いつの間にかこれほどの日数が過ぎてしまいましたっていうかどれほど前に最後の投稿をしたか計算するのも末恐ろしくて正確には把握していなくてとりあえずすぐに続きを書こうと思ってさらに数日たってやっとのことで強引に一話仕上げましたけど兎にも角にもごめんなさい!!
馬場への肉体的苦痛を伴った尋問によって聞き出した研究所は、外見上は数年間人の手と関わっていない廃屋のようだったのだが、内部は箱から取り出した新品の家電製品のように曇りが見当たらないほど清掃が行き届いていた。
「…………、」
ワームホールを使って空間を跨ぐことでセキュリティを楽々突破して研究所に侵入した美影は、建物の内部に働く重力を感知することで広範囲に渡って遮るもののない視野を確保した。
内在する研究設備、収納された薬品、張り巡らされた電気回路。どれも使い古された、といった時間の流れに伴う塩梅が見られない。
そして、
(………………、誰もいない?)
この設備は美影を
馬場の心理状態を考慮すれば少なくとも彼が伝えられた配送先はここで間違いない。ここもダミーであるならば馬場芳郎が駒は駒でも捨て駒に過ぎない安物であったのだろうか。
(――――――まぁ、)
この研究所の隅々まで、果ては電子的な記録を閲覧すれば何らかの情報を手に入れられるはずだ、と美影は歩き出す。
◆
アイテムの四人は裏で手配された運転手が運転するワゴン車に乗ってとある研究所への移動を完了させた。
つい先ほど連絡が入ったが、襲撃者は既に研究所への侵入しており、またそれよりも早い段階で研究者の避難も終えたたとのことだ。
つまり、
「遠慮なくインベーダーに攻め込むことが出来るわね」
アイテムのリーダー、麦野沈利は三人に指示する。
「最初は私たちは三つ分かれて行動するわ。滝壺は私についてきなさい。絹旗はあっち、フレンダはこっち。滝壺の能力を使って相手の位置を把握して連絡を取り合いながら攻め込むわよ」
絹旗とフレンダには方向を指で示しながら効率よく説明し、滝壺にはシャー芯のケースのようなものを渡して、四人は研究所を見上げた。
「超分かりました」
「ふふん! 結局、私が撃破するって訳よ!」
「……おー……」
律儀な応答、大層な自負、無気力な気迫は彼女たちの平常運転に他ならない。
アイテムの四人は大覇星祭では味わえない、命を懸けあう凍り付くようなスリルに溢れた緊迫する競技へと進みだす。
◆
美影は研究所内をゆっくりと歩いていた。
目的地は先ほど能力を使って探し出したモニター室であり、そこでこの施設を利用していた研究者等の顔でも拝めれば、と企図している。施設の内部構造を視渡したことによってどの通路を利用すれば最短経路となるかは瞭然としているため、美影の足取りは一定のペースを保っている。
途中、研究室を幾つか経由することで取納められている資料をちゃっかり閲覧しようと収納スペースの中も重力を感知してみるのだが、そこには紙切れ一枚も入っていなかった。
(……、処分されたか?)
だとすると、この研究所の所有者はかなりの几帳面ということになる。
美影の捕縛の失敗を予見して逃げ出す準備をしていたとしても、ここまで徹底的な隠滅はそれこそ火を放って研究所そのものを消し去ることでしかできるなずもないだろう。
研究成果や研究の経過の保管場所を完璧に記憶しておき、遺失物なく持ち出す。それは如何に困難なことかは論じるまでもない。
(…………、)
腕を組みながら人の形跡のない研究室から出る。
ここまできて何も掴めないのでは骨折り損の草臥れ儲けもいいとこだ。
そして予定していたモニター室へのルートへとついた美影は歩き出す、が、ふと背後に人の気配を感じた。
連続して能力を使用するのは疲労につながるということもあり、研究所への侵入の直後や研究室内の捜査でしか重力の感知を行っていないため、移動中は周囲を視渡していなかったのだ。だからこそここまで接近されないと気づかなかったのだ。
美影は急がず焦らず後ろに振り向く。
そこには、見覚えのある少女が一人立っていた。
◆
ターゲットの座標を把握してから麦野は作戦を構築した。
近距離戦闘においては『アイテム』四人の内で最も実力を発揮できる絹旗が攻め込んでいる最中、何故か常時火薬を所持しているフレンダが研究所中にトラップを仕掛ける。
そして絹旗がターゲットを仕掛けだらけの空間まで追い込んでそこで超能力者である麦野が参戦。四方八方から繰り出される爆撃に、全てを分子レベルで溶解する能力を注ぎ込むことで一気に片を付ける。
そして絹旗は今、滝壺の指示に従ってとある研究室の傍にまでの進行を遂げた。
自然と呼吸音の制御も心がけ、拳にはあらかじめ能力で吸気中の窒素を収縮させておくことでいつでも攻撃に転じれるよう備えている。
(滝壺さんによればこの部屋にターゲットが超潜入しているとのことですが……)
相手が超能力者であるということはクライアントから宣告されており、その半数ほどとは面識のある彼女が個人名まで教えてくれないということは、まだ対峙してAIM拡散力場を記憶していない超能力者であるということなのか。
と、無駄に味方の事様を探っても無駄なだけであり、今自分が意識を向けるのはまだ姿の見えない侵略者であり、自分の仕事はフレンダの準備が終わるまでのその対象を足止めすることだ、と絹旗は集中力を一層肥大化させる。
すると、一人の少年が部屋から出てきた。
緊張感の欠片もないような足取りで廊下に出てきたその少年は、絹旗がいる方向とは逆方向へと歩み出す。
退室直後は絹旗の存在に気づいていなかったらしいが、気配を感じ取ったのか直ぐに立ち止まってこちらに振り向いてきたのだ。
その人物には絹旗は見覚えがあった。
そして、その人物を特定してから半瞬後、絹旗の脳裏に――――――
『――――――
――――――悪夢が甦った。
「!!」
自作した一杯の特性ドリンクが形作った少年のとろけ顔を思い出した絹旗の血は一気に湧き出し、つい先ほどまで再確認していた麦野の作戦は超高圧窒素により遥か遠くへ飛んで行った。
「超殺すッ!!」
彼女の拳には普段呼吸の七割を占める気体がまさしく桁違いの圧力で凝縮されており、人体を熟れたトマトのように難なく打ち潰せる打撃を迷うどころか意に背かずに叩き込む。
「絹旗ちょ――――――」
美影が彼女を確認したときにはすでに彼女の拳は文字通り目前にまで迫っていた。何か発言することも妨げられており、反射的に能力を発動させて辛うじて拳とそれを包む窒素からの回避を成功させた。
美影の鼻先ほどに作られたワームホールを通った絹旗は美影のすぐ背後に同時に創り出された出口へと拳を空振りさせ、そのまま速度を落とすことなく壁を打ち砕いた。
蜘蛛の巣状のヒビは完成と同時に崩壊し、爆音に近い鈍い音を研究所中に轟かせ、被害は天井や床にまで届いた。
◆
ゆるりと歩き続けていた麦野と滝壺は、どこからかやって来た轟音が耳へと運ばれた。
「絹旗の仕業か?」
「うん。きぬはたがみさかと遭遇したみたい」
絹旗とは違い、滝壺は麦野に今回のターゲットが美影であるということは伝えていたのだ。
なぜなら、
(……、やっぱりきぬはたが暴れ出した)
彼女は見たのだ。
垣根主催のパーティの終盤、一杯で酔いつぶれた美影が絹旗の唇を奪っていたことを。
予め美影のことを絹旗に伝えていれば彼女は必ずと言っていいほど周章狼狽するであろう。そうなればフレンダと麦野に不審に思われるため、彼女を気遣い黙っておいたのだ。
滝壺は能力で分析するが、絹旗は通常より荒々しく能力を発動させており、本気で美影を潰しにかかっているが仕事的には好都合なのかもしれない。
「まあ絹旗が一人で片づけるならそれでもいいんだけど、第六位相手じゃちょっとキツイかもね」
「……うん」
「フレンダの仕込みももうすぐ終わるし、私たちもそろそろ向かうわよ」
◆
砂埃が重力で床に落ちて視界が良好になるよりも早く、絹旗の拳がまたしても美影を襲おうとした。
「……なんなんだよおい」
呆れつつも同じようにワームホールで絹旗の軌道を断ち切って彼に危害が及ばない位置から出現させる。そして新品同然の内装の研究所のスクラップは徐々に進んでいく。
「ふ、ふふふふふははははははァ!! ここで会ったが百年目ェ! あの時の恨みは超忘れませン!!」
「ここで会ったが―――とか言う奴俺初めて見たぞ」
「超五月蠅いです!! よ、よくも私の―――私のォ――――――!!」
口調が変わりながら事件に関して訴えるが、消し去りたい過去の概要を口にするのが恥ずかしいのか、絹旗は赤面しながらまたしても美影に窒素を装備した打撃を再開した。
「真っ赤な顔で殴りに来るとか怖っ」
美影は酔っぱらったときの記憶はふっとんでいるため、絹旗の怒りの理由も分からなければ、赤面しながらの襲撃が照れ隠しにつながることもない。
何度目になるか数えるのも忘れた殴打の回避をしながら、美影は思う。
――――――次は『アイテム』か、と。
しかし彼女の言葉から推測すると、馬場が捕獲を目的としていたのとは違い、絹旗は撃退を目的としているように考えられる。
ここで捕獲作戦の第二段階ならまだわかるのだが、絹旗の殺意を目の前にしていると相手のクライアントの真意がまるで見えてこなくなった。
一体、黒幕は何を欲しがっているのか。
美影が現在携わっている実験の情報を盗まれたからこそ、その成果を我が物にしようと暗躍する何者かの仕業と推測していたのだが、ここにきて他の可能性も出てきた。
(――――――
それならば捕獲を挟むことは在り得なくもない。
だが、やはり不可解な点は存在している。
(……、あの実験は
実験は続けているが、やり遂げられる見込みはほぼゼロなのだ。
それでも美影の身を狙う研究者が実験を試みて、その
完了しない推理を中断させ、ふと辺りを見渡す。
暴走に近い乱心状態の絹旗によって研究所の一角はボロボロだ。このままでは後で調査しておくはずのモニター室も破壊されるかもしれない。
(ちょっと動くか)
躱すのではなく一時撤退。
モニター室とは正反対の方向に美影は走り出した。
「超逃げるな!!」
絹旗は能力で脚力を膨張させて美影の後を追う。
ここは研究所内であるため、勿論進み続ければ行き止まりはある。が、美影は立ちはだかる壁をブラックホールで消し去って休まず疾走し続ける。
壁を通り抜けると、その先は広い空間があった。
天井や壁には通気用なのか剥き出しのパイプが続いており、光源となる照明器具は不十分で薄暗い。下の階まで続いているのか足で蹴ることが出来る床が続いていないのだが美影は迷うことなく突っ込んでいく。自身の重力を操作して放物運動で落下することなく飛翔していった。
その直後――――――
――――――美影を複数の小型ミサイルが襲った。
ほんの一瞬だけ広い空間が爆炎によって照らされて視覚に訴える光が増量したが、それ以上に聴覚を腹まで震えさせる爆音が刺激し、轟音の余韻が消える頃には爆煙によって視界は制限されていた。
「やぁったやった――――ぁ! いい感じに直撃してくれたって訳よ――っ!」
全身ではしゃいでいるのはミサイルを同時発射したフレンダだ。広い部屋の床、美影から見てななめ下から打ち上げたらしい。
美影を追跡していた絹旗にも被害が及ぶ可能性があったのだが彼女はその可能性にも気づいていないらしい。だが好都合に絹旗は、爆炎が消え爆煙が巻き起こる頃に美影が作り出した穴を通り、あるべき軌道を描いて床へと落下するが能力で足への衝撃は殺してフレンダに歩み寄った。
「あれ、絹旗いたの?」
「いましたよ。あとちょっとで私にも超直撃するところだったじゃないですか」
「まあまあ。無事だったんだから良いって訳よ。それに、これで御坂も終わりなんじゃないの?」
どうやらフレンダにもターゲットが美影であることは滝壺から伝えられていたらしい。だが絹旗はその自分との差異には気づかなかったらしく、質問を投げかけることなく頭上にある晴れ気味の煙の中を目を凝らして凝視する。
「……本当に当たったんですかね?」
「どーいうこと?」
「もし当たったなら血や肉片が超降ってきてもおかしくはないはずなのですが……」
だが現実は美影の衣服の切れ端も落ちてこない。
その観点に気づいたフレンダの顔色が一気に青くなる。
煙が晴れた時、そこにあったのは、
「―――――あーびっくりした」
天井にコウモリのように逆さに立つ美影の無瑕疵の姿だった。
直前で重力操作で体重に負号を付けて天井へと落下したのだ。美影自身の肉体には宇宙方向へ重力がかかっているが、衣服は能力の範疇に入れていないらしく、体操服の上から着用しているパーカのフードは垂れ下がっており、位置的に被っているように見える。
「一応聞いておくけど、お前ら俺を殺そうとしてんの?」
「ええ、正体が超不明の人物からそう依頼されました」
フレンダとの合流で精神状態が落ち着いた絹旗が答えた。
それに美影は二人には聞こえないであろう小さなため息でリアクションをする。思いの外今回の事件は厄介であり、対処は困難だ。
「……………見逃してくんない?」
苦笑いで交渉を持ち掛けるが、少女二人は意思が揺らぐことすらもない愛想の悪さで断言する。
「超お断りします」「ギャラが無くなるから嫌って訳よ」
一時は勧誘してきた組織なのだが数日間での気の変化が激しすぎる、と美影は女の魔性さに舌を巻く。
彼女たちの仲間の残り二人の接近は重力を感知することで正確に把握しており、あと一分もたたない内に合流されることは目に見えていた。
(どーしたものか……)
ポケットに両手を突っ込みながら、美影は『アイテム』の料理方法を経験から探索するが、相手が特殊すぎて過去の戦闘のどれにも類似点は見つからない。
とかなんとか困り果てていると戦闘の再開の合図は相手に奪われてしまった。
(!)
白く輝く光線が壁を貫通して直線に沿って美影に向かう。
重力を感知し続けていることで対処は然程難しくはなかったのだが、回避しなければ美影のカラダは間違いなく消え去っていた。否、分子レベルで溶解していた。
「さーて、そろそろ私も参戦しようかにゃーん?」
語尾の様に猫を被った彼女たちのリーダーが、自身が壁に開けた巨大な風穴を通り、悠々と歩いてくる。
美影と同じ、超能力者で序列は第四位。
攻撃性に長けた能力、
◆
昼食と夕食の半ばに差し掛かったファミレスは空いていて良い、というのが見た目高校生ほどの男の感想だ。
ドリンクバーで淹れてきたコーラをストローで飲みながら大覇星祭を特集した雑誌を読んでいる。
彼の向かい側の席には小学生か中学生か判断できない程度の容姿を持った可愛らしい少女が座っており、ハサミで何かが印刷された紙を切っていた。彼女のテーブルの上にはパンケーキがおかれており、ナイフやフォークとハサミを繰り返し持ち替えている。
「んー、六時半からナイトパレードが始まるけど、お前どうする? お前が好きなゲコ太とかもいるってさ」
『See Vision』という出版社の雑誌に掲載されている情報を読み取って男は話を持ち掛けた。
「別に好きじゃないけど」
少女は素っ気なく答えてハサミの刃を進める。
「そんなことより、」少女が気になるのは、「御坂美影のほうはどうなのよ。
「いいじゃんいいじゃん遊ばせても。そんなにムッとした顔しなくても別に――――――」
ザクリ、という貫通音が鳴った。
男が読みふけっていた雑誌の中央に少女のハサミが突き刺さったのだ。
「あんな
他の客は周りに少ないがいる。多少の配慮を意識しても男に対しては明らかに怒気を向けていた。
突き刺したハサミから手を離し、パンケーキにフォークを突き刺してライオンが肉にかじりつく様に豪快に食す。
「……、美影くんを本気で殺すつもりならむしろ両方に声をかけたけど、垣根帝督にあの実験の情報を掴ませたら萎縮して美影くんの相手をしてくれそうになかったから、麦野沈利には情報を与えずに依頼だけ渡したんだ」
垣根に関しては思いの外理性的だったと男は後悔していた。
麦野には美影の本質の危険性に気づかれない内に駒となってもらったのだ。
「それに、お前は美影くんの相手をしたいんだろ?」
男は雑誌に突き刺さっているハサミを抜き取り、少女の前に優しい手つきで置いた。
「…………、」
「今回はその
「……それは……そうだけど、」
少女は大人しく声を弱める。
男はハサミが刺さっていた雑誌の穴に手を添えた。
「ま、『アイテム』に殺されたら、美影くんはそれまでの男ってだけだけど」
男は雑誌から手を離した。
雑誌に開けられていた穴は、跡形もなく消え去っていた。
最近忙しかったので全然活動できませんでした。
応援してくださった方々、本当にありがとうございます。次の話が何時出来上がるかはまた謎ですが冬休み期間中は頑張るつもりです。
◆
話は変わり、
アンケートします!!!
次の章に関わるっていうか大きく左右する大切なアンケートになっておりますので是非、
活動報告のほうをご覧になって参加してください!!
※活動報告の方でアンケートの票を入れてください。