The Echo ~Reflection of The FullMetalPanic~ 作:手拭
リーゼロッテが八神はやてへ接近する。
闇の書は浮いていた。
今、主を守るものはない。
主を包んでいた結界は先程消えてしまった。
迫る敵は強力だ。
闇の書の機能の1つであるソレはそう判断した。
接近してくる者の魔力は主を傷つけるのに十分すぎた。
先程の攻撃の際に、闇の書が反応しなかったのは、
ロッテが発動しようとしていた魔法がカードに収まっていたため直前まで魔力が感知できないようにされていたためだ。
いや、主を守るものがないというのは嘘だ。
八神はやてを守るものは一つだけ存在する。
自動防衛プログラム。
合理的な判断しか行わないそれは当然の手続きを取る。
今、それが密かに起動した。
そしてソレが起動していたことにまだ誰も気がついていない――
レナード・テスタロッサは瓦礫の上を駆けていた。
目指していたロッテという標的が降下を始めたのを確認して舌打ちする。
「やっぱりそうなるよな」
牽制のために風の刃を放つ。
プロテクションを切断してしまう刃にさすがにロッテも回避行動をとった。
切り裂いた防御を抜けてクロノの放った魔力弾が命中する。
「邪魔を――するな!」
被弾に構わず直進を続けるロッテの姿がある。
――拙い。
ロッテは今、1枚のカードを取り出していた。
円形の魔方陣が展開される。
この時、ロッテは自らの目的を達成したと思った。
接近してくる銀髪の男は間に合わないだろう。
もうすぐ転移の魔法が発動する。
たとえ転移後に見つかったとしてもエターナルコフィンの発動には十分猶予がある。
「あきらめなさい。初めからこうなるようになっていたんだから」
自らの弟子であるクロノよりも幾分か物分りのよさそうな、接近してくる敵にそう声をかけた。
転移の魔法が発動する。
ロッテの周囲が光に満たされる。
そしてそのとき。
ナハトヴァールが機能の展開を開始したのだった。
「Das Anwendungssystem fur automatische Verteidigung Nachtwal lasst an. (自動防衛運用システム ナハトヴァール 起動)」
直前まで接近するレナードに気を取られていたロッテはその声に息を呑んで凍りついた。
まさか。
そう思った時にはもう遅い。
急いで視線を向けた闇の書には禍々しい大蛇が絡み付いている。
邪悪の化身のようなその在り様はひと目でその危険さを目にした者に焼き付けた。
「 待て!今は違う!――」
シグナムといった守護騎士が叫ぶ声が遠くからロッテの耳へと届く。
なのはとフェイトの2人はそのまま大蛇に拘束される。
守護騎士達は拘束を破り、書に絡みつく大蛇との戦闘を始める。
しかし、強力な魔力で構成されるその蛇に掠り傷ひとつつけることさえ出来ない。
そしてその剣戟の響き渡る中、八神はやては既に目を覚ましていた。
呆然としているのか声も出ない様子だ。
ただ、自らの愛する騎士達が闘う姿を眺めていた。
旗色は悪く、守護騎士達は徐々に追い詰められていく。
はやては悪い夢を見ているような表情をしている。
ロッテもあまりの展開にその傍らに立ちつくしていた。
「Den Kern aus dem Schutzrittersystem beschlagnahmen. (守護騎士システムよりコア還元)」
そうして守護騎士達は大蛇に呑み込まれて逝った――。
そして告げる。
「Die Sammlung der Seiten ist fertig. (頁蒐集完成)」
その声が発されたときはやては蒼い顔をしたまま呟いた。
「なんや・・・それ――」
「 Es ist die Zeit der Erweckung, mein Herr. (覚醒の時です。我が主)」
なお告げる。
その書の声にロッテはハッと気を取り直した。
こうなってしまってはもう遅い。
被害を最小限に押しとどめるしかない。
主との融合を果たし本来の力を発揮される前に書を転生させるしかない。
――つまり、八神はやての命を奪うしか方法がない。
「闇の書の主――!」
すぐさま覚悟を決めたロッテが、体勢を整えて攻撃に移った。
拳を構え、呆然としているはやてへと詰め寄る。
おそらく一撃で事を為すだろう。
それに対し、はやてを狙った攻撃を放つロッテに向けて闇の書はその蛇手を放つ。
だがそれは、
奇しくもはやてを守るはずのその攻撃は、主に命中してしまう軌道のそれだった。
――あ。
動けないはやては思った。
避けられない。
こわい。
少女は無力だった。
走馬灯がよぎる。
シグナム。
ヴィータ。
シャマル。
ザフィーラ。
レナード。
彼女は自らの家族のことを、死を意識した間際に思った。
目を閉じる。
そして。
グシャ。
何かが潰れるかのような音が周囲に響き渡った。
それから。
ビチャ。
あたりに何かが飛び散る音が聞こえる。
続けて鼻をつく鉄の匂いが漂い始め、
それがさらに水滴が滴るような音へと変わった。
その光景を目の当たりにしている誰もが凍りつき動けない。
しかし、八神はやては無傷だった。
そしてレナードは己の腹部から生えている蛇手を見つめていたのだった。
「ッ―」
吐き気を、堪えられない。
たまらず嘔吐した血が足元を汚す。
だがそんなことはどうでもいい。
口元の血すら拭わずに振り返りはやての方を見る。
――良かった。彼女は無事だ。
「あ――え?――」
はやては閉じていた目を見開き、レナードのことを見つめていた。
その顔に安堵したレナードは微笑んでこう言った。
「何を呆けているんだい?ハヤテ。さあ、はやく病室に戻っているんだ。ああ、あそこはもうだめだったか」
そう、いつもの調子で笑いかけ話しかける。
しかしそれを許さないかのように今度は蛇手が引き抜かれた。
苦痛の声を上げ、その場に崩れる。
「レ、レナード!」
はやては動かない両足をを引きずって、体を倒れたレナードへと近づける。
「なにしてんのや!こんな――こんな!」
「やれやれ。元気そうで良かったよ。これなら体を張った甲斐もあるというものだね」
笑おうとしたのか微妙な表情になってしまっているが、それでも口元を歪めて彼はそういった。
そうしているうちに、彼は視界が暗くなっていくのを感じる。
おまけに何か言われているのだが聞き取れなくなっていた。
水中で無理やり話そうとしたらこんな感じだろう。
顔がこんなに近いのに聞こえない――
――?ハヤテは今なんと言っている?
気がつけば屋上の床にはレナードを中心として大きな血の水溜りができていた。
ああ、これは今度こそ死ぬのだろうか。
1度目は意識がないとは言え2度もこんなことになるとは我ながら運がないな。
さらに瞼が重くなるの感じる。
視界が悪い。
咳き込みながらぼんやりと目に映った空を見ながらこう思った。
なあハヤテ、夜空はこんなにも暗かったかい?――
ああいや違う。
そうだった。
――――ハヤテの顔が見たい――――
そこではやてはハッとなる。
「!――あかん!!」
その声にもう聞き取ることが難しいくらいの音量で彼が笑って言う。
「大丈夫だよハヤテ――僕は――」
目を、閉じた。
「レナード!?レナ――イヤァアア――!」
はやての絶叫が冬の空へと響き渡る。
1人の普通の少女の、その慟哭。
彼女は家族が欲しかった。
共に食事をし、共に会話を楽しめる。
やっと。
やっと叶ったのに――
みんなで暮らすことが出来たことが何より嬉しかった。
なのに、どうして。
どうして――こんな――
未だ誰も動けずにいる。
言葉を発することも。
結界内の淀んだ空はそれが聖なるものだとは誰も思えなかった。
少なくとも、誰もがこんな結末を迎えるような者達ではなかった。
そうしている内にはやての足元に三角形の特徴的な魔方陣が突如として姿を現す。
気がつけば周囲が闇色の魔力光に周囲が包まれている。
ついに、闇の書の封印は完全に解き放たれたのだ。
解き放たれる魔力の奔流は、周囲の全てを押し飛ばす。
「きゃあ!」
「フェイトちゃん!」
空中で吹き飛ばされるフェイトの腕を掴み、なのはは防御壁を展開した。
全方向へと放出される魔力の奔流はしばらく続く。
唐突にその嵐が途切れる。
その場に居合わせた全員が嵐の中心点だった場所を見る。
そこにはレナードと同じ髪色の、銀髪の女性が立っていた。
遠のきかけていた意識が覚醒し、まだ息のあったレナードがそれを目にする。
――管制人格?
そう思うも動くことが出来ない。
この状態ではまともに融合できても事は為せないだろう。
そんな彼に構わず、両の頬を伝う涙を拭いながら融合騎は言った。
「また全てが終わってしまった」
「防衛プログラム一時停止――ナハト。お前を責めはしない。
そして我らが同胞よ――お前も本当に良くやってくれた。
主と共に、しばし我が内で眠るといい――」
悲しげな声でそう言った女性を見上げる。
そこで、レナードの意識は完全に途絶えた――。
遠目から見ていたなのは達には何が起こったのか分からなかった。
仰向けに倒れていたレナードの体が消えていく。
しばらくすると病院の屋上に立っているのはその女性だけとなっていた。
「何をしたの!?」
その質問に彼女は答えない。
代わりに次のように立て続けに言った。
「我らが主は穏やかな夢を。我らが騎士達は主の願いを。
そしてその同胞は主と騎士たちの願いを」
「全ては心優しき主のため。そして我が騎士達とその同胞のため」
「せめて、我が騎士達とその同胞の誇りと誓いを守ろう。
せめて、私がかわりにお前達の想いを果たそう」
「全ては我らが心優しき主のため――」
空を裂くようにして、彼女の右手に弓形態のベリアルが飛来し収まる。
「 It will help(助力します)」
「お前も手伝ってくれるのか」
そして傍らに闇の書を手繰り寄せる。
頁を繰り、左手に自らの行使する魔導を発現させる。
「沈め――ディアボリックエミッション」
我が主。
我が騎士達。
そして我らが同胞よ。
その身は守れずともせめて。
せめて心だけでも穏やかに。
その古代ベルカの融合騎はそう願ったのだった。
リーゼロッテは、レナードに屋上の端へと突き飛ばされていた。
刻一刻と変化する状況に対応できていないことを感じている。
――どうする?
そればかりが頭にあり、行動を取ることができない。
今、高町なのはとフェイトという空戦魔導師2人は現界した闇の書の管制人格との戦闘を行っている。
戦闘といっても管制人格への呼びかけは止めておらず、時折相互の会話が挟まれていた。
しかし会話は一方的で、取り付く島もない。
何かに追い立てられるかのように管制人格はその力を振るい、闘う。
その光景をロッテはどこか自分と似ていると感じた。
ジャリ。
ふと足音がする。
振り返ればそこにはクロノ・ハラオウンが立っていた。
見れば彼もボロボロの姿だった。
デュランダルを杖代わりにして立っている。
「ロッテ、まさかこんなことになるとは思わなかったよ」
「裏切り者に言われる筋合いはないと思うけど――まあそうだねクロスケ」
それで一度互いに黙る。
互いに失敗した者同士だ。
これ以上無理に争う必要はない。
クロノが今回の闇の書をどう解決するつもりだったのかは知らないが、これが事実だ。
「クロスケが賭けたあの銀髪の子、きっと死んだわよ」
「そうかもしれない」
いつか管理局員であることを師匠に説いた者への皮肉として言ってやったが反応は薄かった。
この事態にあきらめているのか。
ただ事の成り行きを最後まで見届けるつもりなのだろう。
その態度に何故かイラついたロッテは言葉を続けた。
「あの子にどんな期待をしていたの?」
「さあ。何故だか僕も分からない。ただ」
「ただ?」
そこでクロノは真正面からロッテを見据えて言った。
「彼は、真摯な瞳をしていたんだ」
その答えにロッテは眉根を寄せて考え込んだ。
真摯な瞳?
こんな時にこの弟子は何を言っているのだろうか。
状況を変化させるには有効な手段とそれを実行する能力が必要だ。
それと瞳にどんな関係があるのか。
言っている意味がまるで分からない。
「と、まあ先に断っておくがこれらは回収させてもらうよ」
言っているうちにクロノは屈んで2つのものを手に取っていた。
アリアの魔法の篭ったカードの束。
複製したもう一本のデュランダル。
本来なら何としてでも取り返すべき物だ。
だが不思議とロッテにはそんな気は起きなかった。
「別にいいけど。今更そんなもの手に取ったところで――まさかクロスケ?」
「そうだロッテ。僕はまだ闘うつもりだよ。レナードには敗れたがまだ僕にはやるべき事がある」
そう言って闘っている魔導師2人と闇の書の管制人格の方を指差した。
適合するとは思えないがそれでも微量の魔力やカード自体は使用できるのだろう。
「死ぬわ」
その様子を見てロッテは断言した。
間違いなく今の状態で魔法を行使し戦闘を行えば命を落とすだろう。
相手は第一級のロストロギア闇の書。その管制人格。
行使される魔法の数々とその動きは一級の魔導師でさえ遅れを取る。
現になのはの砲撃を容易くいなし、フェイトの高速戦闘に即座に対応している。
あんな化け物と闘うには最低でも戦術ユニット2チームは必要だ。
それでも並みの能力ならば20分も持たないだろう。
今、闘っている2人がまだ生きていることが不思議でならないほどだ。
「死なないよ」
そう言って戦闘の行われる様子へ目をやる。
「馬鹿なことはやめ――」
「何か勘違いしてないか?ロッテ」
振り返ったクロノにロッテは口をつぐんだ。
「彼は僕に間違えて欲しくないと言った。そして僕もそう思ったんだ」
「・・・」
「いつか僕の言った言葉だ。"自分の勝手な悲しみに、無関係な人間を巻き込んでいい権利はどこの誰にもありはしない"
僕はこれを守ろうと思う。そして彼が僕の眼を覚ましてくれた。だから――」
彼を助けてやろうと思う。
そう言ってクロノは笑った。
そしてその笑顔は、いつか見た顔とそっくりだった。
――そう。そうだったクライド君は――
ふとした思いを馳せたロッテはそのまま飛び立っていく愛弟子の背中を見送る。
変化し続ける状況は先が全く見えないままだ――
クロノが戦線に加わったものの、戦況に変化はなかった。
一方的に繰り出される管制人格の攻撃の前に終始圧倒されている。
魔力刃が飛び、砲撃が交差する。
「レナードさんだって!きっとこんなこと望んでなかったよ!」
レナードのベリアルを用いて戦う管制人格融合騎へとなのははそう言った。
「我らが同胞は、書の頁が完成した時に現界する私と融合するつもりだった。
その後に、騎士達と主を分離し闇の書を破壊。私と共に逝くつもりだった」
その言葉にクロノは息をのむ。
――あの馬鹿そんなことを考えていたのか。
夢の中で、レナードと管制人格は何度も論をぶつけ合った。
それは本当に意識が接続されてからというもの毎日続いた。
結果として彼女、管制人格の側が折れる。
最後に、それでいいのか?そう質問したとき彼はこう答えたのだ。
『君が協力してくれるのであれば、僕は必ず今言った行動を取るだろう。
そう、君達以上にハヤテを僕は守ろうとするだろう』
そう言ったのだ。
実際、健在であったならば彼はそうしたのだろう。
「なにを――」
俯きながら告げる管制融合騎。
その顔が以前に見たレナードの面影と重なって見えた――
「――だがお前達が――そうだお前達さえいなければまだ救いがあったのだ」
古代ベルカの融合騎はなのはとフェイト、クロノの3人を睨む。
自分達が彼女達を追い詰めた。
知らなかったとはいえそういうことだった。
もし頁の完成に向けて時間がかからなければ。
もし管理局に見つからなかったら。
プログラムが暴走するまでに事は終わっていたかもしれない。
少なくとも違った結果が生まれていたことだろう。
しかし結局はこうなってしまった。
誰も望まない形で新たな悲劇を誕生させてしまった。
その事実に打ちひしがれながらも3人は動きを止めない。
「別の方法だってあったはず!」
「何も知らない者が何を――」
「まだあきらめたくないんでしょう!?」
「誰かの悲しみの上に成り立つ幸せなんてない!!」
「お前達に砥がないことは分かっている。それでも――」
心穏やかな聖夜を我が主と騎士達、そしてあの同胞は過ごせたのではないか?
管制人格の悲しみと憤りは収まらない。
どうして――どうして――どうして。
過ぎた願いだったなどとは到底思えない。
ただ、時間が欲しかっただけ。
しかし結果は覆らない。
己の身を呪う。
こんな結果は誰も望んでいない。
けれど止められなかった。そして止められない。
私が愛すべき主達のためにも私は決して止まる事など許されない。
騎士達と同胞が打ち倒すと決めた敵を屠る。
せめて穏やかな永遠の夢を贈らなければならない。
管制人格の頬を2度目の涙が伝う。
「おかしいよ!!あきらめてたら――」
諦めていたら、泣いたりなどしない。
白い魔導師が告げる言葉が突き刺さる。
そんなことは知っている。
だが止められない。
だから止まらない。
「ベリアル――」
呼びかけに魔弓はナイフへの形状へと変化する。
頁を繰る。
ベリアルに魔力が通い、刃が変化した。
それは魔力で構成される闇色の一本の刀剣となった。
細身のそれはレイピアと呼ばれる細身の西洋の刀剣の形状を取とる。
さらに。
「Transfer And Response Omni-Sphere System Re:Start-up(オムニ・スフィア転移反応システム再起動)」
今の術者である管制人格にあわせて一番厄介な機能が最適化された。
頁を繰る。
右手に魔剣を左手に魔道書を。
放たれる不可視の風の刃が防御を裂き。
振るわれる魔導は周囲を呑む。
頁を繰る。
転移。
フェイトといった敵の背後を取る。
そのまま魔剣となったベリアルを振るった。
相手の魔力刃が合わされる。
弾き飛ばす。
砲撃が来る。
不可視の力場がそれを防いだ。
援護射撃の4対の魔力弾が迫る。
頁を繰る。
広範囲殲滅魔法でそれらを飲み込み相殺する。
考えられる限りで、最凶の組み合わせだった。
広範囲に及ぶ強力な魔法。
防御を貫く一点特化の武器。
右から金色の鎌、左から魔力の篭った拳。
プロテクションで防ぐ。
背後から砲撃。
振り返ることすらせずにラムダドライバの障壁がそれを防ぎきる。
頁を繰る。
チェーンバインドが3人を拘束した。
飛翔。
砲撃の準備に入る。
「咎人達に、滅びの光を。星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ――」
見覚えのある収束砲撃が準備される光景に、3人は顔色を蒼くする。
「拙い――」
クロノはカードを1枚取り出す。
それには転移の術式が込められていた。
急いで発動した。
発動する間際に収束が完了し、闇色の魔力光を纏った奔流放たれた。
「――貫け!閃光! スターライト・ブレイカー!」
広域殲滅属性に加えて、防御貫通という属性の加えられた砲撃が全てを飲み込んで行く――
砲撃を終え、管制人格は周囲を眺めた。
遠くにいる、その威力から逃れた3人を再び睨みつけた。
3人は転移直後にもなお迫るその威力から全員で貫通されるプロテクションを断続的に展開することで防ぎきった。
「こんなに距離取らなくても――って思ったけどこうしてよかったね」
高町なのははクロノと誰よりも先にプロテクションを展開したフェイトの判断に納得した。
「なのは。経験者は知っているんだよ?」
フェイトは目が笑っていなかった。
実際3人のうちで一番必死に逃れようとしたのは他でもない彼女だ。
いや目が笑っていないのはクロノも同じだった。
「なのは。君はあれの威力を自覚したほうがいい」
ハラオウン兄妹は全く同じ動作で何度も頷いたのだった。
その様子をあまり気にしていないのか、なのはこう言った。
「でも貫通かぁ。憧れちゃうな。よし次はあれを目指そうよレイジングハートッ!」
「Yes master. (はい。マスター)」
なのはとその愛杖のやりとりに蒼かった顔をさらに蒼くした2人だった。
と、こんなやり取りをしている場合ではない。
闇の書の管制人格。
相手は再びこちらへ向かって移動してきているのだから。
13.そして聖夜の空の下(後編) fin
2016.9.10
全話、あとがきを削除しました
バックアップは取っています。