The Echo ~Reflection of The FullMetalPanic~   作:手拭

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11.そして時はすすむ

砂漠から帰還した後、みんな蒼い顔をしていた。

 

疲労が押し寄せてきた。

 

そう表現するのが最も的確だった。

とんでもない疲労と眠気を感じている。

 

「――はやて。アイス――」

「待つんだヴィータ。とりあえず顔を洗おう。それにまだ夕食前だし、寒いからもうアイスはやめよう」

「そう言うあなただってコップ逆さまに持ってるわよ。レナード君」

 

なんというか体の限界だ。

疲労の局地とはこういう状況を指すのだろう。

 

「シャマル。お前は目が半分も開いていないぞ」

「シグナム。お前もだ」

「そういうザフィーラは狼形態で寝ていたから元気なんだろう。僕が見ていないとでも――」

「――だからレナード君。コップが逆さまよ」

 

思考能力を著しく欠如した彼、もしくは彼女達はなぜか顔を洗いに全員で洗面所へ。

そしてこんな取りとめも無い会話をしていた。

 

 

「みんな何してるんや」

 

 

そこへはやての声がかかった。

全員が振り向けば洗面所の入り口に車椅子に座る主。

 

はやてはちょっと引いていた。

 

「――すみません。これは―」

「待つんだシグナム。何も考えていないのに話すんじゃ――」

「コップが逆さま――」

「ア―イ――ス」

 

そして各々がそんなことを言ってはやてへと倒れ掛かったのだった。

 

「ちょ!ちょい待った。ええ!?寝てる!?」

 

ヴィータがはやてへ抱きついたのを先頭に4人は折り重なって寄りかかってきた。

 

奥行きが無いので車椅子がついたてとなり下がることもできない。

 

そうして慌てるはやてに全く構わず4人は寝息を立て始めていた。

 

「待って皆。こんなところで寝たら――そうやザフィーラこれはどういうこと――」

 

「さあ?何も分かりません。我が主よ」

 

さらっと全員からの責任を逃れたザフィーラだった。

 

 

みんなをソファやカーペットの上やらへザフィーラに移動させてもらってから、ようやく一息ついた。

 

「ありがとうザフィーラ」

「なんでもないことです」

 

そうした会話を交わして彼らはテーブルの方の椅子へと腰掛ける。

だがやはり気になるのだろう。はやては追求してきた。

 

「なあ。今日はみんなどうしたん?」

「――主。それは――」

 

困った。

元々寡黙なほうなのだザフィーラは。

正直言って口の回るほうではない。

 

「レナードと最近仲ようしとるのは分かるんやけど、ちょっとこれはおかしない?」

 

拙いな。

主は自分達に疑いを抱いているようだ。

今回のこれはイレギュラーとはいえ時間をかけすぎた。

 

おかげで全員の疲労はピークに来ている。

ザフィーラとて魔法で治療がしたが体にダメージが残っている。

注意していなければ気を失いかねないのだ。

 

「それは――」

「それは気にするほどじゃないよ。みんなで魔法の練習をしていたら白熱してしまってね」

 

言いよどむザフィーラの言葉をレナードが引き継いだ。

 

「あれ?寝てなかったん?レナード」

「いや今、目を覚ました。おはようハヤテ」

「寝ていなくていいのか?」

「大丈夫だ。割と睡眠無しに行動することは昔からあったから慣れてる」

 

起き上がってハヤテたちの方へと向かう。

 

言いつつ彼は時計を見た。

 

20時51分。

 

「このままだと3人は朝まで起きないな」

「だろうな」

「ほんとによう寝とるなー」

 

そう言って追求するのをやめたはやては寝ている3人を眺めた。

 

「まあ。あんまり無茶はせんようにな?」

「ああ。分かってるよ」

 

それで事は収まったのだった。

すぐに食事の話になる。

 

「ハヤテ。3人分だけ僕が作ろうか」

「ええよ。もう半分くらい出来てるし。今日はホワイトシチューや」

「なるほどね。ザフィーラも食べるんだろう?」

「勿論だ。主にご用意いただく食事だ」

 

その後、それだけ会話して準備に取り掛かった。

 

重いものはレナードが。

基本的に作ったり、味付けしたりをはやてが。

 

これが2人で料理したときのルールだった。

 

1回決めたことは大体丁寧に守るあたりレナードも律儀だと思う。

暖められた鍋が食卓と運ばれる。

 

それを3人分均等に注ぎ終えた後、いただきますの挨拶で食べ始めた。

 

「まあ夕食には間に合ってよかったな」

「ほんまやで。まあなんとなく理由は分かったけど」

「・・・」

 

ザフィーラは顔にこそ出ないが内心ハラハラしている。

何かの拍子に主に事がばれれば絶対に頁集めを中断させられる。

 

救うためとはいえ言いつけを破ったのにも違いは無い。

そうした罪悪感もあった。

 

しかしそんなザフィーラの心境などまるで意に介してないかのように、目の前のレナードはその口からさらさら言葉を放つのだ。

 

「いやあ。はじめはちょっとした練習のつもりだったんだけどね。

 いつの間にかみんな本気になってしまってね。なあザフィーラ?」

「あ、ああ。そうだな」

 

相変わらず良く回る口だ。

悪い意味ではなく感心していた。

 

うむ。考えてみたら一番恐ろしいのはこの男なのではないか?

 

自身の発見に慄きながらザフィーラは食事を続けたのだった。

 

そうして夕食の時間もあっという間に過ぎていき寝る時間となる。

 

「ほなお休み」

「ああ。お休みハヤテ」

 

互いにそれだけ交わしてそれぞれが寝床へ向かう。

 

床につくとすぐに睡魔がやって来た。

 

10分もしないうちにレナードは深い眠りの世界へと入ったのだった――

 

 

夢の世界。

 

 

 

空間に浮いている。

 

上も下も無く。

 

ただ薄い緑色の空間の中に浮いてる。

 

無重力のその空間でレナードは目を開いた。

 

声が聞こえるのだ。

 

久々だな。

 

最近はなくなっていたささやきの声にそう思った。

 

ぼんやり周囲を眺めていると、やがて文字が出現し彼の周りを取り囲んで回り始める。

 

それを見つめていると文字達は1つに固まっていき人影の形をとった。

 

――ソフィア。

 

ヤムスク11で行われた実験の被害者にして全ての始点。

 

彼女なのだろうか。

ウィスパードである自分もこのような体験をしたのは初めてのことだった。

そういえばバニ・モラウタはより深淵に潜ろうとして最終的に自殺した。

 

止まっていた頭脳が働き始める。

 

文字で出来た人影はその姿をさらに明確にしていく。

 

しばらくたった後、そこには自分と同じ髪色をした長髪の女性が立っていた。

 

「私は書の管制人格たる融合騎だ。これでお前と話が出来る。

 同胞よ。何度も話しかけていたのだがようやく意識が接続されたな」

 

管制人格融合騎。

涼しげな声で目の前の女性はそう名乗った。

 

「書の管制人格?すると君はプログラムか」

 

どうやらソフィアではないようだ。

感じていた危機感が少しだけ緩む。

 

「そうだ。我等が同胞よ。そして私は普段は姿を見せることが叶わないがお前のことはよく見ている」

 

そういえばあの魔導書は、はやてに寄って行ったり勝手に移動したりしていた。

闇の書には意思があると誰かが言っていたのも思い出す。

 

それで自分が目にしているものに納得がいった。

 

「そうか、君が書の意思か」

「ああ。まあゆっくりとした話もしたいのだが時間が勿体無い。お前は夢の中でしか私の記憶を保てない」

 

意識を接続したと言っていた。

繋がりが消えれば、管制人格の内にしか自分の意識も残らないのだろう。

 

「1つ目を単刀直入に聞く。お前は何故、我らが主にあそこまで尽くすのだ」

 

「それは――」

 

現実の自身が目を覚ますまで。

彼はかつてヴォルケンリッター達としたような会話を彼女と始めた。

 

そしてそれがきっかけとなり、闇の書の管制人格との論戦を繰り広げることとなる。

 

そして新たな情報をレナードは得ることになった。

 

それは避けようが無い事態。

しかしそれは彼がその事態に対する一つの結論を導き出す鍵となったのだ――

 

 

そして目を覚ます。

 

レナードは起き上がると窓の外を見た。

 

外の景色はすっかり朝を迎えている。

スズメのさえずりが聞こえて目をやると、ちょうど羽ばたいて行く所だった。

 

それを見届けてから頭を振ってつぶやく。

 

「―?なにが夢の中でしか記憶を保てないだ。しっかり憶えているじゃないか」

 

夢で話した融合騎との会話を思い出す。

ふとみると傍らに闇の書が浮いていた。

 

「管制人格。言っていることが違うぞ」

 

その言葉にしばらく静止していた書だったが、やがて転移した。

はやてを起こしに行ったんだろう。

 

「まあいい。いずれにしても僕がやる事が増えたのには違いない」

 

本当にままならないものだな。

闇の書の意思との会話を思い出す。

 

しかし、あれの話が本当ならこれしか方法は無いのだろう。

 

これから自分がとるべき行動を頭の中で組み立てる。

 

瞑目して、朝の数分を過ごしたレナードだった。

 

 

それからシャツを着込んでから階段を下りていく。

すると珍しいことに既に皆はテーブルについていた。

 

「ああ。おはよう皆。やけに今日は早いんだな」

 

「よし。全員起きてきたな。ほな発表といこうか」

 

とりあえずソファに座ったレナードを置いてけぼりにしていきなり何かが始まった。

 

「主?わざわざ全員が揃うまで待つとは何か重大なことでしょうか」

 

シグナムが緊張の面持ちで聞く。

大仰に頷きながらはやてはそれを認めた。

 

ごく。とシャマルとヴィータはつばを飲み込んだ。

 

緊張が走る。

 

しかしそんな彼女達とは対照的にレナードは楽観的だ。

 

「そうや。これは私らにとっての一大事であって、沽券にかかわることや」

「へえ沽券なんて言葉よく知ってるなハヤテ」

 

軽口を挟むレナードすら意に介さず上機嫌だ。

ほう。これは珍しい。

こんなに機嫌がいいのはいつ以来だろうか。

 

だがヴォルケンリッター達はそれに気がついていないのか未だ緊張している。

 

「主それは――」

 

続きが気になる皆を代表してシグナムが先を促した。

 

まずい。

このタイミングでなにかしたいことが出来たのか。

それとも書の頁集めがばれたのだろうか。

間違いなくそんなことを考えている顔だ。

 

冷や汗をかきながら彼女達は主の言葉を待った。

 

 

「それはな。12月25日に!なんと家でクリスマスパーティを開くことになったんや!」

 

「・・・」

 

まあそんなオチだろうと思っていた。

 

もう慣れてきたよハヤテ。

 

一人で新聞を読みながらレナードは思った。

しばらくしてから守護騎士達の声が重なる。

 

「「「えええええええ!?」」」

「うん。うん。驚いたやろ。ちなみに24日は顔合わせかねてみんなで買出しやで」

 

ちなみに何でそんなに驚いているかというと、

このタイミングで家に誰かを招きいれるのかとそういったことからだ。

 

間違っても目の前の主の友達が少ないだとか、友達が少ないだとか、友達が少ないだとか思っていないはずだ。

 

「3回も思ったな!?レナード!」

「なんだと!?」

「いや、なんとなく言ってみただけなんやけど・・・」

 

心臓が口から飛び出すかと思った。

 

レナードは今ので目が完全に覚めてしまった。

大抵のことには驚くまいと思っていたらこうして不意打ちが来る。

なんという心臓に悪い娘だろう。

 

「ま。というわけでおもてなしをせなあかんという訳や。

 んでレナードがサンタで、ザフィーラがトナカイな」

 

「いや待て、そのポジションは譲れないのかハヤテ」

「残念ながらこれ以上の適役はおらんな」

「主から賜った重役だ。なにやら分からんが責任を果たそう」

「ザフィーラ。このままいくと君は僕の荷物持ちだぞ。

 あと狼にソリを引かれる姿を考えると南極探検か何かと思うわけだが」

「主。残念ですが申し上げたいことが――」

 

すぐに手のひらを返すザフィーラに苦笑した。

 

それにしても12月25日か――

自身がこの世に生を受けた日。

 

祝うというより呪ったことすらあるその日をレナードは当然好きではなかった。

まあちょうどいいだろう。今年もこれで気が紛れる。

 

そんな風に思う。

 

大概、彼の誕生日は厄日だ。

昔からろくなことが無いのだ。

 

今年は無事に終わってくれることを願う。

 

だがその願いは叶わない。

巡り合わせも一つの運命だとしよう。

 

だとするとその運命は今年もあっさりと彼の願いを裏切ることとなる。

 

終わりの足音。

それはもういよいよ間近に迫ってきていたのだった。

 

 

 

 

クロノ・ハラオウンは今、街中を歩いている。

彼は私服姿だった。

 

普段、彼の送る日常は多忙を極めていた。

 

管理局の執務官とは自分の裁量で捜査と指揮を行うだけの権限を持っている。

それだけ強い権限を持つということは、その職務がそれだけ軽いものではないということだ。

 

まず自分で捜査を行う前に事前調査を行う。

これは人からの引継ぎや、自分で厄の種を発見するなどケースバイケースだ。

 

それから事件性、つまり管理世界ないし次元世界に影響がありそうなものについて条件に該当したものの捜査を開始する。

最後は捜査への協力要請という形で陸、空、海を問わず事件の規模に合わせて人員の補充を要請し解決に向けての指揮を執る。

 

そういった業務の連続だ。

 

ところで、執務官にはある能力が求められる。

 

学者には特定の分野に対する探究心と思考能力が。

音楽家には音に対する感度と音を奏でる能力が。

政治家には国益を優先する多角的な視野と将来に対して責任を持つ能力が。

技術者には技術への追求心とそれを目的に応じて実現する能力が。

 

それぞれの職に、そうした素養が求められるように執務官にも次のような素養が必要だ。

 

法的素養と事件に対する総合的判断能力。

 

付け加えるとすると、その2つに基づいた判断を実行するための戦闘能力といったところだろうか。

 

思考能力がいかに優れていても判断が遅れれば意味がない。

判断が早かろうとそれが法的に誤っていても意味がない。

そしてなにより実行できなければもっと意味がない。

 

どれか突出させるのではなくバランスよく求められる辺り実にシビアな職業だと思う。

人間、普通はどれかに偏っているものなのだ。

 

素養の有無はあるにしろ、ひょっとすると必要な才能はどれも努力だけなのかもしれないが。

 

まあこうした事情から母数が少ないことが原因で、一度合格してしまうとあちらこちらへ引っ張られる。

事件から事件へと綱渡りのように業務に忙殺されるのだ。

 

法の執行者とも言えるそれは、よほど公の者たらんとする者でもなければ続かないだろう。

 

正直言ってクロノの自覚はあまりないが10代の少年が行う業務としては異常なものだ。

元を辿れば、有能であればその辺りの都合がどうとでもつく管理局自体が異常なのかもしれない。

 

久々の休みだというのにそんなことを事を考えながらクロノは商店街を歩き回った。

 

待ち合わせの時間になり他の人間が姿を現す。

 

「あ、クロノ」

「クロノ君。久しぶり!」

「久しぶりって、なのはまだ前に会ってから1週間しかたってないんだが」

「ううん。執務官じゃないクロノ君は久しぶりだからっ」

 

そう言ってなのはは笑った。

それに頬を掻きながらクロノはこう答える。

 

「ま、まあ。僕だっていつでも制服着てるわけじゃないさ」

 

 

そうして買い物が始まった。

 

――30分後。

 

「なのは。フェイト。ちょっと待ってくれないか」

 

「え?どうしたの?」

「クロノ?」

 

すごく不思議そうな顔で2人はこちらを見た。

 

うん。

いまさらなのだが呼ばれた理由に気がついた。

 

彼は今、両手と背中のリュックに山ほど荷物を抱えているのだった。

中身は1Lのジュース数本やらプレゼントやパーティグッズ等。

前を歩く彼女からの雰囲気からしてまだ倍量は来るのだろう。

 

というか開戦30分でこの量とはどういうことなのだ。

 

「君ら――まさかと思うんだがこれが目的だったりするか?」

 

「ちっ―ちがうよっ!別にアリサちゃんがこうしたほうがいいって言っただなんて――」

「だだだダメだよなのはっ!私だって忘れてたのにっ!」

 

慌ててなのはの口を手で塞いだフェイトだったがもう遅かった。

 

ハッとなり2人はおそるおそるクロノほうを見る。

 

「・・・とりあえず、あそこで座らせてくれないか」

 

そうしてクロノがたまたま設置してあったベンチの方を指差したことがきっかけで3人は休憩を取った。

 

「はぁ。最初から言ってくれればいいのに」

「にゃはは・・・ごめんね?せっかくのお休みだから言い出せなくて」

「私もごめんなさい」

 

両手を合わせて頭を下げたなのはとそのまま頭を下げたフェイト。

きちんと謝ってくれる辺り素直だと思う。

それこそエイミィとかならそのまま笑って1日中つき合わされるのだ。

 

あれ?そう考えると僕の休日ってなんなんだろう。

 

休日という概念について真面目に考え始めてしまうクロノだった。

 

「でも、明日全員でお買い物するつもりで」

「相手の子が足が悪いって聞いてたから来れる人で大きなものは今日のうちにって」

 

なるほど。

思考の渦に沈みそうだったクロノは現実へと戻り納得した。

 

だが――

 

「足が悪い?」

「ああ。クロノ君は知らないんだっけ。私達も聞いただけだけど体が弱い子らしくて――」

 

まさかな。

そんな偶然は無いだろう。

 

そう思った。

 

なにせクロノは自分自身でこの町の周辺をそれこそしらみつぶしに探し回った。

 

実はグレアムは彼に八神はやての所在を教えていなかったのだ。

協力関係に入ったとはいえ手駒を増やし、デュランダルのみを使わせる予定だったのだろう。

 

それでも見つからなかった。

守護騎士達は本当に有能だと思う。

おかげでせっかく用意した秘匿回線の出番は日の目を見ないのだが。

 

しかしクロノがあれだけ探して見つけられなかったのだ。

まさかこんなことで行き当たることは無いだろう。

 

「まあ。そうと決まれば早めに買って回ろう。日が沈まないうちに」

「買い物に付き合ってくれるの?クロノ」

「もちろんだ」

「やったー!ありがとうクロノ君!!」

 

荷物に埋もれているクロノになのはが抱きついた。

 

「ちょ!なのは!ここは――」

 

慌しいながらも普段と違う緩んだ時の中。

 

真っ直ぐすぎるその少年も、ひと時のやすらぎを感じていたのだった。

 

 

 

 

 

 

聖夜に向けて各々がそれぞれの過ごし方をしているその頃。

 

ある管理外世界。

その砂漠。

 

その氷像にはひびが入っていた。

 

もともと非殺傷で放たれたそれは冷凍による封印の効果だけを生んでいた。

そして熱帯の空気に当てられているその氷像の氷解は予想よりもはるかに早い。

 

エターナルコフィンに巻き込まれる直前。

アリアの準備は間に合っていた。

 

凍結というものは水分に対して有効に働くものだ。

 

返して言えば、もし水分に断層があった場合。

その断層の内側に凍結の効果が及ぶ影響は少ない。

 

そう。アリアの対凍結耐性の準備は間に合っていた。

体の表面につかないように展開されたミストはそれ自体は凍るが、彼女達の体まで凍てつかせることはなかった。

 

そして今やそれにひびが入っている。

 

ひびは広がりやがて、氷像は完全に砕け散った。

 

中から猫をベースとした使い魔2匹が姿を現す。

 

「やられた・・・ま。加減してたみたいだし許してあげるよクロスケ」

「直前で対策が間に合ってよかった――で、どうするの?」

「とりあえず父さまのところへ戻ろう」

 

凍結から開放された直後からそんなやり取りを交わす。

 

そして彼女達はひとまず己の主へと報告に向かったのだった。

 

11.そうして時はすすむ fin




2016.9.10
全話、あとがきを削除しました
バックアップは取っています。
2018.04.15
このあたり設定というかなのは原作の話と矛盾してきている・・?
一旦はご愛嬌ということでお願いいたします。
2018.04.18
タイトルを修正
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