彼が望みの為に戦うのは間違っているだろうか(更新停止) 作:双盾
このオラリオとか言う街に来た時に思ったこと。
ここには様々な冒険者が居るが、才能が大きくかかわってきている。
俗に言う攻略組の人間には16程の少年少女が何人かいるらしい。
「さて、まずは護衛の任を解いてもらおうか」
「わかりました。ですが1度、冒険者登録をお願いします」
「何だそれ」
俺達は商隊が露店を開く準備をしている最中で任務の事で話していた。報酬は契約通り半分を頂いた。
とは言っても、大したものではない。
紅玉の首飾りと、雷電の属性が付属された曲刀。それとエリクサーの3つだが、エリクサーだけでも十分な収穫だと言えるだろう。
「ここのファミリアに、一時的にとはいえ所属したので、貴方にはそれを報告する義務が発生します」
「わかったわかった。で、どこ行けばいいんだ」
これは長ったらしい説明が始まりそうだと思い、先に折れた。
そして彼女は呆れたように溜息1つ。そしていくつかの書類を手渡してきた。
見覚えもなく、見慣れてもいない文字の羅列。
けれど最後の書類にあったエンブレムは見覚えがあった。
地平線に昇る太陽と、シルエットで浮かび上がる人。
グローリアファミリアのエンブレムだ。
「現在地はここで、この路地を行けばすぐに大通りに出ます。そしたらそのまま行けば着きます」
「適当だな」
それだけ分かりやすいのか、近いのか。どちらにせよ行く他無いだろう。
じゃ、行ってくると言って細く暗い路地を歩き始める。
だんだん遠くなる商隊を見て、すぐに視線をズラす。
「(思い出すな)」
暗い路地裏。腐った肉体から姿を見せる白い骨。腐臭に集る小虫。汚水の中で死に溺れていく感覚―――――
「っ」
掌に握りしめた指の爪が刺さり、血が垂れる。
痛みで意識が戻る。
そうだ、今は前とは違う。
これ以上ここにいる必要は無い。俺は駆け足で路地を抜ける。
やがてその先に見えてきた光。
その中に飛び込み目を慣らす。
そこは大きめの整備された道路。道の両端にはたくさんの露店。
「うげぇ」
そして大通りなだけあって人もまた虫や塵のようにいた。
とりあえず左右を見ると、左にはあの荒野からでも見ることのできた巨塔。右には白い柱で作られた万神殿。
おそらく右であろうと予想した俺だが、この人ごみに揉まれるのは避けたかった。
誰も見ていないことを祈って建物の壁を駆け上がっていく。
「っと、だれもいないな」
屋根には無論だが、誰もいない。屋根の修復作業中の建物も無かったのが幸いだ。
屋根は足場としては悪い方だが、戦闘中でもないのであまり気にせず駆け抜ける。
ただ駆け抜ける程度であれば足を滑らせることも無い。
「(あの時に比べたらずっと楽だ)」
記憶に刻まれた過去の対決。
土砂降りの雨の中、満身創痍の俺は、ぬかるんだ地面の上で、竜と対峙した時に比べたら、こんな屋根は整地された道路にも等しい。
最後の屋根から飛び降りる。人のいない場所目掛けて飛び抜け、見事着地に成功した。
「ん、当たりみたいだな」
中にはカウンターのような物が見え、そこには制服の従業員がいる。
俺は建物への入っていった。
空いているカウンターに行き、立ち止まって「すいませーん」と声をかける。少しの間のあと、「はーい、少々お待ちを」と返ってきたので、指示通り少し待つ。
奥から現れたのは、ハーフエルフ。制服を着ているので従業員。
「お待たせしました。ご用件は何でしょうか」
「こいつを渡せって言われてな」
「こちらですね。中身を確認させてもらってもよろしいでしょうか?」
「俺は知らんが、いいんじゃないのか?」
「では、拝見させていただきます」
パッと見た感じだと、そこまで重要なものでもないだろう。
細かく一文字も漏らさないようにと視線を凝らして読んでいるが、案内役の彼女の方が読む速度は速かったな。
だが彼女の表情が一転し、驚愕の物となった。
「あ、えと。あの席にてお待ちください」
「ん」
空いているテーブル席に座って、武器の手入れをして暇を潰す。
歯車に砂利や毛糸が絡まっていないか、刃は欠けていないか、錆はないか、汚れは……仕方ないか。
そんなことをしている内に、先程の女性が来た。
「お待たせしました。確認しますが、グローリアファミリア所属でよろしいでしょうか」
「そうだが、何か?」
「…わかりました。ここにサインを頂けたら、冒険者登録は終わりです」
「1つ聞いていいか?」
断るとか言われたところで質問はさせてもらうがな。彼女は「いいですよ」と返してきたので、俺は遠慮することなく質問した。
そう、俺はここで重要な疑問を放置してしまっていたのだ。
俺の望みには大金が必要だ。それこそ億や兆では足りない大金が。
この街ではダンジョンとかいう場所に行って金を稼ぐらしいのだが、そこへ行く条件や必要になってくる装備や道具を聞いておかねばと思ったのだ。
「ダンジョンへ行きたい。必要な装備を教えてくれ」
「ダンジョンですか…グローリア所属なら大丈夫かしら」
「?」
「ああいえ、ダンジョンに行くのでしたら、初心者ですのでもう少し重装備の方がいいと思いますが。一応ポーションやランタンの持参を推奨しておりますが」
これ以上装備を重くするのは動きを阻害してしまうので、装備の交換はしなくていいか。必要なのは光源と回復薬か。よし覚えた。
紙にサインをして、ありがとう、と礼を言ってその場を立ち去る。
これなら大丈夫だろうなと考えてまだ見ぬダンジョンに思いを馳せる。
「…待っててくれ」
俺は、知らず知らずの内に、そう零していた。
「おや、帰ってきた。お早いお帰りで」
「必要なことは手短に、だ」
「それもそうだね」
商隊のいた場所に戻ると金髪を腰辺りまで伸ばした青年が立っていた。耳の形状から純粋なエルフであることが知れる。
彼こそが、俺の唯一の相棒であるエルフ「チェレン」だ。
チェレンは朗らかに笑うと、次の話題を切り出す。
「そうだ。僕達のホームが決まったから、荷物を移動させようよ」
「そか。荷物は任せろ。お前は道案内を頼む」
「分かったよ」
薄く青いローブを羽織って商隊の荷車に乗せた荷物を降ろす。
俺は比較的少ないが、チェレンはその職種故にかなり多く、重たい。
そこまで力がある方ではない俺だが、率先して彼の荷物も手に取っていく。普段の俺からは想像もできない行動だ。
「フフフ、君はいつも優しいね」
「何度お前に助けられたか分からないからな」
「それは僕だって同じさ。それに僕が直接守ることなんて片手で数えても半分以上あまるくらいしかないじゃないか」
「それでも、お前が居なければ俺は今頃死んでるさ」
こいつには何度も助けられた。
けれど俺はこいつの願いを知らない。叶えることもできるか分からない。願いを言わないのだから態々聞くのは無粋という物だろう。
俺にできるのは、これくらいの事しかないのだから。
「さ、どこだ新しい拠点は」
「ちょっと待っててね。ん…ここから遠くはなさそうだね。こっちだよ」
全くこいつは、1つ1つの行動が絵になるやつだな。
上品だ。貴族とか言っても分からなそうだ。いや元はそうなのだから当たり前なのだが。
「大変じゃないかい?」
「お前が一々止まらなければ俺がそこまで疲れることはないんだが?」
「ああ、ごめんね?」
少し速足になって先を急ぐチェレンを見て、呆れの溜息を零した。
こいつが見せるこういう抜けたところに、いろんな人が魅かれ、そして諦めてきたのだろう。罪な男だ。
こいつといると飽きがなくていい。
「ここだよ。新しいホームは」
「へぇ…」
そこは、北欧風な目立つ建物があった。
中に入ると新品の家具ばかりが目に入る。
「誰から譲ってもらったんだ?」
「うん?違うよ、僕が買ったのさ」
「………金持ちめ」
恐らく現金払いで購入したのだろう。貴族の出なだけあるなこいつめ。まあこいつが選んだ家だ。見た目だけじゃないはず。
そう思って目を凝らしてみると、奥に地下へと繋がっているであろう隠し扉があった。
しかしここでチェレンの言葉が思考を遮った。
「僕の部屋は2階の右で、君の部屋は左だよ」
「仕事道具はどこに置けばいい。正直それが一番重たい」
「すぐ扉開けるから待ってて!」
こいつは………
地下室へと続く道を塞ぐドアを持ち上げるチェレン。その間に素早く階段を慎重に降りる。
地下室は上とは違って埃っぽいが、それでもチェレンの買った家の地下なだけあってそこらの地下室とは別格だった。
換気能力は最高、鍛冶用の設備も整っている上に、一つ壁を挟んだ向こうには浴室まである。
これだけでも相当な金額になるのにこれを現金出払うとは………
「ええっと、そこの台の上に全部置いといて。後は僕がやっとく」
「当たり前だ」
俺にやらせたところで配置が分からん。
荷物を傷付けないように丁寧に置くと、1階に戻っていく。
そしてそのまま階段を上って2階へ。
左側の扉には、俺の名が書かれたプレートがかけてある。
部屋の中は机にベッドと窓にはカーテンがかけられており、昔よく借りた宿とは核が違う。これが金持ちのやることかぁっ!?
シャッ
カーテンを開いて窓の外からの光を取り入れる。
大通りでは人通りが激しくなってきている。夜に言ったらお祭り騒ぎだろうな。何て考えつつ布団に倒れこんだ。
何と言う柔らかさ。最高級の布団かよ。
油断していた俺は服も着替えぬ内に意識を手放してしまった。
「おーい。どうかしたの?」
部屋の前で何度もノックする。しかし依然として中からの応答がない。ただのしかばねのようだ。
「しつれーしまー………おやおや」
リスクを覚悟して部屋の扉を開けた。
部屋は電気もつけずに暗いまま。窓から射す星の光がベッドの上の彼を照らし出している。
濡れ羽色の髪が、星光を煌めかせ、人間の中では比較的白い肌は、薄暗い部屋でも美しく僕の目を引き寄せる。
「疲れてたんだね」
そうだろうなとは気付いてはいたけれども、素振りを見せなかった彼だけれども、普段よりも質のいい寝具の前では疲れを隠しきれなかったらしい。
可愛い奴めと頬を突く。
感触が気に入らなかったのか寝返りを打つ。すると今度は彼のうなじが姿を現す。
白く細く、曲線を描く彼のうなじは、汗で湿って艶っぽく、いつにもまして僕を惹かせる。
「っ」
フルフルと顔を振るって邪念を払う。
僕はこの場から急いで離れようと部屋を出ようとしたけれど、やはり彼の事が心配で振り返ると、布団が掛けられていないことに気付いた。
「まったく、世話を焼かせないでくれよな」
布団をかけて、部屋を出る。
扉を閉める前に、彼に向けて、僕の愛情と共に、言葉を聞かせた。
「お休みなさい、ジン」
この文字数維持するのは結構キツイ
週一のペース維持は難しいかも
何はともあれ誤字の報告や感想コメント待ってます