彼が望みの為に戦うのは間違っているだろうか(更新停止)   作:双盾

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明日明後日旅行に行くので、今週の分の更新ができるか分からないので、
書いてある分だけ先に出しておきます


決闘

買い物をさっさと済ませて次の目的地、商隊が占領した通路へと向かう。大通りではないが、小さすぎる路地という訳でも無いので見つけるのは安易だ。

目的地に近づくにつれて騒がしさも増していき、到着したは騒音の最も激しい場所になっていた。

案内役の女性が俺を見つけると同時に声をかける。

 

「何か買いに来たんですか?」

 

「閃光弾あります?」

 

女性はあら珍しいと言わんばかりに驚愕の表情をみせ、クスリと笑った後に「奥から3番目の露店にあったかと」と教えてくれた。

ありがとうと頭を下げて人ごみの中を縫うように駆け抜けていく。

何故俺がこういった人の集まる場所が好きではないか。理由なんて簡単だ。色んな種族がいて、色んな香水や化粧をする。そしてそんな様々な臭いが全て混ぜ合わされる場所だからだ。個々の化粧品の香りは良い物なんだろうが、他の物と混ざってしまえば悪臭でしかないのだから。

 

「お、旦那じゃねぇっすか。何をお探しで?」

 

「閃光弾、いくらだ?」

 

「珍しい物を買いに来たもんだ。1コで500え――――じゃなかった、ヴァリスですぜ」

 

アイテム取扱いの店主は最初、500エンと言いそうになったが、途中でここの通貨、ヴァリスと言い直す。これで分かる通り、店主は極東の出である。しかし極東出身とは思えないガタイの良さや黒く焼けた肌で、皆驚いていた。

手に持っていた5000ヴァリス金貨の詰まった袋を投げ渡し、こう言った。

 

「買えるだけくれ。これだけ買うんだ、1つ位まけてくれよ?」

 

「中々わかってらっしゃる」

 

アイテムとは言っても、殆どは髪飾りやストラップと言った小物だ。では何故閃光弾や音響弾といった戦闘補助アイテムまで取り扱っているのか。元々は戦闘補助アイテム専門店にしたかったらしいのだが行く先々はのどかな集落で、閃光弾や音響弾とは無縁の存在ばかりである。故に1つも売れず、毎度赤字続きであったらしい。そこで小物の案を提示し、売っている小物を買い集め、無償で譲ったのが俺と言う訳で、簡単に言ってしまえば赤字脱出の恩人という訳だ。

だから俺がここで少しまけてくれと言えばおまけ程度に余分にアイテムをもらえるのだ。

5000ヴァリスの袋を金庫に投げ入れ、閃光弾を大量に抱えた店主が言った。

 

「今回は大まけして2つ、付けといてやる」

 

「おお、ありがとう」

 

「旦那がこういった準備をするときは、何か問題が起きますからね」

 

言い返せない。

今まで俺がこういった準備をするときは、大規模な盗賊と遭遇した時や、超級危険種生物と戦う時だけだったのだ。厄介ごとの前触れのような印象を受けても仕方ないだろう。

今回だってダンジョンの奥にはどれ程の危険種が潜んでいるか分からないのだから、強ち間違ってはいないのだろう。

 

「旦那に死なれちゃぁコッチ方面の買い物客が居なくなっちまいやすから」

 

「そうか」

 

少しさびしげに俯く店主だが、すぐにニカッという笑顔を貼り付け客寄せの声を高らかに響かせた。

 

「へいらっしゃい!!」

 

 

 

 

 

「あ、おかえりー」

 

「おう」

 

夕景が綺麗に見えるような時間帯になって、漸く家に到着した。

既に夕食が用意されており、まるでタイミングを見計らったかのように用意されており、スープからは湯気が立ちのぼっている。

 

「どうして俺の帰ってくる時間が分かった?」

 

「うん?何か今晩決闘だって聞いたから、その前に食べておいた方がいいかなぁと思って。余計なことしちゃった?」

 

「いや、とてもありがたい」

 

無かったら無かったでそこらの露店で食事を取るか、豊饒の女主人で食事を取るかしていただろうが、やはりコイツの料理が一番しっくりくるのだ。

荷物を降ろして服を着替え、手に着いた汚れを洗い落とし、席に着く。

 

「いただきます」

 

「いただきます」

 

うむ、やはり暖かい食事という物は、体だけでなく冷え切った心まで染み渡るな。

箸や食前の「いただきます」は、あの商隊の護衛になってから使い始めたものだが、今では言わないと違和感を感じるまで順応してしまった。改めて人間の順応力の速さが恐ろしく感じられる。

 

「あ」

 

俺はここでいくつか疑問に思っていたことを思い出した。

俺は知らなかったが、チェレンなら知っているかもしれないと思い、聞いてみる。

 

「なあ、うちのファミリアの噂について何か知らないか?」

 

「んー?僕はよく分からないけど、噂なんてあるんだ。気になるなぁ」

 

気になるのは無理ないが……飛び出した単語が単語なだけにあまりいいものではなさそうだったな。『偽善神』何て、ファミリアごと敵に回すような言葉を言い放つんだ、それだけ何かしらの想いがあるんだろう。

ならば俺がそれを聞いて、戦うに相応理由があれば戦うのは道理にかなうものだ。

手早く食事を終えて日の沈んだ街を眺める。

 

「行くのかい?無理に行く必要は無さそうだけど」

 

「いや、行く。理由すら分からないことには下手な動きはしない方がいい」

 

「なら、いってらっしゃい」

 

食器を片しながら俺を見送るチェレンに、「応よ」と返した。

万全の準備をする必要は無い。今までに何度も盗賊を壊滅させたこちらとしては、いつ闇討ちにあってもおかしくないので常に万全の装備でいるのだ。

装備の水準としては最前線で戦う攻略精鋭部隊を1軍と考えると3軍程度だろうか。まあいくらでも変えは効く。盗賊から奪った大量の魔具や魔装備があるので、今の装備が壊れた所で変えてしまえばいいのだが、今の装備が気に入っているのでできることならば壊したくは無い。

ま、余程の事が無ければそんなことはないだろうが。

屋根の上を駆け抜ける。闇夜に紛れて駆け抜ける。

頬を掠める夜風が心地いい。足元が暗いとは言うものの、夜戦に慣れるとそこまでの脅威でもない。

予め目的地を地図で確認していたので、今回は迷ったりはしなかった。

 

「来たか、遅せーんだよ」

 

「そっちが早すぎるんだっての」

 

俺に決闘を挑んできた男は既に到着していた。観客席には野次馬が座り、賭け事何てことをしている輩もいた。恐らく神も何人か混じっているのだろう。娯楽に飢えているのは冒険者も同じだな。

 

「で、俺がお前に何かしたか?それともファミリアに恨みでも?」

 

「いや、恨みは無い。が、偽善神の眷属が、どれほど強いのか、知りたかっただけだ」

 

「その偽善神ってのは何なんだ?」

 

俺としてはそこが最も引っかかると言うか、疑問に思っているところだ。

目の前の男は何言ってんだコイツみたいな表情を浮かべる。いや俺としてはアンタの言ってることの方が理解できないんだっての。と悪態を吐いて表情を真似る。

 

「ああ、お前は新入りか」

 

「そう、なるのか?」

 

ファミリアに入ったのは3年前になるが、俺の後から新しく誰かが入ったという情報は無い。時間的には結構経っているが、俺以外に新参者が来ていないのなら俺が新米のままと言うことになるのか?

何ておかしな方向へ思考をシフトしていると、男が続けた。

 

「なら教えてやるよ。

 

 お前らの主神グローリアは、最も早く地上に降り立った神の1人だ。だがグローリアは他の神とは違い、ファミリアを作らずに世界を旅してまわっていた。アイツは人間よりも長命なことを利用して、時の経過による人間の変化とやらを見るとか言ってな。そしてグローリアは様々な死をみたらしい。グローリアは、そこで漸くファミリアを作ったが、ダンジョン攻略のものではなかった。そうさ、そのファミリアこそあの商隊だ!グローリアは世界各国の飢饉や紛争のある地域に行っては土地を買い、食糧難を無くし、紛争を終わらせた」

 

「何だ、良い神じゃないか」

 

「ここだけならな。

 

 その後グローリアはそれを全世界に行ってきた。だが、それだけじゃなかった。グローリアの行く先々で、犯罪が減った。いいことに聞こえるが、問題はそこじゃない。視点を変えようか。街や集落の人口が減った、0になった所もあった。そうさグローリアは表向きは救済の商隊。だが本質は対人戦に特化した精鋭部隊が、犯罪者を暗殺するという殺人集団だ。しかし証拠や目撃者の少なさからこれは噂だと言う声が多いが俺は違うと知っている!!その証明のために、お前に決闘を申し込む!!」

 

そういうことか。

恐らく殺された者の親族かそれに近い何かだろう。

ま、彼の言うことはほぼほぼ間違ってはいない。しかし彼がここで俺に決闘を申し込むと言うことは、あわよくば復讐を達成してしまおうということだろう。

ここで決闘を行えば、動きで噂の真偽が分かり、彼がわざと技を受けて死ねば俺を殺人者としてグローリアの事を好きなだけ批判できる。

中々に良く考えられた作戦だ。

が、それだけの理由があるのに、決闘から逃げるのは俺の信条に反する。

 

「受けて立つ」

 

だから俺は受けた。野次馬どもの盛り上がりも激しさ騒がしさを加速させてきている。

俺と彼は距離を取り、武器を構えた。

観客席からカウントが始まる。

 

「ゼロ」

 

「くらえ!!」

 

0と共に飛び出してきた相手。手に持っている物は小型の鎌と、鎖でつながった鉄球。珍しい物を使う奴だ。

あれは極東でお使う人間は少ない鎖鎌という武器だ。

鎌による斬撃と鉄球による殴打、そして鎖を用いた行動の阻害や自身の動きを不規則にする武器。技術さえあれば様々な武器に対応できる反面使い手の技術に依存する武器でもあるということだ。

鎌の刃が尽きの光を反射し、軌跡を見せる。

切り上げか。

しかしここでただ回避してはいけない。

鉄球が暗闇に紛れ、どこから飛んでくるか分からないのだから。

 

「ふっ」

 

武器を小双刃に変形させて鎌の軌道を弾いて変えると、その間に相手は移動し、背中を狙い鉄球を放つ。視覚的な索敵能力がほとんど働かない夜でこの攻撃はほぼ避けることはできない。

だが

 

「見つけた」

 

「っな!?」

 

それは対人戦に慣れた相手に対しては甘い考えだというものだ。

夜戦において背後への攻撃は常識とされる一方で、頻繁に夜戦を行ってきた猛者達からすればどこから攻撃がくるか丸分かりともいえる。そして攻撃の軌跡さえ目視できれば敵の場所も分かってしまう。

経験が大きなアドバンテージになる夜戦で、背後への攻撃は悪手でしかない。

 

「やはり噂は本当だったな!!」

 

「俺は元々夜間の行動ばかりでね、昼の戦いの方が苦手なんだよ!!」

 

これも本当の事だ。

人よりも夜目が早く働く一方で、突然の光を食らってしまうと人よりも長い時間目がくらんでしまうのだ。

まあ昼は人の行動パターンが読みやすいから経験で何とかなる場合が多いが。

鎌と鉄球を繋ぐ鎖を力任せに薙いだ刃で断ち切る。

これで相手は小鎌での戦闘だ。攻撃範囲も格段に小さくなり、多彩な攻撃もできなくなってしまった。

しかし相手は諦めない。

 

「勝負ってのは、窮地に立たされてからが本番だろ!?」

 

よくわかってるじゃないか。

何度も窮地を体験してきた俺としても、その考えには頷くしかない。商隊の護衛としては、夜に奇襲をかけられそこで漸く事態を把握するなんてことがよくあった。

仕切り直しの戦いに、観客席での賭け事や観客のテンションも最高潮に達した。

 

「切り裂く鎌よ、俺の声に応えよ。俺の刃に力を与え、全てを切り裂く一閃となれ!!『シャドウスラッシュ』!!」

 

魔法か。

鎌が黒い霧を吹き出す。その霧は鎌を包み込み、闇夜に溶けるように消えていき、使い手までもを隠してしまう。

風の音も、光の反射もしない霧が、スタジアム全体を包み込み、俺もまた霧に呑まれてしまう。

感覚を研ぎ澄ませろ。一撃すら許されない状況と同じだ。

足音や呼吸音、砂の擦れる音さえも霧が吸収してしまっている。視界も黒一色。まさにお先真っ黒。これでは探知のしようがない。

だからこそ一撃が来るその瞬間を狙う。

 

「――――――」

 

静寂が支配する空間。風も無ければ光もなく、音もない。

それでも気配までは消し切れない。

――――――っ!!

背後から鋭い殺気が刃をなして襲い掛かってきた。

狙いは首。

迷いのない一撃を、察知した俺は、棍の形態を槍に変えて、石突きで無明の一撃を弾いた。

 

「何!?」

 

今度は声が聞こえた。

恐らく攻撃が弾かれたことで魔法の効果が切れたのだろう。暗闇と静寂の世界に、音が、風が、光が戻る。

振り払った槍の柄を支点に穂先を相手に薙ぎ払った。

 

ガキィン

 

鎌は刃を切り剥がされ、トスと言う音を立てて地面に突き刺さる。

相手は地に両膝を着き、両手を星空に向けて伸ばすと

 

「降参だ」

 

自身の敗北を認めた。

観客席からは完成が上がり、賭けに負けた人物の嘆き声が聞こえる。俺に文句を言うやつらの大半というか全てがそれだろう。俺に文句を言うな!賭けなんかするお前らの自業自得だろうが!!

 

「やっぱ強いなお前」

 

「まだ足りない。対人戦で強くても、ダンジョンでは使えないからな」

 

「そりゃそうだ」

 

先程俺を本気で殺しにかかってきた人間と同じ人物とは考えられないほどの変わり様だ。

ここで俺は、まだ彼の名前を聞いていないことを思い出した。

 

「そういえば名乗ってなかったな。俺はシュルツだ」

 

「俺はジンだ」

 

握手を交わして噂や武装についてしばらく語り合う。

楽しかった会話も、気付けば1時間という時間を消費していたらしく、俺達はまたなと別れを告げてそれぞれの目的地へと歩き出した。




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