報われない男の物語 作:羽付き羊
『お主、あの時の人間か?』
はい?
テレパシーみたいな事で意志疎通をドラゴンがしてきたのだがイマイチ意味が分からなかった。
なにせ俺は今までの人生で竜王種を生で見た事ない筈だからだ。しかし、こんな事を言われるのは恐らく誰かと勘違いしているのだろう。
そもそも俺が竜王種の事で知っているのはイルマちゃんから聞いた親父が倒したとかいう話だし……
――親父?
そういえば親父から聞いた話でアレースって竜王種出てきたような……
確か、戦争が起こるかもしれないからとアルテリーナ陛下に言われ臨時ではあるが女王騎士となった時の話に出てきた時の竜王種の中にアレースが出てきたな……
臨時なので後方支援の部隊に配属され、本隊に合流する途中の場所で敵兵が出てきたから仕方なく親父も戦う羽目になり、劣勢で味方が全員倒れていく中、3匹の竜王種が現れて敵味方関係なく親父以外を全員薙ぎ払ったとかほざいていたな。
女王騎士の人達は元々凄く頑丈だから気絶だけで済んだらしいけど、敵兵の方はもう壊滅状態だったとか。
そして1匹の龍が何故か気絶もしてない親父を丸飲みにしてしまったとか、一応は意識があったので龍の腹をかっさばいて先に飲み込まれた人と一緒に脱出したという戯れ言を聞いた覚えがある。
『いや、どうにも若いままの気がする。さては息子か?そうかそれ程の時が流れたか……』
どうやらその戯れ言は本当の話だったという事がこれで証明された訳だな。
――ん?ちょっと待てよ?
そのドラゴンを殺した事についてこのアレースはどう思っているのだろうか?
もしも、その事を恨んでいるならば俺は確実にヤバイよね!?
『殺された我が友の恨み今ここで晴らさせてもらおうか!』
咆哮を上げて強烈な風を巻き起こす、俺は空中に浮いて全く身動きが取れない。
どうやらその時の事を恨んでいるらしい。
――ああ、これ死んだわ。
『冗談だがな』
暴風が収まり空中から地上へと無事着地した俺にアレースはそう言った。
――はい?冗談ですと?
『礼を言おう。あの龍は実は悪龍でなワシ達も困っておったんじゃ。我が種族はアレース、名はサイスという』
あの悪龍?
それって腹を掻っ捌かれて死んだ龍の事?
というか、お礼を言う前に冗談とか質が悪過ぎやしません?
正直マジで竜王種に襲われたら俺なんて普通に死んじゃうからそりゃ死ぬ覚悟するよ。
死ぬ気弾撃たれたら死ぬ気で逃亡してたかも知れんけどさ。
『いや実はな悪龍があそこで暴れておったから、呼び出して始末しようと思ったんじゃよ』
アレースは話を続けた。
『邪魔な騎士が1人おってな、ワシの嫁に手を出したから一応倒してやった。悪龍の方も人間を食べたかったらしくて丸飲みしとったのぅ』
勝手に話を進めて行く様子は「懐かしいなぁ」と思い出に耽っている的な感じだが、昔話をされても俺本人は当事者じゃないからよく分かんないから困るわ!
『まぁそれで仕切り直しで違う場所で戦おうとしたら人の戦争に巻き込まれて様子見ておったんじゃが、うっとうしいから飛ばしてやったわ!』
何してんですかアナタは!?
「そうなんですか……」
しかし俺は何も言いようがない。
ツッコミ?
二階建ての家ぐらいの大きさの龍にできる程の度胸があったら俺は今頃家でニートになれてるっての。
『それで悪龍に丸飲みされたんじゃよ、お前の父親』
話の流れが見えてこないんだけど?
どうして丸飲みされた俺の親父ェ……
『そしてお前の父親が悪龍の腹を掻っ捌いて悪龍が死んだという訳じゃな』
やべぇ本気で意味が分からねぇ……
とりあえず話をまとめてみるとしよう。
・悪龍を呼び出してアレースと嫁さんの2匹の龍で倒そうとした。
・すると悪龍を嫁さんと勘違いした騎士の人が先に手をだした。
・嫁さんに手を出されて怒ったアレースと自分に攻撃してきた事に怒った嫁さんと人間が喰いたい悪龍とで3匹による騎士の人リンチ。
・騎士の人悪龍に丸飲みされる。
・悪龍倒そうと違う場所へ移動すると人間が戦争みたいな感じになった。
・ちょっとの間様子見してたけどうっとうしいからまとめて吹きとばしたりしてた。
・悪龍が親父を丸飲み。
・親父が脱出する際に悪龍の腹を掻っ捌いて倒した。
……うん、まとめたのはいいけど俺には全く関係ないという事しか分からないよね。
『テレパシーでありがとうと伝えたんじゃが……どうじゃ?』
「ああ、伝わってますよ。俺もその話は父に聞いていたので」
そういえば、何でお礼言われたのか全く分かんないとかも言ってたなぁ……
成程、そういう理由だったのね。
『それはそうと、お主は何故こんなところにおるのじゃ?』
首を傾げながら聞いてくアレース。
これが人間の女の子なら可愛いのだろうが、蛇のような顔をしているドラゴンにそれをされると違和感しか感じないよね。
一応は修行の一環としてということをしっかり伝えた。
嘘がバレた時にどうなるか分からないから仕方ないじゃん。
『悪しきマナを使う?……それはお主には無理じゃのう』
ええ!?何で?
『お主はマナの質的に無理な身体になっておる。遺伝子レベル……いや、魂レベルでの話じゃの』
「……魂?どういう事ですか?」
『それはワシには分からぬ事じゃ、お主からそういう事を感じられるだけだからのう……』
う~む、どうしてなのか見当もつかないな?魂レベルとか言われても分からないし……
何がどうなっているのか俺じゃあ分からないし、たぶん親父も爺ちゃんも知らないだろうしなぁ……
魂の共鳴とかなら某死神職人漫画でわかるんだけどね。
『しかしお主それを省いても、鍛えたいからここに来たんじゃよな?』
「え?そうでしたけど……」
もう過去の話、だって魔黒装を使えないならそんな事する必要ねぇもん。
ただどうやって帰れば良いのかが問題なんだけどね……
『まぁ鍛えたいならワシが少し手伝ってやろう。これでも昔は“漆黒の風”としてバリバリにいわしてたからのぉ、任しておけ!』
「いや、間に合ってます」
間髪入れずに拒否しておいた。
"漆黒の風"等と呼ばれる二つ名付きのドラゴンは普通のドラゴンよりも強い。更にアレースは竜王種なので強さもまた別格なのだ。
そんなドラゴンに鍛えられたら俺が死ぬので勘弁して欲しい限りなのである。
『遠慮するな、任せておけ』
「いや、でも……」
まぁ普通に拒否するよね。
『それともワシじゃ不満とでも言うのかのぉ?』
「よろしくお願いします、師匠!!!」
『うむ、ワシの事はサイスと呼ぶがいい!』
しかし、この状況で断れる人間ならば初めからこんな場所には来ていないのだ……
という事でアレースことサイスさんのとこで修業することになりました。
一端サイスさんの巣へ向かう事になったけどここから巣へは遠いらしく、サイスさんに乗って移動する事になった。
背に乗って巣に行くのかと思っていたがそれは大きな間違いだったらしい。
サイスさんの大きな口に咥えられて俺は空を飛ぶ羽目になった。
正直な話、あの大きな口を開けられた時は死んだと思った……
しかも、ちょっと漏らしてしまった。
小さい方とはいえ成人男性が漏らすとは……
恥ずかしすぎて死にそうです。
『何か匂うな。まぁ気のせいかのぉ?』
それは言わないで頂けると大変嬉しいです。
○
道中でそんな事があったが無事にサイスさんの住んでいる洞窟の巣へと着くと他に龍が2匹居た。
1匹は"雷龍"ベルキュロス。
銀色の鱗で覆われていて瞳は深い海を思わせる蒼く、一般的にドラゴンと言われるタイプの姿をしていた。
そう言えば嫁さんって言ってたから一緒に住んでいるのも頷ける。
そのベルキュロスは気品に溢れていて尚且つ美しかった。女性的な美しさと言うのだろうか、フォルムも流線型でありながら母性的ではある。
……でもやっぱり怖い!
『あら、アナタその人って……』
『いや違うぞバオウ、あの人の息子じゃよ』
『そうなの?懐かしいわね。あの後も色々ありましたもんね』
『そうじゃの、今は平和になったが昔は大変じゃったからのぉ』
俺の事そっちのけで昔話に花を咲かせている2匹の竜王種。どうやら嫁さんの名前はバオウというらしい事が分かった。
――帰っても良い?
「パパ、その人間は餌なの?」
甲高い声で物騒な事を言ってくるのはもう1匹の龍。
鱗が金色で瞳も快晴の空の色をした美しい西洋風のドラゴン。全長は4m程だろうか?でも身長は2匹のドラゴンと比較すれば小さい。
パパという言葉から推察するに多分2匹の子供なのだろう。
――え、ちょっと待てよ?
まさか俺は喰われる為に巣に運ばれたとか!?いやあり得ない話じゃないよな……
ライフのカードのような選択肢があるとするならば「逃げる」「戦う」「命乞いをする」という3枚の選択肢があるだろう。
しかし、俺はあえてここでデッキからトラップカード「成り行きに任せる」を発動するぜ!
絶対に許さないぞ!レヴァンデイン卿ォォォォォ!!!!
『ベル、人間何か食べたら腹を壊すぞ?というかベルは草木しか食べないじゃろ?』
どうやらトラップカードが無事に発動したらしい。いや良かった……
にしても物騒な事は言わないで欲しい、マジで。
後でサイスさんからテレパシーで送られたが、どうにも人間を食べるドラゴンというのは人間で言うとゲテモノ好きに入るらしい。
基本的にドラゴンは雑食ではあるが主食は草木であり、肉は食べても魚が多くそれ以外はあまり好んで食べないとのこと。
しかし、人間を食べないからと言って襲って来られたなら自衛の為にその相手を倒したりする。
しかし、それも人間で考えれば正当防衛なのでおかしい訳でもないもんね。
『大体、お前の面倒みてもらうんじゃからそんな事は言うな』
その衝撃的な一言は全俺に衝撃を与えた。
ビビるどころの話じゃない俺を餌発言した龍の面倒だと?
正気の沙汰とは思えねーよ!?
アカイギさんに任せる程の案件じゃないですか!?
「人間になんて面倒を見てもらう必要なんてない!!」
とか言ってプイッと違う方向を向いてどっかへと歩いていった。
……ちょっと可愛いなこのドラゴン。
普通にツンデレキャラじゃね?
そう言えばなんでテレパシーではなく、人間の言葉を喋っていたのだろう?
そんな疑問を持ちながらその日は終わった。
そして翌日から始まったのは修業という名の生き地獄が待っていた。
正直記憶を失えるなら失ってもう二度と思い出したくないと言える程に……
その修業の内容というのが台風みたいな嵐の中で雷を避けろとか、雷に自分がなりきるとかそんな感じの修業だった。
そしてボロボロの身体で動かなくなった所に龍の涙という現在の回復薬で最高峰の薬で回復して無理矢理身体を動かせる状態にする地獄の修業。
竜巻の中で精神集中しろ?カマイタチが襲ってくるのもあり?
馬鹿だろ!?お前等ただのドSだろうが!!
と言いたいけれども言えません、リアルに逆らったら死にそうで……
走馬灯?んなもん100越えてから数えてない。
お花畑?もうアルシリアどころか世界丸ごとお花畑になる位見たよ、天国的な意味で!
三途の川?むしろ俺が行こうとしなくても向こうから寄ってくるレベルだっての!
そんな感じの生き地獄と思える修業中に唯一の癒しだったのがベルの御守だったのだ。
最初はそりゃあ俺よりデカイ奴のおもりって何よ!?とか思ってたよ?
何度も噛みついてきたり、引っ掻かれたり、挙句の果てには口からの電撃を浴びせられたりしたからそりゃそう思う。
そもそも普通に死にかけたからなぁ……
でも、あの修行した後にこれくらいならまぁいいかな?と思えるぐらいになったのだ。弊害ともいうけど……
ベルは女の子という事で花の冠とかを被せてあげたり、一緒に昼寝したりとかもする内に妹みたいなイルマちゃんと過ごしてた感覚を思い出して温かい気持ちになったのだ。
そんなこんなしている内にちょっとずつベルと仲良くなっていった。
修業が終盤に入る頃にはベルも俺の事を“ディファイ”と名前で言ってくれるようになったからね。
しかもその背中に乗って空を飛んだり、モンスターに襲われているのを助けてもらったりした。
竜王種と竜王種のハーフはレベルがチゲぇ、咆哮だけで相手を追っ払ったりとかマジで生物的に格が違う。
いつの間にやら俺を見るとベルが微笑むようになっていた。まぁあれだけ面倒見てたからそれぐらいになって貰わないと困るけどね。
朝起きてはサイスさんと奥さんのバオウさんの特別メニュー、昼にちょっとベルと遊んでおやつ時からサイスさんの特別精神集中メニュー。
で晩飯時にベルと遊んで、夜にちょっとバオウさんの身体機能アップメニューというなのモンスター10体から追い回されるので全力疾走。
そんで就寝時に龍の家族と一緒に就寝。
休み等は存在しない。
"龍の涙"というチート回復薬のせいで色々めんどかった……
修行に少しだけ慣れたかな?と思うその頃には身体に無数の傷が……
これじゃあお嫁に行けないね、まぁ多分結婚できないから関係ないけどな!
そして修業が終る頃には何かしらんが精霊剣を使えるようになっていた。
精霊剣とは簡単に言えば属性剣の事で、修得が結構難しいのだがなんとか俺も雷属性の“ボルトセイバー”と風属性の“トルネードセイバー”を会得したらしい。
サイスさんが言うには、竜王種と仲良くなったら使えたりらしい。
でも俺はマナ量が少ないので威力は一般的な精霊剣よりは弱めだったりする。
それでも普通のモンスターぐらいなら楽々で倒せるようになったのは大きな進歩だろう。
……まぁあんだけの修業して多少は強くなってないならとね。
そして三ヶ月が過ぎた頃になんとか無事五体満足で生き延びる事ができた。
そう一ヶ月で迎えに来るとか言ってたのにイゥエンの野郎は迎えに来なかったせいで三ヶ月もこの修業を毎日休みなしでする事になったのだ。
でサイスさんのお許しがやっと出たので明日、魔黒騎士の基地の近くまで送ってくれるらしい。
……ようやく、ようやく明日で魔黒騎士のみんなが待つあの平和なところに帰れる!
こんなに嬉しい事はない……!
そんな夜、ベルが俺に向かって涙目で話しかけてきた。
「ディファイ…行っちゃうの?」
「ああ、また機会があったらここに来るよ」
うん、修行さえなければ来てもいい。
ここのモンスターも龍以外はなんとか倒せるレベルになったからそこまで命の危険はないだろう。
「いやだよ、ワタシディファイの御嫁さんになるんだもん!」
――へ?
一体いつの間にそんなフラグが建っていたの?
「それはベルが大きくなってそれでも俺の事が好きなら考えるよ」
「……うん、分かった」
ダメな大人の必殺技「とりあえず先延ばし」を使ってとりあえず誤魔化しておいた。
そもそも龍にモテても困る件。
擬人化でもできるなら話は別だけど。
……いやその理屈はおかしいな自分でも思う。
それにしても、そんな暖かい眼で見るのは止めてくださいバオウさん。
娘はやらんぞ!的な目で見られても困りますよサイスさん。
それにしても何でこんなに好かれているんだろうか?
因みに龍が大人になるのは凄く速いが大人になってからの老化するスピードはものすごく遅いらしい。
因みにこの子は今7歳。
人間的に見たら13歳ぐらいとの事。
いや犯罪ですよね?
人間的にも犯罪ですよね?
ロリでもねぇじゃん!!
ペドじゃん!!!!
ただ後3年もしたら大人の龍として認められるらしい。
――3年の間に他に好きな人、というか龍ができる事を祈るばかりです。
そうして最後の夜はあまりの出来事が起こったせいで眠れずに朝焼けを洞窟の中で見ながらという感じで過ぎて行きました。
因みに龍一家は爆睡してました。
そして朝になり、いつものようにサイスさんの取ってきた野菜や果実を食べて帰り支度をしていると、どうにもアレースのサイスさんとベルキュロスのバオウさん、子供のベルの一家総出で見送られる事になっていたらしく、俺はベルの背に乗せられて移動する事に……
俺が基地の近くまで案内してお別れというタイミングになった。
「ディファイまた来てね……」
涙目になっているベル、どうしよう龍の涙目ってリアルに凄く怖い。
慣れてきたとは言え物凄く怖いよ。
「一緒についてく」 とか背に乗ってた時言ってたが、「大きくなってそれでも俺の事が好きなら考える」と言ったら大人しくなった。
……早く好きな龍ができて欲しいものだ。
『また来なさい。アナタは認めてあげても良い人間なんですからね』
というバオウさん、まぁあんな修行がないのならまた来ます。
『二度と来るな!と言いたいがまぁ偶になら俺にだけ顔を見せに来いよ?ただ娘はやらん!!』
いや貰う気なんてないんですけど。それを言えるような状況じゃねぇ……
リアルドラゴン凄く怖いし、アナタ竜王種ですから余計怖い、俺なんて一捻りだもん。
まぁでも本当に時間があればまたこようかな?
龍でも何でも好かれているのは嬉しいしね。でも結婚だけは勘弁してね?
修行するならもう来ないけど。
――ベルお願いだからぺろぺろするのは止めてください。君の舌凄くビリビリするから。
あっイゥエンさんとかカルマ君とかシモンズ君とか一杯お迎えが来てる。
●
俺の名前はイゥエン=ヨキアム。魔黒騎士の中でも古参に入る程度には長く働いている。
試練という名目でディファイをデスフォレストに向かわせたが恐らく命はないだろう。
確かにカルマはディファイの事を凄く優秀な人間だと言っていたが、魔黒騎士としての才能がまるでない人間が生き残れる程デスフォレストは甘くないのも事実。
更に言えば武器もなく食料もない状態で生き残れるのは不可能だからだ。
流石に武器は持たせてやった方が良いと俺も抗議したのだが、レヴァンデイン卿の命であれば意見が覆る事もない……
そもそも俺の裁量でディファイの魔黒騎士への入団を決めたのだから本当はある程度は俺の手で育てあげたかったのだが、アイツは闇のマナが練れない体質らしく、闇のマナを扱う事に関しては誰よりも下手くそだった。
極稀にそういう人間もいるのだが本当に珍しい体質の奴だ。
俺がレヴァンデイン卿にディファイが入団する事を告げた時から良い顔はしてなかったから変だとは思っていたが、デスフォレストの件アイツを消そうと考えているのだろうと確信した。
噂ではボルト家のコンバートとギルバードに何かしらの因縁があるらしい。
そして俺はディファイに一ヶ月後にまたデスフォレストに来ると嘘を吐いた。
そもそも魔黒騎士というのは闇を操る騎士。
それが元祖の聖騎装によって破壊されておかしくなった、その後に魔黒騎士になったシモンズ達はそれを知るよしもない。
そんなシモンズを見てか、カルマも俺の話を聞こうともしない。
魔黒装の開発者であるレヴァンデイン卿は忙しいらしく魔黒装の現状を報告しても「そういう冗談はよせ」というばかりで取り合ってくれない。
というか
どうやら魔黒装達はレヴァンデイン卿に本体をいじられるが嫌でそうしている節がある
そして俺は魔黒騎士の任務で仮面の騎士と戦ったりしているのだがコイツが厄介で中々倒せない。
更にこの仮面の騎士よりも強く厄介な仮面の女騎士も現れているのだから手に負えない。
そうして任務に明け暮れている間に3ヶ月の月日が流れた。
ディファイはもう死んでいるだろうと思っているのだが、カルマは「アイツが死ぬ事はまずない、その内ひょっこり帰ってくるだろう」と言っている。
ディファイの実力では帰って来れないだろう筈なのに……
一応は死体でもあれば回収してやろうという気持ちで再度デスフォレストに行ってみれば、まず目に入ったのはデカイ何かだった。
それが巨龍だと認識できるまでには少し時間がかかってしまったのは仕方ない。
何故なら龍王種クラスのマナのドラゴンが3匹もいたからだ。
普通に考えても俺位ならば、1匹ならなんとかなるかもしれないが3匹は全力を出しても生き残れたら御の字だ。しかしここで死ぬ訳にはいかないと思い、俺が魔黒装を取りだして臨戦態勢に入ろうとした時、ディファイがその中にいるのが目に入った。
ディファイはその中で悠然と怯える様子もなく立っている。しかも巨龍もそれをどうするでもなく立っていた。
しかもよくよく見るとそれは竜王種だった。
あり得ない……竜王種はあまり人に懐かないことで有名な龍のはずだ。
それがディファイを囲んでいて何もしないどころか懐いているようだった。
素直に驚いた。
コイツは一体何者なんだ?死んでいるどころか更にマナを鍛え上げて三ヶ月前とは別人になっている。
そして一番驚いたのが、まだ子供だが初代エルムガンド公王をして最強の龍と言わせしめた“龍獅子”の異名を持つアルべロスがディファイになついている事だ。
竜王種と竜王種のハーフで極希に産まれるとレヴァンデイン卿が論文で語っているアルべロスはまず身体能力が非常に高い。
何せ伝説レベルの龍。
口伝だけしか残っておらずその破壊力は俺達の魔黒装よりも上という事ぐらいしか分かっていない。
その龍がディファイに舌を出し顔を舐めている。
コレは龍が完全にその人間に対して心を許している証拠なのだ。
俺はコイツの事を見誤っていたのかもしれない。闇のマナが使えずとも最強の龍を従える男を。
お仕事が忙しすぎて死ねるレベルで更新遅れました……
暇になるのは何時になるやら……