彼が望みの為に戦うのは間違っているだろうか(更新停止) 作:双盾
睡眠時間けっこう削れてるので執筆中に寝落ちすることが多くなったけど
あと、今作初の別視点です。
この話には、少々同性愛に関する発言があります。
この話は読まなくても今後の展開には差し支えないのでそういった表現が苦手な方は
読むのを避けてください。
この場合タグ付けた方がいいのかなぁ?
付けるべきだと思う方は活動報告にて承りますので、そちらにコメントして下さい
side リュー・リオン
私の目の前にいるのは、私の同類……というよりも同種族のエルフの男性。
エルフ事態この都市の人口的割合からして少なく珍しい存在ではあるが、同じ種族に出会ったからといって特に驚くこともない。
そう、私が驚いているのはそのエルフと最近この店に来るようになった人間(ヒューマン)の男性ジンとの接し方にあった。
彼は来店初日に
「エルフという種族は人との触れ合いに積極的で無いことを知っている」
というようなことを言った。それは恐らくこのエルフの男性からもたらされた知識だろう。
しかしジンという人間は、それを知っていながら特に気にする様子も無くエルフの男性に触れた。あまつさえ頭を叩くなどという暴挙までしているのだ。
基本的にエルフは触れ合いを拒む傾向がある。それは同性であっても、同種族であってもそうだ。恐らくジンさんもそれは知っているだろう。それでも触れたのだ。
ここで一般的なエルフであれば手を叩き落とす、酷い場合は暴力沙汰になっていたであろう。
けれどエルフの男性はその手を叩き落とすどころか、触れ合い自体を嫌がるような素振りを見せていない。
「?」
彼が私の方を向いて疑問の表情を浮かべる。
知らない間に彼を凝視していたらしく、湧き上がる羞恥を無表情の仮面で隠して目を逸らす。
一体2人はどういう間柄なのだろうか?などと普段の私からは考えられない疑問を抱いてしまう。
私は久しく、他人に興味を持った。
「チェレンはそこらに座っとけ。俺が言ってくる」
ジンさんは今日ここへ来た目的、詳しくは分からないが地域独特の料理を広める為の協力をお願いするためにこの店の女将であるミア・グランドのいる厨房へと向かっていく。私もついて行こうとした所、シルが先に後を追っていたので、ここに残る形となってしまい、私とエルフの男性ことチェレンさんだけとなってしまった。
残った彼は手持ち無沙汰な様子で視線を厨房方面へと彷徨わせている。
困る彼に助け舟を出すべく最も近い場所にあった椅子を引いて着席を提案してみる。
「どうぞ」
「あ、すいません」
少し困ったように、照れたようにも見える表情で着席する。
座らせたはいいものの、やはり会話が無いので彼は視線を彷徨わせるばかりだ。
なので私は、少し気になったことを質問してみた。
「チェレン……さんでよろしかったですか?」
「あ、はい。リオンさんでよろしいですか?」
初対面で馴れ馴れしい訳でも無く、いたって普通な質問だったので、私は特に気にする様子もなく結構ですと返す。
私は質問する。
「失礼とは思いますが、ジンさんとはどういう関係ですか?」
彼は質問の意図を掴めなかったのか、「ジンと?うん?」と首をひねっている。
長い金の髪は彼の顔の動きに合わせてサラサラと擦れて垂れていく。そこで毛先が赤みを帯びていることを知ったけれど、スキルか何かの影響だろうと結論付けて質問に戻る。
「随分と親しい様子でしたが」
「ああ、そういうこと」
漸く理解したのか笑顔を浮かべてそういう彼は、容姿よりも幼い印象を受ける。
しばらく彼は「そうだなぁ」「うーん」などと考える仕草を見せる。
やがて僕達の関係はねと口を開いて言葉を綴った。
「親友とか、相棒って感じかな。ジンから見るとそうなんだろうね」
少し悲しげな彼に続けて尋ねる。
「貴方からは、どう見えて欲しいんですか?」
「僕としては……気持ち悪いって思うかもしれないけど、恋仲であるように見えて欲しいなぁって」
予想外の答えが返ってきた。
いくらか予想してみた私だったけれど、予想の答えは家族。強ち外してはいないものの、やはり予想を大きく超える答えである。
彼は「気持ち悪いと思うかもしれないけど」と言った。これは自分の気持ちに嘘偽り無く話すという覚悟と、相手を信頼するという意が籠められていたのだろう。
「私は…個人の感情に口を出すつもりはありません。けれど、私は貴方のその気持ちに嫌悪感は抱きません」
「ありがと」
はにかんで頬を赤らめながらも感謝の返答。
しかし私には疑問ばかりが残る。
エルフは身持ちの硬さから他人とは親密になりにくい種族である。そんな種族が、同性を異性として意識するというのは極めて稀なことである。
抑えきれなかった興味が、質問となって口から出る。
「何故、そこまで彼を意識するようになったんですか?」
この質問に彼はきょとんと、呆気にとられたように固まった。これは予想を大きく外れた問だったのだろう。それを読み取ると湧き上がってくる羞恥。
小さくなってしまった声で、忘れて下さい。そう言おうとしたけれども、それより早く彼が口を開いた。
「そうだよね。そこ気になるよね。リオンさんは僕達のファミリアの噂、知ってる?」
彼からの問い。
彼らが所属するファミリアについての噂。
しかし私は、2人の所属するファミリアの事を知らなかったので、首を横に振った。
私の反応に、彼はそうだったのかと言って説明を始めた。
「僕も最近聞いたんだけどさ、僕らのファミリアの主神がさ「偽善神」とか言われてるんだよね。その呼び方が広まる原因になったのはさ、僕とジンなんだ」
少し悲しそうに、過去を思い出していく。
「僕達はファミリアに入る以前から主神グローリアと旅をしてたんだ。元々は僕とジンの2人旅だったんだけどね。ある時元とはいえ貴族の出の僕を狙っての襲撃が起こったんだ。その時はグローリアファミリアはその場にいなかったし、村人を逃がさないとだからって僕とジンが時間を稼いでいたんだ。でも結局僕は捕まった。襲撃してきたのはそこで発足した盗賊達だったけど、そそのかしたのは僕の家を敵対視する貴族だったんだよね。僕はその時ほど死を感じたことは無いよ」
話す彼の顔が恐怖を思い出してか血の気が引いて蒼白くなるけれど、彼は話をやめない。
「貴族からの武装援助がある襲撃犯には、救出に来た人たちも苦戦していたんだ。でもそんな時に単身で、まともな装備もせずに突っ込んで助けてくれたのがジンだったんだ。僕を助ける為だけに当時からよくない噂のあったグローリアファミリアの眷属になってまでしてね。ジンは1人で襲撃犯の6割を倒したよ。けど流石に大人数を相手に戦うのは体力の消耗が大きかったのか僕の目の前で襲撃グループの代表に背中を切られたんだ。それこそ背骨すら砕くほどの一撃をね。でもジンは僕の為に地面を這ってでも助けようとしてくれたんだ。そこへ救出部隊がギリギリ間に合って僕とジンは救出された」
「そんなことが……」
「ジンは助かったけど、その後も似たような襲撃が何度もあって、その度ジンは大怪我を負うんだ。ジンの背中の古傷、あれを見るだけで僕は泣いちゃうんだけど、ジンは気にすんなって言うんだ。その言葉に何だか救われた気がしてね。その頃からかな、ジンを異性として気にし出したのは」
私は無意識のうちに、椅子に腰掛けて話に聞き入ってしまっていた。
「ジンは守る物の為なら、それがどんなに小さなことであっても、自分の事を気にせずに立ち向かう強さがあるけど、同時にそれは自分を大切にすることを拒んでいることでもある。その理由は多分僕と出会う前のことだから僕は知らない。でもそんなジンを僕は守りたいって思ったんだ」
そう。守りたい物があるから戦える。自分の支えであると同時に心の癒しでもある。
過去の私も、そうだった。
けど、今の私は違う。
守りたい物があるから、それを失うのが怖いから動く。失う恐怖を知っているから。種族の特徴を利用して大切なものを増やさないように、触れ合いを拒んでいる。
彼は、私に言ってきた。
「リオンさんも昔はそうだったんでしょ?そんな感じがする」
「っ!?」
心を読まれるような感覚とはこのことなのだろう。
彼は純粋な分人の感情を読み取ることに長けている。それはおそらく彼がジンさんを思うが故に身についた能力。
柄にもなく大きく表情に驚きを出してしまった。
「リオンさんも。多分大切な何かを無くしたんだと思う。それを怖がって増やさないようにしてるんだと思うけどさ、結局知らない間に増えてるもんなんだよ」
だからさ、と彼は言った。
「逃げてないで、行動してみたらどうかな。ジンがリオンさんやファミリアを守りたいと言って行動するのと同じように」
ジンさんが、私を?
そう考えた時、体が熱くなるのを感じた。
しかしそのすぐ後で、自分の過去を振り返る。
私は……そこまでできた生き物ではない。
「多分ジンは、もちろん僕も、リオンさんがどんな人だったとしても、受け入れるよ」
身体が跳ねる。
「だってリオンさんだって、僕の気持ちを否定しなかったじゃないか。優しい人だってことは、僕が証明する」
目頭に熱が集まる。
彼はニコニコと笑顔を湛えたまま、私の冷たく暗い内側を照らしとかすように語りかける。
「だからさ、もう少し、歩み寄ってみたらどうかな。きっと受け入れてくれるよ」
「わかりました」
私にとって今の彼は、私に変わるべき時が来たことを告げる神の使いのように見えた。
そっと差し出されたハンカチを受け取り、零れる寸前にまで溜まった涙を吸い込ませていく。
彼は最後に、言った。
「頑張ってね」
その言葉が終わった直後、2回短い打音が鼓膜を揺らす。
ハンカチをポケットにしまうと音源の方向を見ると、交渉を終えたのかジンさんがこちらに歩いてきていた。
「あ、終わったの?」
「ん。OK貰った」
ジンさんの言葉に喜びを体現する彼に鋭いチョップが入りおとなしくなってしまった。
先に店を出たジンさんの後を急いでついて行く彼は、少し立ち止まって私を見ると、笑顔で言った。
「また、会おうね」
彼は嬉しそうに手を振りながら言った。
私もまた、変化のきっかけをくれた彼に感謝を籠めて返した。
「はい。楽しみにしてます」
この私の言葉にシルは驚きつつも喜び、ミア母さんは特に口出しすることは無かったものの、その後は何かと笑顔が増えましたね。
他の店員もまた、私に話しかけてくることが多くなったりということもあった。
この変化はきっと、間違っていない。私はそう信じている。
side ジン
「チェレンよぉ」
「ん?どうかし――――うわぁ!?」
いつも通りに笑顔で要件を聞き返してきたチェレンの頭を抱え、こめかみ辺りに握り拳を当ててグリグリと押し付ける。これはどんな種族であっても激痛を与えられる共通拷問技の1つだ。
豊饒の女主人から離れた所で思い切り私怨をぶちまけてやる。
「随分と仲良くなってくれてんじゃねぇか」
アプローチしなかったとはいえコイツよりも長い期間顔を合わせている筈なのに、コイツはこんな短時間であそこまで距離を詰めている。これが種族の違いというやつなのかと言う気はしていたが認めたら負けな気がしたので断固として認めず私怨を思う存分晴らすのだ。
「だ、大丈夫だって。多分明日から積極的にアプローチすれば何とかなるって」
「勝者の余裕かこの野郎!!」
うりうりうり
グリグリグリ
「いだだだだだっ。ダンジョン入る前から僕にダメージ与えてどうすんのさ!!」
「それもそうだな」
よし、気分はある程度晴れた。気分の切り替えをできるのはいい男の証。
恨めし気に俺を睨むチェレンを無視して俺はダンジョンへと向かう。
そして出会いというのはどこにでもある物で、例えば今この時にも出会いというものはあるのだ。
「あ、ジン様」
「あ、こ、こんにちは」
尚以前の縁が結びつける出会いが多い場合もある。この場合がコレである。
後ろに振り返ると初々しい白兎が一匹と見慣れた小人もとい小さな獣人が1人。
ベル・クラネル少年とサポーター少女リリルカ・アーデのコンビである。
「リリじゃねぇか。今日はどのあたりまでいくんだ?」
「今日はいつもより少し深めの5階層までいってみようかと」
「ええっ!?聞いてないよ!?」
「今言いましたからね」
哀れな子兎。しかしどうにも逆らえない様子から見て立場はリリよりも低いらしい。サポーター>冒険者ってどんな図だよ。こんな図ですね。
しかしながら彼の装備を見る限りでは、まだ5階層は危険じゃないかと思うが、彼の才能を知らない故に俺が口出しできるものではない。
「まあ焦らず頑張りたまえ少年少女諸君」
「ジン様だって同年代じゃないですか」
それを言われては反論できないな。精神年齢では君達よりもずっと年上であっても、肉体年齢は14のまま変わらないのだ。こればっかりは時間による解決しかできない。
それじゃお先と言ってダンジョンに潜る。
今回はチェレンのダンジョン慣れと手順確認なのでそこまで深く潜るつもりはない。
ふと横からクスクスと笑い声が聞こえ、声の主チェレンをみるとジンのことを笑っているわけじゃないよと弁解する。当たり前だ。もし笑おうがものならダンジョンに1人置いていってやる。1階層にだが。
誤字増えてきているかもしれません
全然寝れてないので執筆速度も作品内容の質も落ちてくるかもです