、アナタはサバイバル形式という本質を理解しています。なので特別にここの試験は通過できます。」

 

やったね!

 

みたいな感じで解毒薬の材料の一つを渡された。

実はこの第一チェックポイントは受験生のタイマンバトルで勝者には解毒薬の材料を渡され、敗者は材料が渡されずに進む事になるらしい。

だから解毒剤がなくても第一チェックポイントは通過できると試験官に言われた。

 

ただ次の試験は本来ランダムで2人1組で組むらしく、だから1人で進むことになるのは不利になる事も多いのでそれを考慮して解毒薬を渡されたとのこと。

 

確かに2人1組の場合は三つのパターンがある。

どちらも解毒薬を持っているパターンとどちらも持っていないパターン、この場合は利害が一致しているので何事も問題ないだろうが最後の片方だけ解毒薬を持っているパターンなら最悪だ。

そうじゃないだけマシと考えるべきだとしても、こういう強制でペアを組む場合は大概2人1組じゃないとクリアできない試験があるってことなんだよね……

これだけ渡されたって嬉しくないんですけど?

 

「では頑張ってね」

 

試験官の人はその言葉を最後にテレポートして消えた。

 

「どうすればいいの?」

 

そんな俺の言葉は残念ながら誰も答えてくれなかった。

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10分程呆然としていたが毒が全身に回ったら命の危険なので、とりあえず先に進んでから考えようと進むが足取りがすげぇ重い。

そして進んだ先は真っ暗やみの洞窟だった。

この洞窟は凄く恐ろしく人を殺す気満々のトラップが満載だった。

だがしかしマナコントロールが得意な俺はマナ感知も得意なので、楽勝でクリアできた。簡単に言えば真っ暗闇でも“凝”を使えば大丈夫だということ。

 

ただ途中で人骨あったので泣きそうになった。

 

これを見ていると、女王騎士って団体は治外法権で法律とか関係ないんじゃないかと……

なんかリタイアできるか不安になるわ。

リタイアしても本当に死ぬかもしれないので、俺は頑張って進もうと思う。

 

洞窟を抜けてとにかく歩いて行くと何やら声が聞こえてきた。

 

「く、4人が相手ではファンタティック・パエールも使えない……」

 

「けけけ、おいおい俺達から逃げられるとでも思ってんのか?」

 

ベタすぎるシチュエーション。

小太りの男の受験生が他の受験生達に囲まれていた。

 

これが女の子なら良いのに、何故に男なのか……

小太りの男が逃げているのを追いかけている男達の4人組。

いや確かに解毒薬がないならば奪うしかないにしても、騎士道精神は何処に行ったのやら……

極限状態で思考回路がおかしくなってんだな多分。

 

こういう奴等は大抵受からないのだろう。

まぁ命が掛かっているのに騎士道精神うんぬん言ってる場合じゃないのは分かるけどね。

 

そんな事を思ってスルーして進もうとすると小太りの男は狙っているのかと思うほど真っ直ぐに俺のとこまで走ってきた。

いや、こっち崖で行き止まりなんだけど!!?

 

「ア、アナタはディファイ=R=ボルト……」

 

あれ?何で俺の事知ってんの?

俺は君の事は知らないよ?

 

「な、アイツはディファイ=R=ボルトじゃないか?」

 

「奴が相手じゃ、俺達も危ういぜ…」

 

「だが、どうする?解毒薬が無ければ俺達死ぬぜ?」

 

「同盟の他の奴らを呼ぶか?」

 

「いや……戦うしかないだろう。相手が“仮面”であろうともな!」

 

 

“仮面”って何さ?

そう言えば俺の事“仮面”とか言ってる奴が騎士学校でもいた気がするぞ?

 

……もしかして自作の“仮面ライダー”のコスプレがバレタのか!?

 

いやコレは小さな時から大好きでやってきたことだけど、絶対バレナイようにしてたのに……

 

「よし、行くぜ!!」

と覚悟を決めた目をして襲いかかろうとしている4人組。

 

ちょっと待て、何で俺も襲う?

解毒薬の材料持ってるの分かったのか?

いやいやバレる要素なかったじゃん!完璧に八つ当たりじゃん!

勘弁してくれよ……

 

このまま不様に解毒薬を渡すと俺が死ぬかもしれないのでとりあえず剣を抜いて威嚇する。

 

「どうでもいいんですけどね…」

 

溜息を吐きながら構える。

隙だらけの構えで……俺は剣術苦手なんだよな。

 

「俺に手を出して無事に生きられる度胸あるのか?」

 

ハッタリ作戦、言葉はポンポン出てくるが心臓バックンバックン。

まぁイノシシの時程ではないにしても、普通に4対2は不利だって。

 

「か、構うもんか!!」

 

そうだ、そうだ!!

とか言って襲う気満々の男4人。

というか俺は関係なかったはずなのに、何故か俺が狙われている件。

襲われていた方の人間を見ていると、全身がケガだらけで動くのも辛そう。

実質4対1じゃん……

 

こうなるとハッタリ作戦よりすり替え作戦の方が有効だろうな……

 

「……何を焦っているかは知りませんが先に進んでからの方が効率良いんですよ?」

 

剣を構えるのを辞めて地面に突き刺す。

剣は意外と重いのでずっと持っていたくないんだよね。

腰にぶら下げるの良いけどずっと持ってるとしんどい。

 

「何を言ってる?」

 

と不思議そうに聞いてくるリーダー格の男。

……よしかかったかな?

 

「今解毒薬を集めた所でまた奪い返される可能性があるでしょう?」

 

「……まあそうだな」

 

「なら最終チェックポイントで待ち伏せとかしている方が確実に効率良いじゃないですか」

 

言われてみればそうだな……

みたいな感じになってきた4人組。

とりあえず成功しそうだな。

これも俺の事を少し強いと勘違いしているっぽいおかげだろう。

まぁ、十中八九ルカ君を倒したせいだろうが……

 

「第一、ここで戦うなら……」

 

と言いながら刺していた剣を抜いて、俺が戦うぜ?という雰囲気を醸し出す。

 

まぁここで戦われても負けるんだけどね。

 

……ちょっと待て、よくよく考えると別に煽る必要なかったじゃん。

あれ?これってひょっとしたらミス?

やべぇ……

 

「それもそうだな……よし先に進むぞ!」

 

「「「おおう!」」」

 

4人組はそのまま何処かへと行ってしまった。

冷や汗ダラダラだったのだが、上手くいったようで良かった……

 

「あ、ありがとうございます」

 

小太りの男が隣に立ってた。

そういえば居たね、自分のことで必死すぎて一瞬忘れてたけど……

 

「大丈夫ですか?」

 

このまま無視するのもなんか気不味いので当たり障りのない感じで聞いてみた。

 

「は、はい。でも良かったですか?あんな事を教えても……」

 

不安そうに聞いてくる小太りの男。

仕方ないじゃん、とりあえず目先のことを何とかしてからじゃないと死にそうになるからな……

後の事を考えてたらやってけないんですよ。

 

「……最終チェックポイントに行ける実力があるなら意味はあるかもしれませんね。」

 

最終チェックポイントに着く前にあの4人組はリタイアするかもしんないから良いだろう。

というか受験生同士で戦って、ただでさえ難易度ナイトメアのこの二次試験を難しくする必要はないじゃん。

 

「成程……流石は“仮面”と言ったところですか…」

 

おい、“仮面”のコスプレは今は関係ないでしょう?

 

「別に関係ないですよ。それよりアナタのパートナーは?」

 

パートナーいないなら俺と組んで欲しいんですけどね。という意味合いを込めて聞いた。

流石にずっとボッチだと寂しくて辛いんだよね。

 

「先程はぐれたみたいですね……」

 

はぐれたのか?

ならちょうどいいじゃないか!

僕と契約してパートナーになってよ!

 

「では、私ははぐれたパートナーを探しにいきます。」

 

誘われる前にお断りされました。

ぐっ……好きな女の人が既婚者で子供付きだったから最初から付き合えないみたいな想いを二度も味わう事になろうとは……

なんてこったい……

 

「ありがとうございました」

 

俺の方を見ながらそう言って先に進もうとしている。

そして思い出して欲しい、ここは崖であるのでそのまま進むと普通に落ちるのだ。

 

「おい、そっちは!」

 

「大丈夫ですよ、では……ってわああぁぁぁぁぁぁ――――――」

 

止めようとしたところから更に一歩踏み出して前に進もうして崖に落ちていった…

だから言ったのに……

 

俺の方を見ながら、崖に落ちて行くとか滅茶苦茶に罪悪感を感じるんですけど…

お、俺のせいじゃないよね?

……ごめんなさい。

 

 

 

崖から真っ逆さまに落ちていく私、パエール=フォン=キゾーク。

ここで地面にぶつかったらいくらなんでも危ないなと思いながら落下していくと落下地点に人が居て、そのままの凄い勢いでぶつかってしまった。

 

「痛ぇ!!」

 

「エルト大丈夫か?」

 

「何すんだ!……ってパエール?」

 

胸倉を掴まれながら前の男を見るとそれはエルト君だった。

痛いで済む辺り彼も中々人間を辞めている。

 

「……そうか、そんな事があったのか。」

 

崖から落ちてきた経緯を話すと分かってくれたようだった。

 

「それにしてもボルトが、そんな事を言うなんてな」

 

とエルト君が少し怒った風に言った。

確かにディファイさん程の実力があればあの4人ぐらいなんとかなりそうなものだ。

……ただそれは私が居なかった場合だが。

 

「エルト、お前の気持ちも分かるがボルトは恐らく効率を考えたのだと思うぞ?」

 

「効率だ~?そんなんもん関係ないだろう!?悪い奴はぶっとばす!それが女王騎士だぜ!?」

 

と興奮気味なエルト君。

これはエルト君が真摯に試験を受けようとしているからなのだろう。

しかし、ディファイさんの行動は分からなかったらしい。

確かにあの人の行動は単純ではないから理解しにくい人は理解できないのだろう。

 

でもイージス君はディファイさんの企みに気付いているらしい。

流石は六大公爵家のブリュンヒルデ家だな。

 

「良く考えてみろ。ボルト1人なら難無く勝てるに違いないが、今回はパエール君が居たのだぞ?」

 

「そうです。エルト君、ディファイさんは私の今後の為にやってくれたんだと思いますよ?」

 

「え?どういうことだ?」

 

エルト君はまだ良く分かっていないらしい、まぁ彼の考える事は普通に考えただけだと分かりにくいから仕方ないだろう。

 

ディファイさんの考えを理解するには前提条件がある。

 

3パターンある2人1組のペアの解毒剤を片方しか持っていないグループは既に分裂してしまい解毒薬を持っていない者達で同盟を組んでいるのだ。

これに元々解毒剤を持ってないペアが加わり受験生同士の戦いが加速してしまったという事だ。

 

「ボルトはおそらくその4人組を使って同盟を組んでる他の奴等に今は無駄な戦いをさせないようにしたんだ」

 

「同盟?」

 

「エルト君、解毒剤をもらっていない受験生が固まっているのは言いましたよね?」

 

「ああ……まぁそっちの方が解毒剤を持って1人でいる奴等に対して効率いいからじゃないか?」

 

「ということは解毒剤の持っていない受験生達はとりあえず解毒剤の“一部”である第一チェックポイントの物を奪おうとしますよね?」

 

「まぁ、そうなるな…」

 

「解毒剤は数あるチェックポイントにあり、それらをブレンドしなくては結局効果は得られないなのは分かるな?」

 

「だから何だよ?俺には分かんねぇ~ってば!」

 

「そこでボルトの言った言葉を思い出してみろ」

 

「“最終チェックポイントに行けば効率よく解毒剤が横取りできる”…だから何だよ?」

 

「所詮は効率を考えて結成された同盟だ。ボルトの言っている事は良く考えてみたら確かにそっちの方が効率がいいだろう?」

 

「……ああ!?成程な、そうなると同盟の奴等にその事が伝わって無駄に戦いが起こらないってことか!」

 

「それもありますが、最終チェックポイントに着くまでは先に進もうとする人間が増えるでしょうね。だけどよく考えてもみてください。そこに行くまでには数多くの難関試験が多く残っているでしょう?」

 

「そこで脱落者も増えるな。同盟と言っても所詮は負けた奴等の集団だ。試験となればクリアできるのはわずかだろう……」

 

「大体、負けた奴らの実力じゃ、そこまで辿りつけるかあやしいものだしな。人数が多い所で変わりねぇわな……」

 

「おそらく私を助けてくれたんだと思います……ボロボロだった私を助けると同時に他の受験者に数の不利がないように……」

 

「そうだろうな、パエール君の事がなければわざわざそんな周りくどい事をする訳がないし」

 

「……凄いな、ボルトって……自分の事じゃなく人のことまで考えて正々堂々と女王騎士試験に挑もうとしてる」

 

「ああ、奴はこの試験が数の利で騎士道精神を持ったものが負けるのが嫌だったのだろうな」

 

「……っへ、面白いなイージス」

 

「ああ全くだ」

 

イージス君とエルト君達は喜んでいたがそれもわかる。

ディファイさんのような実力者が正々堂々と戦っているのだから。

 

「パートナーを探すのはもう無理そうですね……」

 

崖の方を見ると登りにくいので登るのは難しいので上には行けない。二次試験の最初の崖はまだ登れていたが今回のは厳しい。

 

「なら俺等と来るか!」

 

「そうしてくれ。まだその事が伝わってない同盟の奴等の他にも違うグループがいるかもしれないしなパエール君がいるならこちらも心強い」

 

「すいませんが、お願いします」

 

この試験どうやら厳しいだけのものではないらしい。

こんなにも正々堂々受けている仲間がまだいるのだから…

 




うーん、arcadiaの方より原作知らなくても分かりやすくを心掛けているんですけど何も触れられてなくて少々不安です

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