報われない男の物語   作:羽付き羊

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2話「落ちるにしても落ち方を考えたい」

一次試験のペーパーテストはとりあえず書くだけ書きました。

テストを受けている時に試験官に睨みつけられ、あの雰囲気に飲まれてしまい普通に真面目に受けていました。

 

なんというチキンな俺…

 

女王騎士の入団試験を受ける奴なんて肝が据わっている奴ばっかりなのに試験官に睨まれただけでビビってるのは俺くらいだろうな……

試験の最中で寝てる奴がいたしそれに比べたら俺なんて生まれたてのひよこみたいなもんだろうなぁ。

 

……そんなにテスト余裕だったのかな?

 

暗記系問題ばっかりだったから覚えてたのか?まぁ他人の事を考えていても仕方ないし切り替えて行くか、次の体力テストは真面目にやってもどうせ落ちるだろうし……

 

グサッ!

ピチョン……

 

隣で試験受けていた知り合いのイージス君がいきなりペンを自分の太ももに突き刺した。

 

えぇえぇ!!!?

なんで!?

 

そんなに問題を解けない自分が許せなかったの!?

隣で試験を受けていたせいで返り血を浴びた。

試験官も驚いて俺がイージス君の事を凝視してしまった事はおとがめなかった。

 

いやぁ流石にアレは見てしまうって、それを見たからカンニングなんて言われた日には抗議もんである。

でも落ちる為ならカンニングしたと言うべきだったか?

いやでも俺の評判が悪いと実家にも迷惑かける事になるかもしれないからしなくて正解だろう。

 

それにしてもあの時何故かイージス君が笑ってたのが怖かったなぁ……

たぶん一時的にマゾになったんだろうと俺は予想してます。

 

 

一次試験はペーパーテストと体力テストの二つがあり、どちらも受ける事になっておりその合計で次の試験に進めるかどうかを決めるものだ。

ペーパーテストは終わったが次に行う体力テストは俺の苦手な実戦形式……こりゃもう別に何もしなくても落ちるだろうね。

 

痛いのは好きじゃないから逃げたいけど、ここで逃げる訳にもいかん。

まぁ場外負けになれば体力テストは余裕で最下位だろうしペーパーテストがそこそこ良くても落ちるだろう。

これぞまさしく計画通りっ!って奴だな。

 

ニヤニヤと気色悪い笑みを浮かべていると周囲の受験者が引いてた。

そこまで引かなくて良くない?

 

実戦形式は何人かグループに分かれてのバトル・ロワイアル形式だ。

そのメンバーが発表されて俺のグループを見た時ちょっと泣きそうになった。

 

俺のメンバーの中にはなんとあのルカ君がいたんだよねぇ……

あの子何か俺のことをもの凄く誤解してるんだよなぁ。

何か騎士団学校ではカルマ君に認められた唯一の男とか呼ばれちゃってるから多分そのせいだろうなぁ……

何故かって?こっちが聞きたい、いや本当に……

 

しかし見栄も張りたいところだしどうするかなぁ?負けは負けで良いんだがあっさり負けるとなんか悔しいし……

そうだ!俺がルカ君の攻撃を受け止めて場外に落ちて負ければいいんだ!

そうすれば親にも何とか言い訳できるし、なれなかった事を悔しがる振りしながら親に謝ればいいんだ!!

 

「ディファイさん、僕は例えアナタにでも負ける訳にはいかないんです」

 

ルカ君がいきなり俺に向かって真面目な顔で言ってきた。

どうでもいいけどいきなり話かけないでくれないかな?ビクッとなるから……

コミュ力そこまで凄い訳じゃないし、逆に苦手な方だからね?

無防備な状態で急に人に話しかけられるとよく起こる現象ではあるが、かなり恥ずかしいから止めて欲しい限りである。

 

「私には関係ない話ですね……」

 

どうせ俺は適当に場外に落ちて負けるし、まぁルカ君は頑張ってね。

と言いたかったんだがそれを言う訳には行かない。俺にも多少なりともプライドがある。というかそんな事がもし家族にバレると家での立場がなくなるからなぁ。

 

それにしても目上の公爵家の人間と話すのは敬語を使わなくてはいけないのがしんどい。

それに私とか自分で言うのが何か恥ずかしい。何故だろう?一応慣れているハズなんだけどな…いくらたっても恥ずかしい。

あれだな、学校のトイレで大きい方をする時の心境だ。生理現象とは言え知り合いにばれたらすごく気まずい雰囲気になるあれだな。慣れている相手なら「またお前かよ~」とかになるけどちょっとした知り合いなら「ああ…」みたいな感じになるもんな。うん。

そうだよねルカ君?

 

「その言葉、後悔させますよ。」

 

何でちょっと怒ってんの?トイレの下りはダメだった?

 

 

 

 

"C闘場第3組"

 

筆記試験の次の体力試験で、僕はとてつもなく悪い組に入ってしまったようだ。

カルマ=バンニールに唯一認められた男として騎士学校でも有名なディファイ=R=ボルトと戦う事になってしまったのだから……

 

「ルカ、お前の組にあの“仮面”がいるとはな……」

 

そうイージスは僕に言ってくる。

“仮面”とはディファイさんの二つ名。あまりに実力を隠す姿はまるで正体を隠す“仮面”のように見えるので影でそう呼ばれていた。

 

「そうだね…でも例え誰が相手でも負ける訳にはいかないよ、例えあのカルマを倒したことのあるディファイさんが相手だとしてもね…」

 

“仮面”

 

彼にその名がついたカルマとの模擬戦は騎士学校に通っていた者にとってはあまりに有名だ。

カルマの上段突きを何かに躓いたように避けてディファイさんはそのままカルマの心臓部分に目がけて剣を突き刺した。

カルマは避けようとしたのだが足を踏まれて回避ができなくなってしまい負けた。

あの剣が木製の中でも軽い物でなければ鍛えている者でも危なかっただろう、それぐらいの一撃だった。

 

カルマも避けられるとも反撃されるとも思わなかっただろう、あれは凄い。

タイミングを読ませてからわざと外させる芸当は普通にやっても中々できるものではない。

相手の心理を読み抜き相手の動きが分かってこそ初めてできるものだからだ。

それをあのカルマ相手にやるなんて……

 

ディファイさんは自分の負けだと申告した。

でもその勝負を見ていた生徒はカルマの負けだと思っている。

 

カルマ自身もそう思っているらしく「兄貴のあんな悔しそうな顔は見た事がない…」と弟のジェダが言っていたから間違いはないだろう。

そしてあの時の反則負けと申告した後ディファイさんは謝罪していた。

 

「まさかこんな事になるなんて…私が悪いです」

 

と言っていた。あの時の言葉の意味はたぶん「(少し本気を出したら)まさかこんな事になるなんて(拍子抜けです)…(買い被っていた)私が悪いです。」という事なのだろう。

本気を出して反則負けと言ったディファイさんの顔は全く表情がなく不気味であった。

アレから誰が言い出したか"仮面"とディファイさんが言われるようになった。

 

そして今、僕と戦う事が分かったディファイさんは不気味に笑っていた。

 

「あれって顔引き攣ってるだけじゃねぇの?」

 

とエルト君が言っていた事に僕とイージスは苦笑いしてしまった。

確かにマナ量にしても運動能力にしてもエルト君にディファイさんは敵わないだろう。確かにビルの様な大きさの剣を出したエルト君だからそう思うのだろう。

 

しかし彼の凄さはそんな処には存在しない。

彼の凄さは洗練された剣術やその智略にあるのだ。

 

「う~ん?俺にはよく分からないな…」

 

「お前には分かるまいな…」

 

とイージスが呆れたように言っていた。

 

「っるせぇ!」

 

とエルト君が頬を膨らませながら怒っていたけど、実力を知らなかったらそんな評価になるのは仕方ないとは思う。見た目にはそこまで強いと思えない人なのは確かだから。

ある程度覚悟を決めなければいけないだろう。この人に勝つには相当苦労するはずだから。

 

「ディファイさん、僕は例えアナタにでも負ける訳にはいかないんです。」

 

と自分を奮い立たせる為にもディファイさんに話しかけたのだけど…

 

「私には関係ない話ですね…」

 

本当に興味のなさそうな声で吐き捨て、僕の顔を見据えていた。

それに少し苛立ちを感じた。まるで僕なんか目じゃないと言われたみたいで腹がたったんだ。そして何か言いたそうに彼はこちらを向いたので僕はこう言った。

 

「その言葉、後悔させますよ。」

 

僕も僕なりに技術を磨いた。体力もつけたし勉強にも励んできた、学校の成績ではディファイさんには勝っている。

そして何より僕はグラム家復興の為にもシェリーの為にも負ける訳にはいかないんだ!

 

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