ぜひ感想下さい。結構方向性に迷いを感じています。暁版とは別作品だと思っていただけたら幸いです。
神奈川県相模原市にある城山ダム。
天端に国道が通っていることや日本初の純揚水ダムとして一部のダムマニアから
その存在を知られている城山ダムを見学しに満月北斗は津久井湖に来ていた。北斗自身そんなにダムに興味があるのかと問われるとそうではないのだが、彼がここ、城山ダムに来たのには理由があった。
ことは一か月前。
家族で近場のショッピングモールに来た時のことだった。買い物を終え、
帰ろうと思ったときに母親の一言がすべての始まりだった。3000円以上の買い物を
したときにレシートを見せれば福引ができるというので試しに引いてみれば
特賞だけでなく、一等までをもあててしまったのだ。
「なんで引き当てた俺がハワイ旅行に行けないんだよ・・・」
そこで両親はハワイに、俺は引き当てた一等をもらった。
その一等の中身というのが、全国ダムツアーということだった。全国のダムを
回るという苦行に僕が参加しなければならなかったのは偏に母の「言ってきたらいいじゃない」
という言葉だった。
ひまだったからそこまで問題はないのだが、そうかと言っても家でぐうたらしていた方が
個人的には有意義な時間を送れるわけで。北斗は考えても仕方ないそういった思考を堂々巡りしていた。
「お主は逃げないのか?肝が据わっているのか、ただ単に馬鹿なのか。」
そういわれて後ろを振り返ると自分と同じくらいの少女がいた。言葉には形容できないほどの
相貌を持ち、神々しさを纏ったとさえいえる美少女だった。
地面に届きそうなまでの青みがかった黒髪、
灰でかきむしったような灰色の瞳を持つ十二単を纏った麗らかな女性。
触れば折れてしまいそうなその少女を前に俺は見惚れると同時にその感情とは
かけ離れた、相反する思いを感じていた。
こいつはやばい。そうとだけ思った。
俺も剣道で強いやつとも戦ってきたつもりであったが、そいつらとは比べものにならない位の
プレッシャーを感じていた。勝てないとさえ思うほどの。
「有象無象なら逃げたぞ。臆病者には我の顕現を祝うには値せぬ。我を見て尚正気を保っている
お主にこそ我が門出はふさわしい」
「あなたは?」
「妾か、妾は偉大なる太陽の女神。古の世界を統べていた最強の軍神よ。」
「神?そんな奴いるわけないだろ」
「何故決めつける。今お主の目の前に居る私こそ神であるぞ。まあくだらん問答など時間の無駄だ。
そうだ、お主には我に抗う機会を与えよう。これは隕石を操る銃である。これを祝砲にして我に命乞いをするもよし、我に反抗するも良しじゃ」
「俺がおまえが言う祝砲とやらを撃てばお前はどうするんだ」
「妾が顕現したことを世に知らしめるために手始めに街を滅ぼそうかの。
妾をあがめることを忘れた民に鉄槌を下すのじゃ」
「なら決めた」
「おお、決めたか。して返答は?」
「お前を倒す」
「そうでなくてはな、妾の遊戯につきおうてもらうぞ。
お主、名を何という?」
「満月北斗」
「では行くぞ、満月北斗よ、お互い武勇を示そうではないか!」
満月北斗は玉のような汗を垂らしながらダムの天端を逃げていた。来るときには大量に走っていた車が一台たりとも走っていない。おかげで全力で走れていた。当然それはあの女神も同じことが言えるのだが。彼女は四方八方に鳥を飛ばしながら迫ってきていた。
「どこへ行こうとしているのかな。私からは逃れられまい。おとなしく負けを認めるがいい」
北斗は女神のほうに振り返った。心臓がバクバクと音をたてながら鼓動しているのは
走っていたからという理由だけではなかった。まだ生きてる、そう思えるだけで安堵する
自分に対し腹立たしくもありながら女神に答えた。
「勝負を逃げたりしないよ。俺、負けず嫌いだから」
「神に対してその態度。ある意味尊敬に値するな。まあ良い」
そういって彼女はつづけた。
「お主も妾から逃げてる間に気付いたのではないか?自身がいつも以上に速く走れていることを」
確かにここまでくる間とても早く感じた。というよりも気付かないだけでいつもよりも
体が軽い?直感的にこの銃の能力が分かった気がした。
「重力を操る能力みたいなものか」
「ご名答。其方には妾が捨て去りたい負の側面を与えたのじゃ。忌々しい我が分身を・・・。
さて、余興はここまでじゃ。人の子よ、しばしつきおうてもらうぞ」
北斗はどちらかというと慎重に事を運ぶタイプだ。断じて猪突猛進なタイプではない。
しかしこういう勝率の低い勝負も割かし好きだ。たとえ己の命がかかっており、死におびえようとも。
北斗が思うにあの女神は多彩な技を使うRPGでいうところの魔法師的な先鋒を得意とする
タイプなのだろう。筋肉はついてなさそうだし、どちらかというと魔術に精通していそうなタイプに
見える。接近戦ならこちらにいい流れをもたらすかもしれない。
そう考え、銃の効能で身軽になった体で女神に肉厚する。
北斗が接近しても動けないでいる女神に向かって撃鉄を振り下ろす。
しかし、北斗の攻撃は途中で止まった。いや、止めさせられてしまった。
壁のような何かに。
「何かと思えば真正面から突撃か。其方は妾を相当甘く見ているようじゃの」
そういって、ダムの貯水湖から何十本もの水の槍を作り出した。
「妾は水の神でもあり、結界の神でもある。お主の攻撃は我には当たらんよ」
「ちっ」
舌打ちしながらも水の槍を躱す。まあ、かすってはいるのだが。
「そう簡単にはいかないか」
水の槍を躱しながらも北斗は冷静に状況を見定めていた。
何が出てくるかわからないびっくり箱のような相手に
自分の常識が通じるとは思えない。なんとかして相手の弱点を見つけられれば
どうにかなるとは思うんだが。
「手が止まっておるぞ」
その時俺の肩を水の槍が貫いた。
顔をしかめながら俺は何とか痛みに耐えていた。
北斗は痛みに耐えながら必死になって話を続ける。
「直感だけどさ、あんたこれ以上力使えないんだろう。さっきから
全力を出していないような気がしてるんだよ」
「ほう、我が弱点をも見破るとはな。本に面白いやつよ」
「で、どうなんだよ」
「うむ、我はそもそも三相の女神。我が力3つまでしか同時に使えない」
「そうやって慢心する奴は大抵負けるんだぜ」
「慢心?いや違うな、これは・・・・・・。まあいい」
そう言って女神は先程とは比べものもないほどの数の水の槍を生み出した。
「もうよい、お主はよう頑張った。おとなしく我に殺されるがいい」
そうそう簡単に殺されてたまるか。なにか、なにかこの状況を改善する何かがあるはずだ。
確かあいつは同時に能力を三個しか使えないはず・・・、なら。
その時確かに一筋の光明が俺には見えた。
俺は上空に向かって銃を向けた。
「残念であったな、今更我が意をなしても遅い」
「そうじゃない」
「?ならば・・・・。お主、まさか・・・」
「どうせ死ぬんだ。お前も道連れにしてやるよ」
「正気か?狂気の沙汰にしか思えん。その笑顔も気に入らん」
俺は言われて初めて自らが笑みを浮かべていることに気が付いた。
「お前を倒せるなら本望だよ。来い、全部壊せぇええ」
俺は銃を振り落とした。俺がやったことは簡単だ。宇宙にあるごみや岩を今
ここ、俺と女神がいるここに誘導してやる。重力を使ってだ。
あの結界も降り注ぐ隕石からは身を守り切れまい。
上を見上げると赤く染まった物体がこちらへやってきていることが見て取れた。
「面白い、面白いぞ。北斗よ、お主はわしにふさわしい戦士よ。なればこそ我が手によって
楽にしてやる」
女神は上空に巨大な太陽を作り出していた。
「焼き尽くせ」
その一言で太陽から光線が打ち出される。次々に隕石が撃ち落されてきているが、
それでもいくつかの隕石が結界を着実に破壊してきていた。
女神は苦しそうな顔をしながらも自らの勝利を確信していた。
北斗にとっては幸いなことに隕石の直撃を免れてはいたが、
先程槍で貫いたとこから血が流れ続けており、出血量がすごいことになっていた。
「俺がお前を殺すっ」
そう言いながら、北斗は銃を女神に向けた。
しかし、北斗もついに悪運が尽きたのか彼の心臓を隕石が貫いた。
女神は結界で隕石を防ぎながら彼の最期を見ていた。
「惜しい男をなくしたな。この手で殺しかったが・・・。
まあその程度の男だったということか」
この隕石さえ防ぎ切れば我の勝ちだ、そう確信した時だった。
突然胴体が弾けた。
「お前の、負けだ」
この男は心臓を撃たれてなお我に反撃したというのか。
人の子の分際でこの私を・・・。
北斗と言っていたその少年はすでに虫の息であった。あと数秒で死ぬだろう。
だが、我を倒したということはあの女神が来るということ。
簒奪の儀式が始まるということを意味する。
カンピオーネを生み出す女神が降臨したのはまさにその時だった。
「はじめまして、古き女神よ。
私はパンドラ。そこにいるのがあたしと旦那の新しい息子ね?」
「いかにも」
それを聞くとパンドラは北斗の目の前に立ち、しばらく様子を見ていた。
「ああ、これはもうほとんど死んでるようなもんだけどまあいいか。
その苦しみは貴方を高みへ導く代償、甘んじて受けるといいわ」
パンドラは私のほうに振り返って言った。
「さあ、皆さま。祝福と憎悪を与えて頂戴!七人目の神殺しーーー最も若き魔王となる運命を得たこの子に
聖なる言霊を与えて頂戴!」
「お主にはあった時からどことなく親近感がわいていたがお主と戦ってその理由が分かった。
我らはいろいろなところで似ている。なればこそ、お主も勇猛果敢な戦士であれ。
再び会いまみえること、楽しみにしておれ」
満月北斗。やがて『未来から来た魔王』、『魔王殺し』などと恐れられる彼の伝説は
ここから始まったのであった。
駄文ですが読んで頂きありがとうございます。反響が少しでもあるなら連載頑張ってみようと思います。