とある六位の無限重力<ブラックホール>   作:Lark

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チュウショク

 

 

 

 『学舎の園』

 

 

 第七学区の南西部にあり、五つのお嬢様学校が共同運営する地帯だ。敷地面積は二キロ四方と波の学校の十五倍以上はあり、内部は外とは別世界と言っても差支えないほど高尚な街並みが広がっている。

 その『街』の中では男性に対して徹底した排他的主義が貫かれており、施設の従業員や街を守る警備員においても女性しかその役を担えない。

 

 

「おい御坂、さっさと探しに行け!」

 

 観客席から長点上機の学生が美影に厳命する。

 勿論彼らからは美影が持つ紙に書かれた『お題』を視認することは不可能だ。だが何にせよ、美影の足が止まっていることは学校への打撃の初めの段階のようなものである。

 

 

(…………、ぅぁ~)

 

 

 口からは出ないが、心の中で情けない唸りを上げている美影の思考速度は意外と高い。彼が今必要としている人種が如何なるものかは理解している。幸運なことに、それに当てはまる人物を美影は数人知っている。

 

 まずは彼の妹、御坂美琴。彼女も「学舎の園」にある学校』の一つ、常盤台中学の生徒で剰えエースだ。しかし、勝負事には人一倍敏感で好戦的な彼女がはたして兄と言えどライバル校在籍の生徒の力になるだろうか、と訝しく思ってしまった時点で時間の浪費の可能性が生まれたため却下、と美影は選択肢から消去する。

 

 続いて、彼女の後輩である白井黒子。彼女にとって御坂美影という人物は御坂美琴の兄という、とどのつまりオマケ的位置に置かれているという線が強い。ならば前述のとおり長点上機学園への助力が期待できない美琴を崇拝する彼女が美琴の意に反すると思われる行動をしてくれるのか、という疑惑が生まれたことでやはりこちらも時間の無駄の可能性があるため、却下、と美影は心の中で印を押す。

 

 そして、美琴や自分と同じ、超能力者の一人である、食蜂操祈。彼女に至っては美影に好意を向けているということは彼自身も承知の上であり、恐らく何かしらの手段で声をかければ過剰なまでの接近を兼ねて手を貸してくれるだろう。

 しかし、万が一彼女に頼んだ暁には、

 

 

 

(…………イジられるッッ)

 

 

 

 選手宣誓を共に行い、その後長くない時間帯に重なるようにツーショットがグローバルネット用のカメラに戴かれた折には二人はそういう関係(・・・・・・)であるとテレビの前の皆さんに思いこまれてしまうであろう。最悪の場合、彼女から率先してカメラに向かって爆弾発言をされる危険も無きにしも非ず。

 となれば、まだ自分が名を知らぬ少女に声をかけるしかない、と美影は決心して走り出す。

 しかし、『学舎の園』というのはある意味で簡略化すると、箱入り娘の『箱』であり、世間知らずのお嬢様の限られた『世間』なのだ。中には男性恐怖症という性質を挟持している少女もいるに違いなくて、その部類に『当たれ』ば図らずも通報につながるかもしれない。

 

 

(……、こうなったら、)

 

 

 自分は御坂美影ではなく、『御坂美琴の兄』という枠組みにあることを内的世界で優先させ、忌々しいニセ海原が被る仮面並みに爽やかで物柔かな笑顔の養殖に精神力の全てを注ぐ。

 

 

 

 ◆

 

 

 土御門元春は街を走っていた。

 科学の街、学園都市で一週間にわたって行われる大覇星祭の最中、彼と同業者である『魔術師』がこの街に潜入しており、更に何らかの取引が行われているという情報が入ったのだ。

 科学と魔術は決して相俟ってはならぬ二律背反であるため、魔術側である自分が対処することになったのだが、今だその潜入者を発見していないためこうして街を駆け巡っているのだ。

 

(ちっ、面倒だな)

 

 一旦立ち止まって土御門は街を見渡す。

 街の他の場所では仲間が同じく捜索にあたっているのだが、連絡が入らないところを見ると現状は似通っているのだろう、と進歩度合いを推定したとき、彼の耳に少女たちの話し声が飛び込んできた。

 

「あ、こちらの会場でお兄様が競技に参加しているらしいですよ?」

 

「え? お兄様が?」

 

 見るとその話は常盤台中学の生徒の中で繰り広げられていた。

 彼女たちが見上げている競技場は陸上競技用のものだろうか、と形状や規模から土御門は予想する。

 

「お兄様の応援にでも行きませんか?」

 

「で、でもお兄様のお邪魔になったら、」

 

「大丈夫ですよ。御坂様と同じで、お兄様もとても優しい方ですから」

 

 

(…………、)

 

 ちょっと頬を染めながら相談している少女を眺めて、土御門は自分が今置かれている緊急事態を一瞬忘れかけた。

 

 

「お兄様が―――」「―――お兄様を」「―――お兄様も―――」「お兄様って―――」「お兄様だって―――」「―――お兄様は」

 

 

 そんな会話を耳にはさんだ土御門はサングラスの下から血の涙を流しそうになった。

 

 

(こ、これが触れ合う年下女子の九割以上を『妹キャラ』に変えるという、『カゲやん病』……。くぅ~、こっちは死にもの狂いで街を守ろうとしているっつうのにカゲやんのヤロウ、羨ましすぎるぜい妬ましすぎるぜい。どうにか俺にもそういったラブコメ性質が備わったらにゃ~、あらゆる少女を義妹に変えてやるってのにッッ!!)

 

 

 義妹を持つ少年、土御門元春。

 彼の妹に対する希望と夢は、未来永劫無限大。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

『五校対抗、借り物競争は期待を裏切らない長点上機学園の大勝利になりました!』

 

 アナウンスが陸上競技場全体に鳴り渡った。

 この言葉の通り、本競技においては長点上機の生徒が上位を独占してしまったため、他校の生徒は要求された品を苦労の末この場に運ぶことが出来ても涙を飲むことになった。

 

「ごめんね、面倒なことに巻き込んじゃって」

 

 温かみのある微笑みで、美影は一人の少女に、競技の運営委員から受け取ったスポーツドリンクが入ったストロー付のドリンクボトルを手渡した。

 

「いえ、御坂さんのお兄様のお願いであるならば、喜んで手をお貸ししますわ。あ、ありがとうございます」

 

 感謝を一言添えて、縦ロールの常盤台生はドリンクボトルを受け取り、ストローを咥える。

 結論に追加事項を加えると、美影はこの競技において妹と同じく見事一位を勝ち取った。何故なら会場を走って出て、百メートルとない距離で常盤台の生徒の数人の集団を発見し、自分でも恥ずかしくなるほど紳士的な声色で声をかけるとその中の一人であった彼女が自薦してくれたのだ。

 往復に要した時間は一分ほどであり、二位とは十分以上の差を開けた圧勝だった。

 

(あー……、何とかなった)

 

 心の底から安堵した美影は小さく息を吐いた。

 形式ばった行事が苦手な美影が、形式と隣り合わせで育てられたであろうお嬢様を探すことになった時には本人はどうしたものか、と冷や汗をかいたのだが、美琴によって我にも無く形作られた『お兄様パワー』というのは貴いものらしく、常盤台の生徒相手には無敵かもしれない。

 

「あら?」

 

 ある程度喉を潤した縦ロールの常盤台生はドリンクボトルを見つめてふと気づく。

 

「お兄様の分はあるのでしょうか?」

 

「ん? ああ、」

 

 美影は運営委員が仕切っている給水コーナーを見たが、ドリンクボトルの数は選手一人に二つ与えられるほどの用意がないらしい。

 そもそも借り物競争において『人間』を要求されたのはあくまで一部であり、選手の中には『競技用車椅子』といった運ぶこと自体が難事な無生物の要求をされた人物もいたようだ。

 

「まあ、俺はいいよ。そんなに動いたわけでもないし」

 

 実質美影の喉は問題視するほど水分に飢えているわけではないのだが、

 

「いけませんわお兄様!!」

 

 形相を変えて、縦ロールの常盤台生は美影に詰め寄りドリンクボトルを美影の口に近づける。

 

「この炎天下では直ぐに水分不足になってしまいますわ! もしお兄様に何かあったら私は女王に見せる顔がありません!」

 

 女王というのが食蜂ならば今の台詞の前提が一体なんなのか美影は追求したくなったが、口を開ければストローを突っ込まれそうなほどボトルとの間合いは微々たるものになっていたため、美影は大人しく寄り目で位置を確認したストローを咥える。

 ボトルは縦ロールの常盤台生が持ったまま、吸水して喉を三回ほど鳴らして口を離して一言感謝する。

 

「ん、ありがと」

 

「あ、いえどういたしまして」

 

 突き出していたドリンクボトルを引きもどした彼女は、ストローの先を見て己の行動の不純さに気づいた。

 

(!! ……、こ、これはいわゆる間接キ……、あ、あああ私はお兄様になんてことを……!!)

 

 よく見ると分かるストローの先端の穴から見えている僅かな水滴は果たしてボトルの内部に入れられたスポーツドリンクか、はたまた彼の口から移った唾液か。

 顔を真っ赤に染め、羞恥心に囲まれた彼女の手は極寒の地に放り出されたように震えている。

 

「ん、お連れの子達がきたようだね」

 

 美影の声で半分未満ほど我に返った縦ロールの常盤台生が競技場の出口を向いたところ、そこには自分と同じく常盤台の体操服を着た友人たちが待っていた。

 

「それじゃまた。力になってくれて嬉しかったよ」

 

 競技も終わったためこの場にいる理由もない美影は最後に微笑んで彼女から離れていった。

 彼女の手元には最後に彼の口に含まれたストローが差し込まれたドリンクボトルが割れ物を扱うように大切に支えられているが、その後それがどうなったかは彼女しか知らない。

 

 

 

 ◆

 

 

 食蜂操祈は一人街を歩いていた。

 彼女も学生の一人であるのには変わらないため、とある競技を終えて今後の時間の有効活用方法を模索していると、近くの大型ビジョンからアナウンスが聞こえた。

 

『五校対抗、借り物競争は期待を裏切らない長点上機学園の大勝利になりました!』

 

 長点上機学園、という名に反応して振り向くと、そこには彼女が想い焦がれる少年の姿が映っていた。

 

(あ、美影さんだぁ☆)

 

 忽ちにこやかに表情を入れ替えた食蜂は巨大な画面を見続ける。

 

『中でも、圧倒的タイムで一位を獲得した御坂美影選手は、先ほど同じく借り物競争で一位となった御坂美琴選手の実の兄です!!』

 

(さっすが美影さぁんっ!)

 

 目の輝きをいつもの三割増にして凝望していると、見覚えのある少女にカメラのアングルが向けられた。

 

(…………、あらぁ?)

 

 その少女は、食蜂の『派閥』に属する彼女の取り巻きの一人の縦ロールの常盤台生であり、また彼女の側近でもある人物だった。

 見ていると、縦ロールの常盤台生は美影からドリンクボトルを受け取っており、それで喉を潤している。さらに自分の口を付けたそれを美影に詰め寄って強引に関節キスさせているかのようであり、それを終えた彼女はドリンクボトルを大切そうに両手で持っていたように食蜂には見えた。

 

 

(あらあらあらあらあらあらあらあらあらあらあらあら、あ~ら~ぁ?)

 

 

 目の輝きをいつもの十割減にして眺望していると、食蜂はバッグから携帯電話を取り出して、とあるワードを並べて検索をかけた。

 

――――――『サラダ油 カロリー』、と。

 

 サラダ油:精製植物油の一種で、指定された原材料の中から数種を用いた日本の食用油類の総称である。ドレッシングやマヨネーズなどの原料の一つであり、スナック菓子の『サラダ味』はサラダ油の味のことを指す。大さじ一杯あたり、126キロカロリーほどである。

 ※飲むと太ります。

 

 

 ◆

 

 

 昼時となり、どこかで食事をと空腹に従う頃合いなのだが、美影が現在探しているのは食事処ではない。

 彼は母と、加えて妹との待ち合わせをしているのである。美琴によって提案された場所に一足早くやって来た彼の周りには道路を行き交う人々にあふれている。

 何故なら今の学園都市は住人の二百三十万人だけではなく来客者による人口爆発が起きており、その全員が昼食を追い求めているのだから過疎など起こるはずもない。

 このままだと母や妹を見つけるのは至難どころの騒ぎではない、と美影は歩行者天国の車道から歩道へと出る。歩行者天国によって本来自動車が走り抜く交差点は人の波が起こっているが、本来人間が通行する歩道は思いの外、人口密度が低かった。

 交差点の端に立てば見渡す範囲も拡大し、また彼方からでも見つけやすいであろう、と胸を撫で下ろしていると美琴の姿の発見に早々成功した。

 

「おーい、美琴ー」

 

 名を呼ぶと美琴も美影に気づいたため歩み寄って来る。

 これで一人目、と続いて母の姿を探すためにも兄妹そろっていた方が何かと都合がいいと考えていると、

 

「あ、」

 

 二人が数歩ずつ進めば合流を達成できるといった距離になったとき、ふと何かに気づいた美琴が口を半開きにして音を発した。

 美影がその一文字について首を傾げるよりも早く、彼の背後で何者かが大声で叫ぶ。

 

 

 

 

「みーかーげーちゃああああんっ!!」

 

 

 

 その人物は美影の名を呼ぶ声が彼の耳に届いた直後、走行から減速に転向することなく全身を打ち付ける様に彼の背に跳びかかった。

 

「え―――」

 

 名を呼ばれたが振り向く暇もなく、背面全体に圧力を受けた美影は一連の被害に大きな既視感を感じたが、今度は上手く受け身を取ることも出来ずに肩の上から背後の人物に腕を通されたまま両手両膝をアスファルトに打ち付けてしまった。

 

「会いたかったよおっ!」

 

 その人物は倒れ掛かった美影の背に体を重ねて強く抱きしめて再開を喜んだ。

 声と行動から特定した美影は顔と体を起こさずに弱弱しい声で注文する。

 

「……美琴ちゃーん、あとでジュース奢ってあげるからこの人引きはがしてくんない?」

 

「……、何でまたジュースが報酬なのよ」

 

 ため息を吐いて呆れた美琴は兄の背に乗っている人物に命令する。

 

「ママ、どいて。悪目立ちするから」

 

「えー? イイでしょ親子なんだから」

 

 兄妹の母、御坂美鈴は通行人の視線に構うことなく抱きしめつづける。

 またしても美影は妹のカラダには備わっていない女性特有の圧力を後頭部辺りに受けとめるが、美琴は今度は本気で敗北感から生まれる拒絶を示す。

 

「退きなさいツ!」

 

 前髪からバチバチと電気を発生させる娘に感化されて大人しく離れた。

 

「……、そうよね、美琴ちゃんのお兄ちゃんだものね」

 

「ど、どういう意味よ!?」

 

 母には敵わない娘は心理的に惑わされて慌てだした。

 二人に構うことなく痛めかけた膝を抑えつつ美影はゆっくりと立ち上がる。そして手に付いた砂を掃って息を吐いた。

 美琴とは正反対に、彼が異常なまで落ち着いているのは経験則なのか現実逃避なのか。戒めの気にもなれずに美影は言う。

 

「で、昼ご飯はどうすんの?」

 

「あ、席は取ったからそこにお弁当も用意してきたわよ」

 

 美鈴の手招きに従って、兄弟はついて行った。

 

 

 ◆

 

 

 美鈴が美影と美琴を引き連れてきたのはこじんまりとした喫茶店だった。

 そしてそこで待っていたのは上条家とインデックスであり、美影は軽く挨拶をした。喫茶店であるのにもかかわらず弁当箱を開けるのは不躾なのではないか、と危惧したのだが、見渡せば注文もせずに持参した手作り弁当を食べている家族も多いらしく、直ぐに変に気にすることも無くなった。

 そして、美鈴が張り切って取り出した、御坂家の本日のランチメニューは、

 

「じゃーん!! 今日のメニューはチーズフォンデューッ!!」

 

 バッグから巨大なチーズの塊や鍋や小型ガスコンロを取り出した母に美琴は、

 

「学園都市に危険物(プロパンガス)なんか持ち込んでくるんじゃないわよッ!!」

 

 手首のスナップを効かせて小気味よく美鈴の頭をはたいた。流石に今度は電撃を用いることはなかったが、美鈴は自由自在に涙腺を操れる大人の女性だったらしく、瞳をウルウルとさせて、

 

「うわーん! 美琴ちゃんにぶたれたよー。美影ちゃん慰めてーっ!」

 

 窓側に座った母は通路側に座らせた息子の腕に抱き付いて泣き言を訴えた。

 対して美影はそんな母親の頭を撫でることなく視線を明後日の方向に飛ばす。

 

「あー、うん、美琴ちゃんは反抗期に突入したんだろうねー」

 

 他人事のような無責任を匂わせながら美影はチーズフォンデュの準備を始めだした。朝ごはん代わりのたこ焼きもインデックスに半分以上食べられてしまったため彼はいい具合に空腹なのかもしれない。

 そして音速で立ち直った美鈴もガスコンロに火をつけてチーズを溶かしながら言明する。

 

「でもあれよ美琴ちゃん。小さなお弁当をチマチマと食べてるだけじゃ大きくならないし、育ってほしい所に栄養も行き渡らないわよ? だからこうして娘を思って乳製品(チーズ)を大量に持ち込んだのに」

 

「ちょ、……大きくなるとかっていきなり何の話を始めてんのよ……」

 

「あらーん? 私は骨のカルシウムをちゃんと摂って背を伸ばそうって話をしているのにー、美琴ちゃんってば他に具体的に大きくなってほしいところでもあるのかなーん?」

 

「だ、黙れバカ母ッ!! ええい、アンタもキョトンとした顔で見てんじゃないわよ! アンタも息子なら母親の暴走を止めなさいッ!!」

 

 顔を真っ赤に染めた美琴は何故か矛先を上条に向け、最終的に真顔で中々溶けてくれないチーズを突っつき続けている兄に怒鳴り出した。

 

「あーもう。別にあれだよ? お兄ちゃんは妹の恋愛にはよっぽどのことがない限り口出ししませんよ?」

 

 頬杖をついて決して目を合わせることなく美影は鬱陶しそうに軽く受け流すことにしたのだが、かえって別のベクトルからの予期せぬ攻撃を受けることになった。

 

「あらぁ、そういう美影ちゃんのほうはどうなの? 彼女とかできたのかなー?」

 

 母としては何気ない世間話なのであろう。

 そして美影も大して腐心することなくこちらも受け流すことに決めた。

 

「いや、別に何かあっても母さんには言わな――――――」

 

 窓側に目くばせをしながら軽く笑って与太話にでもしようとしたのだが、美影は口を半開きにしながら表情を硬変させてしまった。

 

 何故なら、彼は気づいてしまった。

 彼から見て美鈴の奥に設置された喫茶店の巨大なウインドウの更に向こう側。

 左右に伸びる比較的太くはない道路に。

 

 おごそかに前で手を組み、白百合のように楚々とした笑顔を浮かべて背筋良く直立している、美琴と同じ常盤台中学の体操服を着用した食蜂操祈がこちらを見つめていたことを。

 

 

 

 

 





…………、あれ、シリアスがない……のか……?

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