報われない男の物語   作:羽付き羊

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10話「そう簡単には合格できない」

「ディファイさん!無事だったんですね!」

 

「ボルト!無事だったのか!?」

 

ルカ君とイージス君に安否確認をされているんだけど大丈夫だからここにいるんだよなぁ……

 

「大丈夫ですよ」

 

後ろの石柱にもたれながら干し肉を食べながらそう答えると二人は安堵していたようだった。

心配されるってなんだか嬉しい。

 

そんなルカ君とイージス君の顔を見ているとシェリーちゃんから伝言を預かっていた事を思い出した。

 

「ああ、そういえばルカ君、シェリーちゃんから伝言があるん……」

 

「シェリーから伝言!?シェリーは無事だったんですか!?」

 

ガス!

ガス!

 

肩を激しく揺さぶるのは勘弁してください!

当たってるから!

後ろの壁に後頭部が何度も当たってるから!

物を食べながら六大公爵家の人と話してたのは謝るからぁ!!

 

「ルカ、落ちつけ!」

 

「あっ……す、すいません」

 

イージス君のナイスフォローがあったのでルカ君は手を止めた。

しかし、タンコブが雪だるまのように積み重なってしまって超痛い。

もうちょっと手加減してくれても良いんじゃないかい?

 

「で!シェリーの伝言って何ですか!?」

 

「無事ですから安心して試験を受けて下さい。との事です」

 

そんな感じのニュアンスの言葉を言っていたと思う。

別に多少違っていた所で問題ないだろう。

 

「良かった……生きてたんだ……」

 

そのままへたり込むルカ君。

相当シェリーちゃんの事を心配していたらしい。

確かに俺とシェリーちゃんが第二次試験で出会った時の事を考えると心配するだろう。

そりゃだってあんなに高い場所から落ちてきたし、普通は死んでいると思っても不思議はない。

それが無事だと分かればそれは安心してへたり込むのも仕方ないだろう。

 

「試験はリタイアという事ですが恐らくは無事だと思いますよ」

 

一つ気がかりなのは毒の事だけど、ジ―クさんならなんとかしてくれるだろう。

 

「お前無事だったんだな……あ~あ、心配して損したぜ」

 

エルト君が手で鼻を擦りながら話しかけてきた。

結局何もしてない俺よりも姫様を抱えて定刻内にチェックポイントに着いたキミに拍手を送りたい。

 

「試験が終わり次第、あの事についてお話があります」

 

エルト君の隣にいた姫様にそう耳打ちされた。

 

「……分かりました」

 

まぁ何とか誤魔化せるだろう。

これでも誤魔化すのは得意な方だし言い訳を考える時間さえあれば……

 

「これで俺達も女王騎士か~」

 

ふいに落とされたエルト君の衝撃発言。

 

え?そうなの!?

まだ二次試験で最終試験残ってるんじゃないの?

俺何も言い訳考えてないよ!?

 

「いや、エルトまだ試験が残っているぞ?」

 

「えっ!!マジかよイージス!?」

 

よ、良かった……

これでまだ考えられる余裕がある。

下手な嘘でも吐いてそれがバレたら……

考えたくもない。

 

そんな会話をしている内にいつの間にやら王=道隊長が最終試験のルールを説明していた。

 

「次で最終試験だ」

 

うーむ、それにしても綺麗に剃ってるなぁ……

――っは!

頭がそこまで働かないせいかくだらない事を考えてしまってるぞ、気を付けないとな。

 

「最終試験まで残ったのは29人…」

 

ドサッ……

 

受験者の1人が毒に耐えきれずに倒れてしまった。

……やっぱり試験を早くクリアしても意味なかったみたいだな。

確かに早くクリアした分だけ休めるとは言え毒が回ればアウトだし、この試験てすごい理不尽な気がする……

 

「28人か丁度良い2チームに分かれてもらおう。勿論解毒剤は飲まないでだ」

 

え、まさかの解毒剤飲まないパターンとな!?

嘘だろお前、どんだけ厳しい試験なんだよ……

 

「そして最後まで勝ち残ったチームがそのまま女王騎士となる。いいな?」

 

はい出た、完全に運任せのパターン。

でもこの場合は負けたとしても自分の役割をこなせていたかどうかで受かるパターンもなくはない。

 

解毒剤が貰えるのであればそのまま負けようかと思ったけど、まだ貰えていないのでリタイアもできない。

 

なら理想はイージス君とかルカ君とかカルマ君とかジェダ君とかエルト君と一緒のチームになって勝利すること。

もし俺だけこの人達と違うチームなら死ねる。

 

そして運命のくじびきの結果、イージス君、ルカ君、カルマ君と……キャロルちゃんと一緒になった。

まぁ六大公爵家の多いチームなので安泰と言えば安泰だろう。

 

「ディファイ=リボルト!私と一緒なら合格間違いなしよ。良かったわね?お~ほほほ」

 

うん、何度も言ってるのに名前を何故間違えるのかよく分からない。

キャロル=ルナハイネン、六大公爵家であるルナハイネン家の一人で六大公爵家でも珍しい女性の女王騎士を多く輩出している家の娘さんである。

そして彼女の性格はツンデレお嬢様の一言で大体は説明がつくのでお察しである。

 

「よろしくお願いします、キャロル嬢」

 

正直な話この子の相手をするのは苦手なんだよなぁ……

話を聞いてくれないから面倒臭いのが一番の理由だけど。

 

くじ引きを全員引き終わった所で最終試験のルールを王=道隊長から聞くと相手チームを制限時間以内に多く倒すか全滅させたら勝利という単純明快な物。

 

しかし、このまま用意スタートと戦うのではないらしい。

戦場は森の中、自軍のチームと相手チームのスタート地点を別々にしてから開始というものである。

森という視界が悪い場所を上手く使って敵を倒すかが問われるのだろう。

 

そしてスタート地点に移動する間にルカ君がいたので話しかけようと試みると左手に何か黒い物体が付いていたのに気付いた。

 

「そういえばルカ君、その手の黒いモノは何ですか?」

 

「コレですか?コレは、うぐっ…」

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「僕も良く分かりませんが、魔黒装(ダークギア)という邪悪なものだと……」

 

厨二病……

確かにそういう時期ってあるもんね……

てか一次試験の時は着けてなかったよね?

というか二次試験の最初の時も着けてなかった筈だよね?

一体いつ装着したのだろう……

 

「何を言ってるんだ!そんな事は絶対にさせない!」

 

それを聞こうとしたらルカ君は一人で叫んでいた。

毒が頭に回ってきてしまったのかな?

なんか近づきにくいオーラを出していたので隣で走っていたイージス君のところに行っておこう……

 

 

『宿主様よ、相手をもっと疑うべきではないか?』

 

直接脳内に語りかけてくるコイツは応えるもの(アンサラー)という魔黒装(ダークギア)はシェリーを助けられなかった負い目を感じたまま第1チェックポイントに到着し解毒剤を懸けて戦った後にいつの間にか腕に付いてあったものだ。

 

「疑う理由がどこにあるんだ?」

 

『あんな高い場所から落ちたんだ普通は死んでいるだろう?宿主様にあえてそう言って後から絶望をする顔を見るのを楽しんでいるんじゃないか?』

 

こういった僕を不安にさせる言葉をいつも使って来る。そのせいで僕は心が闇に飲まれた様な感覚になり一匹の親の龍を殺した。

自暴自棄になっていた事もあるが魔黒装(ダークギア)と呼ばれる存在は心の闇の部分に呼応し力が強くなるのだろう。

その後イージスやエルト君の力もあり、この応えるもの(アンサラー)を押さえ込む事に成功したが少しでも油断すると意識を持っていかれそうになる。

 

『ふむ、こうなればディファイという宿主様の心をたぶらかす者を排除するべきか』

 

「何を言ってるんだ!そんな事は絶対にさせない!」

 

嘘かどうかは試験が終われば分かる話だ。それにディファイさんは正々堂々と試験を受けているのに僕が魔黒装(ダークギア)なんて自分の力ではない物を使う訳にはいかない。

それに魔黒装に負けていてはグラム家を建て直すなんて夢のまた夢だ。この試験必ず受かって見せる。

 

 

「もう最終試験か……長かったがカルマやボルト、ルカと一緒なら負けはないだろう」

 

「イージス君にルカ君もいますもんね。お互い頑張りましょう」

 

俺を含めてくれているイージス君の優しさプライスレス。

それにしても何だろう、彼に妙な色気を感じるのは?

俺はガチホモではない筈なのに……

 

「ああ、私も公爵家の跡取りとして絶対女王騎士にならねばならないからな」

 

「イージス君なら大丈夫ですよ……そういえば昔はディファイって呼んでくれてたのにどうしてボルトって言うようになったんです?」

 

「!?そ、それはだな……あ、あれだよアレ」

 

「アレって?」

 

動揺してる?しかも顔が赤いし、俺怒らせるようなことしたかな?

 

「そういえば最近妹さんに会ってないけど元気にしてますか?」

 

「……ああ元気にしてるぞ」

 

あれ、元気がなくなった?世間話をしていたつもりなのに……

もしかして地雷?

これ以上踏む前に退散しておこう。

 

「じゃあ頑張りましょうね」

 

「ああ」

 

まだ開始時間までは余裕があるので、先程からこちらをずっと見てくる全身黒でコーディネートされている黒づくめのローブの男の子にも話してみる。

 

「何でこっちをずっとみているんですか?」

 

もしかしたら変な物が付いているかもしれないので確認してみた。

 

「……別に何でもない」

 

……じゃあ何で見てたの?

と聞きたいが何かあまり近づきたくないオーラを醸し出していたので聞くのを辞めた。

 

「シモンズだ、これからよろしくな」

 

「ディファイです、よろしくお願いします」

 

以外と礼儀正しく挨拶されたから返しておいた。相手が名前を言ったら返すのが礼儀だもんね。

 

そんな会話をしているとカルマ君が話しかけてきた。

 

「ディファイ、お前とは同じチームか……誕生日に試験とはお前も大変だな」

 

「誕生日だからサービスしてくれるんなら別に良かったんだけどね」

 

カルマ君とはこの中にいる面子で一番付き合いが長い。公の場では敬語を使うがプライベートならこんな口を聞ける程の仲だと自負している。

 

因みに今日は俺の20歳の誕生日。

もうこの時点で20歳未満ではないんだが受付時の年齢らしいので大丈夫とのこと。ややこしいわ!

 

「頑張ろうね。カルマ君と一緒なら大丈夫だと思うけどさ」

 

まぁなんとかなるだろう、カルマ君がいるなら百人力だし。

 

「……俺はお前と戦いたかったがな」

 

「え?」

 

「イヤ、何でもない」

 

……俺と戦いたいって言った?

いやいや俺の方が負け越してるのになんで今更戦う必要があるの?

 

「では始めっっ!!」

 

隊長の試合開始宣言と共にカルマ君が敵陣があるだろう方向へ先行してしまった。

 

「カルマ!」

 

「おい!!」

 

制止の声をまるで聞かないのはいつも通り過ぎて笑えてくるな。

 

「ボルト!カルマを追わないのか!?」

 

「速く行かないと!」

 

ルカ君にイージス君は単独行動しているカルマ君に不信感を持っているのだろう、確かにその気持ちも分からなくもない。

でもカルマ君って昔からああいう面があるからなぁ……

 

 

「カルマ君が敵陣に1人で突っ込んでいるのは敵にとっても予想外でしょうから、敵も虚を突かれて混乱してるでしょうね」

 

敵陣に一人で突っ込んで敵チームの動揺を誘う……

という風に考えている訳ではなく、さっさと試験を終わらせて家に帰りたいんじゃないかな?

 

いつも唐突に行動するカルマ君のした事をフォローする俺の身にもなって欲しいわ。

 

「ああ、そうだな……成程そういうことか、全くいつもお前には驚かされる……」

 

「ははは、流石は“仮面”と言ったところですか?」

 

「じゃあ行くぞ!ルカ!!」

 

「はい!!」

 

納得した様にルカ君とイージス君は行ってしまった。

まさかとは思うがさっき会話してたのがこの打合せで俺が指示したとか思ってる?

 

「……ふ~ん、成程な。お前って狡賢いんだな」

 

残っていたシモンズ君もそう言って敵陣へと向かって行った。

どんだけ好意的に俺の事を解釈してるの?

お兄さんちょっと君達が純粋過ぎて将来心配だよ……

 

どうせカルマ君が無双しているだろうとゆっくり歩いていたのだがその予想は外れてしまった。

 

「ほぅ……見違えたな」

 

「第1チェックポイントの時の俺と同じと思ってたら痛い目にあうぜ?」

 

エルト君がカルマ君と渡り合っていた。

というか第1チェックポイントって一週間前だよね?

もしや一週でカルマ君との差を埋めて来たとか言う感じ?

とんだチートだなそりゃ。

 

エルト君の剣とカルマ君の斧が交差するとその衝撃で弾かれ、互いに自分の武器を一瞬手放す。

弾かれた武器はクルクルと回転しながらお互いの元に戻ろうとするが二人は自分の得物ではなく相手の得物を取り再度撃ち合いを始めようとしていた。

 

その時だった。

黒い何かがカルマ君を覆い、カルマ君のマナを吸い取っていく。

 

「テメぇをずっとぶっ殺してやりたかったんだよぉ!!」

 

とジェダ君が叫んでいたのを見て、それをやったのがジェダ君だという事が分かった。

 

 

魔黒装(ダークギア)!?ジェダが何故それを……」

 

ルカ君が何か言っていたが頭に入って来ない。

 

何やってんの?

兄弟喧嘩でもしていいこととダメなことの区別ぐらいは分かるだろうに……

カルマ君が横たわっている。

死んではいないようだが、マナの残りの残量的には結構危ないだろう。

 

どうやらあの兄弟いや、バンニール家には大きな擦れ違いがあるようだ。

確かにジェダ君には教えてないってカルマ君言ってたから余計だろうなぁ……

 

それにしたってやりすぎじゃないか?

兄弟喧嘩で収まる話じゃなくなるぞ?

 

そんな心配を余所にジェダ君は大暴れしていた。

カルマ君に勝って気分が高揚しているんだろうな……

それにしたってやり過ぎだろうに。

 

皆でジェダ君を止めに入り試験は受験生の判断で一時中断になった。

 

エルト君やイージス君、ルカ君を筆頭に応戦していたのだが中々手強い。

ジェダ君自体も六大公爵家に恥じない実力の持ち主だから当然と言えば当然なんだがこの状況ではそれがキツい。

苦戦の予感をビンビンに感じていたのだがそれは予想の斜め上をいった。

瀕死状態かと思われていたカルマ君がジェダ君の一瞬の隙を突いてジェダ君の黒い何かを剥ぎ取り、そして剥ぎ取る際にジェダ君のマナを大量に奪っていったのだ。

 

おいおい、兄弟喧嘩もそこまで行くと洒落にならないんじゃないかな?

いや仲直りして欲しいからこそ余計に話がややこしくなるような事はして欲しくなかったが、そのせいでこうなったのかも知れない。

 

「ほう、コイツは良い。力が漲ってくるようだ……」

 

カルマ君に憑いた黒い何かは俺達を襲ってきたのでジェダ君からターゲットはカルマ君に代わり、それを止めようと他の名前も知らない受験者達が一斉にカルマ君に攻撃を挑んでいく。

 

だけどカルマ君はその攻撃が届く前に何やら爪のような装備品が伸ばし受験者のマナを吸いつくそうとしている。

マナは精神力ではあるが無理矢理限界を越えて奪えばその人間は死んでしまう。

あの爪は危険だ。このままではカルマ君が日常生活に戻ってこれなくなる……どうしたら良いんだ?

 

とその時俺の目の前に20cmぐらいの蜘蛛が!!

俺は思わず持っていた剣をブン投げた。

その剣がカルマ君の魔黒装に向かって一直線。しかしカルマ君はそれを素早く察知して避けた。その際に爪に捕まっていた受験生達は解放された。

 

……結果オーライ!

 

本当にどうしちゃったんだ?そんな事をする子じゃなかったのは知ってるつもりなんだけど……

 

「ディファイ……お前か」

 

うん、ディファイですけど何か問題が?

 

「俺はお前に勝ちたい…」

 

へっ?いきなり何を言ってるの?

 

「俺とカルマ君じゃあ勝負が成り立たないよ?」

 

負けるの俺だもん。勝負するとか以前の問題だと思うんだけどな。

 

「その言葉に俺がどれだけの屈辱を受けていると思っている……!」

 

あっれぇぇ?

何でこんな状況に陥ってんだ?

益々怒ってるって意味不明すぎる…

 

「もっと吸い取りたかったがまあいいマナは満ち溢れている……あの模擬戦の時も、練習試合の時も、子供の時の喧嘩も!俺はお前に勝てたことがない!」

 

模擬戦は俺の反則負けだしさ。

練習試合はラッキーだし。

子供の頃の喧嘩なんて俺のが大きいんだから勝つに決まってんじゃん…

というか5歳の子が3歳の子に負けたら立場がないじゃん?

 

そんな俺の思いを知らないカルマ君は先程まで相手を干からびさせようとしていた左腕を向けて来た。

 

「手を出すな!」

 

というか爪を出すな!

 

「エルト…ここはディファイに任せよう。本人も手を出すなと言っている」

 

「ああ、だけど危なくなったらすぐ助けるぞ!」

 

思わず出てしまった言葉が違う意味で捉えられてしまったらしい……

いや今すぐ助けて欲しいんですけどね?

 

「邪魔者はいない…始めよう。俺とお前のどちらが強いのかをな!」

 

ドス黒いマナがカルマ君の周囲に立ち込める、先程から試験官が助けに来ないのでこれも自分達の判断しろってことか?

もうこうなりゃ腹をくくるしかないな……

騎士学校総合12位の実力を見せつけてやる!

……主席はカルマ君だけどね。

 

 

左腕をマナを虎の爪のような形の武器にして攻撃してくるが、なんとか紙一重で避ける。

マナコントロールが上手いおかげでその副産物としてマナの察知も得意なのだ。

しかし攻撃が鋭すぎて自分の左腕を負傷してしまった。

動かせなくはないが痛みでジンジンとする……

 

「何してくれんだよ……カルマ……」

 

もう六大公爵家とか関係あるか!

実力が上?そんなのしったこっちゃない。

とりあえず一発ぶん殴ってやる。

顔面にワンパン決めてやる!!

 

「テメェ…一回殴られないと解らねぇみたいだなぁ~?おい」

 

イチイチ昔の事を持ってこられて、勝負したいとか意味が分からない。

 

「コ、コイツは、ハアハア…俺の、獲物だ!寄越せ!」

 

何か微妙に復帰してきたジェダがどうのこうの言ってきたけど、鬱陶しい。

 

「口の聴き方をまずは直せ…お前は黙ってろ」

 

思いっきり睨みつけるとおとなしくなったのでもういいだろう。

 

「後でやるから今は黙って見てろ……」

 

ワンパン入れたらすぐチェンジするから。

流石に俺もムカつくんだよ。明らかに俺のが弱いのはカルマは知ってるはずなのに!

兄弟喧嘩に毎回巻き込まれてフォローしてるのも俺なのにこの仕打ちとか流石に頭来た。

 

「ディファイ、行くぞ……」

 

「来い!!」

 

避ける

避ける

薄皮一枚でなんとか避ける。

左手の爪を槍のように伸ばして突いてきたり、それを飛ばしたりして攻撃して来るのを避けまくった。

 

マナを使い伸縮自在で俺目掛けて爪を伸ばしてくるから攻撃を感知して避けられるが、タイミングがシビア過ぎて薄皮が一枚、二枚と切れていく。

一発もらえば致命傷だし、何より痛いの嫌いだから避けてマナが尽きるか決定的なチャンスを待つしかないのだ。

いくら頭に血が昇ろうと無謀に行く訳にはいかない。

 

「流石だな…」

 

カルマは爪を俺に向けながら、一時的に攻撃の手を緩めた。

 

「いい加減諦めろ!」

 

俺は死にたくないのでその攻撃は諦めてくれ。というか止めてくれ。

それとハンムラビ法典でいうタリムの法を実施させろ!

半分でもいい!

気にくわんものは気にくわんのじゃ!!!!

 

「女王騎士になりお前と対等な立場になるのもいいが……その前に一度でいいからお前に勝つ!」

 

いや試験とかでも勝ってるじゃん?

実技とか余裕で勝ってるじゃん?

 

「対等?何言ってんだ?」

 

俺のが確実に弱いし六大公爵家のカルマ君相手に対等なんてそう簡単に言える訳ない。それはカルマ君も知っている筈だぞ?

 

「俺とお前は対等なはずはない……そんなこと分かってはいる。分かっているんだ!!」

 

なんだよ?何かよく分かんないけどさ……

 

カルマ

 

俺とお前は小さい頃からの付き合いだよな?

例え、対等じゃなくても俺はこう思ってるんだぜ?

 

「対等以前に親友だろうが!?」

 

そう思ってたのが俺だけなら悲しすぎるけどな……

 

「………」

 

「親友だから今のお前は許せない!」

 

親友と思っている相手に自分の理解ができていない事でこんな喧嘩みたいな事をするとか俺は嫌だし許せない。

 

「お前に勝ちたいだけだ、俺はな!」

 

俺の声が届いてないのかカルマ君の猛攻が再開した。

だが先程までより攻撃の鋭さがない。

それに何か攻撃に迷いが生じたというかなんというか……

 

ここが好機とみると俺はカルマ君との距離を詰める為に走る。しかし、俺は雨での泥濘で足を取られ滑った。

 

こんな時に締まらないなぁ……

とか思っていたけど偶然にも滑った土がカルマの目に入ったらしく、攻撃が緩んだ。

 

誰がこの機を逃す?

という訳でカルマの顔面に

 

まっくのうち!!まっくのうち!!

 

………ワンパンどころか思いっきり連打してしまった俺って大人げないな。

殴ってすっきりして冷静に考えてみると黒歴史にしたいぐらいセリフ言ってて恥ずかしい……

 

殴られて倒れたカルマ君の顔はあんまり腫れていなかったけど。何か青くなってた。……ゴメンね?

 

「…やはり負けたか」

 

そういうカルマ君の顔は悔しさも見えてたけどすっきりとした表情も見えていた。

 

「そんなモノを使うからだよ、カルマ君の強みは冷静な状況把握能力でしょ?」

 

強がりです。でも当たっている部分も多少はあるよ?強引な力技を使ってはいたけど今回はそれに頼り過ぎていた感があったのも事実。

 

「強引な力技よりもそっちの方がいいと思うよ?まあその力を制御できて冷静になれたらもう勝てる気はしないね」

 

軽口を言ってしまった…

いや本当にその通りだからなぁ。

 

「いや、俺は借り物の力ではなく、実力でお前に勝つことにした」

 

 

そう言いながら起き上がろうとするカルマ君。

 

「ていうか勝ち負けにこだわるのは辞めた方が良いよ?大切なものを守れればそれだけでいいんだって俺の知り合いのお……ねぇさんが言ってたし」

 

「それがお前の強さか……勝てない訳だな」

 

と苦笑するカルマ君に手を差し伸すとその手を掴んでくれた。

 

というかひと段落ついたけどこれって試験どうなるの?

こっからまた試験やり直すのはちょっと勘弁して欲しい。

 

「ひひひ、くだらねぇ友情ごっこか?三文芝居にすらなりゃしね~よ」

 

そう思っているとシモンズ君が薄笑いしながら現れた。

 

「まあでも、いい人材がいるねぇ~?宿主が3人、いや2人か…コイツはもう使えなさそうだしな…」

 

ルカ君を見ながらそんな事をいう黒衣を纏う謎の少年がワケワカメな事を言ってきた。

 

応えるもの(アンサラー)帰ってこいよ」

 

『ああ、この宿主はもう闇が薄い……これでは我もいる意味がないからな』

 

ルカ君に着いていた腕輪みたいなものが黒い霧状になって消えシモンズ君の手の中に移動した、

 

「じゃあ送葬手(コンダクター)……」

 

シモンズ君の肩から更に腕みたいなものが生えるとその場にはアンデット系のモンスターが群がっていた。

 

「行け」

 

その号令と共にモンスター達は一斉に受験者を襲いだした。

しかし倒れている奴等には攻撃をしないという行動を取っているという微妙に紳士的なモンスターなのは謎だ。

 

「本体をやれば終わりだ!行くぞエルトォ!!」

 

「おう!!」

 

とイージス君達が応戦しているけど、数のせいで劣勢を強いられている。

 

「じゃあ行くとしますか」

 

シモンズ君は肩から生えた禍々しい腕にカルマ君を抱えてどこかに連れていこうとしている。

それは流石に許容できない。

運良く自分の投げた剣が転がっていたのでシモンズ君に斬りかかるが避けられてしまった。

 

「コ、コイツまだ俺に楯突くだけの力が残ってたのか?」

 

当たり前だろ、まぁ避けられたけどね。

 

「ちっ、仕方ないか……」

 

シモンズから黒いマナが精製され俺に攻撃をしようと何かしらの魔法を使おうとしている。

 

「コイツは俺の獲物だ…渡さねえよ!」

 

とその時ジェダ君が無事な左腕で攻撃していた。

兄貴のカルマ君に隠れてはいるが本来実力的には上位クラスなのである。

 

兄貴への執着心が邪魔してるんだよね。いや勿体ない限りだ。

 

常に冷静に状況把握をしているカルマ君は隙を見つけるのが病的と言って良い程得意だ。

武器を使うものにとっては一撃が致命傷なのも事実。

だからカルマ君は強いのだ。

まぁ今回は俺が偶々”まっくのうち”しただけでカルマ君が負けを認めてくれたのでなんとかなったけど。

 

「うがっ…」

 

予想外の攻撃をくらって倒れるシモンズ君。しかしカルマ君はその攻撃のせいで投げ出されてしまった。

しかも底が見えない崖の方向に…

 

「カルマ!!」

 

咄嗟に投げ出されたのを見てカルマ君の左腕を見事にナイスキャッチ。

しかし手を離したら真っ逆さまにダイブしてしまう。

ファイト一発みたいな状況だ。

 

「離せ!じゃないとお前まで崖から落ちるぞ!?」

 

いやココで手を離したら俺、絶対に一生後悔するからそれは嫌だ。

だいたい俺の数少ない親友を放っておけるわけないし、それに……

 

「何言ってるんだよ?親友助けるのに命ぐらいかけるよ」

 

命が惜しいのと命を懸けるのは違う。

確かに毎回の様に命を懸けるような選択を迫られる女王騎士なんてまっぴらごめんだが、自分の大切な人を目の前で失うのは死んでもごめんだ。

 

それに仲直りしてそのまま終わりとか悲しすぎるじゃん……

 

「ディファイ…」

 

そんなことを言って格好つけても腕の筋肉さんがギリギリすぎてピンチです。

 

「カルマ君、早く上って…」

 

踏ん張るので限界値だから!

引き上げるのは絶対無理だから!!

 

「…さっきマナを使いすぎて今は腕が動かないんだ……」

 

はああ~~!?何その訳のわからない状況は?

こうなれば仕方ない……

 

「ぬがががぐぎゃあぁ~!!」

 

世間一般的に言う火事場の馬鹿力で腕一本でカルマ君を崖の上まで引っ張った。その瞬間に力が抜けて前に倒れ

崖へ落ちてしまう。

 

「ディファイ!」

 

カルマ君の声が聞こえたがもう落ちるだけだ。

試験に落ちて崖からも落ちるなんて笑えもしない。

あ~あ、格好つけちゃたよ……

これで俺死ぬのかな?

 

死ぬのは、怖いな……

俺の人生一体何だったんだろう?

 

ゆっくりと目を閉じてただ落下するのを待つ。

だが急に落下している感じがなくなった。

 

「…大丈夫か!?」

 

と声がした方を向くとそこにいたのはエルト君とカルマ君だった。

カルマ君が俺を手でしっかりとキャッチしてエルト君がカルマ君の脚を持ちながら剣を断崖に刺して落下を防いでいた。

 

「……ギリギリで」

 

と苦い笑いする俺。

 

「皆で正々堂々と勝負して女王騎士になろうぜ!」

 

というエルト君…俺が女なら惚れてたね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本来ならここで救援が来るのを待って正々堂々と決着を着けるのだろう……

 

「お疲れさん」

 

という声がした方向を向くとそこにはシモンズ君が…

 

「そして残念でした!」

 

シモンズ君が攻撃して支えていた剣が抜け全員が落下してしまった。

 

その後の事は覚えていない。

ただ女王騎士には俺はなれなかったことは理解できた。

 

「悪いようにはしね~よ。一応は恩人の息子だからな」

 

というシモンズ君の声が耳に入ったのを最後に俺は眠りに落ちた。

 




これにて女王騎士入団試験編は終了。
この後裏を書いた後、血族の遺伝子編に入ります
……名前だけ見ると凄くカッコ良いな

それはそうと何かお気に入りとか評価とかたくさん入るなぁと思っていたら日刊ランキングに少しの間載ってたみたいですね。
いや女王騎士物語で日刊ランキング入るとか思ってなかったので普通にビックリしました。
まだまだ愛されてる原作なんだなぁと染々思いました。
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