作中世界の日本における戦車道の普及は、一体どの時期が妥当と考えられるだろうか。
筆者としては、第二次大戦後の朝鮮戦争の更に後、高度経済成長の時期に重なるのではないかと考えている。
物質的な側面で考えるならば、戦車道を行うための予算やインフラ、そして乗員の安全を担保出来るだけの科学技術の発展が必要になるからだ。
そして、民間人に旧式とはいえ軍事兵器の一角である戦車を使用しても問題ないと広く国民に共通認識されるだけの社会情勢が、最低限必要とされるだろう。
なぜ、そのような社会情勢が必要とされなければならないか。
それは戦前の出来事を見れば自ずと理解されるだろうと思う。
一つは、2.26事件や5.15事件などの政府要人の殺害を、最も自らを律することを求められる軍人が、行ってしまうだけの土壌が存在する時代だったこと。
もう一つは、日比谷焼打事件に見られるような、当時の国民の教育レベルや情報量の格差からくる、某巨大掲示板であれば"一年ROMってろ"と言われんばかりの煽り耐性の無さが挙げられるだろう。
このような状態である戦前で、民間人に軍の最新兵器でありまだドクトリンも確立していないような戦車を、「明日からこれに乗って大砲ぶっ放していいよ! 街なかでも歓迎だよ! 予算は国が持つからね!」、などと言って渡せるわけが無いのだ。
現実世界で考えるならば、日本赤軍や神経ガスを撒き散らすような新興カルト宗教が乱立していた戦後に旧式の軍事兵器が合法的にバラ撒かれるような状態になる。
恐らく、所謂暴力団体は当然のように所持しているだろう。チャカを入手するより容易かと思われる。民間で戦車を持つのが合法ならばであるが。
これはヤバイ、2000年を迎える前に世紀末が始まりそう。
次に、恐らく作中日本では戦車道と共に日本にやってきた、日本戦車道の骨子となっているであろう思想「男は戦車に乗るな!」についてである。
これは、欧州で戦場となった都市に住む女性達から発生した思想で、彼女たちの目線から見て、欧州で生活し戦争に関与してない(少なくとも彼女たちはそうだと思っている)はずの自分たちの生活を直接的に破壊した戦車を代表とする装甲を持つ陸上兵器たちは嫌悪の対象となり、それらを操る男性兵士たちに矛先が向けられた。
男性が操る兵器は、他にも軍艦や航空機が存在するという事実は当然のことながら認識していただろうが、女性たちの視界に直接写り都市を破壊していったのは戦車であり装甲車であり男性兵士であったことから、それらに対する嫌悪が殊更際立ったことだろう。
その結果、男性が装甲車に乗ることは卑怯であるという、自分たちの生活が一方的に脅かされたと、少なくともそう考えている女性達の感情を満足させる以外には、何ら合理的な理由が存在しない思想が生まれることとなったと考えられる。
筆者の考えとしては、作中に男の影を出さず、いかに可愛らしい女の子を活躍させるか。
また、巨大な学園艦を大量に運用しているという現実のそれとは異なる、物語上の日本を強く認識させるための舞台装置の一つなのだろうと考えている。
しかし、作中日本では当たり前の常識として存在しているようなので、その常識がある前提で次の点について考えてみたい。
この思想が広まった理由と、相乗りして利益を得た者達について、である。
下記に、思いつく限りの理由と人々について1つずつ記していく。
1.戦前から社会進出を強く望んでいたにも関わらず、同調圧力によって阻まれていた女性達の不満
2.日本軍の機甲戦力の弱体化を目論む他国の思惑
3.戦前抑圧されていた日本国内の共産主義者をはじめとする過激派左派勢力の勢力拡大
4.日本の昔から続く、舶来のモノ(製品や考え方など特に欧米列強から入ってくるモノ全般)は日本のそれよりも優れていると思ってしまう欧米コンプレックスの発露
5.戦車道の普及に伴う経済界の利益誘導と彼らの組織票を票田とする議員達
6.戦後比較的増え始めた、議員を目指す女性達が自らの票田を得るために起こる迎合主義
7.他人のサイフで社会インフラの刷新を目論む地方自治体による戦車道の試合会場誘致合戦
8.その他
以上、8つの事柄によって広まっていったのではないだろうか。
一つ一つを詳しく掘り下げないが、大きく分けて3つに分類できるだろう。
女性の社会進出、産業界による新たな巨大市場の開拓、それらを支持基盤とする代議士達。
結局のところ、この思想は口実にすぎないのではないだろうか。
自身の利益にならないのであればソッポを向いていたのは間違いない。
悪貨は良貨を駆逐するではないが、小憎たらいしい程に弁の立つ声と態度だけはでかい少数派は、無関心で意思表明をする気の無い多数派より正義だったのだろう。現実のそれと同じく。
結論
新たな思想と共に始まった日本戦車道は、我田引水を目論む様々な立場の集団による見えない後押しによって広く日本に定着した、と考えられる。
・担当教師のコメント
レポートで取り上げている思想は、ガールズ&パンツァー世界では作品を構成する重要なポイントであることは間違いないだろう。
先生としては、その思想は民間の戦車道だけに適用されているのではないだろうかと考えていた。
理由としては、現実主義者の集団である軍事力にそのようなロマンチシズムの塊のようなものが介在する余地など無いと思っているからだ。
性差による身体能力と機能の違いを根拠にしているのならば話は違ってくるのだが。
もしかしたら、思想が生まれた欧州の女性たちとそれに共感した人々に対してのガス抜きとして存在している思想なのかもしれないなぁ。
空想科学大学・サブカルチャー部アニメーション科・ガルパン担当教官より
久しぶりの投稿となりました。
もっと前に投稿するつもりではあったのですが、先の熊本地震で我が家も震度6強の揺れに二度も襲われ、あまり筆が乗らない日々が続いていました。
この場を借りて多くの方々の熊本県に対する暖かいご支援に、県民のひとりとして感謝申し上げます。
幸いなことに自宅は無事でしたので、比較的早く日常に戻れましたが、しばらくは地震の揺れに怯える日々でした。
一度目のは何が何やら分からない状態でしたが、二度目の揺れはマジで緊急事態の真っ只中にいるんだと自覚させられました。
皆さん、備えは必要です。緊急時に持ち出すものを一箇所にまとめることと自宅に入れない場合どうするかを考えておくだけでも大きな違いがあります。