報われない男の物語   作:羽付き羊

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番外編 「希望の騎士と竜王種」

時はあのジークの女王陛下誘拐事件から遡り、まだアルテリーナ女王陛下が姫と呼ばれていた時代にまで遡る。

 

とある町の中で盗賊団が出た。

その盗賊団は100人を越え最近アルシリアを騒がせる問題の盗賊団だった。

しかし、その盗賊達の最後はなんとも呆気ないもので盗みを働く前にある酒場で全員御用となった。

 

「うう、俺達がキサマみたいな男一人に負けるなど……」

 

ほぼ全員がいると思える程の人数の盗賊達が全員地に伏せている中で、頭らしき男がただ一人彼らを見下しながら立っている男にうめき声をあげた。

 

その男はくわえていた煙草をスゥーッと一息だけ吸い込み、白い息を吐きながらこう言った。

 

「あん?テメェ俺を誰だと思っていやがんだ?」

 

倒れている頭の方へと向かい、しゃがみこんでその顔を覗いた。

 

「俺はカミナ、カミナ=マクドール。アルシリアの女王騎士だぞ?」

 

まるで何も恐れはしないと目力だけで伝えてくるその姿に畏怖してしまう程の威圧感を最後に感じて意識を失ったのだった。

 

 

アルシリアの城内の一室で2人の騎士がお茶を飲みながら1人の男の話をしていた。

 

「カミナの奴、また単独行動か?……ったくよ~それで物品とか壊されても困るっつ~の」

 

そう言う上官の女王騎士はカミナの友人である女王騎士に愚痴を言っていた。

 

「能力はロイヤルガードクラス以上なんですが、素行が悪いのが難点ですね……今回は偶然一人で飲んでいた時にその酒場に盗賊が来たとの事です」

 

友人の騎士も少し困ったような顔でそう答えた。

 

「盗賊捕まえたからいいような物の、普通に勤務時間内に酒を飲むって……」

 

頭を抱え込みながら「信じらんねぇ~」と呟く上官の騎士。

それを見たカミナの友人の騎士は乾いた声で笑いながら、お茶を啜っていた。

 

「今が戦時中でなければ色々と処罰してやるんだがなぁ……そう言う訳にもいかんだろ?アイツは戦闘力に関してはエクスード、そう歴代最強の女王騎士と呼ばれるお前ぐらいに優秀だ。そんな奴を今の時期に失うのは痛い」

 

「そういう事なら罰を兼ねてこういう任務はどうですか?」

 

「ん?ああ確かにカミナには持ってこいの任務だな、アイツの処罰も兼ねて丁度良いか」

 

「竜王種の討伐なんて女王騎士でも中々難しい任務ですからね」

 

こうしてカミナの今回の処罰を兼ねた任務が決定した。

 

 

「ドラゴン退治だぁ?」

 

その事を聞いたカミナはエクスードをバカを見るような目で見ていた。

 

「そうだ、最近アルシリア近郊でよく見られるドラゴンを退治して欲しい」

 

その事に平然として答えるエクスード、その事に不満を思ったらしくカミナはこう答えていた。

 

「んなもんよりも、戦争吹っ掛けてきそうなあの国を先手必勝で倒した方が良いんじゃねーの?」

 

女王騎士になりたいと言っていたとある国の皇子を門前払いで追い返してしまった事からアルシリアとその国は険悪になり、一触即発の事態になってしまっている。

そしてアルシリアへの侵攻がもうすぐ始まるという噂があり、気の抜けない状態が続いているのだ。

 

「民を守るのも大事な任務だ。それに、もしかしたらそのドラゴンは竜王種かもしれないぞ?」

 

「竜王種ねぇ……それぐらいの奴なら俺かお前じゃねぇと相手になんないだろうし、今回の酒の件もあるから仕方ないか」

 

耳の穴に小指を突っ込んで取れた垢をフゥーっと息を吐き飛ばしているカミナはどうにもそんなにやる気がないらしい。

実際にカミナはドラゴン退治で名を挙げている女王騎士でもある。事実10匹の準竜王種レベルのドラゴンを相手に無傷で勝利しているおり、竜王種一匹程度なら苦戦もせずに勝てるだろうと思っているのだ。

強い奴と戦いたいという闘争本能剥き出しなカミナは戦場の方で戦いたいらしい。

 

「まぁぶっちゃけて言うと酒の件の罰みたいなもんだ。お前が好きそうなものをわざわざ選んできてやっただけありがたいと思えよ?」

 

「……やっぱり?まぁな俺も勤務中に酒飲むつもりなかったんだけどさ~、客引きのネェちゃんの言葉に唆されてよ~」

 

そう言いながら誤魔化すように笑うカミナに友人の騎士はこう言った。

 

「ったく、いつもの事とはいえお前のその性格時々羨ましくなるよ……それと竜王種に関して一応忠告しておくと、竜王種舐めていると痛い目に会うぞ?」

 

友人の騎士が真剣な顔で言うのは滅多にないので、どういう事かわからず疑問を投げかける。

 

「ん?あんなのちょっと強いトカゲじゃん」

 

カミナは実際に倒したことはある。

しかし竜王種でも格が存在しており、一番弱いとされている竜王種のしかも幼体であった。

だからカミナは竜王種という存在を侮っているのだ。

 

「俺も一匹だけ倒した事があるけどな、普通のドラゴンの100匹分以上の強さはあるぞ?正直に言えば2匹なら俺も危なかったな」

 

「……へぇ~、お前が苦戦とか、少しはやる気が出てきたぜ」

 

カミナの目に鋭さが宿った。どうやらやる気がでてきたらしい。

 

「まぁ報告上では一匹だけだから何とかなるとは思うけどな」

 

「なんじゃそりゃ?それなら女王の剣1本ありゃ十分だな」

 

「確かにお前なら大丈夫だとは思うが、一応装備はしっかりしておけよ?いざという時に命を守るのが装備だからな」

 

エクスードに言われてカミナは安心させるかのようにこう言った。

 

「分かってるって、エクスード。俺を誰だと思っていやがる?“龍殺し”のカミナだぞ?」

 

いつもの様に自信満々で応えるカミナであったが、どうにもエクスードは嫌な予感がしている。

竜王種は侮れる存在ではないのは事実、確かに女王騎士でも実力があるカミナなら難なく倒せるレベルではある。

しかしそれはエルムガンド公国で認定されている竜王種であり、人になつく可能性があるドラゴンだ。

ヤパーナに行けば獰猛で人がどうやっても手がつけられない猛獣がいる。

今回の報告ではヤパーナに生息している竜王種だと確認されているから余計に侮れる存在ではないのだ。

 

「本当か?これでもお前に死なれたら俺はお前を殺した奴を殺さなくちゃならないくらいお前の事が気に入ってんだぞ?」

 

「何だよそれヤンデレって奴か?俺の女じゃねぇのに気持悪い事言ってんなよ。大丈夫に決まってるっつ~の」

 

「それならいいけどな……」

 

友人として心配していると分かっているが、そんなに心配されるのも嫌だったのでカミナは頭を掻きながらその場を離れようとする。

その時に一言相手の顔を見ずに歩きながらこう言った。

 

「あっ、そうそう。この任務さっさと終わらせて戦線に復帰するからよ、お前がヘタこいてりゃ俺がお前の活躍全部取っちまうぞ?」

 

後ろを振り返ろうともせずにスタスタと歩く姿はいつもと同じカミナだった。

 

「ふっ、口が過ぎる奴だな……」

 

そう言いながらも安心そうな顔をする友人。

しかし、心配そうにする友人の予感が当たっているとはこの時は誰も思ってもいなかった。

 

 

翌日、アルシリアの王都から少し離れた場所にあるアレ―タ荒野にカミナは来ていた。

ここには報告にあったドラゴンが確認されている。

装備も十分である中、“龍殺し”の異名を取るカミナにとってはさっさと終わらして戦線に帰ろうというやる気に満ち溢れていた。

 

「さ~て、大きなトカゲちゃんはどこかな?」

 

そう言いながらふと空を見上げると曇天の空から雷鳴が轟いた。

とそこに現れたのは竜王種の1匹、雷龍のベルキュロス。

 

「さて…お前が今回の獲物か?」

 

「ビッシャ~!!!!」

 

大きな羽を上下に動かしながらカミナの前に着地すると大きな咆哮をあげた。

威風堂々としたその姿はまさしく竜王種の名にふさわしい姿だ。

 

「なるほどねぇ~、竜の中でも六大巨龍で有名なベルキュロスが相手とは…相手にとって不足はねぇ~わな!」

 

カミナが“龍殺し”という2つ名がついたのは、竜王種を相手にしてケガ一つすら負わずに勝利したからである。

 

そもそも竜王種というの名の付く竜はエルムガンド公国の王のパートナーの竜だったものである。

現在ではその風習は消えたがそもそも王のパートナーにふさわしい知能と能力を持っている竜がいつの間にかそう言われるようになったものだ。

 

初代から15代までの龍は竜王種と言われているがそれ以外はいくら優秀でもその名では呼ばれない。そういう制度を作ったのは15代の王だといわれている。

 

その竜王種を簡単に倒した事から付いた名前が“龍殺し”である。

しかし、今回は竜王種の中でも頭一つ分飛びぬけているベルキュロスが相手だ。

いくら彼でも簡単には勝たせてはもらえないだろう。

 

「行くぜ!蛇公ォォ!!!」

 

 

カミナは“忠誠の十字架”を取りだしマナを込めながら、目標に向かって一気にかけ出す。

マナを込め終わると現れたのは大きな一振りの刀。全長2mはあろうかという太刀だ。

 

「ビッシャ~!!!!」

 

 

竜の爪の攻撃や尻尾の攻撃を避けながら竜に乗り頭まで来るとその刀を竜に向かって一気に振り下ろす。

 

ガキン!

 

鈍い音がしたと思うとその刀は弾かれた、どうやら鱗が異様に硬いらしい。

ベルキュロスはその隙を見逃さず、カミナを空中に投げた。

その後すぐにベロキュロスの口から雷撃が放たようと溜めが入る。

まともに食らえば大ダメージは必至。

しかしそこは“龍殺し”の異名を取るカミナ、そのモーションを見るやいなや、聖騎装(エンチャントギア)光弾の篭手(ブリューナク)を口に向けて発射。

ベルキュロスは雷撃を放つ瞬間にそれをやられてしまい、自分の雷撃を暴発させた。

しかしダメージはほとんどなく逆に怒らせてしまったようだ。

 

「歯ごたえある蛇公だ。ったくよぉ!!」

 

着地をすると同時に再びベルキュロスに向かって攻撃を仕掛けようとしたその時だった。

 

轟風と共に大きな何かが現れたのは…

 

「ぐぅ……動けねぇ」

 

あまりの強風にカミナは身動きが取れなくなった。

その何かはベルキュロスの横に着地した。

現れたのは風龍の竜王種、リンドブルムすら従えると恐れられる、"漆黒の風"アレース。

 

「ゴォギャ~!!」

 

「おいおい、2匹相手じゃあ流石に……きついぜ?」

 

そうは言いながらも顔はまだやる気は無くしていない。

この負けん気とどんな状況でも活路を見出す力がカミナの最大の持ち味である。

まだ戦況は最悪ではない、何とかいけるとカミナは攻撃を仕掛けようとした。

まだなんとかなる、その筈だった。

さらに地中から現れた巨龍が現れるまでは……

 

もう1匹、激しい火力で爆発するかのような火炎を吐く事で有名な爆龍の異名を持つドラギリアスが現れてしまった。

 

「ブバオ~ン!!」

 

猛炎を吐きながらカミナの逃げ道を防ぐドラギリアス。

 

「……おいおい、いくら何でもこれはキツイぜ?」

 

そこから始まったのは竜によるリンチだ。

 

雷撃を避けようにもそのすぐ後に暴風が吹き荒れ思うように動けない。

さらに爆炎が降り注ぐ。

 

そんな中でもなんとか傷を与えてはいるが鱗に傷が入る程度の少量のダメージ。

全員に均等なダメージを与えるのではなく、一番やっかいなアーレスから倒そうとするも、その前にドラギリアスやベルキュロスが立ち塞がり、攻撃の手段が阻まれてどうしようもない。

満身創痍になりながらも微かな傷しか与えられない。

絶対絶命という言葉が彼の脳裏に過る。

 

しかし彼は生き延びなければならい理由があった。

もちろん心配してくれている友の為でもあるがそれ以上の理由があった。

 

「こんな俺にもな、待ってくれてる女がいんだよ!」

 

ベルキュロスによる雷撃がカミナの左腕を包みこんだ。火傷のような痛みと痺れでもう左手は動かない。

しかしまだ右腕は動く。

右手で刀を振りおろそうとすると今度は爆炎が右手を覆う。

マナを覆って炭化する事をなんとか阻止したものの、激しい痛みと共に刀を持つ握力がなくなり武器である刀が地面へと落ちてしまった。

これでもう両腕が動かない。

普通ならもう死を認めるはずだが、彼は絶対認めないし生きる事を諦めない。

なぜなら彼は生き残らればならない。"絶対無敵 究極正義"の標語の前に彼は死ぬ訳にはいかないし、守るべき女性がいるのだから。

 

まだ両足が動く、動くものがあるなら突き進む。

逃げようにも逃げれないなら勝つ!ただそれだけ。

 

「俺を誰だと思っていやがる!」

 

血反吐を吐きながら叫ぶカミナ。

落ちた刀の柄を口で咥えるとドラギリアスに向かって駆け出した。

流星群のような爆龍の放たれる爆炎を避ける。伊達で女王騎士になった訳ではないのだ。

無数の数の雷撃を紙一重で交わし、アレースの放つ風すらもつっきりながら前へ……

 

前へ

 

ただ前へとひたすら進む。

 

そしてドラギリアスの目にその刀を突き差した。

 

「バギャオ~~~~ン!!」

 

その目は血が流れて痛がっている様子が分かる。

 

しかし、そこでカミナは力が尽きてしまいその場へと倒れこんでしまった。

 

「ははは、ダメだ。流石に力が出ねぇや……」

 

一矢報いたがただそれだけ、それ以下でも以上でもない。

 

竜王種を更に怒らしただけ。

ただそれだけの結果しか“龍殺し”は得られなかった

 

「すまねぇ…ヨーコ。もうダメだわ……」

 

初めて吐いた本音の弱音、そして彼は一飲みで爆龍に喰われた。

 

 

カミナは気付くと仰向けに寝転がっていた。

雲もない真っ青の青空が広がっている。

先程までとうって違い良い天気であり、あまりの違う天気にカミナは自分は死んだのだと思ったらしい。

 

(そうか、俺死んだのか…龍に喰われて丸呑み、“龍殺し”の最後が龍に殺されるとはな…)

 

そういう風に思いながら手を動かそうとすると痛みで動かなかった。

 

(アレ?おかしいな痛いが戦っている程の痛みじゃねぇ…指が動くし……)

 

その事に疑問を持ちながら疲労感で動けない事も感じていた。

 

(んだよ死んだ時の状態であの世に逝くのかよ……たまったもんじゃねーな)

 

なんとかカミナは首を横に動かすと一人の男が座っていた。

 

「気づきましたか?」

 

そう言う彼の横には薬草を煎じたモノがあったのが見えた、更に薬草で巻かれた自分の腕が見えた。

そして驚く事に、爆龍のドラギリアスが腹を掻っ捌かれて死んだ姿がそこにはあった。

どうやらカミナは生きているらしい。

 

「ア、アンタがこれをやったのか?」

 

「……そんな事どうでもいいじゃないですか」

 

否定する気も肯定する気も彼にはないようだ。

 

しかし、この状況で彼以外に誰がこの龍を倒したと言えるのだろうか?

 

彼の横にある剣はドラギリアスの血で濡れている。

しかもそれは単なる剣ではない。

カミナの“女王の剣(クイーンセイバー)”だ。しかし形状は違っており普通の剣程の大きさの洋剣だった。

それはこの男のマナで変化したものだという事が分かる。

 

「他の龍は?」

 

そう他にもいたはずの龍がここにはいない。

その疑問をこの男にぶつけた。

 

「…私が気付いた時にはいなくなったようですね」

 

溜息を吐きながらさも残念そうにするこの男を見るとこの男の実力を見ると同時に龍が逃げたという事だろう。それしか答えはない。

 

「これ飲めますか?」

 

そう言いながら煎じた薬草をカミナに見せる。

どうやらこの男がカミナを救ったらしい、ケガの治療までして……

まずあのケガの状態からなら確実に一日も経たずそのままだったら死んでいたはずだ。

しかし腹の中にいたカミナをどうやって救ったのか謎である。

そう考えていると風が風下の方へと流れ胃液の臭いが男からした。

 

「うぷっ……あの龍の胃液に浸かってたから臭いですね」

 

そう苦笑いしていた。

どうやらこの男はドラギリアスの腹へ自分から入り、カミナを救ったらしい。

 

(おいおい、マジかよ?そんなに大胆な奴には見えないぞ?)

 

そう思いながらもカミナは薬草を飲もうと身体を起こそうとするが上手く起き上れない。

 

「大丈夫ですか?」

 

男はカミナは起こして薬草を飲ませた。

カミナは薬草を飲んだ後ボロボロので辺りを見渡すと敵国の騎士が気絶している姿だった。

しかもその少なく見積もっても10000人は超えているだろう。

カミナが戦っていた時にはドラゴンしかいなかった。

そうなるとこれをやったのもこの男という事になる。

それにカミナがドラゴンと戦っていたのはアレータ荒野だったはず、しかし此処はデーカイ岩場だ。

それに敵国の鎧をよく見てみるとアルシリアに戦いを仕掛けようとした小国の物だった。

となると敵が奇襲をここに仕掛けたという事になる。

 

それによくみればアルシリアの騎士もおり、民間の騎士や女王騎士すらも倒れている中でこの男は掠り傷程度しか負っていない。

まぁ返り血はたっぷり浴びてはいるが……

 

「……アンタ一体何者だ?」

 

そう問うカミナに向かって、男は苦笑いしながらもこう答えた。

 

「私ですか?私はギルバード、ギルバード=R=ボルト。女王騎士の後方支援で来ました」

 

その姿は誰よりも神々しく、慈悲の心に溢れていたとカミナは語った。

 

 

その戦いでケガを負ったカミナは病院のベッドの上で寝ていた。

 

「命の恩人って奴だよ、俺はギルバードの野郎に頭が上がらない……」

 

「ギルバード=R=ボルト、アルテリーナ姫を助けた事で有名な男だな」

 

御見舞いに来ていたエクスードはリンゴを器用にウサギにしながらそう言った。

 

「まさか一人で倒すなんてな、俺ですらあの龍3匹相手で一杯一杯だったのによ……」

 

「ああ、どうやらレベルというか根本的に何かが違うようだな……」

 

リンゴを剥き終わったらしく、カミナは一口でそれを食べる。

 

「ああ!せっかくウサギにしたのに……」

 

「ていうか普通は何等分かに切ってウサギにするんだよ、何で一個丸ごと彫刻みたいなウサギにすんだよ?」

 

いじける友人にカミナはシャリシャリを音を立てながらそう言った。

 

「物を入れた口で喋るなよったく、まぁ別にいいか…それにしても本当に無事で何よりだ」

 

「まぁな、命があって良かったよ。女王騎士は引退する事になっちまったけどな」

 

ハハハ、と笑いながら言うカミナに友人の顔は残念そうな悔しそうなそして泣きそうな顔をしていた。

 

「そんな顔すんなよ。腕は動くようになっても唐突に来る麻痺状態は治らないって医者に言われたんだ。ベロキュロスの雷撃にはそういう毒もあったんだってよ」

 

身体は治ったとしても毒で一瞬でも腕が動かないとなれば戦場では致命的。

それが女王を守る任務をする女王騎士ならその一瞬でも気が抜けない。

そうなれば確実に引退をしなければならないのだ。

 

「……その命大事にしろよ?」

 

エクスードはそう言った。

命があるだけマシ、そう言わざるをえないだろう。

 

「ああ、俺はギルバードがいなければ死んでいた。こうなっている事だけでも本当にありがたい事なんだぜ?」

 

カミナは笑いながら言った。

実は引退については戦争を終えてからと生死の境を彷徨った時に考えてもいたらしい。

守るべき人の顔を思い出し、それを守れないと思ったまま死んでいくはずだったのを救ってくれたのだから当たり前だと言える。

なぜならカミナにとって死から生への“希望”を見出させてくれたのは本当にありがたい事だった。

 

「…そうだな、さしずめ“希望の騎士”といったところかな?」

 

「…それは良い名前だな」

 

カミナは窓を見た。そこにあったのは“希望”を見出した時と同じような真っ青な空が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 




あとがき

書いていたの忘れていたギルバードの番外編。
少し補足さて頂きますと竜王種の設定は完全なオリジナルです。
"風の竜王種"等と原作に書いてありましたが、詳細な理由が書かれていないんでオリジナル設定でいきました。
普通に考えれば火、土、水、風、雪、雷とかの属性で一番強い竜だと思いますが、原作書いてないなら好きにしてやろうという感じです。
こんな感じで段々とオリジナル設定増えていきますのでご了承頂きますと嬉しく思います。
因みに勘違い発生していますが、それは物語が進みますと分かるようになっていますのでしばらくお待ち下さい。
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