とある六位の無限重力<ブラックホール>   作:Lark

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原作(レールガン)の大覇星祭編がよく分かんないためやはり原作完全無視続行です。


キョウダイ

 

 ◇

 

 

 

 

 

 赤い夕焼けが街を覆い、清く流れる川が煌めく紅色を反射する時刻。

 大きな鉄橋がかかった河の岸。雑草が生い茂る河川敷に一人の少年と、一人の少女がいた。

 

 

「お兄ちゃん、勝負よ勝負!!」

 

「いーやーだ。何で俺が」

 

「私がレベル5になる前はやってくれたじゃないの!」

 

「レベル5になったから尚更だ。お前も分かってるだろ? レベル5の能力者がぶつかり合ったら周りへの被害もデカくなるってことぐらい」

 

「そ、そうだけど……」

 

「それに、お前はもう序列では俺よりも上なんだから、もういいだろ?」

 

「良くない!! 私はお兄ちゃんに一度も勝っていないんだから!」

 

「ならお前の不戦勝でいいから、時間も時間だからもう帰れよ」

 

「ちょ、ちょっとお兄ちゃん!!」

 

「さいなら~~」

 

 美影は片手を振りながら妹に背を向けて己の帰路につき始める。

 いつの間にか、自分に対して真摯に向き合ってくれなくなった兄の背を睨む美琴は不貞腐れたような表情になった。

 

 

「~~~~~ッ!!」

 

 両の拳を強く握りしめ、歯と唇を強く閉じて、悔しそうに立ち竦む彼女は、兄の背中が見えないほど小さくなっていく前に今までにない大きな決心を深く、深く、固めた。

 

 

 

 

「――――――御坂美影(・・・・)ッ!!」

 

 

 

 生まれて初めて兄をフルネームで大声で叫んだ。

 一瞬、ほんの一瞬だけ美影はその咆哮が誰から飛んできたものなのか判断が遅れた。

 

「――――――?」

 

 瞠りながら振り返ってみると、そこには今にも泣きだしそうな顔で人差し指をこちらに向けている妹が立っていた。

 

()アンタ(・・・)が私を無視するって言うなら、私にも考えがあるわっ!!」

 

 その指はよく見ると小さく震えていた。

 迷いつつ、怯えつつ、退き返したいと何度も葛藤し続けながら、弱い自分の内を振り払いながら、一人覚悟を決めながら我儘(・・)を最後まで言い切る。

 

「私がアンタに『負けた』と確信するまで、私はアンタのことを名前で呼ぶ!!

 

――――――私と美影は、今から『ライバル』よッ!!」

 

 

 全てを吐き出して、美琴は呼吸を整え始めた。

 無言で聞き手としてそれを受けとめた美影は、丸くしていた目を通常のものへと戻す。そして、口を開ける。

 

「…………、」

 

 が、中々声が出てこなかった。

 斜め上をチラリと見て考えてもも言葉の取捨選択は中々終わらない。妹の想いを馬鹿なことと吐き捨てて非難するのはこの上なく容易いのだが、初めからそんな無責任な一喝を考慮しないだけの寛容さは彼にはあった。

 

「ッ~~~~」

 

 兄の反応を待ちかねている美琴はしかめっ面を(ほど)かずにいた。

 

――――――ここで兄が叱ってくれれば、

 

――――――ここで兄が叩いてくれれば、

 

 そんな淡い願いを抱き、その退き返す起点をどこかで待ち望んでいた。

 しかし、兄の選択は妹の望まぬ希望(・・・・・)を裏切ってしまったのだ。

 

「!?」

 

 突如兄の姿を見失った。

 涙が込み上げそうになりながらも瞬きさえも堪えて目を逸らさずにいたはずなのに、目の前から切り取ったようにいなくなってしまった。

 そして一秒にも満たない時間に、視線で探すよりも早く、彼女が常時放出している電磁波で背後での存在を確認した。

 

「―――!」

 

 振り向こうと足腰に力を入れるが――――――振り向けなかった。

 頭に兄の手を添えられた。ただそれだけにより彼女は萎縮してしまった。

 怯えたわけではない。ただ、兄の暖かい手を感じたことにより今の自分が酷く愚かに感じてしまったのだ。

 

「――――――そっか、」

 

 寂しさが込められていた兄の声が彼女に届いた。

 

 兄がこの場で言ったのは、ただそれだけだった。

 

 後ろにいる兄の顔を見る勇気が、彼女にはなかった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 九月二十五日。

 

 大覇星祭最終日に当たるこの日、一週間にも及ぶ超規模運動会のフィナーレへと近づいていた。

 しかし、運動会を終えるために不可欠な要素がまだ完成していなかった。それが今、学園都市中の話題の中心になっていると言ってもいいだろう。

 

 それは、学校部門の優勝校。

 

 全ての競技を判断材料とするこのランキング付けは、全ての競技を終えて尚、完了してはいなかったのだ。

 即ち、同点で並んでいる二校が存在するということだ。

 

 一つ目は、長点上機学園。

 前年度の優勝校であるこの学校としては、一位の結果は誇らしいのであろうが同率という付加情報は余分であるに他ならない。

 二つ目は、常盤台中学。

 前年度の雪辱を果たすべく奮闘した成果と言えば外聞としては良いのかもしれないが、不完全という実態は否めない。

 

 つまり、両校は納得出来ていない。

 

 本当の意味でこの祭を終えるには優勝校はたった一つにまで絞り切りたいというのが両校の望みであり、学園都市の外部からやって来た観客たちもハッキリ言って中途半端な結果を目の当たりにして学園都市外へと帰るのは不本意であろう。

 

 

 

 そこで、学園都市の上層部が運営委員へと命令した内容は――――――

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 とある競技場のとある控室。

 長点上機学園が誇る超能力者四人は急遽この場に集結させられ、彼らの前で彼らの担任である有澤が説明していた。

 

 

「――――――てなわけで、誰かやりたい奴いるか?」

 

 飄々と無表情に説明し終えた有澤は他人事のように四人に尋ねた。

 上層部が急遽決定したのは、真の一位を決定する最終競技。

 

――――――一対一の、能力者による決闘(バトル)

 

 互いに超能力者を有するエリート校であるからこそ組み立てられる舞台であり、最後の華やかな結末として文句のつけようのない催し事だ。

 

「面倒くせェ……」

 

 超能力者序列第一位は控室のベンチに横になりながら興味を示さない。

 

「面白そうだな」

 

 序列第二位は比較的に興味を示しているが、第三者のようなニュアンスがその声と表情に含まれていた。

 実は初日の競技でこの二人による二人三脚の黒星がここまで響いたのだが、責任感などは消しカスほどもないらしい。

 

「中々根性ある最終競技だな」

 

 序列第七位は腕を組みながらどっしりと構えている。が、他を掻き分けてでも出場したいというような暑苦しい要望はないらしい。

 それが三人の感想であるが、進んで参加したいという素振りは見えない。そこで有澤は、

 

「御坂はどうだ? 一対一のガチンコバトル」

 

「……、そうですねぇ……」

 

 ベンチに腰を下ろしている彼は、視線を有澤からずらして軽く悩んでみる。

 相手の常盤台から選ばれるであろう選手は予想がつく。長点上機が優勝を目指しているのは火を見るよりも明らかだ。そして美影としてはハッキリ言って優勝するかしないかはコーヒーに砂糖を入れるか入れないかよりどうでもいい。

 だからこそ、場の流れに乗るだけで構わなかったのだが、目を逸らして口を半開きにしている彼に一通のメールが届いた。

 

(……?)

 

 バイブ機能に気づいて携帯を取り出して画面を見てみると、そこには『from美琴』と映し出されていた。

 内容は回りくどくもない直球なもので、『この後の勝負、コッチからは私が出るからソッチからはアンタが出なさい』という命令だった。

 

(…………ぅぁー……)

 

 ほんの僅かに口が大きく開いた代わりに、ほんの僅かに目が細くなった。

 ここまで盛んな戦意を少しは分けて欲しいと思うのと同時に変わりの無い妹を微笑ましく感じていると、メールがまだ終わっていないことにふと気づいた。

 下へ下へ、と親指でボタンを押していくと、最後の一文が彼の目に飛び込んできた。

 

 

 

『出てこなかったら、アンタの写真を学校でバラまくから』

 

 

 

(…………、成長したな、美琴)

 

 微笑みながら携帯を閉じて妹にも変化があったと心の中で改める。

 息を深く吐くことで心を落ち着かせることに努め、両肘を両膝に付けて両手で顔を覆う。

 

 

 

 

(……………………成長、しちゃったな、……美琴……)

 

 

 

 絶望指数が一五ほど上昇した。

 仮に妹が目の前にいたら、彼女の尻に悪魔的な黒尻尾が生えているのを幻視していただろう。

 人の扱い方が一つ進歩してしまった妹を兄である美影は寂しくも空しくも思った。人の追い詰め方を習得してしまったことに兄として責任を感じるが、再教育法は残念ながら思いつかない。

 

「……、どうした御坂?」

 

「いえ、何でもないです……はい」

 

 手を顔から話して担任の有澤に目を向けると、彼は決心して言い切った。

 

 

「俺が出ます」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 常盤台中学校の控室。

 全校生徒が入ってきても有意義に利用可能なスペースはあるのだが、この競技の出場者は美琴しかいないため、殺風景にも見える。

 美琴は一人、ベンチに座りながらゲコ太型の携帯電話の画面をぼんやりと見つめていた。

 送信済み、と認定された兄宛てのメールの文面は一字一句打ち間違えることなかった。だからこそ、彼女は無言でその文面を繰り返し黙読していた。

 

(………………、)

 

 ずっと待ち望んでいた展開だ。

 大覇星祭という巨大な行事なんて只のオマケに過ぎないと断定してしまうほど、彼女にとっては重大な勝負だ。

 だからこそ、顧みることが多い。多すぎると言っても良い。

 

「お姉様……?」

 

 控室に白井が入って来た。

 声に反応して美琴は顔を上げる。

 僅かに物寂しさが籠っているその表情を白井は訝しく思った。

 

「……どうしましたの? この後お兄様との勝負というのに浮かない顔をされて」

 

「あ、……うん、ちょっとね」

 

 気持ちが引き締まらないままではいけないと自覚している美琴は、少しであっても胸の内を吐露することに決めた。

 

「……黒子ぉ……私って、美影に勝てると思う?」

 

「えっ……?」

 

「……私ね、今まで美影に何かで勝ったことがないのよ」

 

「……、」

 

「ちょっと前までは会うたびに勝負を持ち掛けたりもしたんだけど、私がレベル5になった途端真面に相手してくれなくなっちゃったんだよね……」

 

 活気とはかけ離れたモノを包み込んだ腹案を、白井は黙って聞き続ける。

 

「本当は分かっていたのよ。同じレベル5になったとしても、序列で追い越しても、美影には到底追いついていないって。それを私に実感させないためにアイツが勝負を避けているって。……でも私はバカみたいに対抗意識を燃やして、兄をまるで他人みたいに名前で呼ぶようになっちゃったの。……、ホント何やってんだろうね、私」

 

「…………、」

 

 気が晴れるかと思い胸中を打ち明けたが、返って現実と向き合って憂いに染まってしまった。

 後輩として半年にも満たない時間しか共に過ごしていない白井にとって、目の前の先輩が抱え込み続けていたのはあまりにも大きく、重い。だからこそ白井は美琴が彼女自身と決着をつけさせられるよなチカラなどは持ち合わせてはいない。

 

「――――――、」

 

 だからこそ、ここで白井が言えるのは一つ。

 

「わたくしが知っている御坂美琴という人物は、」

 

 それは、彼女が共に過ごしたことにより断言できる、事実。

 

「無鉄砲で後先考えずに突っ走ってしまうような、とても扱いに困るような方ですの」

 

 あの少年に比べて目の前の少女に関して知っていることは酷く劣るであろうが、これ(・・)は彼にも否定させない。

 

「――――――何かをする前に落ち込んでしまうなんて、全くもって似合う人ではありません」

 

 お淑やかに、静かに述べたその見解を美琴は一字一句漏らさず受けとめた。

 

「……、そうね、」

 

 胸の中に溜まっていたモヤモヤとした気持ち悪いものが少し消え去った気がした。

 そのおかげで幾分か軽くなった体を起こしてベンチから立ち上がる。

 

「ありがと、黒子」

 

 この先は、自分で進む。

 自分の我儘を終わらせるために、あの少年と向き合って全てをぶつけに行く。

 御坂美影の妹としてではなく、御坂美琴という一人の少女として。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 長点上機学園、控室。

 美影はベンチに横になり、左腕で両目を覆いながら(うつ)けていた。

 他の選手候補や担任は美影が出場することが決まって間もなく退出し、観客席へと向かったため、無駄に広い控室に今は彼一人だ。

 

「――――――……、」

 

 妹の挑発を受けとめたのだが、若干の後悔が彼には残っていた。

 正直な話、妹が脅しに使った内容が実行されたとしても美影は然程気にしてはいなかっただろう。勿論されないことに越したことはないが、代償である一対一の勝負は彼が数年避け続けていた惨苦に近い難儀だ。

 避け続けた理由は――――――彼の中でも明確なものになってはいない。

 幾つかあることは確かだが、それはつまり多義的であるということだと自覚している。

 

 とどのつまり、曖昧に逃げ続けてきたのだろう。

 

 

「なァに今にも寝そォな顔してンだテメエは」

 

 左腕を顔面から退かして声が来た方向へと目だけを向けると一方通行の姿があった。

 

「……、何で戻って来たんだよ? 観客席に行ったじゃないのか」

 

「満員の中じゃ落ち着かねェンだよ。打ち止め(ガキ)は芳川に押し付けてきた」

 

「……()だなぁ大勢の人に見られるのは」

 

「選手宣誓した奴がナニ言ってンだよ」

 

「ご尤もで」

 

 重い体を起こして背を付けていたベンチに座り込んだ。

 一方通行は適当なロッカーに凭れたまま立っている。わざわざ持ってきた缶コーヒーを美影に放り投げる。

 

「ナニを迷ってンだ? テメエの妹の扱い方ぐれェテメエが誰よりも分かってンだろ」

 

「……まぁ、ここで妹に華持たせて優勝させるのも悪くないし、まだまだ現実は甘くないって思わせるのもいいかもな。……、でもさ――――――」

 

 一方通行から貰った缶コーヒープルタブを開ける。その音は何度聞いても飽きないものだ。

 

「――――――俺は今でも、キョウダイってのがよくわかんないわ。まあ、今まで色々とあったからさ」

 

「……?」

 

 缶と首を傾けて、苦い液体を喉に流し込んだ。

 この味も飽きることはないだろう。

 

「美影」

 

「ん?」

 

 飲み干したところで一方通行が突然名を呼んだため、缶から視線を上にあげた。

 

「俺は兄妹がどンなもンか知らねェが、――――――少なくともテメエはイイ兄貴なンじゃねェのかって思うぞ」

 

「…………………………、気持ち悪っ」

 

「うるせェ」

 

 一方通行から視線を下ろした美影は、小さく声に出して笑った。それに釣られるように一方通行も口を横に広げた。

 

「サンキュ、一方通行」

 

 一言感謝して、左手に付けられている愛用の腕時計を見て時間を確かめる。

 

「もう時間だ」

 

「そォか」

 

 美影は立ち上がった。

 仕方がない、と何かを諦めるように心を整え、今までを強引に吹っ切って一つ大きく息を吐いた。

 妹相手に緊張するわけもなく、気楽な面持ちで歩き出す。

 この先に待っているのは、彼にとって戦闘ではない。

 

 

 

 

「―――――久しぶりに、あの子と遊んでくるわ」

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 とある競技場の外。

 そこに、食蜂操祈は一人でいた。

 優勝目前へと迫っている常盤台中学の生徒は彼女以外は競技場へ入っており、美琴の応援に備えている。が、彼女はまったくと言っていいほど意欲がなかったため、適当に能力で誤魔化(そうさ)して彼女の姿が無くても周囲が不審に思わないよう細工した。

 美影の応援なら喜んで行うだろう。

 敵対関係といったものよりも、彼の相手が彼の妹という点が何よりも気にくわないのだ。彼との賭けが彼女にかかっているというのは少々仮借ない。

 

(…………つまーんなーいなーぁ)

 

 時間を潰そうにもその材料となるものが近くに転がっていない。

 一週間続いたイベントの集大成を目にしようと競技場の様子が映っているモニターが備え付けられている処に大勢の人々が集まっているため、街の通行人がここ数日のこの時間帯に比べて格段に少ない。

 

(……!)

 

 会場の出口付近で周りを見渡していた彼女に、一人の女性の姿が飛び込んできた。

 

(あの人は確か……)

 

 淡い灰色のワイシャツに薄い生地でできた黒く細長いパンツ。シンプルなデザインだがブランドものであろうと悟らせる印象を与える服装の見た目大学生ほどの女性。

 食蜂は彼女に見覚えがあった。

 この祭の初日のお昼休憩の時間。

 とある喫茶店の外からガラス一枚を隔てて彼女の姿を目にした記憶がある。

 

――――――御坂美影と御坂美琴の母の姿がそこにあった。

 

 

 

 

 

 





前から書きたかった兄妹対決を半ば強引に行う!

大覇星祭の得点方式なんてよく分かんないけど関係ない!


 ◆


まだまだアンケートは続行中!

この章が終わるまで行うつもりです。因みにあと二話の予定。いや、三話? 四話?

特にifネタをお願いします! 今のところ数個ありますが、正直もっと欲しいです。※ちなみに⑬には票を入れなくてOKです。どのネタを使うかは勝手に決めますので。




………………………………やべ、アンケートの票数数えないと……、

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