報われない男の物語   作:羽付き羊

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番外編「番外編の方が実は大切な情報たくさんあったりするという手法は個人的に好きでもあるが勘弁してほしくもある」

魔黒騎士の根城のある一室で2人の男が話していた。

 

「シモンズ、ではこの任務お前に任せたぞ」

 

「へいへい、任せろって。それよりイゥエン、お前何かやつれてないか?」

 

報告書を整理しながら任務を言い渡し、後ろを向いて机に書類を入れるイゥエンの姿を見ながらシモンズはそう言った。

 

「……まぁ色々あってな。ディファイの奴め…何であんな事に?」

 

ふと溜息を吐くイゥエン。

それも仕方ないことである、あんな事があったのだから。

 

「ああ、ディファイが暴れた事か?まさかヤパーナでクエストを受けるとはな~、しかもG級だとはな」

 

「それだけならまだ良かったが……何でよりにもよって巫女姫と接触しているんだ!?アルシリアとは親交が深い国なだけあって情報操作には骨が折れたぞ……」

 

つまりはディファイがアルシリアの出身だとバレる可能性が非常に高い事がディファイの事後報告で分かった事による忙しさ。

 

一ヶ国に付きマナフォンで情報を送るという契約の元にそうしているのだが、その情報を送られた時、イゥエンは目が飛び出そうになった。

 

アルシリアでは今出来る限りの手を尽くしてディファイを探している。

その詳細はよく分からないが、どうにもアルマ姫とロイヤルガードの4人しか知らない事らしい。

 

六大公爵家のレヴァンデイン卿ですらその情報は分からないという。

噂ではどうにも何かしら大切な情報を持っているとの事なのだが………

 

「アイツは基本的に何を考えているとか何を知っているかとかその辺もよく分かんないからなぁ」

 

「……それが問題なのだがな、私が出した命とはいえこんなややこしくなるとは……」

 

ディファイに対しての2人の共通認識は“訳が分からない”

マナも少なく身体能力も低い。知能はそこそこ高いが試験上位者と比較すれば少し劣る。

これと言って高く評価するボイント等ない男の筈なのだ。

 

しかし、他の女王騎士の受験者は全員が揃いに揃ってディファイの事を高く評価していた。

 

ただ生き残る力だけは確かなのは二人共に認めた結果、この世界に生きている人間ならば誰にでもある筈の負の感情を使う魔黒騎士として選んだのだが、その適正があると思ったら闇のマナが使えなかった。

 

上司の指示でデスフォレストに行かせ口封じでもしようとした結果、傷だらけとはいえ無事に生還したり、その時にアルべロスと一緒にいたりと本当に訳が分からない存在なのだ。

そして生き残る力だけは魔黒騎士、いや全国の名だたる騎士達よりも高いのは間違いないだろう。

 

「まぁお前も疲れてるなら休んどけよ。1週間も情報操作のせいで寝てないんだろ?目が死んでるぞ?」

 

流石にイゥエンの様子を見て心配したシモンズがそう言った。

この2人実は暇な時に一緒にラーメンを食べに行ったりするぐらいには仲が良かったりする。

 

「そうさせてもらうとする。流石に限界が近い……」

 

そう言い終わる前に椅子に座って机にうつ伏せになって鼾をかきだした。

 

「ったくよぉ~、めんどくせぇなぁ」

 

そういいながら自分の黒衣のマントを掛け布団の代わりにイゥエンにかけるシモンズ。

 

『ツンデレか?』

 

「そんな上等なもんじゃねぇよ。ただの気まぐれだ、男同士でツンもデレもいらん」

 

コンダクターに問われてそう返すシモンズ。

部屋から出る際に扉を静かに閉めるのも忘れないのは彼の想いやりが窺える。

そして任務の準備にとりかかる為にまず予備の自分の黒衣のマントを取りだす為に部屋に戻ろうとするとある人物に声をかけかれた。

 

「お前が動くとは珍しいな、何の任務だ?」

 

声の主はカルマであった。

3日程前に言われた任務をこなしてきたのであろう。かすり傷程度のものはあるにしろ、服はボロボロで今にも破けそうである。

 

「ああ、お守だとよ、新人女王騎士の。イゥエンがディファイの後始末してるから俺が行く破目になったんだよ。めんどくせぇ。お前は任務どうなってんだよ?」

 

「ああ、仮面の騎士達の情報を聞いて行ってはみたがもういなかった。どうやらガセ情報を掴ませられたみたいだな」

 

肩を竦めながら残念そうにするカルマを見ながらシモンズは鼻で笑った。

 

「ははん、どうせそんな事だろうと思ったぜ。でもそれだけじゃねぇんだろ?」

 

その言葉を聞いてカルマは僅かに眉をひくつかせた。どうにもシモンズはそういう事に関しては鼻が良く利くらしい。

 

「……代わりに今はどこかの国に潜伏しているとかと言う話だ。俺の予想ではエルムガンド公国辺りか、ギスカーン辺りだと睨んでいるが」

 

「ふぅん、なるほどねぇ。ヴァレリーにエルムガンド辺りに行ってもらうかな。アイツ最近サボってばっかだからな」

 

顎を掻きながら考えるシモンズ、正直に言えばシモンズは頭がよく回る。イゥエンも回る方だがシモンズの比ではない。

しかしシモンズ自身があまりそういった事をしたがらない為にイウェンが参謀役になっていたりする。

 

「お前の任務が一番楽そうだけどな。サボってばかりのお前が言えるのか?」

 

カルマは思わずそう言ってしまうのも無理はない。普段のシモンズはサボり魔なのだ。

しかしやることは確実にやる。その事からイゥエンもシモンズには信頼を寄せているのだから

 

「それは言わないで欲しいね。天下りみたいな奴よりはマシだろ?まあ確かに今回の任務は一般人を操る感じにするし、それをバイトの募集にしてたら以外に結構来ててな」

 

「なんだそれは?」

 

悪巧みを考える時の笑い方をするシモンズにカルマは呆れた。バイトの募集とか普通はしないだろう。

 

「いや、日給1万2000カネ―ってまぁ割といいと思わないか?だって実働20分だぜ?」

 

「その代わり危険なんだろ?それくらいは当然だろうな」

 

「いや、危険度は低いけどな……まぁ次の日は疲れて動けなくなるだろうからこの値段にしたんだがな」

 

「……それで良いのか?……まぁ良しとしておこうか」

 

あまり納得してはいないカルマを後目にシモンズは扉を後にする

 

「んじゃ行ってくるわ~」

 

そう言ってシモンズは準備にとりかかろうとした。その時一通のメールが彼に届いた事を思い出した。

 

「そいうや、妹様が花買って来いとか言ってたか?何の花だったけかな?」

 

それを思い出そうとするが生憎そのメールの内容はうろ覚えであり、そのメールが入っている携帯もイゥエンの布団になってしまっているマントのポケット。

 

「お気に入りの花でも買ってくっかな、バラだったけかな?そんな上等なもんじゃなかったな…」

 

独り言をしながら迷うシモンズ。しかし深く考えても出てきそうにもなかったので諦めたらしく

「まぁいいか、適当に買ってくるか」

と呟き、任務へと出かけたのであった。

その時にバイトの募集で使っていた広告が部屋から1枚外へ飛んでいった。

 

日給12,000カネ―。

先着順。

体力仕事なので体力ある人を募集します次の日は筋肉痛で絶対動けません。保障します。

実働は30分以内です。命の心配は要りません。安全に確実に稼げます。もしこの条件で働きたい人は2週間以内に090‐××××-××××まで連絡ください。

 

彼がその後、任務を成功させて久しぶりに実家に帰った時に妹に色々言われたのはまた別の話である。

そしてシモンズがエルトと戦おうと思っていたら、小さな人形使いの女王騎士と戦うハメになり、色々勘違いされて恨まれるようになったのも別の話である。

 

「俺、今年厄年だったけ?」

と彼が呟いたのは誰にも聞かれなかったらしい。

 

 

所は変わって、女王騎士の訓練所。本日の訓練を終え従騎士は身体を休めたり、趣味に浸るそんな中でエルト=フォーエンハイムは一人残って訓練を続けていた。

 

「エルトの奴、また訓練か?」

 

「はい、そろそろ休憩を入れても良い頃だとは思うのですけどね…」

 

廊下を歩きながらルカとイージスは最近訓練に没頭している友人を心配していた。

無茶をする奴だという認識は試験の前からあったのだが、女王騎士になってからはそれに輪がかかったように訓練に没頭していたからである。

 

『ディファイとカルマが俺の目の前で連れ去られたんだ……』

 

彼は2人を自分の手の届く距離で助ける事ができなかったのだ。

そのせいで彼は何より強さを求めていた。

 

もう2度と手が届く距離で助けらない事がないようにと…

 

「悔しかったんだろう、自分の力が足りなかった事が」

 

「そうだと思います。エルト君はそういう人ですから」

 

明日のエルトの任務は人形遣いのアルハイムと一緒の任務だったはずだ。

自分達が一緒じゃないし、今のエルトは無茶をしすぎるので心配なのだろう。

 

「ただ何でディファイさんの情報をアルマ姫は求めているんでしょうか?」

 

「うむ、それはお前も噂で聞いているだろう?」

 

「ディファイさんは陛下の情報を知っていたとかいう噂でしたか?それならギルバートさんの方が知ってるんじゃないですか?」

 

アルマ姫は今現在ディファイの行方を力を入れて捜索している。

あくまで噂だがディファイは女王陛下の居場所を知っているという事から捜索の力を入れているらしいとのことだ。

 

「その通りなんだが、ギルバートさんがその情報を知っていて私達女王騎士にその情報を教えない訳がないからな」

 

ギルバート自身も女王陛下の居場所を独自に探しているという話は女王騎士全員が知っている話であるし、その情報はホテルに泊まった騎士達が確かなものだと報告している。

 

噂で聞いた話ではあるが、ギルバードが「今日は陛下はアルシリアの西部の場所にいそうだなぁ」

とかいう話を偶然聞いた者がいたらしい。

その場所を調べた結果、陛下はいなかったが代わりに変な仮面の女騎士が現れたとかいうどうでもいい情報が流れたのは有名な話だ。

 

「それもそうですね」

 

「それにしてもギルバートさんは凄いよな。六代公爵家でもないのに色々知っているし…」

 

「伝説の騎士と言われるエクソードさんの右腕と言われてた人ですしね。何たって“希望の騎士”ですし」

 

実績としては現六大公爵家の家長とほぼ同等以上と言われているのがギルバート=R=ボルトの存在。

 

まずギルバートがいなければ負けた戦いは多く。

『彼の戦場に敗北はなく、勝利以上の物を手にする』という逸話もあったり、噂でしかないが陛下とギルバートは昔恋仲だったとかというものもあり、影響力だけで見ればこの国でもトップクラスの存在である。

 

 

まぁそれでも一般人という事なのに国家機密レベルの情報を知っていたりするのはどうなのだろうか?

という話が一つも出ないというのはおかしいが、その事に気づく人間がいないのだから仕方ないだろう。

そういう風に出来てしまっているのだから。

 

 

『ディファイは生きています。保険金かけた意味がなくなって残念な限りですよ』

 

と王=道隊長がディファイの行方不明の事を報告した際にそんな事を言っていたという話だ。

 

息子を信じているからこそ発破をかける為に保険に入ったり、行方不明で生死不明なのに保険の申請を行わないという彼の行動は女王騎士から見てもディファイが生きていると確信しているのが分かり好感度がさらに上がっているという話もある。

 

まぁでも、実のところ王=道以外にディファイが行方不明という事が知らせられたのはすぐの事だったのだが、その情報源がとても有力なので本気で保険金を悪ふざけでかけるべきではなかったと思い、妻に言うべきかどうか3日ぐらい迷っていると、ディファイ本人から無事だということ確認できたので、ほっとして吐いたセリフだった事はギルバートしか知らなかったりする。

 

「まぁギルバートさんもディファイとカルマの無事が確認できないのは辛いと思うがな」

 

「そうですね。本来なら合格確実だった人材を2人も失うなんて女王騎士団にとっても痛手ですし」

 

ディファイにカルマの2人はロイヤルガードから見ても既に従騎士(スクワイア)のレベルはあったのだ。

“天才”カルマに“仮面”のディファイ。

この2人を失ったのはとてつもなく痛手なのは間違いなかった。

 

「まぁ、それ以上の人材に私達がなればいいだけの話だがな」

 

「……イージス、アナタはまた自分を偽るのですか?」

 

ルカの言葉にイージスは立ち止った。少し怒気を含んだ声でその言葉に対する返答をした。

 

「……何を言っている?私が何時自分を偽った?」

 

「今現在ですよ。心配しているなら責めて僕にだけにでも言ったらどうです?アナタの事情を知っているのは少ないんですから」

 

「くだらんな、事実を言ったまでの話だ。心配等しても何も生まれん」

 

「なら話を変えましょう。アナタは何時になったら自分を曝け出せるんですか?キャロルを見ても分かるでしょう?別に女性だから騎士になれないという訳でも、弱いという訳でもないという事ぐらい…」

 

「それはそうだろう。男とか女とかそんな事は些細な事だ」

 

先程のまでの怒気は既に無くなっていた。

どうやらルカの話をある程度自分でも分かっているようである。

 

「なら!」

 

「しかし私は受け入れたのだ。私がそれを望んでな。曝け出すとかはないコレが“今“の自分なのだからな。そういう訳でできる限りはこのままでいくさ」

 

「そう、ですか…」

 

ルカはその言葉を聞いてもう深くは聞く気がなくなったようだ。

 

「じゃあ部屋に戻る、明日も早いからな。お休みルカ」

 

「はい、おやすみなさい」

 

そう言って2人は分かれて自分の部屋に戻る為に歩き出す。その時イージスはふと言葉を漏らした。

 

「……やっぱり、初恋というのは報われないものなのかなぁ」

 

その言葉はただポツリと漏れた今の“彼”にできる本音。誰も気付く事ができないからこそ彼は“今”の自分を曝け出せていた。

 

(……ただ、もう一度会えたなら、私はワタシになって“ディファイ”と呼びたいな。)

 

それが今の“彼”にできる精一杯。それが報われる日がくる事を頭ではないと思いつつ、後ろ髪を束ねている赤色のリボンを触りながら、心の奥底で願っていた………

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

くしゅん!……誰か俺の事を噂してるな。くしゃみ一回って良い噂だったけ?覚えてないからまぁ自分の都合の良いように考えるべきだな。うん。

 

「ねぇディファイ。す、好きな女の子っているの?」

 

「うん?居たけど……」

 

まぁ好きな女の“子”ではなく好きな女の“人”というのが正しいだろう。

 

ていうかあの人今何してるんだろうか?噂じゃあ仮面の女騎士とか言われてるらしいけど。

ていうか実家にその仮面の姿で来た事あるから噂でもないんだけどね。

 

「今は別にいない……かな」

 

「そ、そうなんだ!!」

 

ベルはガッツポーズしそうな感じのハイテンションになっていた。「私にもチャンスが…」とか言ってたけど、まぁどうでもいいや。ていうか諦めようよ、種族の壁は大きいと思うよ?

 

「じゃ、じゃあ気になる女の子とかはいるの!?」

 

「うん?いるには……いるね」

 

気になる女の“子”か……そういえば最近スージーちゃんに全く会ってないな。

別に好きとかいう意味じゃないし、気になるという程でもないんだけど。どうしてるんだろう?

イージス君から結局聞けなかったしな~。

 

「そ、その子はどんな子なの!?」

 

ベルがこの話に喰いついてきた。そんなに興味があるの?

 

「そうだな~あの子は……」

 

そう言いながら俺はスージーちゃんと出会ったあの日の事を思い出していた。

 

  

  

 

 

 

俺がスージーちゃんの事を知ったのは7歳の時、曾祖父の葬式が終わった時だったと思う。

 

まだ子供だった俺は、葬式の後片付けの手伝いが終わると親父と母さんが曾祖父さんと生前縁があった人との対応で忙しく、何か六大公爵家の人とかも来てたので俺は一人で遊ぶ事にした。

カルマ君とジェダ君と一緒に遊ぶのも良かったけど流石に葬式で一緒になって遊ぶのは場違いだという位は分かっていたので、一人で遊ぶ事にしたんだ。

 

『ディファイ、お前が頑張れよ。』

 

というのが曾祖父との思い出の中で一番思い出に残っている言葉だ。何で俺“が”頑張るのか“も”じゃないのか?とか不思議に思ったのでよく覚えている。

 

曾祖父は享年113歳と長生きだった、小さい頃の俺はお年玉が少なくなるのともう遊べないのが残念だったと思っていた。

7歳の子供だからというのもあるが、それ以上に曾祖父が死んだとは全然思えなかったからだと思う。正直な話、今でも曾祖父がひょっこり帰って来そうな気がしてならない。

しっかり亡骸を見ているのにも係わらずだ。

 

 

俺の名前を付けたのも曾祖父であるらしい。てっきり親父か母親辺りが付けたと思っていたけど曾祖父が「この子の名前はディファイにしてくれ」と言ったので決まったらしい。

何でこの名前なのかは曾祖父しか理由を知らないらしい。まぁどうでもいいけどね。

 

そんなこんなで一人で遊ぼうとしていると、裏庭で女の子が一人泣いていた。

 

「どうしたの?」

 

「父上がいないの……」

 

その女の子はどうやら迷子になったらしかった。ちょうど葬式が終わって親しい人だけで集まってたときなのでたぶんその女の子の親御さんも忙しかったんだろうと思う。

 

「そうなんだ……じゃあお兄ちゃんと一緒にお父さん探す?」

 

声をかけてしまったので面倒を見なければいけない気分になったので女の子にそう聞くと。

 

「……探してくれるの?あ、ありがとう……」

 

涙を自分のハンカチで拭いてお礼のつもりなのか笑顔でそう答えてくれた。

当時の俺がペドならおそらくやられていただろう……それくらい眩しかった。

 

普通に当時も今も普通のお姉さん好きな俺はその笑顔が単に女の子らしくて可愛いな程度にしか思わなかった事を覚えている。

 

そんな感じで手を繋いで一緒に歩いてお父さんを探すことにしたのだが、名前が分からないと探しようがない事に気付いたので女の子の名前を聞くことにした。

 

「そういえばお名前は?」

 

「えっとね、イ―…じゃなくて!!ブ、ブリュンヒルデ!」

 

いきなり名字を言う女の子、正直何故に名前を聞いたのにいきなり名字が出るのか不思議で堪らなかったのだが、俺も7歳だったという事もあったし、その名字は有名だったのですぐにお父さんが見つかりそうだったので、深く聞かないことにした。

 

「そう、たぶんお父さんのいる場所分かったから行こうか?」

 

六大公爵家とかが集まっている部屋は確か、騎士の間だったけ?

そういえば、六大公爵家と親戚になったのは曾祖父の時からだったけ?俺の親父の時代から皇族と仲良くなったとはいえ、曾祖母がバンニール家の3女とかいう話をばあちゃんから聞いた覚えがある。

 

そんで六大公爵家の人とかも馬が合ったらしく、色々やらかして今に至る的な事を聞いたような…まぁどうでもいいか。

 

「ありがとう!!」

 

素晴らしい笑顔でそう返事してくれる女の子。

そして曾祖父の事を慈しんで話しているらしい部屋の前まで行くと今度はカルマ君とジェダ君が居た。カルマ君はジェダ君の面倒を見ていたらしく、一緒にあっち向いてホイで遊んでいた。

 

「また私の勝ちだな」

 

「兄ちゃんすげぇ!!何でそんなにつおいの?」

 

「ふふふ、それは俺が強いからだ!」

 

「すげぇ!やっぱり兄ちゃんすげぇ!!」

 

ジェダ君……そりゃあグーを出す時に口が「よし次グ―だ」とか小声で言ってたら分かるよ。

 

しかも負けた時に次に向くところを目線で確認してるとか……

 

その様子を見ているとカルマ君が俺と女の子に気付いたらしく、不機嫌そうな顔をして話しかけてきた。

 

「ディファイ、誰だソイツ?」

 

明らかに声色が不機嫌である。

 

何で不機嫌なのかは全く分からないけど、そのせいで女の子は後ろから俺の服をギュッと握ってくる。

まぁ不安で堪らないのにいきなりそんな怖い感じで来られたら誰だって引くだろう。

 

「迷子になったんだって、ジェダ君と同い年くらいかな?」

 

とりあえずそう答えると、カルマ君は納得したようだった。

 

「あ!ブリュンヒルデのとこの女の子じゃねぇの?」

 

「ああ、言われてみれば……」

 

2人は女の子を知っているらしくそう言っていた。

六大公爵家は何故かは知らないが割と歳の近い子供が多い。

知っている限りで言えば、カルマ君にジェダ君、時々ホテルに泊まりにくるルカ君にジ―クさん。他にもブリュンヒルデのこの子とか、ルナハイン家の女の子とか、カミュ家の男の子とかも歳が近い。

 

そのせいもあって子供通しで色々遊ばせたりするらしい。

まぁ仲が良いかは別だけど……

 

「うぅ……」

 

と言って女の子は俺の後ろから離れようとしない。というか涙声になっている。

 

「カルマ君……何かしたの?」

 

初対面じゃないからこその嫌悪感を醸し出しているので、まぁ何かがあったのだろう。その事を聞こうとすると。

 

「そ、そういえばジェダあっちに父上の聖騎装のフィギアがあったぞ?」

 

「マジで!行こ、早く行こ兄ちゃん!!」

 

「ああ、じゃあまたなディファイ」

 

「またね~ディファイ兄ちゃん!」

 

そう言ってさっさと違う方向へ行ってしまった。

 

一体何をしてこんなに嫌われたのだろうかめちゃくちゃ気になったが、女の子の方を向くとそういう状況でない事に気付いた。

 

「うぇ、うぅぅ……」

 

女の子は今にも泣きそうになっている。

 

何でこんなことになっているのかはイマイチ分からないけど今泣かれたら俺が泣かしたことになってしまうので、どうしようか困りながら何かいいものがないかとポケットの中を探していると、母が髪の毛を切るのを嫌った俺に後ろ髪が鬱陶しいからこれでくくれという理由で渡されたリボンがあった。

 

「いいものあげるから泣きやんでくれる?」

 

失くしたとか言ったらたぶん、髪の毛切りに行かないといけないな、当時の自分は凄く髪が長かったので母親からリボンを渡されこれで後ろ髪をくくっていた。

 

でも基本的にくくるのが面倒臭いと思っている俺は母親に言われるまでリボンを使わずにポケットに入れていた。

さっきの葬儀が終わるまではくくっていたけど、何か男なのにリボン使うのが恥ずかしいので葬儀が終わるとさっさと取ってポケットに突っこんでいたのだ。

そのリボンを女の子にあげると女の子は

 

「もらっていいの?」

 

と戸惑いながらもそのリボンが気に入ってくれたようで、マジマジとそのリボンを見ながらそう言った。

 

「いいよ、ほら、顔がベタベタだよ?これでチーンして 。」

 

ティッシュで鼻をかませてあげた。

当時から俺の周りには年下が多く、ホテルでも迷子の面倒とかも見ていたというのもあってそこそこは面倒をみる事ができた。

 

7歳なので一緒に遊んであやすくらいしかできなかったけど。

 

「あ、ありがとう」

 

顔を赤くさせモジモジしながらしっかりとお礼の言葉を女の子は言った。

 

「お。お兄ちゃん」

 

「うん?」

 

顔が赤くまだ恥ずかしがっている様子が見えるものの、どうにも何かを俺に伝えたいらしくまだ舌足らずの声で俺に向かって話しかけてくる女の子。

 

「父上には泣いた事秘密にしてくれる?」

 

どうにも泣いたことが父親にばれたくないらしく、上目使いでそう俺に聞いてくる。ていうかその歳で上目使いをマスターしているのはヤバいよな?と今では思うがその当時はそんなこと全く考えていなかったので素直にうなづいた。

 

「いいよ。じゃお兄ちゃんがそのリボンを渡したのも秘密にしてくれる?」

 

 

「うん!約束だよ?」

 

「2人だけの約束だね!!」

 

そう言って約束をした、でこの後にブリュンヒルデ卿が凄い勢いでやって来て、俺に向かってもの凄く怒っていた。

 

「あんな笑顔を私にも見せてくれた事がないのに!!」

 

とか言ってたけど当時の俺にそんな事をいうのは頭がおかしいと思います。

でその後、女の子の名前がスージーちゃんだというのを聞いたり、実はもう一人兄がいる事を聞いたのに絶対に兄妹一緒にいることがなかったりと言う話もあるのだが、まぁそれはスージーちゃんの話とはまた別の話なので割愛しよう。

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「そういえばこの話秘密だったわ」

 

思い出話をしようと思っている内にどんどん昔の事を鮮明に思い出した。

約束をしていたのは覚えていたのだが、それがどんな内容だったかはうろ覚えどころの話じゃなかったので正直助かった。

 

それでもベルに言ってしまったので約束を破ってしまった。

まぁ2人の秘密ではなく2人と一匹の秘密になってしまったのだが……勘弁してもらおう。

まぁ一匹増やしてはいけないとは言われてないしな。

 

……屁理屈ですねすみません。

 

「ディファイ!わ、私も鼻をチーンして!!!」

 

そんな事を思っているとベルが興奮して俺にティッシュペーパーを渡してきた。

 

「ごめん、そんなに大きなティッシュ持ってないんだ」

 

残念そうな表情のベル。

でも本当にそんなにデカイティッシュはないんだよ。

 

ていうか犬になったら良い話なのだがそれを言うのも面倒だし、ベルもその気分ではないので言う必要はないだろう。しかしあまりに残念そうだったので、

 

「なら俺これ言ったことを秘密にしてくれるのを約束してくれる?」

 

と言ってみると

 

「うん!それがいい!!」

 

と凄く喜んでたので良いだろう。たぶん。

そういえば、イージス君のリボンって俺がスージーちゃんにあげたリボンと同じ色してるような気がするんだけど、はて?

 

 

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