星界の風章「生物災厄(バイオハザード)」   作:いち領民

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第三章「地獄」

バイオハザード:(人体、生物被害指示物質体)

 生物被害を指す言葉の意。

 病原体、生物等に引き起こされた、

 人間を初め或は生態系に置ける

危険的状況を意味。

 

 

——————————紋章院『青の牙』特殊用語集より抜粋———————————

 

 

 

 

クファディス・ウェフ=ウェスピール・セスピー千翔長は、当直任務のために、艦橋で艦隊の編成情報を眺めていたが、突然、地上の星界軍との連絡がとれなくなったと報告をうけた。

そして、司令長官であるスポール提督を呼び出して、原因を探るためにラクーンシティを軌道上から望遠のカメラで映像を艦橋に映し出した。そのとき、艦橋にいた翔士たちは、それを見て、思わず、驚愕と恐怖を感じたのであった。

 

 

 

「なんだ、これは………。人が人を食っている。どういうことだ。」

クファディスは、その光景が信じられず、思わずつぶやいた。

 

その映像は、一人の男の脳みそと内臓を一心不乱にしゃぶりつている10歳そこそこの少年とそれより何歳か年上の少女がうつっていた。

それを見た瞬間、艦橋にいた翔士のほとんどが、あまりの凄惨で残虐な映像に嘔吐して、中には、恐怖のあまり、涙を流すものまでいた。

 

クファディスもその映像を見たとき胃袋からこみ上げるものがあったが、何とかそれをしまいこみ、映像を切るように命令した。

 

「ふー……。これが、地上で起きているのか?司令長官にはなんと報告すればいいのか」

クファディスは、冷静になろうとあたまをふり、考え込んだ。

 

 

「参謀長、今の映像は何?どういうことなの、説明して」

すると、すでに、艦橋にスポールは入っていて、その紅の唇をかみ締めながら言った。

 

 

「司令長官閣下、いらしたのですか?はい、これは、連絡が突然とれなくなったラクーンシティの地上の映像です。原因はわかりませんが恐ろしいことが起きているのは間違いありません。(さすが、スポール閣下だ。あの映像を見ても、冷静でいられるなんて)」

クファディスは、スポールの態度に感心を抱いた。

 

 

「そう……どうやら、深刻な事態が起きたようね。参謀長、空挺部隊の準備をしておいて。王女殿下と軍士たちを救わなければならないでしょう。それと、この手の事態について情報を与えてくれる人物は、この艦隊にいるかしら?」

スポールは、冷静に状況を判断して、次の手を考えていた。

 

 

「はい……わかりました。しかし、人が人を食べるという状況が起きるなんて、信じられません。どのような者がそれに当たるのでしょうか?」

クファディスは、この状況を打開できる人物は、予想できなかった。

 

 

「あら、参謀長、わからないの。そのための『猫の餌係』でしょう。とにかく、その人たちの中から、探しておいて、一刻も早く行動しなくてはならないのよ。急ぐのよ。」

 

 

「了解です。情報局の中から探してみます。」

敬礼して、クファディスは、早速、自分の仕事にとりかかった。

 

 

「もうすぐ日が落ちるわね。私どもはともかく、地上の方々にとっては、さらに、恐怖が増大するでしょうね。」

スポールは、そういいながらも、小指をかみ締めていた。自分の安易な判断が翔士とラフィールに危機的状況を与えたことに対して、彼女なり後悔していたのであった。

 

 

 

 

再び、ラクーンシティの政府中央広場

 

 

惑星デスガスの地表に夕闇が広がる中、ラフィール達は、地表に降りていた星界軍の軍士150人に冷静になるように指示をしていた。

 

「殿下、これは、あのゾンビの情報です。頭を破壊するか、焼き払うしかあの怪物は、活動を停止しません。」

そういって、記憶片を渡した。

 

ラフィールは、端末腕環にいれて、情報を取り出すと、ジントにもコピーしたもの渡して、護衛の各部隊長にも情報が行き渡るように素早く行動した。

 

「ところで、ゾンビというのがあの怪物の名称か?シュリル前衛翔士。」

各部隊に臨戦態勢を指示しながらラフィールは尋ねた。

 

 

「ええ、私の便宜上、そう名づけました。もっとも、この手のことは、前回もあったので、そのときの名称を使ったまでです。」

ユーリルは、自分が持ってきたリュックを背負って、中から薬剤を取り出しながら答えた。

 

 

「何を探しているのだ?」

 

「殿下、ジント、これを飲んでください。そうすれば、吐き気をおさえることが起きます。一種の精神安定剤です。」

 

 

「ああ、わかったよ。確かに、このままでは、どうにかなりそうだ。」

ジントは、さっきのゾンビの死体を見た段階で、青ざめていたのであった。

 

 

「わかった。飲もう。」

ラフィールも素直にその提案に従った。

 

 

ラフィールたちが、前方にゆっくりと歩いていくゾンビの集団に気を取られていると、カルハーク伯国領民政府の大部分の人物が、苦しみだし、地面に倒れた。それを見たユーリルは、無言で次々とその倒れた人物の頭を撃ち抜いていった。

悲鳴と、赤い血があたりに散らばる悲惨な状況で他の翔士たちに動揺が走った。

 

「シュリル前衛翔士、何をする。そんな命令はだしていないぞ。」

ラフィールは、突然の行動に驚いた。

 

「感染者を排除したまでです。見てください。あの方たちの体のいくつかが赤くはれ上がっているでしょう。それは、生きた人間がゾンビになる兆候の証です。渡した記憶片にものっています。」

ユーリルは、あくまでも冷静に言った。

 

 

「しかし……それだけでは殺すことはどうかと思うぞ。彼らは降伏の式典でついさっきからアーヴ帝国の臣民になったのだぞ。」

ラフィールは、問答無用に事を進めるユーリルに不快感を抱いた。

 

 

「そうだよ。ユーリル。いくらなんでも……」

ジントも非難めいた視線をむけた。

 

 

「ジント、殿下、そのようなことを考えている余裕はないのです。それに、感染者を助けるワクチンは、ここにないのです。もう助からないならゾンビになる前に葬り去るのが手段です。」

金色の瞳でユーリルは毅然と言った。

 

 

「だめだ、シュリル前衛翔士、まだ、助かる可能性が無くなったわけではない。やたらと殺すではない。これは、命令だ。」

ラフィールもユーリルの言葉をさえぎった。

 

 

「なら、殿下、領民政府の方々は、感染している可能性があるので、こちらに近づけないようにしてください。いつ、あのときのように変貌されたら、対処しようがありません。ただで、さえ、目の前のあの数を突破しなくてはいけないのですから。」

そういって、20ウェスダージュ(2キロメートル)の先のノロノロと歩いてくるゾンビの集団を指差した。

 

 

「わかった。そなたの意見をいれよう。だが、どうやって、あの数を突破する。千人はいるぞ。」

 

 

「それなら、私に提案があります。ゾンビは、ただ、食欲の本能のまま移動しているにすぎません。そこには秩序も統制もない。それをつきます。」

 

ユーリルは、護衛部隊の隊長を呼んで、自分の作戦を説明した。

ゾンビがさえぎっている個所の1点突破をはかり、そこから、脱出するのが作戦の要だった。まずは、最初は、ガソリンで動く車をゾンビの中に突っ込ませてそこで炎上させて、一部を燃やし、さらに、祝宴の席で用意されていた酒精度の高い酒の瓶を火炎瓶として軍士たちに持たせて、それを対ゾンビ用の武器とさせた。特にゾンビは頭を貫通しないと倒せないということを説明して、さらに火に弱いということも説明した。

ゾンビを突破したさきには、双眼鏡で見た限りでは、領民政府の地上軍がのっていた装甲車や大型車両も何十台か残っていて、それは、150人の軍士をのせるには、充分なものであった。

 

最後にユーリルは、静かに言った。

「みんな、生き残るには、冷静になること。ただ、それだけよ。どんな状況でも、どんな場合でも絶対生きて、帰ると信じるのよ。」

 

それをうなずいて、隊長たちは、銃をとりだして、指示を送り、ラフィールたちを送迎したガソリン車(この国では、上流階級には、ガソリン車という奇妙な風習があった。)を自動操縦で動かし、元カルハーク星系政府軍の兵士だった歩く屍の元へ、送った。

 

 

ゾンビの群集の中に突っ込むと爆薬を作動させて、大きな炎とともに、その死体はとびちった。あたりには、火がついて倒れている屍が低いうめき声をだしながらモゾモゾとうごいていた。そして、あるものは、上半身だけ動いていて、あるものは、手の一部がぴくぴく痙攣していて、あるものは、顔の半分がはがれおちて、歯をかちかちとならしていた。

 

 

軍士達は、その光景に思わず嘔吐するものがいたが、何とか脱出しようと凝集光銃や火炎瓶で反撃をしながら、突破した。

ラフィールとジントは、そんな状況の中で隣あって必死になって走っていた。そして、すぐ後ろにはユーリルがつきそっていって。うめき声をだしながら、近づいてくるゾンビたちを撃ちぬいていていた。その射撃の腕はすさまじく、一瞬で10数体のゾンビが真の死体と化したのであった。

 

 

「助けてくれー。誰かー」

 

軍士の中に走っている最中に死体につまずき、転んだものがいた。そして、その拍子に足を痛めたらしく、必死に声を出して助けをもとめた。その表情は恐怖のあまり、完全にひきつっていた。

すると、その周りをゆっくりとゾンビの集団が近づいていた。まるで、くもの巣にとられたれ獲物をとらえるようにゆっくりと、舌なめずりしながら眼球がとびだしているものや内臓が飛び出ているものが低いうめき声をあげていった。

 

「殿下、ジント、急いでください。彼は見捨てましょう。あれでは、助けた方がまきこまれます。」

そういって、ユーリルは低くつぶやいた。

 

 

「しかし……見殺しには……」

ラフィールが言いよどんでいると、隊長の一人が凝集光銃を乱射して、その囲みを突破して助けようした。すると、その隊長の足元にいた内臓と肋骨が剥き出しになり、すでに胸から下が欠落しているゾンビが彼の足に噛みついた。

 

「うわー、なんだ、この野郎。」

その隊長は、その異様な光景に恐怖した。まさか、体が半分もない屍がものすごい力で足をつかんでいた。その握力は、人間のものとは、思えず、さらに、頭や体がすでに腐敗しいているはずなのに、自分の足を噛む歯とそれをつかむ爪は異常に固く鋭かった。その恐怖のあまりに、彼は凝集光銃を落とした。

 

 

「うわー、やめろー、やめろー、くるなー」

それが、彼の最後の言葉だった。あたりから、おおいさるように腐敗したものたちが、一斉に襲いかかった。それから、肉を切り裂く音や血が滴る音も聞こえていた。

 

 

「く、なんてことだ。」

その言葉を後ろの方で聞きながら、ジントはつぶやいた。

 

 

「殿下、ジント、一つ言っておきます。まずは、自分が生き残ることを優先させてください。」

そういいながらも、100体めのゾンビの額を凝集光銃で撃ちぬきながら、声をかけた。

 

 

ラフィールを含めた軍士の一団は、10名ほどの犠牲者をだしながら、なんとか、装甲車や大型車両のもとへ、たどりついていた。ユーリルは、車両のマニュアルと音声入力の切り替え用の記憶データを各軍士に渡しておいたので、端末腕環を直接車両につなげば、動かせることは、まちがいなかった。だが、通信システムが深刻なダメージを受けているので、自動ではなく、マニュアル運転にしなくてはならないとも説明しておいた。

 

大型車両のまわりにいたゾンビたちを駆除すると、各隊長の指示どおり、一斉に車両に乗りこんだ。

ジントも一番近く似合ったトラックに乗りこんで、端末腕環をつなげようとした瞬間、そこに一人の男が寝ているのに気がついた。

 

「もしかしたら、生きているかも、起きてください。大丈夫ですか?」

その男をジントは何気なくさすってみた。

 

「ジント、何をやっている。はやく、車を起動するがよい。」

ラフィールは、ジントが一向に車のエンジンをさせなかったので、大声でせかした。

すると、その声を聞いたジントはラフィールの方である後ろをむいた瞬間、寝ていたはずの男がゆっくりと起きあがった。

 

「ジ・ジント、後ろ。」

その男が濁った眼球でジントを睨みながら、鋭い歯がみえる口を開くとラフィールは大声をかけた。

 

 

「え…・・うわー」

その表情を見たジントは、悲鳴を上げた。

 

 

その刹那、その男の額に穴があき、音もなく倒れた。あとから、合流したユーリルが凝集光銃で額を貫いたのであった。

 

「ユーリル、助かったよ。あれ……この車両の起動装置にさっきの銃痕がついてる。」

 

 

「なら、ジント、他の車両に乗るがよい。急ぐぞ。」

そういって、行動が鈍いジントをラフィールは腕をとり、引っ張った。

 

「ああ、わかったよ。ラフィール」

 

 

結局、ジントたちは、ゾンビに近づき過ぎないように大型車両ではなく、普通車の電気式の浮揚車になるはめになった。そして、さらに、このわずかなロスが、すでに車両に乗った他の軍士たちと距離を多少あけることになった。

三人は、浮揚車にのったあと、とにかく、往還艇の場所まで猛スピードで走った。

完全にあたりは、夕闇から夜のとばりがおりていた。そこには、死体がゆっくりと歩く音と低いうめき声が広がっていた。

 

 

「ラフィール、ユーリル、ごめん、ぼくのせいで、少し遅れてしまったね。」

ジントは、車に乗って、少しほっとした様子で言った。

 

 

「しょうがないであろ。そなたの鈍さは折り紙つきだからな。それより、シュリル前衛翔士、運転の方は大丈夫か。」

ラフィールもやっと、一息ついた様子だった。

 

 

「ええ、このてのものは、乗りなれているわ。それより、急ぐわよ。宇宙にさえ、いければ、助かるのだから。」

ユーリルは、まだ、緊張をといてはいなかった。

 

車を運転している最中に、闇の中で町の様子を見たとき、ジントとラフィールは、そのあまりの悲惨な状況に言葉がでなかった。各地で火が上がり、そして、店や建物に衝突して炎上している車両やバイク、さらに、警察車両もあった。そして、各場所で悲鳴やうめき声、そして、人が人を食べている状況が永遠と続いていた。

親が泣き叫ぶ子供を食らい、子供が許しをこう両親を引き裂き、兄弟がお互いの腕を噛みついていた。

そして、昨日まではただその隣を通りすぎるための無名の人間たちが無関心に別の人間たちを襲い、食らい尽くしていた。

 

このとき、ジントは闇の中でいくつもの歩く屍のゾンビを見たが、ユーリルとラフィールは、空識覚でそれを正確に捉えていたし、ユーリルは、数ウェスダージュの距離も認識していたので、ラフィールに運転しながら指示をだして、遠距離から狙撃して倒して、障害物をくぐりぬけた。

 

 

「ラフィール、地獄というのは、こういうことを言うんだろうね。でも、どうして、こんなことになったのだろう?」

ジントは、あまりにも外の様子が悲惨なので、下を見ながら隣のラフィールにつぶやいた。

 

 

「知らん。だが、忌々しい状況であるのに、かわりない。シュリル前衛翔士、最初にバイオハザードといったが、あれは、こういう状況のことを示すのか。」

ラフィールは、真剣な瞳で言った。

 

 

「そうよ。しかし、あのときは、兄さん一緒だけど、2度とそんな状況は起きたくないと思っていたわ。それにしても、星界軍の任務でこんなことが起きるとは思っていなかった。」

ユーリルは、うんざりした口調で言った。

 

 

「ああ、ダリシュが言っていたのは、こういう状況なのか。しばらくは、ご飯が食べられ無くなる話だから、詳しいことは教えないといっていたな」

ジントは、ダリシュの言葉をおもむろに思いだした。

 

 

「そうね。だが、あのときより、最悪よ。なんていっても、兄さんがいないのだから。」

ユーリルは、深刻な表情で言った。

 

 

「あはは、そうだね。でも、ユーリルの的確な判断でこのままいけば、助かりそうだよ。」

ジントは、安心させるようにいったつもりだった。

 

 

すると、ラフィールとユーリルがいっせいにジントを凝視した。

 

「このまま、いけばであろ」ラフィール

「このまま、いけばでしょう。」ユーリル

二人とも共通な意思があるように同時にいった。

 

後に、ジントは思った。自分がこのままいけばとかいうような類の発言をするのは、控えようと、それを言ったときに限って、よくないことが起きる境遇なのだと改めて痛感するのであった。

 

ジント達をのせた車は、運転者のユーリルと狙撃者のラフィールの連携により、往還艇が着陸している広場まで迫っていた。そこには、すでにいくつか飛び立った様子があり、先に先行していた軍士の一部が宇宙に飛び立っていたことを意味していた。

 

 

「よし、もうすぐだ。どうやら、我らを待っている様子だ。」

ラフィールが手に持った双眼鏡で眺めると、往還艇の周りにいるゾンビの集団を何名かが、武器をもって蹴散らしているのがわかった。

 

 

「そうね、急ぐわ。」

ユーリルがさらに加速を上げると、はるか前方にカルハーク語で取扱い危険とかかれた大型輸送車両が猛スピードで暴走しているのをユーリルは認識した。すると、それは、まったく、スピードをゆるめることなく、地上から長さ3ウェスダージュはある巨大な電波塔である鉄塔にぶつかった。その刹那大音量と共に、大爆発を起こしたのであった。

その爆風はジント達がのった車にまでせまった。

ユーリルは、安全のために、それをさけるように操縦してスピードをゆるめた。

 

 

「あ、あれは、」

ジントがおもむろに指差すと、その鉄塔は脚の部分を完全に破壊されて最初はゆっくりと、最後は大きな加速で倒れてきた。そして、その先には、道路を挟んでラフィール達をまっている往還艇があった。

 

ドォーーーーーーンという地響きに似た音が響き渡り、往還艇は、その巨大な鉄塔につぶされてしまった。

 

 

「く、なんてことだ。なんで、こんなことが起きるのだ。多くの軍士達が我々をまっているせいで死んでしまった。」

ラフィールは、悲しそうにつぶやいた。

 

 

「もう、あそこでは、他の往還艇を下ろす場所はないわ。鉄塔が邪魔で無理ね。」

ユーリルも唇をかみ締めながら言った。

 

 

「ねえ、どうしよう。ラフィール、ユーリル、どうやったら……」

ジントは、ただ呆然とするしかなかった。

 

 

 

「殿下、ジント、さらによくない知らせよ。この浮揚車の燃料はあとわずかしかないわ。あの広場までは充分だったけど、その先の宇宙港へは程遠いわ。」

ユーリルは、冷然といいはなった。

 

 

「そなたといると、楽しませてくれるな。ジント」

ラフィールは、不愉快につぶやいた。

 

 

「まったく、人生なんて思いがけない幸運の連続さ。けつまずくのに苦労はいらないとはよくいったものだ。」

 

リン・スーニュ=ロク・ハイド伯爵・ジントは、暗闇の空を眺めて、思わずつぶやいた。

彼の人生にとって、何回目かの命の危険であることにジントは嘆くしかなかったのであった。

 

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