短編集 深夜の真剣文字書き60分一本勝負 作:霧子のエビの天ぷら
「……はい、診察結果が出ました。あなたはどうやら、《孤独恐怖症》ですね」
今日この日。西暦3677年12月9日。
私は、誰かの元で一生を過ごさなければならなくなった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「……でさ~……」
「……」
あの診断から5日後の西暦3677年12月14日。私は全てを打ち明けることができた唯一の存在、自身の彼女とともにとともに学校から歩いて帰っている。私の耳にはヘッドホン、彼女の耳には私が気に入った、そして私が選んだヘッドホンをつけている。
傍から見れば双子ファッションをしている中に良い友達なのだろう。そう見えるように努力しているから。
私たちの関係はただの友達というくくりで閉じ込めておくことは不可能なほど深い関係となっている。
まず第1に私たちはれっきとしたカップルであること。私が告白し、彼女はそれを受け入れた。私たちは恋人同士なのだ。
第2に、私たちは同じ病気であること。孤独恐怖症。
常に誰かとつながっていなければならない。肉体的、物理的、あるいは精神的に。そうでなければ、私は心臓発作が発生、彼女の場合は脳機能が停止し直に心停止となる。私たちは、その点では私たちは同じ病気であると同時に互いに生命維持装置であるとも言えるかもしれない。
第3に、互いに周囲には打ち明けていない、つまるところ私たちだけで共有している大きな秘密があること。
私の場合は目と脊髄の一部分を機械で代用していることであり、彼女の場合は足や腕を全て機械で代用しているということ。
「……だよね、もっちー?」
「……うん、そうだと思うよみっちー」
「よお、望月と水無月!」
「先生……!」
「体調は、どうなんだ」
「……おかげさまで今のところは」
「孤独恐怖症……ありゃただの恐怖症のカテゴライズには収まらない病気だ。ただの恐怖症なら致死性の発作なんて起きるわけがない」
「……わかってますよ」
「お前らに言いたい事は1つだけだ。何があっても、生きることをあきらめるな」
「……はい」
「じゃあ俺は仕事がまだ残ってるから」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「もっちー」
「なに?」
「……すきだよ」
「……私も」
人気の無い公園で、私たちはそっと唇を重ねた。物理的なつながり、肉体的なつながり、精神的なつながりを満たす手軽な行為。
互いに唇を重ね、愛情をぶつけ合い、絡ませ、取り交わす。
互いの唇をすすり、舌を貪り、貪欲に、欲望に忠実になる。体温と体液をやり取りする。
私が彼女の体に多いかぶさり、片手を握り、柔らかくて見た目以上に大きい胸をいじる。
昨日は彼女のターンだった。今度は私の番だ。好きだ、好きだ好きだ好きだ!!
「──ぷはぁっ!!」
「──ぷは……大好きだよ、みっちー」
「私も好きだよ、もっちー」
誰もいない公園の中、私たちは互いに体を抱きしめ合う。ずっと、名残を惜しむように。
エッチなことも、体のことも、病気のことも。すべて一緒。
私たちは同じ病気になったその瞬間から、運命共同体になったのだ。惹かれ合う存在となったのだ。
磁石のN極とS極のように。あるいは、愛情という自由電子で結合する金属のように。
それが私の、私たちの選んだ未来。
お題:孤独恐怖症