報われない男の物語 作:羽付き羊
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二次試験開始直前、この女王騎士入団の総試験官である私、
もうすぐスタート地点の海の上に着く。
今回の試験は過去に比べてもとても厳しいものである、前回に比べるとその厳しさの倍率は10倍といったところだろう。
元来この女王騎士試験の二次試験は死が付きまとうものである。
一度の試験で多くて大体6名程度が二度とこの世に帰って来れない。
だが我々としても入団前の人間を死なせたくないので二次試験でも生きて帰れる程度の奴しか基本的に試験は受けさせない。
これは当たり前の事であり、試験の合否を判断するのに一次試験をギリギリのラインで合格者を出すと二次試験で死ぬ可能性が高くなるからであるし、やはり人が死ぬのはやはり後味が悪いからである。
女王様を守るだけが我々の仕事ではない。
民を守るという事も重要な仕事の一つだ。まだ騎士になっていない受験生にもそれは通じる。
しかし我々と同じ土俵の上に立つのなら、心を鬼にしなければならない。
死ぬのも生きるのも自己責任であるのし"絶対無敵 究極正義"を実行するのであればこれくらいは必要になってしまうのだ。
この無茶苦茶だと思われる標語を確実に遂行してきた事が我々の誇りでもあるし、これから後に続く者達の道標となると信じているからだ。
何故今回の二次試験が10倍も危険なのかと云えば今回は毒を用いた試験だからだ。
解毒薬を制限時間内に作れば合格というものにしておいた。
それには難関のチェックポイントの課題をクリアしなければならないし、さらに解毒薬の薬の総数も決めている為最高人数は決まっているという試験だ。
上からの命とは言え流石にやり過ぎだと抗議もしたのだが、「国を守る為」と言われてしまえば何も言えない。
そもそも私は内政やら何やら細かい事はあまり好きではないし得意でない。
女王騎士は女王陛下に命を捧げている身で内政は女王陛下が行われるから私のような現場主義者には向いていないのだ。
その内政のサポートをするのが代々六大公爵家の面々。しかし、女王陛下不在の為に少しだが不穏な空気もこの国に見え隠れするのも現実。
娘であるアルマ姫はまだ陛下が生存されておられる可能性もあり即位できない。そもそもまだ即位できる年齢に至ってないのだが……
まぁ今はそんな事を考えても仕方ないだろう。今は試験に集中しなければ……
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それにしても今期の面々は中々面白い者が多い。
バンニール家のカルマ、奴の実力は頭1つ飛び出している。合格確実と言っても過言ではない実力の持ち主だ。
次にイージス=ブリュンヒルデ、ブリュンヒルデ家の長男で実力も上位、さらに胸に秘めている正義は本物だと私は思っている。
ルカ=グラム。……兄の実力が弟にも備わっているとするのなら相当の実力者のはずだろう。
この他にもジェダ=バンニールやジョニー=C=パッドなど才能に恵まれた人材も豊富である。
だが私が今最も注目しているのは2人。
エルト=フォーエンハイムとディファイ=R=ボルトだ。
まずエルト=フォーエンハイムだが、今の段階では到底この試験は受からないだろう。しかし奴には何かを感じさせるものがある。
先程、一次試験のペーパーテストの字が汚すぎて読めず特別に行った口頭諮問でも、難関な騎士聖典や女王騎士法などもスラスラ答え、どれだけ真摯に女王騎士になろうとしていたかが伝わってきた。
受付で見せた潜在マナの大きさも奴の器を感じさせるのだ。
なんにせよ楽しみな奴である。
そしてディファイ=R=ボルト…
奴はこの私をして真価を測りきれない。受付の時のあの精巧なカリバーンにしても、体力試験の時もルカ=グラムに勝利を収めている。
しかもほとんど力も技も見せずにだ。今後も奴には目が離せないだろう。
それに奴の噂は“昔”から良く耳にしていたから余計に興味深い。
そんな風に受験生達を見ているとすぐに二次試験の時間になったので試験の説明を始めた。
「今回の試験ではコレを使う」
と水槽の魚に毒の入ったカプセルを食べさせる、すると魚は死んだ。
コレに動揺を隠せない受験者の面々、さらに過酷な試験内容を説明すると、「理不尽だ!」と文句を垂れる。
国や姫を守ろうとする騎士が自分の命をかけないでどうする?
どれだけ身体を鍛えようが技を磨こうが、精神力がなければ任務を達成できない。
そもそもマナという心の力を使う時点で臆病者は騎士にはふさわしくないのだ。
確かに理不尽ではあるが、戦場では理不尽だらけ。
今の内に耐えさせてやろうという親心と思う気概を持って欲しいがそれは流石に酷か……
受験生の面々が動揺する中、目で直ぐに毒薬を渡せといってきた奴がいた。
そうディファイ=R=ボルトだ。
毒薬を渡してやるとつまらなそうに毒薬を見ていた。
いったい何をするつもりなのだろうか……
「へ、へっくしゅん……」
「あら誰か噂でもしてるのかしら」
部下の一人がくしゃみをした。
生理現象だから仕方ないとは言え、戦場で隠れている時にくしゃみをしたら敵に見つかり死ぬかもしれんというのに、まだコイツ等も甘いな。入団試験が終わったら新人共々鍛えなおしてやらねばならん。
そんな事を思っていると奴は欠伸をすると同時に毒薬を飲んだ。
「な!?」
「え?」
「嘘だろ?」
「ボルトさん!?」
他の受験生は愚か、私達試験官も正直驚きを隠せなかった。
毒薬を飲めばもう試験を受ける以外に助かる見込みはない。そう説明したばかりの状況であっさりと欠伸と同時に毒を飲んだのだ。
まるで自分の命に興味がないかのように……
自分の命を簡単に捨てられる。それはつまり自分よりも優先させられるものがあるということに他ならない。
しかし貴族の嫡男であるディファイ=R=ボルトが何の躊躇もなく飲むとは……
奴の実家は貴族として上流の方に位置する。
普通に暮らしている上流貴族ならここは辞退するはずなのだ。
しかし何のためらいもなく毒薬を飲んだ。
確かザキヤの話では奴は医者も目指していると言っていた筈だ、となれば命の尊さを良く理解しているということになる。
とすればこの試験に元々命を懸けるつもりでおり、この程度の事では信念も覚悟も揺るがないということなのだろう……
もうこの時点で既に合格点だ。
他の受験者にもコイツのようになってもらいたいものだ
「今この受験者が飲んだ毒は自力で解毒薬をつくらないとないぞ。」
まぁ先程言って分かると思うがもう一度言っておいてやった。
「早く始めてくれませんか?」
もう始めたがっている…ならばもうやるしかないだろう。
「ははは!!コイツと同じように覚悟があるのなら私について来い!」
大きな窓を開けて、そう言うと私は海に向かって飛び降り海面上を走った。
そして島に着き、受験生を待っているとぞくぞくと受験生達がやって来た。しかし目の前には崖。
まずこれを登らなければ何も始まらない。
「ここら一帯はすべて天然の崖でな。海をいくらか廻ったところでそう変わらんぞ?」
と受験生に言っておいてやる。
「どうやらこの崖を登るしかないようですね…」
「そうだな…崖付近を回ったとしても時間がかかりそうだな。」
公爵家の2人は崖の上を登ることを選択したようだった。それもそうだろうそういう風にしてあるのだから。
「ボルトさんはどうするんですか?」
「急がば回れというでしょう?私は迂回します」
「ええ!?王=道さんの話を聞いてなかったんですか?」
「正気か!?」
「はい、正気ですよ。ルカ君やイージス君は好きにしてください。」
そう言った奴は一人だけさっさと歩いて行った。
残った2人は顔を見つめ合い、結局メイドが来るまでどちらに行くかで迷い、崖の上を登ることに決めたようだった。
実は、海へ廻るというルートは崖を登るルートより簡単になる可能性がある。もちろん基本的には難しいルートなのだが、抜け道に気付けば簡単に第一チェックポイントに行くことが可能なのだ。
どうやらディファイ=R=ボルトはそれに気付いたようだ。
もうコイツは私達と同レベルの観察眼がありそうな気がする。
この試験はもっと面白くなりそうだ。
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あの後、ジェダ君の様子を見ずに帰ろうとした事がカルマ君にバレそうになったので慌てて様子を見に行ったら、ジェダ君が寝ているベッドの隣のカーテン越しにイージス君が治療していたらしい。
声を掛けようとしてカーテンを開けようと思ったら、とてつもなく嫌なオーラを感じたので開けれなかった。
カーテン越しに挨拶したらイージス君は隙間からなんか恥ずかしそうにコッチを見ていたんだが何でだろう?
ジェダ君と死闘を繰り広げたエルト君も治療していたのだが完全に爆睡してたのでそのままスルーしておいた。
もうやる事が何もなかったので、ばあちゃんの家に帰ると俺はスレ立てした後にレンタルしたDVDを見ていた。
何か聞いた話だと一次試験を突破したら1週間ぐらいでネットにアクセスできないと聞いたので徹夜で見た。
スレを見ると意外と伸びてて笑ったけど、人妻で経産婦が初恋で何が悪い!
あの子供の為なら何でもします!みたいな表情が堪らなく好きなんだよ!
ん?今何でもって……
的な事にはならないけど想像だけなら自由だよね?
そんなこんなで徹夜して戦隊物の動画を見て朝を迎えてしまった。
落ちてれば良いなぁーと思っていた一次試験の結果が貼り出されていたので見てみたらなんと突破しちゃってた……
心の中で泣きましたとも、俺の死亡フラグが目に見えて大きくなっていく。塵もつもればやまとなでしこなのだ。
因みに
○○様が出る幕ではありません。ここは私が…
とか
俺この戦争が終わったら結婚するんだ。
とか
パインサラダを食べちゃった
とか
この仕事が終えたらまとまった金がはいるんだ。
とか
やったか?
とか
俺の○○は108式まであるぞ!
とか
セ○クスの前のシャワー
とか
殺人犯がいるような部屋に一緒にいられるか!
とか
勇者よその程度か?
とか
正義の騎士としちゃベタすぎ(ry
とかのフラグは一発でアウトです。これを回避できるのはマク○スのあの方ぐらいと掲示板仲間が言ってたが、俺はマク○スをみた事がないのでわからない。
正直フラグうんぬんかんぬん言ってる俺だけど、自分の中でフラグとは心の予防線なのである。
コレをしてなければ大丈夫だろうという小さな願望……
「女王騎士団、団歌斉唱!」
「女王陛下の旗の下~、我等は集う~、絶対正義の名の基に民を平和へ導こう~…」
何やら上から歌声が聞こえたので空を見上げると空中に浮きながら歌を歌っているエルト君にそれを一緒に浮かびながら聞いている王=道隊長がいた。
うん、俺この中でやってける自信がなくなった。元からなかったけど欠片もなくなったわ。
二次試験会場に行く為に飛行船に乗るとルカ君がいたので話を聞いたら一次試験のペーパーテストがあまりに字が汚いので口頭で再試験でああなったとの事だ。
体力試験はトップだから筆記試験の答えが正確ならOKだということらしい。
おかしいね……
普通いくら体力試験が上だとしても試験の字が汚いならその時点で不合格は決定なんですよ。
騎士学校で一度徹夜してテストに臨んで82点は取れたテストが「字が読めません」と赤い字で答案用紙が帰ってきて結果は47点。流石に泣いた。
それを考えるとなんて運がいいのだろう。
それにしても先生が汚い字でも丁寧に書きなさいと言ってたのはこういう時に下手な結果が出ないようにする為だと思うと先生はすごいなと思う。
うん、社会に出た時に重要な事を教えてくれる学校はとても大切だ。
皆!学校に行こう!
──ディファイの愛がニートを撲滅させると信じて……
「今から二次試験の説明を始める!」
と思って現実逃避をかもして逃げ出そうとしている俺に現実は酷く冷たい。
説明を聞いているとデス・トライアスロンとの事でチェックポイントを通ればどんなルートでも良いらしい。
魔境の近くや荒野の真ん中にもありとか言っていた。
やばいね。俺もう死んじゃうね。
さらに毒薬を飲み、チェックポイント毎にある解毒薬を集めなければならないとのこと。
もうあれだね。狂気の沙汰どころの話じゃないですよね。アカ○さんですらこんな事やらないよ……いや、あの人ならやるな…
あの人は本当にチートだからなぁ……
まあ一般ピーポーである俺はもうね、ここでリタイアですよ。
両親も命が係わっていると分かれば許してくれるだろうし……
いいよね?もうゴールしても良いよね?
王=道隊長に目で俺はリタイアしますと訴えると、当たり前のように毒薬渡された。
何その私は言われなくても分かってます的な顔は?
俺は飲む気は全くないよ?
可能性ゼロだよ、じぇ~ろ。
それにしてもカプセルか……
これ飲んだ振りして受ける奴とかいるんじゃないの?
粉とかにしておくべきだと俺は思うんですけどね。
それにしても今日は眠い……
昨日は徹夜したからあんまり寝てないんだよね。あ~あ、あくびが出るわ。
「へ、へっくしゅん……」
っごっくん…
っへ?
ちょっ、おまっ…ビックリして飲んじゃた?
毒薬飲んじゃった!?死ぬよ、俺死んじゃうよ?
クシャミした奴!お前が俺を殺したのと同義になっちゃうんだぞぉぉ?
くしゃみしたのは誰だ!?
……何てこった、試験官だよ!
こんな時にくしゃみしないでくれよ。頼むよ……
まぁでも今なら助かるだろう流石に解毒薬がないとかはないよね?
「今この受験者が飲んだ薬は自力で解毒薬をつくらないとないぞ。」
おい、待てよ!?
飲んじゃったら試験に受かるしか助かる道ないって…どんだけ鬼何だよこの試験は!?
お前等本当は人体実験とかやってるだろ?
「早く始めてくれませんか?」
自分の命が危ないのは嫌ですから、さっさと始めてください。
こうしている間にもう命の灯がどんどん消えかかっていくから。カルマ君と一緒にいればたぶん何とかなるから、早くして。
「ははは!!コイツと同じように覚悟があるのなら私について来い!」
大きな窓を開けて、そう言うと海に向かって飛び降り海面上を走っていった。
いやいやあり得ないでしょう…マナ?
いやあれは片方の足が沈む前に逆の足を出して前に進んでいる言わば曲芸……
隊長クラスになるとやっぱり化物の中でも頭一つ違うよなぁ……
そして俺はカルマ君が薬を飲んで飛び降りた後をついていった。
だが俺の身体能力でカルマ君と一緒にスタートして間に合うはずもなく、ゆっくり平泳ぎしながら海岸まで泳いで行く事に。
島に着くと当然カルマくんは崖を上っていた、しかし俺には登る事は大変困難な崖があった。
まずこれを登らなければ何も始まらないのだが登れない。
「ここら一帯はすべて天然の崖でな。海をいくらか廻ったところでそう変わらんぞ?」
と王=道隊長は言う、しかし俺は登れない。ちょっと試しに登ってみたけどやっぱり登れない。
「どうやらこの崖を登るしかないようですね…」
「そうだな…崖付近を回ったとしても時間がかかりそうだな」
ルカ君とイージス君は登るらしい、俺は登れない…でも言うのは大変恥ずかしい。「俺登れないから担いで上まで運んでくれない?」ってこの状況で言えるはずもない。
「ボルトさんはどうするんですか?」
ルカ君が登るんだったら一緒に登りませんか?みたいな感じで聞いてくる…いや登れないんだってば。
「急がば廻れっていうでしょ?私は迂回しますよ」
「ええ!?王=道さんの話を聞いてなかったんですか?」
「正気か!?」
驚いている…いや俺だって登りたいんだけど登れないんだよ。崖とか俺のトラウマが詰まってるんだよ…
「はい、正気ですよ。ルカ君やイージス君は好きにしてください。」
もう俺を放ってさっさと登ってください。頼みますから。
まぁなんとかなる事を祈るしかないわな~…
って、ちょっと横に入った処に抜け道あるじゃん!ラッキー!!
今日はこれでラストです