2035年11月25日
太平洋大海戦で大敗を期した日本海軍は戦死者を弔うため、戦死した将兵の家族、親族などを横須賀鎮守府に招待し、その葬儀を開いた。
薫「構え!」
がしゃがしゃがしゃ
古庄の指示で海軍兵士が空へ向け銃を構える。
日本海軍設立当時から伝統的に受け継がれて来た葬儀の儀式である。
薫「撃てーーー!!」
ばばばばばばん!
薫「直れ!」
そして命令と共に銃弾を放ち、次の命令で直れの態勢になる。
薫「総長、お願いします。」
真霜「ええ・・・」
続いて古庄に代わり宗谷が戦死者を弔うために作られた大きな仏壇の前に立つ。
真霜「大切なものを守るため、勇敢に敵と戦いその命を散らせた名勇達に敬意を表し!、敬礼!」
ばっばっばっばっばっばっばっばっばっ
ましろ「・・・」敬礼
もえか「・・・」敬礼
はれかぜ乗員「「「・・・」」」敬礼
そして号令と共に参列した将兵、家族、民間人などが一斉に敬礼をした。
先の小笠原諸島沖海戦で戦死した者には2階級特進、更に特例で多大な武功を挙げたはれかぜ乗員には3階級特進が与えられ、この時から蒼海の英雄と呼ばれる様になった文字通り大英雄・岬明乃は大将に昇格し、柳原麻侖は大佐に昇格、青木百々、日置順子、小笠原光、山下秀子、若狭麗緒、駿河留奈、伊勢桜良、広田空も中佐に昇格した。
なお生還した者も1階級昇進、知名もえか、杉本珊瑚、藤田優衣などは少将に昇格、はれかぜ乗員には2階級特進が与えられ、宗谷ましろは少将に昇格、知床鈴、納沙幸子は大佐に昇格、他の者も皆昇格した。
真霜「この戦で我々多くの仲間、友人、家族を失いました!、しかしこの様な事が二度と起きてはならなりません!、先の小笠原諸島沖海戦で幾多の敵とたった一隻で戦いその雄姿を没した岬明乃は以前こう言いました!」
ましろ「2人とも、明乃はお前達を守るために最後まで戦い抜いたんだ。」
明菜・真菜「「・・・」」ギュッ
ましろ「おっと・・・」グラッ
岬と宗谷の幼い2人の娘は幼いながらも岬の死を感じていた。
それを感じ取った宗谷は娘2人を抱き寄せるが先の海戦で足を負傷し松葉杖を着いているため少々よろめく。
真霜「”皆の幸せが私の幸せ、海の仲間は家族だから、その家族が窮地の際にはこの命を張ってでも助けに行くのが私の務めである。
海で溺れてる者が、かつての敵だったとしても、戦が終われば戦友である。
これが私なりの、日本海軍軍人としての武士道である。”」
もえか「(これ、ミケちゃんがリムパック2020の閉会式で日本学生代表として行ったスピーチの一説・・・)」
リムパック2020(多国籍合同演習)は対深海棲艦への威嚇と各国の軍の士気高揚のためにハワイ沖で行われた。
先ほど宗谷が読み上げた一説はその時の閉会式で横須賀校から選ばれた7人の学生代表として岬明乃が実際に読み上げたスピーチの内容の一部であった。
ましろ「(これ、初めて聞いた時は正直よくわからなかったな・・・)」
鈴「岬さん・・・」
珊瑚「全く大した奴だよミケは・・・」
真霜「そしてもう一人、猛将と名高い宗谷真冬はこう言いました!」
真霜「”常に恐怖に撃ち勝つ事が出来る物は勇気と根性だけである。”」
次に宗谷が読み上げたこの一説は海軍士官大学を卒業し、実践配備されたばかりの宗谷真冬がリムパック2008で行ったスピーチの一説である。
そしてこれらの言葉から読み取れる宗谷の心情はただ一つであり、大多数もそれに気が付ついていた。
真霜「戦はまだ終わっていません!、今、新たに艦娘という対抗手段を迎えた私達は彼女達を駆使し!、深海棲艦を相手に断固戦うつもりです!」
宗谷のこの発言に会場がどよめく。
真霜「深海棲艦の恐怖は御最もです!、艦娘達も艤装という特殊アーマーを装着する事で深海棲艦と互角に戦えるだけの力を得られますが、彼女達もまた我々と同じ人の子です!、彼女達が安心して戦に望める様、国民の皆さんにも協力を要請いたします!」
この協力とは主にメンタル面であるが、それでも深海棲艦の脅威が身に染みている民間人の殆どは海に近づかない様にしていた。
だが参列した民間人の仲には現在着任している艦娘、訓練を受けている艦娘候補生とその家族がおり、彼らの一声で宗谷のそれを承諾する声も現れた。
翌週、葬儀の全てを終え古庄が腰を据える横須賀鎮守府の長官室で宗谷と古庄は一息つきたいた。
真霜「ふー、やっと少しは落ち着けるかしら、このお菓子貰ってもいい?」ニコッ
薫「総長、何か変ですよ?」
真霜「そんな事ないわ、いつも通りよ。」モグモグ
宗谷は戦争前の皆がよく知る宗谷の表情で好物のお菓子を口にする。
薫「・・・」
真霜「ああー、これ久し振り!」モグモグ
薫「総長・・・」
真霜「どうしましたか先輩、そんなに恐い顔して、先輩も食べたいの?」
薫「真霜!」カッ
しかしこの様な事態の中で平然とくつろぐ宗谷を見た古庄は宗谷を怒鳴り付けた。
真霜「!!、ゲホッゲホッ、さっきから一体・・・」
薫「どうしてそんなに平然と笑って居られるんだ!、仲間が!、妹が!、家族が亡くなったのよ!、なのにどうして!」
真霜「平気な訳無いでしょ!、もうこうでもしないとおかしく成りそうなの!、平然と笑ってられる?、真冬や明乃ちゃんが死んで平気で居られる訳無いでしょ!」
先程までの宗谷の態度に激怒した古庄に対し更に激怒した宗谷によって険悪な雰囲気になっていた2人の元に新たな敵艦隊接近の知らせが入った。
参謀1「古庄長官!、宗谷元帥!、ノルウェー海軍およびイギリス海軍から通信!、先月ばバルト海を抑えそこに居座っていた戦艦8隻を要する大艦隊が突如大西洋へ進出!、向こうの情報ではここ日本を目指している様子だとの事です!」
真霜・薫「「!!」」
真霜「なんですって!」
それは同年10月中旬、大西洋から北海、バルト海を攻撃しこれを制圧された。
敵がここを抑える理由は主にはバルト海湾岸にある設備の整った海軍施設を奪い取り軍備増強を図るためと近隣諸国は推測していた。
参謀1「失礼いたしました!」ガチャッ
それゆえこれらの艦隊がバルト海から出て来るのはまだ先になると思われていたので当然、宗谷や古庄は動揺を隠せないでいた。
薫「敵は太平洋艦隊が多大な損害を受けた事に少しではあるが焦りを見せたと言う事でしょうか・・・」
真霜「その可能性はあるわ・・・、何せ艦隊こそ撃破できなかったものの真冬の艦隊の空母が放った艦載機がセイロン島を始めとする敵の一大拠点にある燃料基地を破壊してくれたおかげで東西のインド洋艦隊は最低でも半年は動けない・・・」
先の海戦の一端でシンガポールから台湾にかけて民間人の避難を担当していた南太平洋艦隊の司令長官・宗谷真冬は敵インド洋艦隊からの追撃を恐れ、当時は焼け石に水と思われていた艦載機による敵基地攻撃を決行、燃料基地のみを正確に破壊し敵の動きを一時的ではあるが抑え込んだのである。
薫「そう考えれば筋は通りますね!」
真霜「となると敵は南シナ海を通り東シナ海へとやって来るはず・・・」
薫「北極海を通って来るとも考えられます!」
真霜「いいえ、それは無い・・・、これを見て、はれかぜ船務長・納沙幸子大佐が記録した敵の情報よ。」
宗谷は自身のタブレットに納沙が収集して敵の情報、主に兵装に関する物を出し古庄に手渡す。
薫「敵の兵装はおおよそ1900年代前半の物・・・」
真霜「この当時の技術では例え大型戦艦でも北極海を通るのは困難よ・・・、艦娘達は皆、呉に到着したかしら?」
薫「ええ・・・、先ほど三笠、鳳翔より戦闘艦隊、航空艦隊ともに終結しつつあり、同年12月中旬までには準備万端整うとの報告がありました。」
真霜「よし、これより連合艦隊総司令部を呉鎮守府に移す!、なお艦隊の訓練は敵に見つからぬ様に瀬戸内海で行うべしと伝えて!」
薫「了解!」
翌日27日、呉に向かう途中にいた宗谷ましろは一度、長野県諏訪市にある我が家に足を運んだ。
理由は娘を我が家に戻し、京都からやって来ている親戚に預ける事、岬の仏壇を作る事である。
そして仏壇にお祈りを済ませこれから呉に出向く宗谷を親戚の2人と娘が玄関で見送りをする。
ましろ「それじゃあ、行ってくる。」
親戚1「あなたがお留守の間、この子達は私たちにお任せください。」
この時17歳の黒髪ロングの親戚の一人が宗谷にそう言葉をかけた。
真菜「ましろお母さん!、また戦争に行くの!」
その瞬間、とても悲しげな表情をした次女の真菜が言い放つ。
ましろ「ああ・・・」うつむき
真菜「行かないで!、明乃お母さんが死んじゃって、ましろお母さんまで死んじゃうなんて嫌だ!、行かないで!」
彼女に言う事は宗谷自身もよくわかっている。
明菜「こら真菜!、無理言わないの!」
それを知っている長女の明菜はすぐ止めに入る。
真菜「だって!」
明菜「お母さん達は軍人、悪い奴らと戦うのが仕事なの!」
真菜「でも!」
親戚2「あー、はいはい、真菜ちゃん、お母さんが悪い奴らをやっつけて切れるまでお姐さんと遊んでましょうね!」ニコッ
2人の言い合いがこのまま続くと宗谷が気分良く戦場に赴く事が出来ないと思った当時15歳の黒髪ショートのもう1人の親戚が上手く丸め込む。
親戚2「こちらは私たちに任せて、どうかご武運を!」
ましろ「ああ!、行って来る!」
明菜「・・・」ギュウッ
バタン
明菜「グスッ・・・」ジワッ
親戚1「よく我慢できましたね。」ナデナデ
明菜「だって私、お姉ちゃんだから、私がしっかりしないと!」
親戚2「姉さま、真菜ちゃんは私が見てます。」
親戚1「ええ、お願い・・・、」
ウワーーーーーーン!、アアアアーーーーン!
明菜「ううっ・・・」
親戚1「ふふ、我慢しなくていいの、今は思いっきり泣いていいのよ。」
明菜「ヴヴーーー!、ウワーーーーーーン!」
妹の鳴き声を聴いた姉も耐えられなくなり、涙が、声が枯れるまで泣いた。
そしてその日の夜、娘2人は泣き疲れ寝床に着く。
親戚2「姉さま、私達ももう少し早く生まれてればもっと早く艦娘になって戦えたのに・・・、なんだか悔しいです!」
親戚1「不幸だわ・・・、でもまだ私達は訓練生だし、託すしかないわ。」
親戚2「ですね。」
親戚1「とにかく今はましろさんの帰りを待ちましょ、山城。」
山城「はい、扶桑姉様!」
宗谷の親戚に当たるこの2人は後の戦艦・扶桑、山城であった。
この2人が全くもってついていないのは、もしかしから叔母に当たる宗谷ましろの不幸体質ゆえかも知れない。
2035年12月7日、呉鎮守府に司令長官・宗谷真霜を始め横須賀より中部太平洋艦隊の幹部士官が集結した。
ましろ「思ったより時間がかかってしまった・・・、全く、雪のせいで電車が止まるわ車がスキップして壊れるわで本当に不幸だ・・・」
コンコン
ましろ「宗谷ましろ少将、到着いたしました!」
宗谷が到着早々に呼ばれた場所は呉鎮守府の大会議室、その中には既に知床鈴、納沙幸子、西崎芽衣、立石志摩などかつてのはれかぜ乗員や知名もえか、杉本珊瑚、藤田優衣などの僚艦の乗員達含まれている。
その他にも平賀や福内、梅津、角松、小栗、菊池などの顔も見られた。
コンコン
真霜「どうぞ。」
三笠「戦艦・三笠、以下連合艦隊各戦隊旗艦、入ります。」
続いてこの当時の連合艦隊総旗艦・三笠が入室した。
そしてその総戦力を呉鎮守府に集結させた連合艦隊はいよいよ本格的は訓練を開始したのである。
この度、何らかのつながりがあると面白いと思い、艦これの扶桑、山城をシロちゃんの親戚という形にさせていただきました。
扶桑、山城が超絶不幸なのは宗谷ましろの血を少なからず受け継いでいるからなのか。
因みに扶桑、山城の正確な位置づけは宗谷真雪の妹(原作では一人っ子、多分)の孫としたいと思います。