報われない男の物語 作:羽付き羊
19話「知らぬが仏と言うけど知ってた方が心の準備はできるよね」
『アナタ様のような立派な父親を持つお方とウチの息子じゃ釣り合いませんよ』
――僕と遊んでくれないの?
『あの子と遊んだらお父さんに怒られたんだって』
『ええーじゃあ、あっちの砂場に行こー』
――何で僕と遊んでくれないの?
『お前、調子に乗んなよ!!』
――何で殴られるの?僕何かしたの?
――もういいや、友達なんていらないや、一人の方が……
『俺の勝手だろ、別にいいだろう?』
「……夢、か」
嫌な夢を見てしまったのでふと目が覚めてしまった。
ここ何日かは野宿ばっかりで疲れが溜まっているせいなんだろう。
昔、本当に小さい頃の揖屋な記憶で目覚めが悪い。
「きゅるるる、もうディファイったらそんな立派な角生やして……」
ベルが寝言で訳の分からん事を言っている。
一体どんな夢を見ているんだ?
野宿だと夜は冷えるのでベルが丸まって寝ている中にいるので凄く暖かいんだけど、潰されそうで怖いんだよね……
ベル本人は大丈夫だって言ってたんだけどどうなんだろう?
……なんか考えてたら眠たくなってきたもう一眠りしようかな。
今度はあの夢じゃなくて、あの夢の続きが見たいな。
良い夢みたいし……
○
前回、意識がブラックアウトし、顔がビリビリするので目を開けると、ベルが申し訳なさそうに舌でペロペロと舐めていた。
何であんな事をしたのか?と聞くと
「あの人から嫌なマナ感じたから……」
とか言ってた。
確かに龍はそういうのに敏感らしいので間違っていないだろうが良い人そうに見えたんだけどなぁ……
それにしたってアレは止めて欲しい。
流石にアレは身体に堪えるんだよね。
「だってディファイ、自分の秘密バラしそうになったでしょ?もう自分の秘密を簡単に人に言ったらダメだよ!」
なんのこっちゃ?
よくわからないので聞き流して次にどこに行くのか聞いてみると、ベルの希望はヤパーナが良いとの事。
なんでもそこに知り合いがいるらしい。
「従姉なんだけど、ジンオウガのラウザルク姉さんが『旅に出るなら途中にでもよっておいで』って言ってたんだ」
別に拒否する理由もないのでそこに行く事になったんだがエルムンガンドからヤパーナは結構遠い。
船旅なら一月はかかるぐらいだがベルとゆっくり空を飛びながら魚を釣ったり、山菜取ったりして普通に旅をして一週間で着いた。
ドラゴンはやはりすげぇよね。
そんなこんなの旅の途中で、銀色の泡っぽい生物的な何かが素早く動いて消えたり、「アンタの魂頂くよ!」とか言っている鎌持っている女の子を道中に見たり、"賢者の石"を探しているという金髪の義手を着けているちっさい人とかに会ったぐらいで特に変わった事はなかった。
そしてようやくヤパーナに着くであろうその前日の夜、嫌な夢を見た訳なんだけど、どうにも夢の内容そんなに覚えてないんだよね。
だって嫌な夢って覚えていても仕方ないしさ。
そしてヤパーナに着いた。
入国検査なんてベルがいれば山の中に着地してちょちょいのちょいだぜ。
まぁ普通に上空を飛んできたんだけどねバレたら不法入国だぜ!
そして俺達はまず野宿の疲れが溜まっていたので、宿を探す事にした。
情報収集なんて二の次に決まっている。
野宿とか体力回復あんまりできないんだよ!
精神的に疲労が貯まっていくんだからリフレッシュしてもバチは当たらない筈だよ。
そしてベルの鼻を頼りに人里がある方へ下山しているとイノシシに襲われた。
凄い勢いで突っ込んでくるのでビビった。
猪突猛進にも程があるだろ!
でも前回で化けイノシシを倒した事のある俺からすれば楽勝だぜ!とか思っていると普通にベルが爪で一刺しであの世に逝かれてしまった。
「晩御飯これでいい?」
「……はい、それでいいです。というかそろそろ擬犬化した方がいいと思うよ?」
「それもそうだね」
そう言ってベルは犬になった。
相変わらず可愛いね。
何で子犬ってこんなに可愛いんだろう?
……まぁどうでもいいか。
とりあえず肉をこんがり焼いて持てるだけ持って移動するが、まだ人里が見つからない。
また野宿コースか?と思っていると、何やら騒がしい音が聞こえた。
そう思っていると、目の前に飛び込んできたのは旅館!!
やった!とりあえず風呂入って寝よう!
ああ、でもペットいると無理かな?
とか思っていると、何か鎧付けた猫とか洋服着せた子ブタが旅館の中に入っていった。
……衛生的に大丈夫なのか?
しかしそれを気にしていたら風呂なんて入れない。
そんなこんなで旅館に入り受け付けに行くと、「ハーイ」とか言われたので「ハロー」と返した。
んで「クエストは何を受注するの?」とか言われた。
意味が分からないです。
ここ旅館じゃないの?と困った顔をしていると
「アレ?お泊りの方ですか?私勘違いしちゃったようですね。テヘ」
頭の上に拳をポカンと叩いて舌を出す受付の人。
あざとい。
そしてどうでもいいから風呂入りたい。そういうのいいから風呂入りたいんだよこっちは!
「お風呂に入りたいんですけど、あと泊まります。とりあえず3泊ぐらいでお願いします。一番安い部屋で、後は犬も連れても大丈夫ですか?」
まぁでも文句とかは言わずに冷静に対処するよね、やっぱり荒事起こす訳にはいかないし、そんなつもりもないし。
「温泉は無料ですよ~、お供も同伴大丈夫ですけど他のお客さまから迷惑と言われたら罰則金がかかります。宿泊料金は3泊72zですね」
z?GTじゃなくて?はっきり言って不明なお金の単位です。
「あの~、カネ―に換算するとどれくらいですか?」
聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥というか、下手したら食べ逃げならぬ、泊まり逃げするハメになるので聞いておく、それにしてもホテルの息子として生まれた俺だけど、旅館も案外いいな。
ヤパーナ風が最近巷を騒がしているらしいし、継ぐ時にこういう要素を入れてみてもいいかもしれないね。
「カネ―ですか?ええとちょっと待って下さいね」
全然関係ない事を考えていると受付の彼女はそう言ってカタカタと慣れた手付きでパソコンに何かを入力していた。
「そうですね、1zが約50カネ―ですので、3621カネ―ですね。比較的お安いかと思われますがいかがでしょう?」
「あ、それでお願いします」
いや安すぎじゃね?そんなもん即決だってばよ。
因みに今手元にあるのは2万カネ―。
残金を考えるとそろそろ仕事した方がいいかもしれない。
俺ニート希望だったはずだし、魔黒騎士という立派な職にも就いているのに何故こんな目にあってるのだろう……
まぁとりあえずお風呂に入ってから考えよう。
という訳でペット同伴で入れると言うことなので温泉に入った。ベルが、
「え、お風呂に一緒に入るの?は、恥ずかしいよ……」
とか言ってた。
常に全裸で空飛んでいるような種族がそんな事を言うのに驚きを隠せない。
とは思うものの、「全裸乙」とも言えないので困った顔で苦笑いをしていると、
「あれぇ?ディファイはこう言われると照れるって聞いたのになぁ~?」
とか言っていた。バオウさんの仕込みですね分かります。娘に何を教えているんですか……あの龍。
そんなこんなで一緒に風呂入って飯喰って寝んねした。因みに混浴だったけど、男の人とおばあちゃんばっかりでした。
……期待してた訳じゃないけど、何だか虚しい気分になりました。
そのまま風呂から上がると直ぐに寝てしまい、朝起きてベルとまた風呂に入ろうとすると、掲示板みたいなところにゴツイ鎧着た人とかガンダムみたいな鎧の人とか、にゃんこ達が集まってました。
何書いてあるんだろうか不思議に思ったので、その人達がいなくなってから掲示板を覗いてみると、賞金稼ぎの掲示板ぽかった。
そろそろ旅こ…ゴホン、基、旅の資金が尽きるので仕事探しをしていた俺には持ってこいの仕事だったのでそれを受ける事に決めた。
だけど、何かギルドとかに登録しないと受けれない依頼が多いらしい。
でも簡単な物なら別に普通に登録していない人でも受けられるというのを受け付けの人に聞いたのと、別に難しい依頼を受けるつもりもないので登録しないで受けられる依頼を掲示板で探していく。
「賞金200万ジェニー?いやいやこれは通貨が違う」
グリードアイランドの情報って何さ。
「これ何かどう?賞金首500万エンの…あっ通貨が違う」
賞金首とか危なすぎるでしょ?それになんだよ「おい、丸々」って……
「ゼニ―は使えないよね?」
それは電子通貨の方です。
「何でこんなにややこしいの?」
ベルが唸っている、まぁややこしいのでそう思うのは仕方ないと思う。
「ここはカネ―も使えるんだけど基本的に狩人さん達がこの辺に多いから狩人さん達の通貨がzだからそれで基本的にzを使ってるんだって、でもこの国は島国だし、降りるとすぐ海だから他の通貨も流通しているらしいよ。換金所も近くにあるのはそういう事みたい」
風呂場で男の人から聞いた話だけどね。
青いクマを倒したり、ウサギみたいなクマ倒したりしてお金を稼ぐのがここの地域では一般的だったりするとかしないとか。
システムがモン狩りに似ているな、まぁモン狩りで倒すのは基本的にモンスターペアレントだけど。モンスターペアレントを倒す(説得する)事で特別に金一封がでるんだよね。
でも上位のネグレクトが強すぎてやばい。どうしたら子供を登校させられるんだろうか?やっぱり他の教師と一緒に会議を開かないといけないのかな?教育委員会とPTAがやっかいすぎるんだよな、アレ。
「あ、ティガさん寒い所に住んでるって聞いたけど、ここにいるんだ」
ベルがギルド専用の方を見てはしゃいでいた。どうやら知り合いらしい。
「あ、これ悪龍の方だ。ティガさん目の色がオレンジだもん。」
どうやら違ったみたい。
写真が貼ってあったのを見てそう言っていたので龍違いらしい。
まぁ竜王種ではないから知らないけど、ベル曰くめちゃくちゃ強いらしい。
キレたら怖いが普通にしていると優しいらしい。でもこの辺りの龍って基本的に肉食らしい。
アルシリアの龍は基本的には草食でこの辺りの龍は肉食が多いんだって、人を食べる龍もいるとかいないとか、逢わないようにするしかないね。
「あ、ディファイ、コレ何かどう?」
掲示板に書かれている依頼を見ると、特に危険がなさそうなのでFランクの下のGランクの任務だし、まぁ大丈夫だろう。人探しなら誰でもできるってことかな?見つけた場合は1万zもらえるらしいしね。ベルがいるからすぐ見つかるだろうし。
「そうだねこれにしようか。神都サガの近くだし丁度いいや」
情報収集のお仕事もしないといけないしね。
「そう言えば、ラウザルク姉さん。サガの近くに住んでいるって言ってたよ」
そうなのか、なら一石三鳥だね。
と言う事で神都サガの巫女姫さんから捜索依頼が出されている行方不明の少年を探す事になった。
ん?巫女姫って何か聞いた事があるような?どこで聞いたんだっけ…思いだせない。
まぁたぶん巫女の中で一番凄い能力持っていて美人だから姫と呼ばれているんだろう。
まさか王族な訳あるまいし……
王族が直々に依頼するなら普通は直属の親衛隊とかでしょ?ならたぶん前者で間違いないでしょ。
「すいません、この依頼を受けたいんですけど……」
受付の女の人に言うと少し驚いた顔して、何かを思い出したっぽい顔もして「ああ、そうですね。アナタですもんね」とか言っていた。
俺が弱いという事をこの受付の人は分かってくれているらしい。なら受けられるだろう。
「はい登録完了です。登録料はこの依頼に関しては入りません、ではご武運を……」
とか言っていた。良く分からんがまぁ何とかなるだろう。ベルと一緒に馬車ならぬ、よく分からないダチョウみたいな奴が引く乗り物にのって依頼者のところに行く俺であった。
――この乗り物酔わないよね?
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「あ、あの人あの依頼受けちゃったの!?」
受付の女性の片方が驚いた顔でその事をもう片方の受付の女性に聞いた。
「はい、OKしましたよ」
清々しい程の笑顔でそう返す女性に呆れた顔をする先輩女性、それもそのはずであるあの依頼はギルドに登録していない人間でも受けられる事は受けられるが、難易度はAランクのそれより、いやSランクのそれより高いとされるG級の依頼を受けたからである。
「何であのG級の依頼をOKしたの!?」
あの依頼がギルドの登録をせずとも受けられるには理由があった。
それは引退した狩人でもいいから腕利きの人材でなければ依頼を成功させるのが難しいからである。何せヤパーナは島国である。
正式にギルドに登録しない人間も多数存在し、その中に腕利きの人間も存在するのも事実。
そこで実力が示されたのなら初めてこの依頼が受けられるというももなのだ。
その実力とは「装備」、「身体能力」、「技術」、などの様々な要素をクリアした事で初めて受ける事が可能な依頼がG級と言われるものなのだ。
それを、あの軽装の両頬に十字傷を付けていて子犬なんかを連れている人間をどうして受付けたのだろうかがこの女性には分からなかったのだ。
この地域では「負け犬」、「勝ち猫」という言葉が存在し、その事から縁起物として猫型の亜人のアイルーが好まれてお供になっている理由だ。
「いや、それがですね番台さんがあの人の身体を見た時に龍に傷つけられた傷があったらしいんですよ。しかも無数に」
「番台さんが?」
番台さんは温泉の番台の事で、数え切れない程の狩人の肉体を見ている。
そしてその事が影響してかどうかは分からないが、番台さんは狩人の実力が分かるのだ。しかも外した事は過去数件で、ここ十数年はどの依頼までこなせるかどうかまで言い当てる事ができるのだ。
……決して厭らしい顔で裸をマジマジと見ていた訳ではない。多分。
「ええ、番台さんが『アレ程の傷を負って尚生きている、おそらくよっぽどの実力者だにゃ!』って言っていたので」
「番台さんが言うならそうかもね。でもあそこの依頼って凄腕の狩人でも受けないでしょ?“爆龍”と“雷狼竜”の2匹が居るのは有名だからクエストに書いてないし侍ナイト隊、忍者ファイター隊、しかも狩人隊まで捜索してるけど見つかってないし……」
このヤパーナという国においての騎士というのは「カタナソード」を使う一撃必殺の使い手が侍ナイト、「ニンジュツ」という魔法を駆使する暗殺能力に長ける騎士が忍者ファイターの二部隊が存在する。
しかしそれは、この国は主にその騎士団達が平和を守る為に存在する、対“人”用の騎士達だ。
獣や竜等も相手にすることも時々あるが、その機会は少ない、何故ならこの国には狩人という対“獣”用に訓練された人間が多く存在し、また違う部隊が存在する、それは騎士部隊ではなく狩人部隊とされ、色々な武器を使い獣を狩るのだ。それが狩人部隊だ。その三隊が探しても見つかっていないという現状。それほど今回の任務は難しいのだ。
「神都サガに近いですけど、誰も近づきませんしね。あそこの孤島」
「複雑だし、一度迷えば抜け出せないからね。“霊園”。ギルドの配給が出せないし、毎回出る“爆龍”と“雷狼竜”と戦うのは嫌気が刺すそうよ」
雷と嵐がほぼ毎日のように存在する地域、孤島“霊園”その過酷な環境でさらに手ごわい竜や獣等もいるのだから迂闊に手が出せない。
いくら人探しといえど、一人の為に部隊全てを使う訳にもいらないのだ。
だからこそのギルドに所属しない人間が受けられる数少ないクエストに入っている。
「でもあそこでは“雷狼竜”は神の使者と言われているし、おとなしくて人を襲わないから狩るのは禁止されてます。というか狩れませんけどね。強すぎますもん。4人がかりでも勝てない事で有名ですし」
「それもあるけど、何であそこが危険だといえば400m以上の龍もいるのよ?エルムガンドの“竜王”よりデカイ化け物竜、ラヴィエンテ。滅多に出ないけどアレが出たらもう終わりだからね、天災だもん。人が近づくのが愚かなのよ」
竜には“竜王種”と言われる種が存在する、しかしそれは基本的には人が従えさせることのできる竜なのだ。それ以上の龍の方が多いのも事実。確かに“竜王種”は強い。しかしそれが一番強いという訳ではないのだ。
どうでも良いがラヴィエンテが住み着いたのはここ数十年の話なので神都サガも迷惑しているとの事らしい。
「う~ん、大丈夫かしら?見たとこ、武器持ってなかったから、魔法使いだけど基本的にドラゴンは魔法効きにくいし……」
心配そうに言う女性、それも無理はない話だ。
武器と言うのはここでは大変重要な要素の一つなのだ。魔法を使うものもいるにはいるが、どうにも魔法耐性がドラゴンにはあるらしく、属性魔法ぐらいしか効果はあまりみられない。しかも属性魔法は少量のダメージしか与えられないパターンが多いのだ。
「なんとかなるんじゃないですか?番台さん信じましょうよ」
「それもそうね」
もう一人の受付けの言葉とこれ以上心配したところでもう遅いという事で女性は吹っ切れたようだ。
「あっ、狩人さん来ましたよ。」
お金は先払いだからもう心配しないでいいし、今は目の前の仕事に専念しよう。
「「ハーイ」」
こんな会話があった事など当然ディファイは知らない。
忙しすぎて投稿できない……
完結はさせるのでのんびり見て頂けると嬉しいです。