しかしパナマ運河周辺にはこれまで倒した敵太平洋艦隊を遥かに上回る大艦隊、そして原子爆弾の存在にどう対処していくのか!
それから今回はジパング、はいふりの要素を入れると共に少し脱線させていただきます。
2043年4月18日、クリスマス島を含むライン諸島奪還作戦からおよそ2か月が経ち、敵の太平洋艦隊はほぼ壊滅したと同時に太平洋戦略ラインが完成した。
そして高坂は軍令部総長執務室に園田、南、東條、綺羅、高海の天照6首脳と東野を集め、先の作戦で得た事柄から決戦へ向けての会議を行った。
穂乃果「今作戦は天佑と言うべきですね・・・」
海未「大鳳を始め主力3名が大破、150機もの航空機を失いパールハーバーも空襲を受けました・・・、小泉艦隊の被害は少なからざる物があります・・・、しかし、そんな中で撃墜した敵超重爆撃機B32型を鹵獲できた事は不幸中の幸いと言えるでしょう・・・」
瑞鶴、高千穂がクリスマス島への突撃を開始した際に大鳳、利根、筑摩を護衛していた秋月達に撃墜され、海上を漂っていたB32型の残骸を運よく発見、直ちに回収し本土へと送られ調査されたのである。
ひかり「あれはもう・・・、脅威以外の何物でもありません!、あれだけの機体を短時間で開発、しかも大量生産できる能力は古典的とは言え敵方の基礎科学、基礎技術、基礎工業力があっての事と思われます!」
ことり「B32型を見ただけでも敵の工業力の大きさを実感させられます!」
海未「そうですか・・・」
ツバサ「前世の様な精神力ではもうどうにもならない、工業力戦の時代にとっくの昔になってますからね・・・」
千歌「長引けば負ける、という事ですね・・・」
ひかり「奴らはその気になれば1000機ぐらい容易く作り上げるでしょう・・・」
穂乃果「・・・、1000機ものB32型が一挙に襲来すれば・・・」
高坂はその恐ろしさがすぐさま脳裏に浮かんだ。
穂乃果「皆さんはジュリオ・ドゥーエの爆撃機用兵理論をご存知かな?」
ひかり「何ですかそれは?」
希「戦略爆撃に関する理論です。」
穂乃果「そう、用兵学の原理なんだけど・・・」
ことり「この前、海軍士官大学のカリキュラムにも導入されたやつですね。」
爆撃機用兵理論は前世、現世、後世の各世界において1920年代にイタリアの将軍・ドゥーエが著した物で、明らかな攻撃意図を持って国土上空へ侵入して来る敵爆撃隊はいかなる手段を持っても100%阻止する事は不可能だ、と謳っている。
ことり「攻撃側がいつどこを攻撃するかという点で常に主導権を握っているため、防御側は甚だ不利な立場に立たされる・・・」
穂乃果「そう、我々が何100機の蒼莱を作ろと敵が1000機ものB32型を投入して来たならば完全防御は不可能、ましてや威力のある新型爆弾が搭載されていたならば・・・」
希「核爆弾!」
高坂をはじめとする天照の会のメンバーが如何なる秘策を持ってこの戦争を戦おうと、ドゥーエ戦略爆撃理論ではこれを阻止するすべは無い。
そして多数の核爆弾が投下されれば日本全土が爆炎に包まれ全てを破壊尽くされ、更に強烈な放射能汚染によって日本民族は絶滅、そうなれば世界中が破壊の炎によって消し飛ばされる。
今ここに集められた7名の脳裏には地獄絵図が浮かび上がった。
翌日、軍令部総長執務室にて高坂は改めてドゥーエ戦略爆撃理論の本に目を通していた。
穂乃果「(こればかりはどうしようもない・・・)」
コンコン
穂乃果「どうぞ。」
?「失礼しますTop Adomiral・高坂、頼まれていた本を持って来ました!」
穂乃果「Grazie(ありがとう)、リベちゃん。」ニコ
リベッチオ「いえいえ!」
穂乃果「ごめんね、まだ日本に来たばかりでいきなり秘書艦みたいな事させて。」
リベッチオ「とんでもありません!、Top Adomiralの事はイタリアでも大きな話題にになっています!、それにTop Adomiralのお祖母様もイタリア人!、私達の同胞ですから当然です!」
穂乃果「そっか・・・」
リベッチオ「しかしイタリア人のお祖母様がいるとはいえ、よくドゥーエ戦略爆撃理論をイタリア語の原本で読めますね・・・、私にはさっぱりです!」
穂乃果「私にもよくわからないけど・・・、お母さんに教えて貰った覚えがあるんだよね。」
その日一日、高坂はひたすらその本を読んでいた。
会議から数日後、東條の秘書艦で参謀部CICルーム室長・大淀率いるCICが敵の核兵器開発の拠点の1つの正確な位置をついに掴んだのである。
そして高坂はすぐさま天照6首脳を呼び出した。
希「敵が核兵器開発に使用している場所は2か所、まだもう1か所の正確な位置はつかめていませんが・・・、ロッキー山脈中、ニューメキシコ州コロラド高原に位置するロスアラモスにある事が判明しました!」
千歌「やはりロスアラモスでしたか!」
核兵器開発の拠点の1つは前世同様ロスアラモスに存在した。
だが、このロスアラモス攻撃に関してまだ大きな問題が残っていた。
穂乃果「けど、このロスアラモスに近づくためには復興したパナマ運河から湧き出て来た400隻を軽く超える、今では600隻にのぼるとされる敵の大艦隊!、あれがもし一斉に日本本土目掛けて突撃して来た場合、核兵器を使用される前に決着が着くかも知れない!」
パナマ運河復興後、突如として現れた敵の大艦隊、今はまだメキシコ湾に収まっているが戦艦、空母を始めその数600隻を超えている。
CICの監視衛星によってこれらは全て五大湖周辺の工業地帯で新たに作られた物だと判明した。
穂乃果「これは私の推測だけど、敵は核爆弾完成前にそれらを投入し、こちらの防衛手段を全て破壊し尽くした後で核攻撃を仕掛けて来ると思われる!」
希「こちらの防衛手段を全て破壊されてしまえば敵はほぼ無傷であの悪魔の大量破壊兵器を好きにばら撒けるちゅう訳ですね・・・」
海未「それだけではありません、我が日本海軍連合艦隊が敗れ去ったと知れば国民は計り知れぬ不安に襲われ、恐らくは精神的に壊れて行くでしょう・・・」
ツバサ「2035年のあの日とも比較にならない様な惨劇がまた繰り替えされようとしている、というわけですね!」
綺羅が述べた2035年のあの日とは現世において人類が持てる力のほとんどを失った太平洋大海戦の事である。
穂乃果「二度目の太平洋大海戦は必ず!、それも近い内に必ず起こる!、そう他の者達にも伝えよ!」
海未「はい!」
千歌「いよいよですか!」
ツバサ「ここで負けたら人類は滅びる!」
ことり「だから負ける訳にはいかない!」
希「それにここで負けたらウチらがこの世界に転生して来た意味が無くなってしまう!」
そして高坂らはその大海戦への足音が迫っている事を確実に感じ取っていた。
決戦はもうそう遠くない。
同日深夜、高坂は秘書艦のリベッチオを彼女の宿舎まで送り届けた後に帰宅した。
穂乃果「・・・」ペラッ、ペラッ
そして高坂は再び本を読み始める。
しかしこの本は前日まで読んでいた物では無く、2035年に太平洋大海戦へ参戦し、生き残った将兵達が執筆した物であった。
穂乃果「(大海戦直後に海軍省や軍令部の総長が前任の人達に変わったせいでほとんどひた隠しにされていたけど・・・)」
大海戦での大敗は国民への不安を煽ると判断され、世界各国でひた隠しにされて来たが、その時の現状を見れば素人でも一目瞭然であった。
穂乃果「全く酷い話だよ、本部にあった資料と全然内容が違う・・・、それにこの本・・・」
高坂はこういった本の内容がこれからやってくる決戦に役立つのでは無いかと様々な本を読み漁り、たった今読み終えた本を再び手に取る。
穂乃果「小笠原諸島沖海戦・蒼海の英雄、か・・・、確か現世の私が最も気に入っていた、実際に憧れてたって聞いてけど・・・」
高坂には現世に転生する前、即ち現世に元から存在した自身の記憶がそれほど残っていなかった。
前世の記憶による浸食とも言える。
高坂が口にした蒼海の英雄とは太平洋大海戦の一環として起こった小笠原諸島沖海戦を描いた物で、作者はその海戦の最前線にいた人物であった。
そして今の高坂はそれらの人物を意外な形で知っており、現世に転生した高坂はこれらの人物とは深い関わりがあった。
翌日、高坂は海軍士官大学・横須賀校を訪れとある人物を中庭に呼び出した。
穂乃果「前世の防衛大がどういうところかはほとんど知らないけど・・・」
高坂は校舎の入り口付近、敷地が広いため目印の意味も兼ねて作られた日本海軍連合艦隊初代司令長官・東郷平八郎の銅像の前のベンチにて待っていた。
他にも建物の入り口付近には様々な人物の銅像があり、航海科校舎前には山本五十六、航空科校舎の前には山口多聞、砲雷科校舎の前には木村昌福など、因みに東郷平八郎の像は艦娘科の前にあり、艦娘達各演習場の前には岩本徹三や吉川潔などの銅像がある。
?「お久しぶりですね、高坂軍令部総長。」
穂乃果「忙しい中呼び出して申し訳ありません、新八八機動艦隊の訓練は捗っていますか?」
?「ええ、ですがまだ人手不足で全体演習まで持って来れていません・・・」
穂乃果「そうだと思って香取さんと鹿島さん、それから角松洋介少将を沼津鎮守府に一時配属させる事にしました。
訓練に関してのスケジュールはあなたに一任しますが・・・、あまり無理させないであげてくださいね、知名もえか教官。」
もえか「そんなに厳しいですか?」
穂乃果「園田長官とどっちが厳しいか、なんて質問があちこちで出るくらいですよ。」
知名もえか中将はかつて太平洋大海戦(当時海軍:大佐)にやまと型主力空母・むさしの艦長として参戦した海軍士官で、士官大学時代は航海科の各分野において常に主席を維持していた生粋のエリートである。
一線を退いた現在では海軍士官大学・横須賀校で艦娘科の教官をしており、おっとりした見た目とは裏腹に天下一の鬼教官と評された園田にも匹敵する鬼教官である。
もえか「そこまでした覚えは・・・、ですが最低限あなたの考えるとんでも計画に間に合うようにはしたいですね。」
穂乃果「とんでもって・・・」
もえか「あなたの発想はとても似ているんですよ、今あなたが手にしているその本、蒼海の英雄と呼ばれている岬明乃に・・・」
穂乃果「単艦突撃なんて命令した覚えありませんが・・・」
岬明乃(当時海軍・大佐)は知名と同様に太平洋大海戦に参戦、はたかぜ型イージス護衛艦・はれかぜの艦長として前世の駆逐艦・綾波、夕立顔負けの単艦突撃を決行、押し寄せて来た敵深海棲艦の大軍を相手に激戦をくり広げ戦艦、空母を含む30隻以上の敵を撃沈、しかし最後は蓄積したダメージにより撤退が間に合わず岬明乃を含む200名以上が戦死した。
もえか「あの時、ミケちゃん・・・、いえ、岬大佐の乗艦していたイージス護衛艦・はれかぜは試作品とはいえ深海棲艦に対抗できる兵器を唯一搭載していました。
それゆえ、今敵に対抗できるのは本艦のみだから、そう言って敵艦隊に突撃をかけました。」
しかし現世においてその時の戦いから生まれた実践データが今の艦娘の艤装の基盤を生み出したとも言われる。
穂乃果「宗谷さんは今どうされていますか?、出来ればあの人にも訓練を頼みたいのですが・・・」
もえか「その事でしたら私にお任せください、実はあの人、今は沼津に住んでいますから。」
宗谷ましろ(当時海軍・中佐)は太平洋大海戦で岬と共にはれがぜに乗艦していた乗組員の中の数少ない生き残りであり、海戦の後に二人の娘のため自分まで死ぬ訳にはいかないといい軍を引退したが、高坂等のクーデター計画を知っており大海戦を生き残りかつ当時の強引な軍首脳部に怒りを覚えた者達に呼びかけ、当時予備役となっていた宗谷真霜元帥が主催、高坂主催の天照の会を陰から支援していたもう一つの精鋭集団・月詠会を組織していた。
クーデター計画が驚くほど鮮やかに成功したのも月詠会のメンバーが実行の際に軍内部の状況を常に横流しし、各要所を乗っ取りやすいよう隙を作っていた。
この知名もえかもメンバーの一人で、他にも知床鈴や杉本珊瑚、藤田優衣など計600名以上が参加しているのである。
そして現在、宗谷ましろが沼津にいる理由はいったい何であろうか。
穂乃果「”晴風ちゃん”のためですか?」
もえか「ええ、”晴風さん”のためです。」
二人が口にした晴風とは何か。
これまで何度か太平洋大海戦という言葉をだして来ましたが、説明不足でしたので次回からはしばらく本編から外れ、番外編として太平洋大海戦について他アニメ要素を混ぜながらやっていきたいと思います。
これからもどうぞよろしくお願いします。