報われない男の物語 作:羽付き羊
ラッキーなのかどうか今考えると良く分からない抜け道を歩いているとイノシシが襲ってきた。
普通のイノシシでも俺がやっとこさ倒せるレベルなのに、体長2m近くあるバケモンが襲ってきたからさぁ大変。
「プギャ嗚呼ああぁぁぁぁぁア!!!」
というバカでかい鳴き声で俺の戦意をどんどん刈り取っていく……
「俺の力を舐めるなよ!」
と自分に言い聞かせるように腰にぶら下げてた剣を抜いた。
心臓がバックバックと鼓動してはち切れそうだがハッタリかましてやった。
何故かって?
特に意味はないよ?
だって小さい箱と大きい箱どっち選ぶ?
とか聞いたら大概の人は選ぶ理由は何となくだし、まぁ一応心理的要因が絡んできたりもするんだがそんなことは知らないけどさ。
「GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!」
さらに興奮させたようでちびるぐらい超ビビった。
ご、ごめんなさい
と土下座するとイノシシはそのまま岩の岸壁に突っ込んでいった。
ドゴォォォン……
すごい音がした。
木製のバットで思いっきり頭を殴られたような鈍い音が辺り一面に轟く……
イノシシが倒れていたので近づいてみると気を失ってた。
よくある漫画的な表現のようにヒヨコが頭の周りをピヨピヨと回ってるのが見えたような気がした。
実際に本当にものすごい衝撃が頭にくるとピカピカするのって知ってた?
漫画みたいに本当にあんな感じじゃないけど本当にピッカピッカに光るんだよ。
電気が走ったと様なチカチカする感じ、経験者だから分かる。
「ディファイさん…大丈夫ですか?」
とシェリーちゃんが俺の心配をしてくれた。
流石に本当に心配してくれてるみたい。
「今日の晩飯だね」
と取りあえず年長者として安心させるために笑っておいた。
二コポになればとも狙ったけど……無駄だったみたい。なんか変な感じで笑われた。
そもそもなんでシェリーちゃんとこんな場所にいてルカ君やジェダ君とか達と一緒にいないかと謂うと3時間前まで遡る。
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抜け道を発見したのでそこからとことこ歩いて行くと断崖に囲まれた場所に着いた。
途中に湧水があったのでそれを横に倒れていた太めの木を剣で削ったりして水筒にして水を確保した。
とりあえず飲み水確保は一番重要。
サバイバルというので水は貴重な資源である。人間の70%ぐらいは水分でできているんだから当然なんだが、食い物より順位は必然的に高くなっていくのだ。
水があれば食い物がなかったとしても一週間はなんとか生きていけるし。
一応ろ過しなくても大丈夫そうだった。近くに科学物質が発生するような施設もなさそうだし大丈夫だろう。
パサッ
水を飲んでいると頭の上に木の枝が落ちてきた。
断崖にいるので上から落ちてくるのが大岩とかなら確実に死ねるのですぐに確認する。
なんということでしょう。
メイドが空から落ちてきた。
って……なんじゃそりゃああああ!?
どこのラピュ○だよ!!って言いたいところだけど残念ながらその落下スピードは半端なく速くてそんな事をいっている場合ではない。
いやいや白猫のキャラガチャでももうちょっとゆっくり落ちてくるわ!
とりあえず目の前でリアルなトラウマにならないように全力でその子を助けようと腕を広げた。
その時彼女は俺の広げた腕に落ちずに背に落下してきた。
その時足のかかとが頭に直撃、一瞬で意識が飛んだ。
ピッカピッカになった。
「ぐひゃ……」
と思わず零してしまったのは仕方ない事だと思う。いや仕方ないに違いない。
○
何時間か分からないけど俺とメイドのどっちも気絶したみたいで俺の方が先に目を覚ました。
落ちてきたメイドが生きているかを確認すると、普通に寝息をたてていたので一安心。
命の無事を確認した後に顔を確認してみると普通に可愛らしい女の子だったので驚いた。
これは本気でラピ○タフラグか?と思いながら女の子を横に寝かす。
とりあえず動かさない方が良いだろうと判断した。
水筒の水で俺のマフラーの生地をハンドタオル程度の大きさに切り額に乗せた。
その時に顔をよく見てみるとジェダ君の想い人であるシェリーちゃんだった。
「……シェリーちゃんが何故ここに?」
不思議に思いながらも、目が覚めるのを待つ事にした。
人命優先は女王騎士じゃなくても優先だからな、それが試験であっても変わりはない。
「……う、ううん、ア、ナタはディファイ、さん?」
と言って目を擦りながら起きてきた。
衣服が少しボロボロで結構ケガをしていたのに動こうとするのでそれを静止する。
「どうしてアナタがここに?」
「アナタが上から落ち…降ってきたんですよ」
受験生に落ちる滑るというのは禁句です。危なく言うところだった………
「!?私、行かなくちゃ……ルカ様が待って、うぐっ……」
と言いながら動こうとするシェリーちゃん。
上を確認できないぐらいの断崖の上から落ちて来たのだ。命があるだけで奇跡というものだろう。
やっぱり二次試験は難易度ナイトメアだな……
普通に試験から抜き出したいのに毒薬のせいでそれができないのが悔しい……
「あっ…」
そう言いながらバランスを崩して倒れるシェリーちゃん。
言わんこっちゃない………言ってないけど。
「傷を見せてください」
懐にある緊急医療セットを出す。
俺は塗り薬やら包帯やらをそこまでかさばらない程度に携帯している。
海に落ちた時にも濡れないようにしっかり防水加工済みだ。
こんなこともあろうかと!
的な感じで準備していた訳ではなく普通に自分がケガをすると思って持ってきていた。
「わ、私はそんなもの別にいりません!!」
ええー!?
もしかして怒ってるのか?
ルカ君を負かした事を怒ってるのか?
いやでも試験内での出来事だから仕方ないのは分かってる筈だろうし……
もしかして男と女2人だから警戒しているとか?
失敬な!俺は20歳以上の女の人にしか興味があんまりないんだぞ?
いや多少はあるけどさ、ジェダ君の想い人を好きにならんよ!
というかそんな事する度胸がないともいうけどね。
「ケガが化膿して酷くなる前に見せてくれないかな?」
ところどころ擦り傷やらなんやらがあって中々やばい。
学研の漫画が役に立つ時がやってきたようだ。
自分ではケガしまくってるけど他人に使った事ないからなんか少し緊張する。
「で、でも……」
そ、そこまで信用がないの俺?
……普通にショックなんですけど?
ええい、こうなりゃヤケじゃ!
水筒の水をぶっかけて、塗り薬をぬる。
「ん、ぐっ…」
染みてるようだ無理もないだろう。
だがここで放っておくと余計にケガが酷くなるから仕方ない。
そんで包帯巻いてあげた。
ケガの状態を診察擬きをすると捻挫やら内出血をしているし、くるぶしがかなり腫れている。しかも青黒い。
ある程度は歩けるらしいが剥離骨折とか骨にひびが入っている可能性もあるのでこれ以上試験は無理だろう。
取り敢えずリタイア勧めておこうとした時に巨大イノシシが現れた。
で冒頭に戻るという訳だ。
まぁ一人なら確実に逃げていたんだけど、怪我人をほっぽり出して逃げるような人間にはなれずに、覚悟を決めて格好つけようとして失敗だったというのがオチである。
しかも、俺のお腹が鳴ってしまって格好がつかないという訳だ。
あの巨大なイノシシを丸焼きにして美味しく頂きました。
やっぱり丸焼きにして正解だったわ。
火種はシェリーちゃんが持っていたのでそれを使う。
そして簡易的な干し肉を作る為に海水を沸騰させて塩にしたり、落ちて木で燻しまくって超絶簡易干し肉を作った。
そんなこんなしながらイノシシを食べ、それとなくケガの状態を話してこれ以上先に進むのは無理だという事を説明する。
「ここでリタイアして下さい」
「でも私は!っつ…」
大きな声を出したせいかケガが傷んだらしく、足をおさえる。
「ケガが酷くなって命が無くなったら本末転倒ですよ。リタイアした場合は何とかなると思いますしね……」
おそらくだが何とかなるだろう。
冷静に考えてみると誓約書も何も書かなかったので死んだのならそれは多額の賠償金を得られるというのは一応この国の法律だ。
多分だけど王=道隊長がその辺を普通に忘れてるんだろう。あの人は現場主義者だからそういう事は苦手そうだしなぁ……
どうでもいい話なんだが俺の親父のギルバードはこの試験の期間の間のみ俺に多額の保険金をかけている。
抜け目のない親父だ、まぁ俺でもそうするから文句は言えない……
それにしても俺達はどんな親子関係になのだろう?
普通に「250万カネーを保険金でかけておいたから死んでもいいぞ?」なんて言う親は良い親なのかどうかは分からん。
対して俺は親父が蓄膿症と聞いた時はそっとお墓を建てておいた。
良い感じの崖の上に石を三つピラミッドのように置いてあるので誰がどうみても墓だろうと思うにちがいない。
蓄膿症では普通は中々死なないんだけど仕返しでやっておいた。
「それでも私は……」
やはりというか女王騎士入団試験の二次試験に進む様な人は根性が凄い。しかも自分の為にではなくルカ君の為に進みたいと思っているのだろう。
……ジェダ君、やっぱり女の子には優しくしないとダメみたいだよ?
それにしても困ったな……
一番手っ取り早いのは俺がリタイアする事なのに……
―――うん?
そうだよ!一緒にリタイアしたら万事解決じゃん!
そうと決まれば話は簡単、一緒にリタイアする方向へ持っていけば良いんだ!
「俺も一緒に行くから。それならいいでしょ?」
「え!?でもそんな事をしたらアナタが…」
「“騎士たるもの献身の心を忘るるべからず”それが例え試験でも同じだよ」
うわ~、自分で言っててもクッセ~。
正直俺がこの子の立場だったら普通に引くわ。
にしてもリタイアできると思ったらこんなに口が動くものなのか?
俺ってばなんという保身の塊なのだろうか……
てかシェリーちゃんだと敬語が時々抜けてしまうな……
何でだろうね?一応その年で奉公しているから尊敬に値するはずなのに……
ああ、何か妹みたいだからそう感じちゃうのかな?
懐かしいなぁ……スージーちゃん今どうしてるんだろう?
「ルカ君の為だと思えば良い、シェリーちゃんがいないとルカ君が悲しむよ」
シェリーちゃんには特別に効くであろうルカ君の為という名目攻撃。
ふふふふふふ、これでリタイアまで秒読み待ったなしだな。
「いやお前はリタイアしなくていい、俺がその子を引き取ろう。」
ん?誰だ?
聞いたことのある声がするのでその方へ向くと仮面をかぶっている人がいた。
「俺は通りすがりの」
仮面ライダー?
ていうか声で分かるんだけどねジ―クさん?
「仮面の騎士だ」
……うわぁ、この人何処かへ行方知らずになったはずなのに何してるの?
まぁ何かしら理由があるのは知っているけどさ、詳しい話を聞いていないし秘密だからノータッチだし。
「……アナタは一体?」
あまりの出来事にとりあえず、呆然としている俺。
何で仕えたことのある人の声に気付かないの?シェリーちゃん?
「俺は女王騎士だ」
そこに元をつけておくべきではないのだろうか?
この仮面を被っている自称女王騎士はジーク=グラムさんと言って六大公爵家の一つグラム家出身の元女王騎士である。
ルカ君の実のお兄さんであり中々のイケメンさんで女性人気も高かったりする。
そんなジークさんだがとある事件を起こしてしまい六大公爵家という名家を没落の危機にさせてしまって逃亡しているのだ。
指名手配までされてるのでこんなところにいるとヤバイんだけど大丈夫なのか?
「何でここにいるんです?ジー……ムググ……」
名前を言おうとすると口を塞がれた。
口でじゃないよ?一応言っておくけど手ですよ?
(お前……何で俺の事が分かった?)
(いや、声聞いたらすぐ分かりますって普通……)
(この仮面かぶってたら分からんだろう!?)
(いや、分かりますって……)
(と、とにかく今はシェリーには言わなくていいからな?後で事情を説明しておくから。)
(ルカ君には?)
(……アイツには、時期が来てから俺が説明する。)
(分かりました)
「何をこそこそ話しているんですか?」
小声でボソボソ話しているとシェリーちゃんから声を掛けられた。
「まぁちょっとね……」
と誤魔化しながら俺が言うとジ―クさん、基、仮面の騎士は俺の許可もなくイノシシの肉を食っていた。
そう仮面を被っているのにご飯を食べられるのは口元までは仮面を被っていないのである。
それでバレナイと思っているのが不思議で仕方ない。
「まぁ、それは置いといてその子がケガしてるなら俺が面倒見てやるよ」
と肉をうめぇうめぇ、言いながらそう言ってた。
「ここでコイツに迷惑かけるのはよくないだろう?」
いや、迷惑どころかリタイア大チャンスなので喜ばしい事なんですけど?
「そう……ですね、分かりました。ここでリタイアします。ディファイ様、ルカ様に会ったらシェリーは無事だと伝えてくださいね」
「女王騎士になれよ。お前になら任せられるから……な」
何だこの展開!?
俺はリタイア出来ない感じの展開になってませんかこれ?
やっべぇ……このままじゃリタイアできなくなっちゃう!
「じゃあな、お前とアイツにならこの国を任せられるぜ!」
「ちょっと!」
……行っちゃたよ、この国の人何か俺と気が合わない人ばっかりなんだよね……
正直な話さ女王騎士になりたいと思ってる奴等だらけのこの場で気が合う人間なんているわけがないけどさ。
それでも悲しい…
それにしてもまたリタイアチャンス逃しちゃった。まあいいや、とりあえずイノシシを食べておこう。
あれ、おかしいなしょっぱいぞ?
塩つけすぎたかな……
ハァ……
●
私、シェリー=トゥトゥプマはもう命の終わりを覚悟していた。
崖を登った直後に魔物に襲われたルカ様を庇い、底の見えない谷へと落ちてしまったからだ。
しかし私はもう十分だった。ルカ様を裏切ろうとした事を償いができたのだから、けどやはり病気の母の事が気になる。
ジェダ様にお給料の待遇は良かったとはいえ罵声を浴びせられ続けても仕事を続けたのは母が病気になってしまったからだ。
私としては没落しそうになっているからこそルカ様……いいえグラム家を支えたかったのだけどルカ様に「お母さんの事はシェリーしか支えられないでしょ?僕たちは大丈夫だから行っておいで」と言われては頷く事しかできなかった。
「必ず復興して向かえに行くから」と別れ際に言われたらメイドとして、いえ女としては信じて待っているしかないと思う。
そんなルカ様を裏切ったのだからこれは罰なのだと思い私はそのまま意識を手放した。
「……シェリーちゃん?」
目覚めるとルカ様でも手も足も出なかった男。ディファイ=R=ボルトがそこにいた。
私は正直この人があまり好きではない。
ルカ様に勝ったのが理由の一つでもあるけど、誰の事にも興味ない様な顔が不気味だったからだ。
「……う、ううん、ア、ナタはディファイ、さん?」
「動かないほうがいいですよ?」
そう言いながらディファイさんは木でできた水筒を渡してきた。
その表情はいつもの無関心そうな顔ではなく、本当に人を心配そうに見えて不思議だった。
「どうしてアナタがここに?」
「アナタが上から落ち……降ってきたんですよ」
そうだった私はルカ様を庇って…ディファイさんが助けてくれた?
いや、この人はルカ様が言うにはカルマさん並に容赦がない人らしいからそんな事をするわけがない。
気まぐれで助けたんだろう……
「!?私、行かなくちゃ……ルカ様が待って、うぐっ……」
私は歩こうとするが足に激痛が走り倒れてしまった。
「傷を見せてください」
ディファイさんはそう言いながら懐にある緊急医療セットを出していた。
どうやらケガを見てくれるらしい。
でも私はこの人の事があまり信用できていない。ジェダ様と仲が良いから悪い人ではないか?
と前々から疑念に思っていたからだ。
「わ、私はそんなもの別にいりません!!」
と声を荒げてしまった。そんな私の様子を不思議に見ながら、でも顔をみてしっかりディファイさんは言った。
「ケガが化膿して酷くなる前に見せてくれないかな?」
あまりに真剣な表情に私は少したじろいでしまった。
「で、でも……」
不服そうな表情でいきなり水を傷口にかけられた。
「ん、ぐっ……」
すごく染みた。やはり傷は中々酷いみたいだ。
それはそうだろう、あんなところから落ちたのに生きているのが奇跡なのだから。
これぐらいのケガで済んでよかったと思う。
ディファイさんは容赦なく塗りぐすりを塗って包帯を巻いてくれた、どうやら慣れているようですぐ終わった。
その時イノシシの化け物が現れた。
「プギャ嗚呼ああぁぁぁぁぁア!!!」
というすごい鳴き声で私の戦意も生きる希望も刈り取っていく。
ケガで動けない。
もう終わりだと思った。
せっかく助かった命なのにもうここで潰えてなくなるのかと泣きそうになる。
「俺の力を舐めるなよ!」
とディファイさんは剣を抜いた。
何故?私をおとりにしたら簡単に逃げ出せるのに……
いくらディファイさんでもあんな大きなイノシシに1人で私というお荷物がいて勝てる訳がない。
「GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!」
さらにイノシシは興奮したようで後ろ足を蹴りながら突進するする為に溜めていた。
イノシシはものすごい勢いでディファイさんに飛びかかっていった。
するとディファイさんはしゃがみこんでそれを避けた。
そのままの勢いで岸壁に突っ込むイノシシ、ブレーキがかかる訳でもなく頭から自分の突進を壁に返され、そのままイノシシは絶命した。
「ディファイさん……大丈夫ですか?」
と一応無事かどうか聞くと。
「今日の晩飯だね」
と笑っていた。
この人はレベルが違う……
ルカ様に勝ったのも納得の強さだ。
でも私を助ける為に戦ったではなく、イノシシを食べたかったから偶々私は助かったのだろうな……
だってジェダ様ならそうすると思うし……
そんな事がありながらイノシシを解体して丸焼きにしたり、干し肉を作ったりした。
サバイバルの心得もあるなんてディファイさんは底が知れない……
イノシシを食べながら、ディファイさんは私のケガの状態を説明してくれた。
「ここでリタイアして下さい」
「でも私は!っつ……」
大きな声を出したせいかケガが傷み、足をおさえてしまった。でも私はルカ様を女王騎士にする義務がある。
例え命が燃え尽きようとそれがルカ様に報いる為に今できることなのだから。
「ケガが酷くなって命が無くなったら本末転倒ですよ。リタイアした場合は何とかなると思いますしね……」
そう言いながらディファイさんは笑う
受験生が少なくなるから笑っているのかな?
そんな事を考えている私は次のディファイさんの一言で後悔することになる。
「俺も一緒に行くから。それならいいでしょ?」
「え!?でもそんな事をしたらアナタが……」
「“騎士たるもの献身の心を忘るるべからず”それが例え試験でも同じだよ。ルカ君の為だと思えば良い、シェリーちゃんがいないとルカ君が悲しむよ」
ああ……私は何てバカだったのだろう。
この人の本質に気付かないで勝手に恨んで……
大体私を助けてくれたのはこの人本人ではないか……
明らかにこの人がいなければ私は死んでいた。
それなのに私は何か裏があるのだと勘違いして……
イノシシも私に向かう可能性があったからワザと声をかけて注意を自分に向けたなんてすこし考えたら分かった筈だ。
後悔の念に襲われていた時、仮面の騎士が現れた。
どうやら仮面の騎士とディファイ様は知り合いだったようだ。
仮面の人は女王騎士らしいが少し怪しい。
「ここでコイツに迷惑かけるのはよくないだろう?」
と仮面の人は言ってきた。
確かにディファイ様こそ女王騎士になるにふさわしい人、私のせいでリタイアさせる訳にはいかない。
「そう……ですね、分かりました。ここでリタイアします。ディファイ様、ルカ様に会ったらシェリーは無事だと伝えてくださいね。」
私は仮面の人におぶられて、その場を後にした。
「ああ、そうそうその毒薬はさ、実は人間相手だと1週間後にちょっとした麻痺がくるだけなんだ。だから別に解毒薬いらないんだぜ?だから大丈夫だ」
と仮面の人はそう言いながら笑っていた。私はその声と何故か懐かしく感じる背中に安心したのかそのまま眠りに落ちた。
ルカ様が合格できますようにと願いを込めながら…
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「寝ちまったか?無理もないか……解毒薬に関しては“前回の試験”までならそうだったんだがな……今回は集めておいた方がいいかもな……」
仮面の騎士はおぶっているメイドのすやすやとした寝息を聞きながら微笑んでいた。
仮面の騎士は前回の試験の受験者であるから事の多くを知っている。だが今回の二次試験は少し様子がおかしい。
そう彼の本能が告げていた。
アルテリーナ女王陛下の失踪後初めての試験
魔黒装という謎の武器
魔黒騎士という邪悪なマナを操る騎士達
それぞれが悪い方向へ向かっているように感じる。
だからこそ彼は今回のシェリーの事でディファイを信頼したのだ。
自分の事よりも相手を尊重できる心を持つ器を持つ者、それは言葉では簡単だが中々できることではないからだ。
(ったく、まさか一発でバレルとはな……)
先程の事を思い出したのか頬笑みは苦笑いへと変化していた。
(まぁエルトの奴も相当育っていたみたいだし……アイツ等が居ればなんとかなるかな。)
そんな事を考えつつ、仮面の騎士は歩いて行くいつの間にやら雨が降ってきた。マントをメイドが濡れないように被せて少し急ぎ足で仮面の騎士は歩いた。
「まぁでも解毒薬は俺が持っているから大丈夫だけどな……シェリー、すまなかったな。もうすぐだから待っててくれよ……」
そう呟いた彼の表情は決意に満ちていた。
勘違いが勘違いをして勘違いになっていくスパイラル。
自分でも何を言っているかよくわからないけどそんな感じを目指してます。