小説版ガールズ&パンツァー2巻67ページ、またアニメ第8話において生徒会小山と河嶋のセリフでこのようなものがあった。
小説版では「そろそろ緯度50度を超えますからね」
アニメでは
「そろそろ北緯50度を超えましたからねぇ」
「次の会場は北ですもんねぇ」
「まったく、試合会場をルーレットで決めるのはやめて欲しい!」
それに続く、武部沙織(アニメでは西住みほが生徒会室に呼び出されていたが、小説版では武部沙織が呼び出されている)の描写ではこう繋がる。
(もしかしたら北海道より北になるのかな?)
この武部沙織の描写からも、学園艦が北緯50度を超えつつあることが伺える。
現実の地図でいうと、北海道より北で北緯50度というと、樺太のだいたい半分の地点、カムチャッカ半島の先端付近にあたる。
さらに付け加えると、ガールズ&パンツァー劇場版前売り券に特典として配布された小説の冒頭に興味深い記述がある。
『戦車道全国高校生大会が無事に終わった七月のある日。』
七月のある日ということは、大会は遅くとも七月中には決勝戦が行われていると推察出来る。
主人公たちが高校生であることを考えると、三年生が進学や就職に労力を傾けるためにおおよそ夏までに部活や諸々の活動を引退する時期と重なり、大会が七月中及び夏休み前までに全日程を終えることは不自然ではないだろう。
ここで注目したいのは、先の記述から準決勝の時期を逆算して考えると、6月の終わりから7月の頭付近に試合が行われており、なおかつ舞台が北緯50度を超えた先にあって、更に日本では梅雨がまだ抜け切らない時期の北半球で、雪が降りしきる雪原地域が日本国内にあるという点である。
外国の試合会場を借りて開催しているのでは?、と考えてみたが、いくら世界的に広く普及しているとされている戦車道でも、数あるスポーツ競技の中一つに過ぎず、全国大会とはいえ高校生の試合を、国外にそれも選手だけでなく学園艦そのものを移動させてまで試合を行うだろうか。
国外なら当然パスポートの準備や入管手続き等を行わなければならないだろうが、試合と全く関係ない生徒や学園艦住民にとってそれは大きすぎる負担であると想像に難くない。他にも国外である場合の弊害はあるだろうが、これらのことだけでも、試合会場が国内にあるということを示していると考えられる。
この時点で、現実世界と違い日本国の領土がかなり北に広がっていることが示唆される。
では、ここで領土が広がっている理由を、歴史上の出来事と地理的条件から考えてみたい。
領土拡張は大体の場合、戦争による賠償によって得られることが多い。
近代における日本の対外戦争は、日清・日露・第一次大戦・太平洋戦争(第二次大戦)である。
太平洋戦争では、日本の相手は大陸を除いて殆どの場合、アメリカであった。アメリカ相手に勝利を得ることは、史実を知る人間として非常に困難であるとしか考えられない。仮に勝利していたとしたら、その日本は殆ど仮想戦記の日本で、未だに大日本帝国のままだろうし、作中に自衛隊は存在し得えず、我らの八九式中戦車はもっと火力があってもいいはずである。よって太平洋戦争での領土獲得は考えない。
次に第一次大戦であるが、連合国(三国協商)側に立った史実日本はドイツ帝国艦隊の根拠地と太平洋における赤道以北のドイツ植民地を攻撃した。
また、欧州においては小規模であるが艦隊を派遣し後方支援に従事した。しかしながら、戦後得たのは中国大陸におけるドイツ権益の継承であった。よってこれも北緯50度より以北の領土獲得には合致し得ない。また同じ理由で日清戦争も条件に当てはまらず、除外される。
最後に、日露戦争である。北緯50度以北に国土を有する点では、可能性としては最も有力ではあるが、史実では南樺太と関東州を得るに留まった。
しかし、ガールズ&パンツァー世界の日本は北緯50度を超えて、ほとんど夏に入った北半球で雪原地域を領土内に有する国家である。
これらのことを考慮すると、ガールズ&パンツァー世界の大日本帝国は日露戦争で、最低でも『北極圏に接する海域内の沿岸地帯』を領土として獲得していると考えられる。
日露戦争の主戦場は、満州南部と朝鮮半島それに日本海であるが、史実と同じ戦争内容では戦闘に直接関わらなかった地域である北極圏沿岸地域を獲得するには理由として弱い。
また北極海沿岸部と言っても、よりモスクワに近いカラ海沿岸に軍を派遣するのは、日本からの距離や日本の戦争目的、効率的な進軍ルートを考えると困難であると思われる。
よって河川を遡上しての進軍が比較的可能で、位置的には主戦場の後背に進軍できそうなレナ川を北側進軍ルートの起点として考える。冬将軍や大自然によって進軍が閉ざされるのではないかと考えなくもないが、この際気候条件等は考慮しないこととする。
さらにオホーツク海沿岸にも橋頭堡を作り軍を北上させ、北と南両方からルートを確立、レナ川を一種の巨大な防衛線とし、西と南側にいるであろうロシア軍に圧力をかけ続け、主戦場に送られるロシア軍の兵力を分散させる。
その一方でレナ川以東を徐々に占領下に置いていくことで、戦後の領土交渉の材料とする。
よって、この地域を獲得するには軍による占領が戦争終結時まで維持される必要があると考えられる。
それを成すには、史実世界の大日本帝国の国力は全くの力不足であると言わざるを得ず、可能とするにはかなり下駄を履かせる必要がある。
可能性としては、日本軍の軍事力が増大する『力こそ正義!』説、他国の力を借りる『他力本願』説、全てにおいて日本に幸運が訪れた『神様に賄賂』説などが思いつくが、ここでは日本列島そのものが巨大化し国土・人口・資源いずれも増大する『日本大陸乃至日本亜大陸』説を中心に考えてみたい。
国土が大きくなれば耕作に適した大地が現実のそれより大きくなり、そこから生まれる大量の食料は大きく増加した人口を下支えし、人口が増えることで第一次産業・第二次産業・第三次産業それぞれの生産能力をあげ、増大した生産能力で埋蔵量が増えた鉱物などの資源をより大規模な採掘・加工が容易になり、それらから得られる税収は新たな国内開発等に用いられ続け、日本の国力を底上げしていくだろう。
では、人口がどの程度大きくなれば主戦場以外に軍を派遣出来るだけの兵員を揃えられるだろうか。
主戦場を史実と同じ兵員数として、他にレナ川進軍ルートとオホーツク海沿岸から北進ルート、レナ川以東占領軍と合計で大きく4つの軍団が必要になるだろう。
ということは、軍の兵員数は史実のそれと比較しておおよそ4倍前後程度必要になると思われる。人口もそれに比例して増えるものと考えられる。
これだけの軍を揃えられる国と戦争しようと、なぜ当時のロシア(ガールズ&パンツァー世界の)は考えたのだろうか?
まぁ、現実世界でもほんの70年ほど前までは力こそ正義で、戦争に負けることは犯罪であったし、アジア人はチビのイエローモンキーとされていて、日本の工業製品が安かろう悪かろうの域から脱したのはそもそも第二次大戦後の高度経済成長の後である。列強のロシア帝国が開国してすぐの日本を侮るのは当時の時代背景を考えると自然なことなのかもしれない。
しかし、これだけの軍備と国力を持つ大日本帝国が第2次大戦でアメリカ相手に無条件降伏するまでに負け続けるのは疑問の余地がある。
案外、アメリカとの単独講和(アメリカ側に有利な)ぐらいは勝ち取り、その後なし崩し的に他の連合国とも停戦していったのではないだろうか。
講和の条件としては、南方及び大陸朝鮮半島からの撤退と統治権のアメリカへの移譲、アメリカとの同盟と米軍の日本駐屯基地の提供、憲法改正などだろうか?
日本国内でもそれを利用して、帝国軍の再編と称して自衛隊に改名、帝国主義的な将官や佐官、戦争中に問題を起こした人物のパージを行ったのかもしれない。
史実でも、竹槍で航空機を落とせると民間人に指導する人間がいるのだから、合理的な思考をする側にとってはこれ幸いと喜々としてこのチャンスを利用しただろう。
結論として、ガールズ&パンツァー世界の日本国領土は、レナ川以東のシベリアの大地を含み、その領土獲得を成し得た過去の大日本帝国は、比喩表現でも何でもない文字通りの"大"日本帝国であった、可能性がある。
終わり
・担当教師のコメント
日本大陸説は、ガールズ&パンツァーという学園艦といった超巨大建造物を運用している架空の世界観ならではの発想で、実に興味深い。学園艦の港が無いなら土台となる国そのものを大きくすればいいという発想は、単純ではあるが理にかなってもいる。
むしろ、日本の近代史よりも、戦国時代のほうが気になってくる。戦国時代の火縄銃の生産数は、同時代の海外を合わせても世界1位であったと記憶しているが、日本大陸の場合一体どれだけの火縄銃が戦場で運用されたのだろうか。むしろこの世界にとっては、日本は鎖国したままのほうが良かったのかもしれない。
先生としては、外国の試合会場を借りる条件として『外交力がべらぼうに高い日本』説を考えてみたが、同僚には「そんなの日本じゃない!」と言われ否定された。先生ももっともだと思う。食べ物に関すること以外に、日本の外交が覚醒するなんてまずあり得ないだろう。
次のレポート提出も楽しみに待っている。
空想科学大学・サブカルチャー部アニメーション科・ガルパン担当教官より
レポートその2になります。
今回は準決勝の試合会場を見た時に思った、劇中の時期に雪が積もってる地域があるってすごくね?、しかも北半球で日本国内だろ?、日本パネェ!、ということがきっかけでした。
あくまで作者一個人の妄想であることをご了承ください。