彼が望みの為に戦うのは間違っているだろうか(更新停止) 作:双盾
話の始まりは原作の数週間前ということでお願いします
ガタゴトと木製の荷車は、荒野を進む。
身体を半分起こして景色を脳に刻む。
景色はここ3、4日ずっと似たような景色ばかりだ。
砂、砂砂砂スナスナすな…………時々ある痩せ細った木。
起き上がった俺を見た案内人が声をかける。
「起きましたか」
「ん、おはようございます」
「おはようございます」
眼鏡を外して互いに頭を下げる。
挨拶を済ませると再び眼鏡をかけて手にした書物に視線を戻した。
彼女の横には既に読み終えた物であろう書物が4つ、縦に積まれていた。どの本も分厚く、最も厚いものはまるで辞書のようだ。
「面白いですか?」
積まれている本も、手に持っている本も、この道中の集落で購入したものだ。
小さな集落での物資の購入はあまり進められてはいない。
大きな街ではないので、物価も高い。どれも一様に高いのだ。
しかしそこでしか手に入らないものであるならば購入する価値はある。
街では手に入らず、量も手に入らない物だ。ほぼ非売品に近い状況の物である。
「そうですね。独創的な話ですね」
「……面白いとは言わないんですね」
仕方ないだろう。集落には滅多に物資は来ない。同様に仕事も少なくそれに伴って賃金も少ない。他の本も無く、購入する資金もほとんどない集落では、持った才能も育たないというものだ。
目の前の彼女は本を抱え、「あげませんよ?」と言うので、俺は「欲しくなったら買に行きます」と返して、後ろを見る。
この荷車の後ろには何台も荷車が並び、少なくとも10はあるだろう。
これは商隊だ。
各地で様々な物資と物資を交換し、旅をする商人の隊。
世界各国での限定品や特産品を扱う商人が多い。後続の荷車の半分はそれだ。
けれどそれを狙う輩も出てくる。
「2時の方向、盗賊と思わしき集団を発見!!」
「!!」
「出番か」
今回の俺の任務は商隊の護衛だ。
ここの商隊が他の商隊と違う点は2つ。
1つはこの商隊はファミリアであること。
1つは、護衛が俺だけだということだ。
「ご武運を」
「問題ないさ。報酬さえ保障してくれるなら」
荷車から飛び出す。
商隊は動きを止めずに進み続ける。
やがて盗賊が俺と対面する。
「おお?この商隊は護衛を1人、しかも子供しかつけられないほど貧乏なのか?」
賊長と思われる人物が小馬鹿にしたように笑いながら言うと、団員もまたゲラゲラと、あるいはヒャハハと笑う。
俺は言った。
「そうだ、と言ったら?」
「まあ襲撃はするがな」
腰から剣を引き抜き、俺の額に突きつける。
刀身50cm、持ち手5cmってところか。このタイプの刀剣類がこの地域じゃ一番流行してるらしいな。
最も、俺の使う武器は俺以外では見たことすらないだろうがな。
背に抱えていた長物を持ち、構える。
「妨害するってなら、容赦しねぇからな?野郎ども!!荷車を狙―――――」
賊長の言葉は、団員も思わぬ形で中断された。
賊長の頭が吹っ飛んだのだ。それも目視できる距離だった筈なのに、捉えることすらできない速度で。
北欧の怪物デュラハンのように、となった首無し賊長は、馬から転げ落ちる。
それをきっかけに賊は逃走を始めるが、それは許さない。
「我、全なる正義謳う者なり。我、悪を滅する者なり。我、この刃に断罪を宿す者なり」
「詠唱!?まずい!!速度を上げ―――――」
もう、遅い。
「正義を謳い、罪を穿つ鋩よ。我に彼の者を断つ力を与えよ。『シングルバースト』」
俺の身体から、血が噴き出した。
刹那、盗賊団に我が身を投じる。
疾風を巻き起こし、その先頭で敵陣を穿つ。
最後尾の団員の胸に風穴が空き、血が噴き出す頃にはその周囲の団員の胸に風穴が空いている。死者はコンマ1秒ごとに増え、戦闘の副長を穿つのに1秒とかからなかった。
「任務完了」
長物を一振りし、刺さった臓物やこびり付いた血脂を振り落す。
馬は死体を背に乗せたまま荒野を走り去る。
やがて商隊の方向から2、3人の馬乗りを見つけた。
俺を迎えにきた商人だ。
「おぅ、こりゃまた随分と派手にやりましたねぇ」
「時間の無駄を省いた。それだけのことだろう」
「ま、この大地の糧となるんだ。問題ないだろう」
商人達は馬を下り、背の大き目のバックパックを用意する。
そう、これが報酬。これが契約だ。
商隊を盗賊から護衛する。ただし生かそうが殺さまいが口出しはしない。そして最も重要なのが、殺した盗賊の所持品は、5割を俺が取得する。
落ちた盗賊の死体から装備や装飾品を奪っていく。
「こいつら、中々のやり手だったみたいでっせ」
「おいおい、魔剣なんてもってやがんぞ」
「そいつらはくれてやる」
「おお旦那!太っ腹!!」
俺は太ってないぞと軽く返して会話を一旦打ち切る。
荷物をバックパックに詰め込んでその場を離れた。
商隊においつくまでの間、俺達は少し話していた。
「旦那のその武器、中々面白れぇ形してますなぁ。どうです旦那、あっしに売ってみては」
「こいつを買うって?億単位の金があるならいいが?」
「や、やめときますぜ」
瞬時に青ざめる商人を見てカラカラと笑う。
しかしまぁ商人たちが、専門外の者までもが売ってくれと言い寄ってくるのは慣れてる。
だが売る気はない。
俺の唯一の相棒が打ってくれたものだ。
けれどまぁ説明くらいはしてやってもいいかと口を開いた。
「こいつは頑丈さ重視の素材で作られた戦闘特化変形棍だ」
「?」
「さまざまな武器として使え、且つ長持ちってことだ」
先程の盗賊に使った技は槍の攻撃スキルだが、形状を変えれば薙刀や太刀、弓にだってできるが、弓は矢が無ければ無意味である。
しかし変形する武器にとって最も重要になってくるのが頑丈さ。
繊細過ぎれば少しの衝撃で壊れてしまうが、かといって変形した後にゆがみなどでうまく作動しなくなることも許されない。
この武器は俺が見てきた中で最凶の武器だ。
「買いたいというなら金がある時にいってくれ」
「へいよ。お!?見えてきやしたぜ旦那」
「あれがか。でかいな」
俺達は、商隊よりも先に最終目的地を発見した。
すぐに商隊も見つけた。
荷車に戻ると案内人の彼女が言った。
「お疲れ様でした。目的地が近いので今回の報酬については到着してからでもよろしいでしょうか」
「構わない。あれが目的地か」
「はい。主神グローリア様の目的地、オラリオです」
目の前には天高くそびえ立つ塔と、それを中心に広がる街が見えてきた。
オラリオか……
ふと過去に見た少年の言葉を思い出した。
「(俺はオラリオで最強の冒険者になって、一杯稼いで、この集落を救ってやるんだ!!)」
まだ10も行かない少年がそう言ったのを今でも明確に記憶している。
あのころの少年は、どうしているだろうなどと考えつつも、俺達は、最終目的地(終点)オラリオに到着した。
2話以降は4000文字維持を目指します