今回も前回と同じく戦闘はありませんが、どうぞお楽しみください。
突然ではあるがここで一度2043年1月中旬へと遡る。
この日、奥神田にあるあまり人目に付かない小さな料亭に軍令部総長・高坂は技術部総長・東野ひかり、航空機開発局長・青山蓮を内々に呼び出していた。
女将「ようこそいらっしゃいませ。
お連れ様はもう到着なさっていますよ。」
穂乃果「そうですか・・・」
がらっ
穂乃果「失礼します。」
ひかり「呼び出した本人が遅刻ですか?」
穂乃果「ごめんごめん、待たせたね。」
蓮「総長の言いつけ通り人目を避けて参りました。」
穂乃果「ふふ、実は今日はもう一人、幽霊が来る事になっていてね。」
蓮「この神田に幽霊とは、それならきっと粋筋ですね。」
穂乃果「ははは、それならいいけど、現れるのは髪の長い元根暗な女だよ。」
コンコン
女将「お連れ様が参られました。」
果南「どうも、遅くなりました。」
穂乃果「女将さん、お酒は後でいいよ。」
女将「かしこまりました。」
がらっ
ひかり「松浦さん!、久方ぶりだね!、最後に会ったのは蒼莱見に行った時だっけ!」
果南「はい!、青山さんもご無沙汰してます。」
蓮「こちらこそ、雷洋や春嵐を存分に使って頂き、誠にありがとうございます。」
果南「お礼を申し上げるのは私の方です!、あれが無ければパナマ運河破壊は成し得ませんでした!」
松浦と青山は実に2年ぶりの再会であった。
穂乃果「早速で悪いけど東野さんに青山さん、敵方の超空の要塞XB30型を凌駕する航空機を作る事は可能かどうかの相談、それもできる限り早く。」
ひかり「総長!、まだ星雲を配備したばかりで資材が危うい状況です!」
蓮「確か前世大戦末期に富嶽という太平洋横断爆撃機が計画されていましたが・・・、あのような物をですか?」
穂乃果「まあ、そんな感じだね。」
蓮「富嶽は片道飛行言わば特攻兵器です!、例え攻撃に成功しても帰ってこれません!」
穂乃果「それは前世での話で、この現世ではハワイを抑えている。」
蓮「まあ、ハワイからでしたら北米大陸西海岸を爆撃して容易に帰ってこられるでしょう・・・、しかしそれには200機、最低でも100機は必要です!、今の我が国の生産力では不可能です!」
穂乃果「敵は前世、それから記憶をくれた後世の米軍に等しい、本気になれば数に物を言わせて攻めてくる・・・、そうなれば我が国、いや世界が滅ぶことになる!」
現在、深海棲艦に対する大規模反抗作戦の要は日本海軍であり、その日本海軍が壊滅すればもはや人類に勝ち目はない。
穂乃果「それを我らの頭でカバーするしかない、これは園田長官に綺羅長官、東條参謀総長と極秘に考えた計画だけど、およそ1年後に北米大陸奥深くにある五大湖当たりまで潜入し爆撃できる超長距離爆撃機が欲しい。」
蓮「およそで1年ですか・・・」
穂乃果「用法についてはまだ話せないけど、どうか引き受けてくれないかな!」
ひかり「なるほど、そういう事でしたらこの東野ひかり!、全力でお引き受け致します!」
穂乃果「本当!、よろしくお願いします!」
ひかり「それで総長が欲しいのは陸上機ですか?、それとも水上機ですか?」
穂乃果「と言うと?」
ひかり「総長からその様な相談があるとは思わず、この様な物を用意してきたのですが。」
ぴらぴら
東野は自分の鞄から一つに、テーブルを覆い隠す程大きな設計図を取り出した。
穂乃果・果南「「!!」」
果南「これは!」
そして設計図の上には”空中戦艦”と書いてあった。
ひかり「天照の会のがまだ発足されたばかりで、会に技術将校が私と蓮に琴音、燐火しかいなかった時、4人で暇つぶしで書いていたものだったのですが、本当に作って見ようとおもいまして!」
穂乃果「双胴飛行艇とは驚いたよ!」
ひかり「我が技術部ではこれを空中戦艦と称して、艦娘の妖精さんに運営可能で過給機なしで成層圏までも高出力を出せる革命的な航空用発動機の装備を考えております。」
果南「東野さん!、この機体にはジェットエンジンも搭載するのですか!」
ひかり「ええ、それを前提にしています。」
この現世には前世の日本航空自衛隊が誇るF3を遥かに凌駕する人間用のジェット機が存在するが、これらの兵器は深海棲艦相手では一切通用しない。
敵も日に日に進化しているため、これまでレシプロ機が主流であった艦娘の艦載機を艦娘にも搭載可能なジェット機の開発が始まっていた。
東野が出したこの機体に使用するジェットエンジンはそれの大型版であり、プロペラと併用できるものと言える。
ひかり「艦娘の艦載機用のジェットエンジンはまだ小型化に成功していないため完成されていませんが、これくらい大きな機体であれば可能です。」
果南「可能なのですか!」
蓮「過酸化水素は扱いが難しいですが、過給機を使わずともエンジンを作動でき高度20000mでも飛行できます。
空力学的に飛行艇は不利ですが、この高度でしたら敵の戦闘機の性能ではまず近づくことすらできず、しかもジェットエンジンを発動させれば短時間ではありますが時速800㎞は出せるでしょう。」
穂乃果「ジェットエンジンはあくまでも上昇用と逃走用というわけだね。」
ひかり「それにこの機体は水上機ですからサイズで問題になる滑走路が不要になり、航続距離は20000㎞以上で幽霊艦隊に新たに配備される伊900型潜水艦を移動基地とすれば作戦行動半径を伸ばす事ができます。」
果南「それはすごいです!」
穂乃果「東野さん!、この巨大飛行艇の!、いや、空中戦艦の計画を急ぎ進めて欲しい!」
ひかり「はい!、この空中戦艦は私達のロマンの1つでした!」
蓮「総長のご希望に添える様、心命を投げ打つ覚悟です!」
双胴飛行艇・空中戦艦、表向きには超飛行大艇と称された。
そしてこの空中戦艦は松浦の提案で「富士」と名付けられた。
蓮「東野さん、私達の青春がいよいよ形になりますね。」
ひかり「うん、楽しみ。」
穂乃果「それじゃあ、富士の研究開発の成功を祈って、乾杯!」
こん、こん、こん、こん、ぐいっ
ひかり「プハー!、必ずや成功させます!」
蓮「・・・」
果南「?、青山さん?」
蓮「ううっ・・・、目が・・・、回る~・・・」デロデロ
果南「熱燗一杯で酔ったんですか!、ていうか南長官達と飲んだ時もビールコップ一杯で酔っていた様な・・・」
ひかり「アハハハ!、蓮は相変わらず酒に飲まれやすいね~」グビグビ
東野の飲酒量は隼鷹や千歳などに匹敵するが青山は酒には滅法弱かった。
青山がダウンし松浦が介抱している間、高坂と東野はこれまでの連日の激務で溜まりに溜まったストレスを発散するが如く飲みまくっていた。
穂乃果・ひかり「「ヒャッハーーー!!」」
果南「(元気だなぁ、あの人たちは・・・)」ニガワライ
蓮「ううっ、頭に響く~、頭痛いです~・・・」グデングデン
それから酔った東野が熱燗一杯で泥酔した青山を担ぎ料亭を去っていった。
ひかり「大丈夫?」
蓮「大丈夫じゃ無いですよ~」
ひかり「・・・」ジー
蓮「ううっ」ボイン
ひかり「くっ!(別に無いわけじゃないけど何だろうこの複雑な気持ちは!)」
部屋には高坂と松浦のみである。
そして先程とは打って変わって高坂の表情とても険しくなった。
穂乃果「これは超機密だけど、敵は核爆弾の完成が間近らしい・・・」
果南「!!」
穂乃果「核爆弾の出現は天照の会でも何度も討論してきた重要議題であるが、CICルームによれば早くて来年末には使用される可能性すらあるらしい・・・、私達はこれの対策に苦悩している・・・、何せいつどこに落とされるか分からないからね・・・」
果南「・・・、予想される核爆弾の被害は・・・」
穂乃果「仮に新八八機動艦隊の真上に落とされたならば・・・」
果南「・・・」ゴクリ
穂乃果「一撃で全滅するだろう・・・、生き残れるのは潜水艦ぐらいかな・・・、本土を攻撃されたら・・・、言うまでもない!、地獄絵図と化す事になる!」
果南「何としても阻止しなければ!」
穂乃果「前世の広島や長崎の二の舞になる、何としても潰す!」
高坂は参謀部に監視衛星をフル活用し何としても敵の核爆弾開発工場を突き止める様命令を発した。
ここで時系列は戻り2043年2月1日、幽霊島より伊601を旗艦とする幽霊艦隊が極秘に出撃、フェニックス諸島経由でライン諸島を目指している小泉艦隊に対し、幽霊艦隊の向かう先はタスマン海であった。
そして翌日の昼下がり頃、敵哨戒潜部隊5隻が小泉艦隊の姿をフェニックス諸島沖にて捉えた。
カ級1「コチラ哨戒部隊、フェニックス諸島沖ニテ敵艦隊ヲ発見!、編成ハ戦艦1、空母6、軽空母6、ソノ他護衛艦多数ヲ確認!」
カ級2「主力、軽空母合ワセテ12・・・、小泉艦隊ニ違イナイネ・・・」
カ級E「至急シドニーオヨビブリスベンニ報告セヨ!」
カ級3「了解!」
カ級4「敵艦隊上空ニ機影無し・・・、早メニ撤退シタ方ガヨロシイカト・・・」
カ級E「エエ・・・」
しかし、鉄壁の対潜輪形陣に阻まれ攻撃はできなかった。
同日、シドニー軍港、ここに太平洋艦隊最後の敵艦隊が集結していた。
敵方はこれまでの日本海軍の行動パターンからライン諸島奪還作戦を開始したと確信していたが、敵本体の情報部の分析から真に意図する日本海軍の狙いはこのシドニー軍港の艦隊の殲滅そのものにあると報告した。
ヲ級E1「一体本部ドウイウツモリデショウカ・・・」
ル級FS「コノママ時ガ経テバ我々ハ復活シタ矢澤艦隊ノ一方的ナ攻撃ニ晒サレル事ニナルデショウネ・・・、ダカラ東インド洋艦隊ガセイロン島ヨリアンダマン海ヘノ侵攻ノ際、我ラモソレニ合ワセテ出撃、南太平洋艦隊トノ激戦デ瀕死ノ矢澤艦隊ガ相手ナラ間違イナク勝テル・・・、本部ハソウ踏ンダノデショウ・・・」
ヲ級E1「シカシ、今出撃スレバ小泉艦隊ニ襲ワレルノデハ・・・」
ル級FS「イヤ、小泉艦隊ハコチラヘハ来ナイ、小泉艦隊ハアクマデ囮、標的ハライン諸島デ間違イナイワ・・・」
そして同日北米大陸某所沖海上、戦艦、空母、鬼、姫など合わせて200に上る大集団が集結していた。
空母棲姫「シドニーノ艦隊ニハアア伝エタケド・・・」
重巡棲姫「私ハ反対ヨ!、X艦隊ガ待チ構エテイルカモシレナイ海域ニ奴ラヲムザムザ出撃サセテ全滅デモシタラ最終目標ノハワイ奪回ハ更ニ困難ヲ極メル!」
空母水鬼「確カニ、ソレドコロカ西海岸ヘノ接近ガアッタ場合・・・、西海岸防衛ニ当タラセテイル防衛艦隊ト西海岸各基地ノ防衛艦隊ダケデハトテモ防ギキレナイワ!」
水母棲姫「ソノ時ハ復興シタパナマ運河ヲ使イカリブ海艦隊ヤ東海岸防衛艦隊ヲイクツカ西海岸ニ連レテクレバヨイノデハ?」
戦艦水鬼「何ヲ言ウ!、我々ガ戦ッテイルノハ日本ダケデハ無イ!、反対側ニハイギリスヤドイツ、イタリアナドガイル!、敵ノ脅威ヲ背後ニ受ケタママ戦エルト思ウノ?」
港湾棲姫「Top Adomiral・高坂ガ厄介デナラナイ!、マルデ我ラノ心ガ読マレテイル様ダ!」
軽空母水鬼「あら?、ソノTop Adomiral・高坂ニトコトン踊ラサレテ来タノハドコノドイツダッタカシラネ!」
港湾棲姫「ナンダト!」クワッ
空母棲姫「ヤメナイカ!、今ハ喧嘩ヲシテイル場合デハ無イワ!」
ワーワー、アーダコーダ、ナンダトー、フザケルナー
戦艦棲姫・中核棲姫「「・・・」」
これは敵方による日本海軍との太平洋での戦いについての会議であった。
だが会議があまりに進まなく、困り果てた深海棲艦全軍の副旗艦たる戦艦棲姫は会議を翌日に持ち越す事にし、会議の直後、深海棲艦全軍の総旗艦たる中核棲姫と一対一での対談をした。
戦艦棲姫「ヤハリ問題ナノハ姿無キ海中艦隊デス・・・、ドコニ潜ンデイルノカ所在ガ全クツカメナイタメ、一切ノ対策ガ立テラレニイマス・・・」
中核棲姫「先ホドノ話デヨク分カッタワ・・・、X艦隊カ・・・」
戦艦棲姫「奴ラガ太平洋ヲ跳梁シテイル限リ我ラハ手モ足モ出マセン!」
中核棲姫「何トシテモX艦隊ヲ撃滅シタイワ・・・、東側デハイギリスノ最新鋭戦艦ヤドイツノ新型ジェット機デ手痛イカウンターパンチヲ食ラワセテ来テイルトイウ・・・」
このときドイツで新たに戦列に加わった装甲空母・グラーフ ツェッペリンには世界初の艦娘に搭載できるジェット機が搭載され、猛烈な反撃を開始していた。
戦艦棲姫「ココハ・・・、空飛ブ悪魔(フライングデビル)ノ使用ヲ許可シテ頂ケマセンカ!」
中核棲姫「シドニーノ連中ヲムザムザ壊滅サセル訳ニモイカナイ・・・、仕方ガ無イ・・・、カ・・・」
この事はすぐさま伝えられ、北米大陸本土から最新鋭超重爆撃機・B32(フライングデビル)型90機がオーストラリアへ向けて飛び立った。
このB32型の編隊は途中タヒチで補給を行ったがこれを偶然にも哨戒中であった伊168が目撃していた。
伊168「なにあれ!、まるで化け物じゃないの!」
この情報は直ちに暗号に組み替えられ軍令部および参謀部へと送られ、航空機の専門家である青山の下に届けられた。
穂乃果「かなり大型の機体だそうだよ・・・」
蓮「XB30型よりも大型、翼の後ろ側に推定2000馬力級の発動機が計6発、間違いなくB32(フライングデビル)です!」
穂乃果「B32・・・」
2043年2月3日、日本海軍は伊168によるB32型の目撃情報を元に各島の基地かた仙空12機を飛ばし索敵を開始した。
そして幸運にもその内の1機が高度12000mを飛行中の大編隊を電探で捉えた。
通信士妖精「我、新型爆撃機を発見す!、巡航速力375ノット以上と推測される!、これ以上追跡出来ず!」
この情報はすぐさま各地を駆け巡り南下中の小泉艦隊に幽霊艦隊およびティモール基地司令部へと伝達され緊張が走る。
そんな中でトラック島基地司令部にて園田もこの情報を得て高坂と特殊衛星電話にてこの作戦を続けるか否かを議論した。
海未「気になります!」
穂乃果「敵は我々の潜水艦決戦思想の対し戦略航空決戦思想と言う新機軸を一層鮮明に打ち出してきたね・・・」
海未「その通りです!、我々が最も警戒していた戦略です!、まるで平面の盤上で戦う碁が突然三次元になった様な物です!」
穂乃果「敵はアメリカ大陸を手中に抑えている!、工業力を背景に何千機もの超重爆を一気に投入して来れば防ぎようがない!」
海未「敵の航続距離はいか程ですか?」
穂乃果「青山さん曰く、タヒチからオーストラリア東部まで一気に飛んだと仮定すれば最低でも6000㎞以上、7000㎞あるかも知れないそうだよ・・・」
海未「ヨーク半島から東京まで飛んで来られる距離ですね!」
穂乃果「富士計画が一歩遅れを取ってしまった・・・」
海未「例の空中戦艦ですか?」
穂乃果「うん、まあ仮に間に合ったとしてもこちらは手作り、向こうは大量生産、戦争は一大消耗戦だから勝てない・・・」
海未「ええ、恐らく・・・」
穂乃果「園田長官、この作戦は中止すべきではないかな・・・」
海未「しかし高高度を飛行する戦略爆撃機では海上を高速で移動す艦隊に命中させるのは極めて困難だと思いますが・・・」
穂乃果「確かにその通りだけど、どうも嫌な予感がする・・・」
海未「わかりました!、今すぐ小泉提督および艦隊旗艦・瑞鶴に連絡をとり独自に判断する様にと伝えます!」
園田が通信を切る。
穂乃果「・・・」すくっ
それと同時に高坂は不安を抱えつつ執務室の窓から晴れ渡った東京の空を見上げ、高坂の中にあるとある記憶が呼び起された。
穂乃果「(やはり敵はこれを完成させてしまった・・・、奴らの日本本土に核攻撃を仕掛けるための空飛ぶ悪魔!)」
海未「とうとう嫌な物を投入されてしました・・・」
大和「長官?、顔色がよくありませんよ?」
海未「B32、私に記憶をくださった大石蔵良元帥の記憶の中にある戦略爆撃機です・・・、これは日本本土焦土化計画のために開発された物らしいです・・・、計画は実行されませんでしたが・・・」
大和「そんな計画が!、しかしその超重爆はどこに向かっているのでしょうか・・・」
海未「艦隊は航空機に弱い・・・、なんだか嫌な予感がします・・・」