これはハーレムラブコメではありません。 作:Vita版つくって下さい。
「ちょっと! あんまりそっちの腕ひっぱんないでよ!」
「あなたこそ! そっちの腕組み解きなさいよ!」
「いや、歩きにくいから御二人とも離して――」
「「あんたは黙ってて!」」
「……はい」
説明すると、俺は今、二人の美少女に両腕を腕組みされている。
『ちょっと、なにあれ?』
『二股? サイテー』
『リア充爆発しろ……』
外野からそんな声が聞こえる。
わからなくもない。俺も当事者でなければそう思うだろう。しかし、勘違いしないでほしい。
(おい、貴様。今、どさくさに紛れて姫嫁の胸を触らなかったか? 後で覚悟しておけよ……)←腕をガッチリと掴みながら怒り声で右側から言う。
(ちょっと……君、今、私の神子に抱きつかれてにやにやしてるでしょ……いっとくけど神子は私のだからね……色目使ったら……消すよ……)←ハイライトが消えた瞳で左側からどす黒い声で言われる。
そう、俺は決してこの二人に好意を持たれて抱きつかれているわけではない。
そして理解して頂きたい。この物語はハーレムラブコメなどは断じて無いのだと……
……。
…………。
………………。
ノックをし忘れてドアを開けたらとんでもない物を見てしまう。
ストーリーではよくあるシーンだ。
時には着替えを覗いてしまったり――
時には告白シーンに出くわしたり――
時には秘密を見てしまったりと……
だから俺、五反田 吟遊は、この日、生徒会室へのノックをし忘れた事を一生後悔するだろう。
なぜなら俺は、このあと、生徒会室へのノックを忘れたのが原因で、生徒会長、真奥 姫嫁と遊佐 神子のとんでもない秘密を知ってしまったのだから……
俺がその秘密を知る運命の日は、昨日と比べてもさして変わらない一日だった。前校集会があること以外は……
「えー、続きまして、生徒会長、真奥姫嫁さんと副会長遊佐神子さんのお話です」
うおおおおっ!
……と、何処かのアイドルが登場したかのような歓声が上がる。
ここ或日出(アルヒジ)学園の二大アイドルと呼ばれる二人の登場に興奮しているのだろう……
生徒会長 3年 真奥姫嫁
学園が誇る才女で成績優秀品行方正という言葉が似合う美少女。ちなみに巨乳。料理上手でお嫁さんにしたい人学園通り一位。名前の『姫』の字も『嫁』の字も似合う誰もが憧れそうな先輩だ。
生徒会副会長 3年 遊佐神子
同じく学園が誇る才女。成績優秀にして運動神経抜群の才色兼備。前年度ミスコンでは優勝を誇る美少女だ。一部では名前をもじり『女神子様』などと呼ばれている。こちらも誰もが憧れそうな先輩だ。
『現在、生徒会は私と遊佐さんの会長と副会長のみと言う状況にあります。現在我々の独断で新メンバーを検討していますが、新メンバーの補充にはもう少しかかりそうなのでもう少しまっていただけると幸いです』
生徒会長の言葉。うちの学園では生徒会長のみを選挙で決定して他のメンバーは指名制となっている。会長が遊佐副会長は迷いなく指名したが他の書記、会計、庶務等のメンバーは空席となっている。別に空席でも仕事さえできていれば問題ないらしいが……
『別にいなくてもいいです!』
『むしろ誰か入ってみろ! 羨ましすぎるぞ!』
『でも私入りたいです!』
『あー、抜け駆けする気!?』
先輩達のファンが大勢声をかける。本当にうるさい……
俺は全く興味がない。
……。
…………。
………………。
教室に戻ると、クラス内は生徒会の話で持ちきりだ。
「本当にたった二人でよく生徒会をまわしているよな~」
「どうでもいい……」
「本当にギンは無干渉だな~」
俺が今、話しているのはクラスメイトの六塚剣司。噂話や可愛い女の子の情報は欠かさず手に入れると言う。典型的な彼女が欲しいくせにキューピッドになりまくりモテない奴だ。
俺の下の名前が『吟遊』とキラキラ的ネームで珍しくて声をかけてきた……
「んで、お前の両親はどうよ……?」
「どうもこうもあるか……売れないギタリストとオペラ歌手が修行の旅に出るとか言ってドイツへ向かったかと思えばそのドイツへ向かう飛行機の事故で行方不明だぞ? しかもあと二ヶ月で死んだ扱いだ。当時は悲しかったが今にして思えばアホすぎる……」
「実の親に対してひでーなぁ」
「それよりもこの現状だ。うるさくてかなわん」
「いやいや、むしろあの姫嫁様と女神子様に微塵も興味を示さないギンの方がどうかと思うぜ?」
「そうかぁ? 俺以外にも興味持たないやつくらいはいるだろ? と言うより俺は自分の事で精一杯だ。バイトと内職で自活するのは大変だ……」
「あー、また厳しいのか?」
「まあな……明日の特売日にどれだけいけるかが勝負だな……」
説明すると俺は両親の事故の後、一人暮らしだった母親の友人に養ってもらっている。が、あまり迷惑をかけないために学費、家賃等の高額な生活費以外は自活するようにしている。
「運動神経も良いし、勉強できるし、手先器用だし、部活とか入ればエースになれるだろうに……」
「バイトがあるから無理だ」
「だもんなぁ……ああ、そうだ。ギンは興味がないだろうけど最近でた噂知ってる?」
「……噂?」
「そうそう、なんでも真奥会長と遊佐副会長には想いをよせる相手がいるとかなんとか……」
「なんだそりゃ? アイドルの熱愛発覚かよ……」
「まあ、相手が誰かまではわかってないが、ファンクラブの連中が成績や容姿とかから推測して何人かリストアップしたらしいがギンもその候補になってるらしいぜ」
「はあ? ふざけるな。俺は二人とも話したこともないぞ」
というか、あの二人ならその相手が同じこの学校の生徒とも限りんだろう。それこそ芸能人とかの可能性の方があり得る。
「ははは、だよな。ま、でもその相手が偶然にでもわかったら教えてくれよ。高く売れるぞ」
「へいへい」
俺は、興味がないので相槌だけした。
……。
…………。
………………。
放課後。
俺は、バイトに早く――
「五反田君、日誌!」
――行こうとすると、ラスの女子に日直の仕事で呼び止められた。そうだ、今日はこれがあるんだった。
俺はさっさと日誌を書いた。うちは日直の日誌に生徒会印を押してもらわないといけないので、俺は日誌をもって生徒会室に来た。
急いでいたので、俺は、うっかりノックをするのを忘れてドアを開けてしまった。
するとそこには――
「ん、んんん………んあん!」
「ジュルル……んん!」
「んああぁ、ひ、姫……嫁ぁ~」
「ん~、神子ぉ~」
大人のキス……いわゆるフレンチキッスをする二人の美少女の姿があった。
「ん?」
「え?」
「あ」
ちなみにしていたのは真奥会長と遊佐副会長だった……えーと……
「あ、あ、あ………」
「な!? な、な、な……!?」
二人は顔を真っ赤にして俺の方を見てきた。俺はとりあえず――
――笑顔を作って……
――床に日誌を置き……
――ドアを閉めて……パタン
――全力で走った!
「あっ、ちょっ!? 五反田君!?」
同じ日直だった女子に声をかけられたが俺は無視した。
「あ! コラ! 廊下を走らない!」
廊下を歩いていた担任教師に注意されたがそれも無視した。
「おお! なかなか足が早いな! 是非とも陸上部へ!」
たまたま階段近くでトレーニングをしていた陸上部らしき男子がスカウトしてきたが無視した。
とにかく俺は全力で走った。いや、逃げた。
そして下駄箱まで俺は来た。すると……
ピンポンパンポーン!
『今! 生徒会室に日誌を持ってきた男子生徒! 今すぐ生徒会室に戻ってこい!?』
……と、放送がかかった……その男子生徒とは俺の事だろうが……
「バイトがあるので失礼しまーす……」
俺は、校舎を出ていった。
……。
…………。
………………。
喫茶店『ヒーロータイム』
俺のバイト先で店長は大の日朝ヒーロー物の特撮好き。店の中には昭和、平成へだたりなくヒーローのフィギュアや変身グッズに囲まれており、流れるBGMはその年に放送しているヒーローのテーマソングでお子さま連れや学生にそこそこ人気の店だ。
店に入ると店長の布里州空斗さんが出迎えた。
「いらっしゃい、おお、ギン君。ようやく来たかい」
「日直だったもので……すみません」
「いやいや、ギン君は頑張ってるからねぇ。早く着替えておいで……」
「はい」
俺は、店の奥の更衣室に来て、ドアを開けようと――
「はっ!?」
危ない危ない。またノックをするのを忘れるところだった……
俺は、ノックを二回した。
コンコン
『はーい、お父さん? もうちょっと待ってて~』
中から声がした。危ない危ない……店長の娘さんの着替えを覗くところだった……
俺は待っていると中から出てきた。
「おまた~、って! ギン君!?」
「どうも」
出てきたのは店長の一人娘の布里州智香。俺より1つ上の高校3年生。いわゆる店の看板娘という奴だ。
「の、ノックしたのギン君だったの?」
「ああ、今日はノックを忘れてひどい目にあいかけたからな……」
「そ、そうなんだ……(別にノックしなくてもいいのに……あ、でも今日の下着地味……いやいや、そうじゃなくて……)」
「ん? どした?」
「な、なんでもない!?」
智香はたまに一人でぶつぶつ言うが、俺は特に干渉しない。俺は着替えてバイトに励むのだった。
……。
…………。
………………。
バイトが終わり、家に帰る。保護者は仕事で夜遅いので、俺は一人だ。俺は、今日あった出来事を思い出した……
生徒会室で見たあれは……なんだったのだろうか?
――生徒会長と副会長がフレンチキッスをしていた。
――そして剣司が言っていた噂……
「まさか……想いをよせる相手って……」
まあいいや、見なかったことにしよう。むこうもそれを望むだろう……人の趣味は人それぞれ……そもそもそういったやっかいごとに『無干渉』が俺の主義だ。深入りせず……
俺は、眠りに入った。
……。
…………。
………………。
翌日。校門に人だかりができていた……いや、生徒会が抜き打ち手荷物検査を行っていた。俺は、特に持ち込み禁止のものなぞ持っていないので、すんなりと――
ガッ!
副会長に肩を捕まれた……
「やっと見つけたぞ……昨日はよくも逃げてくれたな……」
ああ、やはりこの抜き打ち手荷物検査って、これが本命だったんですね……何となくわかってましたよ……わかってましたけど……
『なんだなんだ!?』
『逃げた? 何をしの!?』
『それより見つけたって!?』
こんな生徒が集まるところでしないでほしかった……
「姫嫁! 見つけたぞ!」
「本当!? じゃあすぐに生徒会室に連行して!」
「了解だ!」
俺は副会長に右腕をガッシリと捕まれた……
そして……
「生徒会室へ連行します」
会長に左腕もガッシリと捕まれた……
そして――
『なんだあいつ!?』
『両手に花だと!?』
『うらやましい! むしろうらめしい!?』
おい、ギャラリー共。一連の流れをみていなかったのか!?
俺は、生徒会室へ連行された……
……。
…………。
………………。
生徒会室。俺は会長と副会長を対面して椅子に座らせられた……そして二人の表情が怖い……会長は笑顔だがいわゆる『目だけが笑ってない笑顔』だ。副会長はストレートに睨み付けてきて普通に怖い……
そして、副会長は俺に言う。
「さて、生徒会室に連行された理由はわかるな?」
「いいえ、わかりません」
「そうか……そうだな……って、は?」
俺は、誤魔化すために言う。
「貴様……ふざけているのか?」
無理だったか……
「イイエ、ワタクシハナンニモミテイマセン」
「かたごとでごまかすな!?」
駄目か……
「副会長。俺は昨日、生徒会室になんて来なかった。だから何も見なかった。それでいいでしょ?」
「ほほう、あくまでもシラをきる気か……」
え? いや、俺は『黙っててやるから心配するな』と言う意味で言ったのだが……
「言っておくが、私は貴様を退学させる事もできるぞ? シラをきらずに正直に言ったらどうだ? 昨日、見たんだろ、私と姫嫁の愛の育みを!? そしてそれをその日の夜のオカズにしたんだろう!?」
「オカズにはしとらんわ!?」
思わずツッコンでしまった……
「……やっぱりみたんだな……」
しまった!? 誘導尋問か!?
「見たんだな! 見てしまったんだな! 目に焼き付けたんだな!?」
「えっと……はい」
「うわーん! 姫嫁ぁ!?」
副会長は会長に抱きつく……
「うううぅ~、見られた~、私はもうおしまいだぁ……」
「もう、神子、落ち着いて……えっと……あなた名前は?」
は? わからずにつれてきたの?
「えっと……2年A組、五反田吟遊です……」
「ふざけているのか?」
「は?」
今のどこにふざけている要素があったのだろうか?
「ごめんねぇ、生徒手帳出してくれる?」
「え? あ、はい」
なるほど。偽名だと思われたのか……たしかに俺は偽名やペンネームっぽい名前だしな……
俺は生徒手帳を出して見せた……
「……本名だったのか……」
「へぇ、変わった名前だねぇ」
会長も副会長もそれは同じだろうと俺は思う……
そして会長は説明し出す。
「それじゃあ五反田吟遊君。一応確認のために言うとねぇ」
「――あ、いや、いいです。さっきも言った通り、俺は何も見なかったって事にしますので、失礼しまーす」
「おいこら! まて!?」
帰ろうとすると副会長に怒鳴られた……
「ここまで私の醜態を見ておいてそれはないだろうが!?」
醜態って……あんたが勝手にさらしただけだろ……
「そもそも俺は何も見なかったって言ってるのに何が問題なんですか? 俺は会長と副会長が百合のレズカップルだったとしても会長か副会長のどちらかが実は女装した男子生徒でーす。とか言われても、正直どうでもいいですし」
俺がそういうと、会長は……
「……誤解を招かないように言うと私達は二人とも正真正銘女です……」
ああ、なるほど……
「それでは」
「待て待て待て待て待て待て待てい!?」
本当になんなんだよ……
「反応がおかしいだろ!? 普通、こんな状況下にいたら……」
「俺は『無干渉』主義者なので……ここに連れてきたのも口封じでしょ? ならもう終わりじゃないですか……」
すると副会長は……
「で、では、君の感想を聞きたい。……同性愛についてどう思う?」
「俺が関係なければどうでもいいです。では」
「待て待て待て!? だったら君の親友が君に対して同性愛を抱いたらどうする?」
「同性の親友がいないのでおこりませんね。では」
「待て待て待て! どさくさに紛れて悲しいことを言うなそして待ってくれ!」
俺が帰ろうとすると副会長が止めに入る。そろそろ授業が始まりそうなのですが……
「頼む……真面目に答えてくれ……どう思う?」
めんどくさ……まあいいや。
「あー、ひくと思いますね……少なくとももう関わりたくないですね」
「う、そ、そうだな……」
「まあ、当人としてはそうなりますけど第三者としてなら、二人が想い合っているならいいんじゃないですか? 当人同士がいいなら別にいいとは思いますよ。愛の形は人それぞれでしょうし……俺はいいと思いますよ? 俺さえ関わらなければ……」
「そ、そうか……いや、連行してすまなかったな……」
「いえいえ、では授業が始まりますので、今度こそ、失礼します」
俺は、生徒会室を出た。
……。
…………。
………………。
昼休み。俺は買ってきた惣菜弁当を出すと――
「五反田ぁ! どう言うことだぁ!?」
――いきなりクラスの男子からドやされた……なんだよいったい……
「何がだ?」
「とぼけんな! 生徒会室の掲示板に張り出された事についてだ!?」
掲示板?
「とぼけるならついてこい!」
俺は男子に連行された。そして掲示板には――
“生徒会緊急事項
以下の生徒を生徒会庶務として任命する。
2年A組 五反田吟遊”
――と書かれていた……は?
「はああああ!?」
「貴様ぁ!? どうやって姫嫁様と女神子様に近づいたぁ!? 理由によってはただじゃ済まさんぞ!」
「いやいやいや、俺もさっぱり――」
すると……
「おお、やっと見つけたぞ。早速仕事だ。来い」
副会長が現れた。そして、俺は生徒会室へ連れていかれた……
「どうして俺が生徒会に任命されるのでしょうか?」
「人員が足りていないからだな」
「だからなぜ俺なんです? 入りたい奴なんて山ほどいるでしょ!? なのになんでやりたくない俺が入れられているんですか!?」
「いいか、正直に言うと私達二人では生徒会の仕事で全然手が足りていない。しかし、昨日貴様が見たように生徒会室は私と姫嫁の愛の空間だ。それを適当に任命した奴にみられるわけにはいかない」
「……だから知っているやつをメンバーとして任命するって事ですか?」
「そういうことだ。しかも調べたが貴様は成績も良いしメンバーとして不足もない。教師への申請はあっさりと通ったぞ」
「いや、当人がやりたくないなら辞任させてくださいよ!」
「同時にこれは監視だ。貴様が私と姫嫁の秘密をばらさないようにな……」
信用されてねぇな……
「私とて誰が好き好んで貴様なぞ入れたいわけではない。本当に人手が足りずかつ秘密を共有できるメンバーを探していて丁度良いから入れたまでだ。感謝するがいい」
誰がじゃ!
「俺、放課後はバイトがあるのですが……」
「そうか。だからどうした?」
「いや、俺の生活費がかかってるのに相談もなく生徒会なんかに入れられても困るんですよ!?」
「なに、心配は入らん。その日の仕事さえ終われば帰って構わん」
会話が繋がってない!?
「とにかく決定事項だ。異論は認めん!」
横暴だ!
かくして、この俺、五反田吟遊は昨日、生徒会室へのノックを忘れてしまったことを一生後悔するだろう。
なぜなら、それがきっかけでこの横暴副会長に生徒会に入れられてしまったのだから……
オリジナル作品は初投稿です。
ふりがなは
会長 真奥 姫嫁(まおう ひめか)
副会長 遊佐 神子(ゆさ みこ)
店長 布里州 空斗(ふりす あくと)
娘 布里州 智香(ふりす ともか)
男子 六塚 剣司(むつづか けんし)
です。
意見感想罵倒誤字脱字報告大歓迎です。
よろしくお願いします。