彼が望みの為に戦うのは間違っているだろうか(更新停止)   作:双盾

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奇襲

調査隊と共に情報を収集しはじめて3日が経った。

時間が経過すると同時に当時の情報が徐々に鮮明になっていくが、襲撃してきた賊については中々進展しなかった。

分かったことと言えば、襲撃した賊は最低10人はいたこと。使う武器はここらで最も流通しているものであること。特に賊長の戦闘技術は凄まじく、抵抗の隙すら与えないということ。逃走に使っている馬は盗んできた競技用の物であること。襲撃する時は、足跡が消えるように風の強い日に限っていること。ただそれだけだった。

 

「中々に頭の切れる連中が集まってるな」

 

「ここらはあまり人が集まらないのもあって、目撃証言ではこれ以上の情報は見込めなさそうです」

 

俺は相手の計画性の高さと、戦闘に置いて絶対的な自信をありありと見せつけられていた。

周辺の集落に立ち寄り、注意喚起と情報収集を行っているが、目撃証言は無く、かなり行き詰っていた。

しかし俺達にはまだ希望はある。

ただその希望に縋ることだけは避けたかった。

 

「ここまで手古摺ってしまうとなると、救出された少女への聴取も考えなければならないですね」

 

最後の希望。それは少女の記憶だ。

恐らく最も効率的に犯人を捜し出すことができ、更に詳細な襲撃当時の状況を知れる。

けれどもその代償として少女の消えない傷跡を抉ることになる。

小を捨て大を助けるが信条の俺であっても、代償が俺の苦労で済むのならば、少女の傷跡を抉るような大きな代償を無くすために自己犠牲の一途を辿ろうじゃないか。

4日目と5日目は不眠不休で情報収集にあたり、荒野や険しい山道を駆けずり回った。

団員たちからは

 

「そんな無理することはない」

 

「無駄足になるだけ」

 

そんな言葉も投げかけられた。

確かにこれと言った情報は入ってこないけれども、決して、無駄足なんかじゃない。

そんな時、洞窟暮らしの民族の少年から、こんな情報が入った。

 

「そういえば、やたら金持ちが多い民族がいたっけな」

 

民族や集落に住む人間は、基本的に貧困状態の者が多い。

まともな職に就けず、しかしそこを出るだけの金も無いからだ。

そんな所でやたら金持ちな人間が、ましてや複数人もいるはずがない。

 

「どこの部族だ?」

 

焦る気持ちを抑えて少年に問いかける。

少年は、少し待っててといって少しの時間を空けて戻ってきた。

その手には地図。けれど地上の地図ではない。

 

「これは地下洞窟の地図だよ。兄ちゃん」

 

「そんなものがあるのか」

 

「そんでな、そいつらはここに住んでて、隠し出入口がここにあって」

 

少年は地図を指差しながら詳細に説明していく。どうやらこっそり忍び込んでは食糧をつまみ食いしているらしい。

部族の拠点位置、隠し通路、地上からでは見えない地下空洞、洞窟暮らし故の通常以上に夜目が働く。

 

「そういやその日は皆いなかったから大量に食べたんだっけな」

 

そして事件の日、総出でどこかへ行った。

これだけの情報を出されてこの部族を犯人だと思わないのは、事件を知らない人間か、事件を理解できない子供か、ただのバカだけだろう。

もはや疑いようがなかった。

 

「ありがとう、少年。こいつを上げよう」

 

懐から飴玉をいくつかあげて、「他の人には内緒だぞ?」と念を押すと、眩しいほどの笑顔で分かったと返答する少年は、駆け足で自分の家へと帰っていく。

俺は地図の複製をもらい、調査隊に報告する。

地下空洞という盲点を知り、怪しい部族やその行動を報告すると、団員達もまた俺と同じ結論に至った。

 

「よくやってくれました。我々はギルドへの報告と部隊編成の為一時的にここを離れます。その間貴方は休んでいてください」

 

「ああ、すまない」

 

ファンブレイとその他幹部二人は、日の高いうちにオラリオへと向かい、部隊が到着するまで俺達は、一時の安息を満喫した。

恐らく部隊が到着するのは夜。それまでの休息だ。

俺は意識を飛ばした。

 

 

 

 

しかし体も休まらぬ内に辺りが騒がしくなり、睡眠を中断した。

日が沈みかけ、夕闇が大きくなり始めた時刻。

調査隊の戦力が落ちてきた頃に、襲撃が起きた。

どうやら内通者がいたらしい。酒や薬で戦力を削ぎ落とした後に襲撃とは。

既に周りを囲まれ逃げられず、建物には火をつけられ装備は燃やされ、酒や薬の効果もあって、最早まともに戦える状況ではなかったが、幸い調査隊の中心近くのここまではまだ攻め入られていないようだ。

 

「初の出番がこれとはな」

 

「何、これぐらいでなきゃ面白くないだろ?まあ雑魚ばかりで退屈になりそうだが」

 

背に棍を装着するが、今回使うのはエペタムの方だ。出番はないが盗まれることのないように装備する。

テントから出た瞬間に四方八方から迫りくる剣。

連携やタイミングは随一だが人数が3人では足りなかったな。1人2つの剣を使いこなせていたのなら話は別だったが。

 

「武器は喰っていいのか?」

 

「問題ない。存分に喰え」

 

まず正面から迫る初撃を躱し、左から背を狙う追撃をエペタムでいなし、その勢いのまま3撃目に振るう。

兜割は斬撃武器ではない。斬撃を流すための割砕系の打撃武器だ。

よって振るった兜割が相手の剣を砕くことはあっても、切ることは無い筈である。

しかしこれは自我が宿るほどの魔具だ。

 

サクッ

 

「なぁ!?」

 

紙を切るように易々と鉄製の刀身を切り裂く。否、喰らいつくした。

切られた刀身は瞬間亀裂が走り、けれど砕け散る間もなくエペタムに吸収されてしまう。

魔法で金剛石ほどにまで硬度強化された石をも喰らうエペタムが、鉄製の剣を屠ることなど容易いこと。

 

「ケッ、つまらねぇ武器だな。味も無ぇ」

 

悪態を吐くエペタムを無視して、初撃をかましてきた賊の刀身を喰らう。

どうやら下っ端なのか、魔剣すらもっておらず、ただ無様に逃げ始めた。しかし戦場では敵に背を見せたが命の尽き。

体術による瞬時加速で距離を詰め、心臓を正確に一突き。

吹き出すはずの鮮血はエペタムが飲み干し、干乾びた賊員から刀身を抜き、立て続けに2人を殺めた。

 

「おーおー無慈悲だねぇ」

 

背後から声を掛けられ、振り向くとそこには、煌びやかな装飾品を全身に纏った男が立っていた。

猪人のその男が賊員であった肉塊を蹴り、道を空ける。

俺は言い放った。

 

「人を殺していいのは、殺される覚悟のあるやつだけだ。死の恐怖を味わって逃げるそいつらは死んで当然の肉塊だ」

 

「ははははっ。そう来たか。なら」

 

敵の太く筋肉質な足が地面にめり込み、砲弾のような加速で俺に接近する。

 

「お前も死ぬ覚悟はあるってことだよなぁ!!!」

 

敵が背負っていた細く長い大剣が寸分違わず俺の首の有った空間を振りぬける。けれどそこには首は無く、回避した俺は敵の戦力や装備の詳細を目視、思考する。

大剣、幅20cm、刀身3m、柄30cm、謎の刻印から魔剣だと推測。装備は重装備だが重量感を感じさせない。自身の筋力の影響もあるだろうが、魔防具と見た方がいい。

初撃を躱されるのをみこしていたのか流れるように追撃が放たれる。

下段からの切り上げ。刃の軌道を予測しエペタムを構える。

刃はそのまま流れるようにエペタムの鉤爪に入った。

そのまま刃を食い散らかすはずだったが、大剣の刀身を切り裂くことなく、衝撃のまま上空へと打ち上げられる。

 

「どうなってやがる」

 

「あの剣は不壊属性だ。しかもそれだけじゃねぇ。刀身に蓄積するダメージを衝撃として剣に纏わせてやがる。大剣に触れる前に並大抵の武器は壊れるだろうな」

 

厄介な。

衝撃による上昇が終わり、重力に従った落下が始まる。

俺の落下に合わせて攻撃するつもりなのか敵は大剣を構えている。

攻撃のタイミングが来るまでしばし思案する。

不壊属性を利用した攻撃上昇と損傷軽減の武器。ボロボロになっては打ち直され、再び壊れる寸前まで使い修復。これを繰り返したのだろう。衝撃で不壊属性の欠点である攻撃力低下を補っている。

アイデアそのものも凄いが、作った刀匠もまた素晴らしい才能だ。

けれど衝撃も無限に続く訳では無い上に、不壊とはいっても損傷はするのだ。勝機はある。

地上1mほどにまで落下すると、目の前に極大の刀身が見えた。刃にはうっすら纏った衝撃が揺らめいて見えた。

しかし刀身の側面にはそれはないのもまた確認する。

 

「ぜらぁ!!」

 

布を使って空気抵抗を利用し刃の軌道から逸れると、真横を掠める刀身に、エペタムを突き立てた。

 

ギャリリリリ!!!

 

金属音と火花で敵の目と耳を暗まし、防御態勢を取るのが遅れた敵の腕をエペタムが狙った。しかし、防具もまた不壊属性。

 

「ハッ、お前に勝機はねぇんだよ!!」

 

再び背後から衝撃が来る。

相手の小手を弾いて軌道をズラし、刀身を確認する。

あった。

白銀の刀身に傷跡が横一文字に刻まれている。刀身の側面までは衝撃を纏わせられないのだ。

 

「こいつは中々の業物だ!!記憶上最高の味だ!!」

 

エペタムは歓喜する。傷をつけた際に粉になった刀身を喰らったのだろう。

刹那―――――

 

「こいつは俺が頂く」

 

左目の刻印が輝きを宿した。

俺の意志で腕を動かそうとする前に腕が動く。加速を考えた時には加速している。

エペタムが体を動かしているのだ。

素早い剣閃が大剣を襲う。徐々に傷が増える。そして敵の表情からも余裕が消える。

 

「チィッ!!なんて剣捌きだ!!」

 

剣は傷だらけだが、エペタムには傷1つ無い。

長い時をかけて培ってきた戦闘技術が、不壊の大剣を刻み始めた。

やがて技量の差を理解したのか敵は隠し通そうとした奥の手を使った。

 

「波撃解放」

 

全身を強打され、大剣から吹き飛ばされた俺は、刀身に刻まれた文字が青く光る敵の大剣を見た。

 

「俺を本気にさせたこと、後悔させてやんよ!!」

 

敵が振るう大剣を躱した。しかしその後ろを追うように来た衝撃で吹き飛ばされる。

これが敵の隠していた技。

衝撃の消費量を無視して使いまくることだろう。剣戟を回避しても衝撃が襲い、剣を受け止めれば衝撃で身体ごと弾く。回避不能の攻撃。

そして俺達を囲むように賊員が武器を構えていることに気付いた。

お手上げ状態だな。

こちらは全身打撲。見方は恐らく全滅。対して敵は無傷で仲間がいる。

絶体絶命。

だが、この方がいい。

 

「お前らは俺が見てきた賊の中で最凶だ」

 

「そいつは良い褒め言葉だ。そいつを遺言にしてやるよ!!」

 

 

 

「だが、俺の本気はここから始まるんでな。悪いが死んでもらう」

 

 

 

剣が俺のいた場所を粉砕した。

けれどそこにはもう俺はいない。

しかし誰も俺を捉えていない。

敵が大剣を構え直した瞬間、賊員がほぼ同時に倒れこんだ。

 

「!?おいどうし――――っ!?」

 

敵は倒れた仲間を見渡す。そして自身の背後に立つ俺の姿に恐怖する時には、既に命尽きていた。

 

ザクッ

 

地面に大剣が突き刺さる。

エペタムも事態を理解できていない。

俺は事態の説明を求めるエペタムを大剣に突き立てて黙らせると、周囲を見回した。

 

「まるであの時みたいだ」

 

燃える木材焼ける肉。散乱した死体と武装の中心に、血塗れの俺。そして俺を、俺達を覆うような雲1つ無い美しい星空。

何1つ変わらないこの状況で俺は

 

 

 

笑った




今日から数日の間、本気出して連続投稿します
無謀だと笑うがいい!!絶対にやってのける!!(フラグ
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