ガールズ&パンツァー 狂せいだー   作:ハナのTV

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物凄く遅れていますが更新です。

よろしくお願いします。


BC 愛と自由と味噌の革命

並ぶアパルトメントは白を基調として、美しい。コンクリートや鉄筋で作られたとは思えない――まるで石造りの質実剛健な城のような建物、ガス灯のデザインまで芸術的なアール・ヌーヴォ様式で道行く人々は皆華やか。

 

オープンカフェを見れば、ゆったり寛ぐBC自由学園の生徒達がコーヒーを口にし、「受験組は粗暴な獣畜生ね」や「エスカレーター組の頭は砂糖とバターしか詰まってない」と会話を楽しんでいる。

 

勿論、テーブルの下に‘今すぐ奴らを排除するための武器‘を隠しながらであるが――これは棍棒ティータイムと言って、BC自由学園では一日の内に35回はどこかで起きている日常で、その様は火薬庫の傍で花火をするように煌びやかでスリリング。

 

この学園を知らぬ者をヒリヒリとさせ、知る者を呆れさせる毎度の光景である。

 

そんな日常をホテル「勝利王の王冠」の主人は何気なく見ていた。エスカレーター組学生向けの高級ホテルのオーナーが「またやっているなぁ」と思っていると、少し騒がしくなっていることに気付いた。

 

「あったぞ!」

 

枯れた声の叫びが鼓膜を叩き、ノンビリしていた脳がようやく働きだし、回転ドアを物凄い勢いで潜る影を見た。

 

それは三人の少女であった。赤毛と黒髪、茶のサイドテールの美少女三人組で――その恰好は酷いの一言だった。戦火から逃れて来たかのように煤塗れ。コンビニの制服だと思われる服はどこもかしくも破れ、下着が見えそうなほどにボロボロ。

 

白い美しい肌も整った顔立ちも薄汚れ、汗と硝煙の匂いを引っ提げながら、突っ込んでくる三人。特に赤毛の子など背中が大きく開いていて、程よく発達した背筋が丸出しであった。

これは厄介事に違いない――店主は穏便にお断りしようと一歩前に出た。

 

「お客様誠に申し訳ありませんが」

「このカードで文句あるか?!」「ありますか?!」「ないですわよね!」

「ようこそ、おいで下さいました」

 

目の前にブラックカード、プラチナカード、低脂肪ヨーグルトのタダ券を出され、0.1秒で最上のサービスを提供することにした。

 

「部屋は最上級のスイートね!」「もちろんご用意いたします」

「着替えを一通り持ってきてくださいね!」「最速で用意させます」

「エスカルゴ!」「ディナ―までお待ちを」

サイドテールの少女がカギを奪うように持つと、三人は一列に全速でエレベーターに走っていった。

 

「お前らのせいでとんだ災難だ!」

「何言ってるんです! 此処に行ってみたいとか! ガイドまで持ってきておいて!」

「エスカルゴぉ!」

 

鬼気迫る迫力に従業員から他の客までタジタジ。黒髪とサイド―テールが激しく議論をし、赤毛がひたすら食い物の名を叫ぶ。狂犬でも入って来たのだろうか、と眉をひそめるのもお構いなしに三人はエスカレーター前でも大暴れであった。

 

「うっさい! 大体コンビニ船に入るとかどうかしているだろ! 誰がやるんだ! あんな方法!」「エスカルー!」

「それがマニュアルだからやるしかないでしょう! 私達はこの手のひっそりな仕事はじめてなんですから!」「エスカー!」

「007でもやらないだろ!「エスカルゴォン!」あとうるさい! 何だその怪獣みたいな名前!」

 

そうして、三人は最上階へと行くため、エレベーターの扉の向こうに消えて行った。店主はホクホクとした様子でその背中に手を振っていた。

 

三人が聖グロから送られた悪の三枢軸だと知らずに。

 

 

 

 

部屋はキングサイズの天蓋付きのベッドがあり、10代向けのノンアルコールドリンクが並んだバーカウンター付き。ガラス張りの色っぽいバスルームが存在する最高級の部屋であった。

 

この様な部屋に止まるお嬢様など、さぞ高貴なご令嬢以外に誰がいるだろうか?と世間一般の人間は思うが現実は違う。

 

ガラスの扉を勢いよく蹴り開け、出て来たのはバスタオルを身体に巻きつけた三人の淑女候補。サイドテールの男勝り美女ルクリリ、ブルネットの美しい薫子、赤髪のチャーミングなローズヒップ。

 

水を弾く珠の肌をバスタオル一枚で隠しつつ、ドタバタと騒ぐは聖グロリアーナが誇るトリオである。

 

「だからコンビニ船はやめろって言ったんだ!」

「まだ言ってるんですか!」

「警備員にしこたま撃たれるわ、三日風呂ナシ!汗マシマシ! お次は何だ!? 言ってみろジャンキー・スピード・アンストッパブル薫子さんよぉ?!」

「はあ?! 私のせいだとでも?!BC学園を周りたいって言ったのは貴方でしょう ポンコツ低速ルクリリさん!」

「フルーツ牛乳がありますわ!」

「お前は話を聞けえ! バカヒップ!」

「貴方は話を聞きなさい! バカヒップ!」

 

薫子とルクリリが機関銃も顔負けの勢いで口論する中、ローズヒップが目の前のフルーツ牛乳に飛びつき、片手を腰に、豪快に飲み込む。三日ぶりの風呂で火照った身体に冷たい飲料を流し込み、満足と言わんばかりに天を仰ぐ。

 

更にクーラーの設定を弄り、冷風を最大にしてベッドに寝転ぶ。

 

「いやあ、最高ですわBC自由学園!」

「お前なぁ」

「お二人も飲みましょう飲みましょう」

 

ローズヒップが指射す方向には冷えた飲料が並んでいた。奔放な行動に毒気を完全に抜かれた二人はそれぞれ好みの飲み物を手に取り、腰に手を当てて、一気飲み。気品など忘れた飲みっぷりにローズヒップが拍手を送り、飲み終わった二人はベッドに腰掛けた。

 

「まあいい。この際忘れる 」

「ええそうですね。仕事…BCの偵察ですけど」

 

薫子は引き裂かれた制服から資料を取り出した。何枚か弾丸が貫通していて読みにくいが内容は以下のようなものだった。

 

『本当にBC自由学園の仲は悪いのか?』

 

「今更だな。悪いに決まっているだろ。記録映像すべてでフレンドリーファイアをしてるんだぞ」

「それがですね。現隊長になってから減ってるんですよ…喧嘩の数が」

「何?」

 

「ほら」と見せたのはアッサムの統計資料で、確かに日常的な喧嘩の数が減っていた。ルクリリは腕を組んで唸った。そんなことがあるのかと。

 

「何か秘密でも?」

「怪しいのはこの二人ですわ」

 

そう言ってローズヒップが出したのは二人の写真。安藤レナと押田ルカであった。

いわゆる受験組とエスカレーター組のリーダーであり、所属的には常に殴りあってそうな二人だ。こんなことあるのか?とルクリリは首を傾げた。

 

「ホントか?」

「アッサム様はそう言いますわ。でも、何でそんな仲悪いんですの?」

 

ローズヒップの疑問に薫子とルクリリは遠い目をした。

 

「そりゃ高校受験を知らない甘ちゃんエリート気取りと」

「中途入学の学力不足な外様は一生お互いを受け入れられないものなんです。ローズヒップ」

「なんで悲しそーな目をするんですの? まあいいですわ!」

 

ローズヒップは二人を引き寄せて、真ん中に書類を叩きつけた。それは外泊許可書で、三日はBC自由学園に泊まれる聖グロリアーナ公認の書類であった。

 

「これがあるのですから、遊んで、速い戦車盗んで、やりたい放題ですわ!」

「それもそうか」

「エクレール、クレープ、ブラマンジェ、サブラン…色々と行きたいところもありますし」

 

三人は想像した。盗んだソミュアS35でカフェに、洋菓子店に乗りつけ、最高速度でぶっ飛ばす。ケーキ片手に川を眺め、景観を楽しむ。プチ旅行としては満点のBC自由学園を心行くまで楽しみ、学生の良き思い出として残す。

 

カメラ係のローズヒップもいる。金なら無尽蔵に使える。

 

「いいなぁ」

「ええ」

「その為にはまず~?」

 

三人は声を合わせた。

 

「あの二人の仲を調べる!」

 

三人で声を合わせてハイタッチ。そして、その為の秘策を彼女等は考え、そして、用意していた。

 

それは既に受験組のアパルトメントで実行に移されていた。

 

 

 

 

 

BC学園には定食はない。味噌と醤油の香りは内地に行かなければ食することは基本的に難しい。何故ならば、学食では出ず、買うと相当に高いからである。

 

昔から欧州を真似たお貴族のエスカレーター組ならば、特に問題はないが、受験組にはきつい物がある。何せ彼女等は特にお金がある訳でなく、かといって食事はごく普通の日本食が主であったからだ。

 

忘れたくない。糠漬けと浅漬けの味。求めるは我がソウルフード、サバ味噌煮。しかして、此処にあるはエスカルゴ定食、おのれ憎き金持ち連中。

 

何度でも言おうここはBC自由学園。米1kgあたり、4500円也。白米などは贅沢そのもの。まして、惣菜など到底揃えられる訳もない。

 

そう言う訳で、此処では時折次の様な光景が目にされるようになった。

 

「突入!」

 

早朝、住宅街のど真ん中で爆音が響いた。

 

あるアパルトメントの一角。押田ルカの一言で壁が少量の爆薬で破壊され、バイザーヘルメットとアーマーで武装した一団が中へと侵入する。鎮圧用のカーボン入り、ファマス突撃銃が援護位置につく中、硬いフランスパンを片手に部屋の隅々をクリアリングしていく。

 

「クリア!」

「クリア!」

「喰らえ!」

 

次々とクリアの掛け声が聞こえて来たが、ついに戦闘が始まった。中で立てこもっていた受験組が納豆入りの手榴弾を投げ、炸裂。一人がねばねばになり、床に倒れた。

 

「うわ!うわあ!臭う! ネバるゥ!誰か取ってエエええ!」

「くそ! マルタがダウン!」

「何て事するんだ!」

 

散発的に銃声が鳴る。発酵臭にまみれた隊員が引きずられて行く中、エスカレーター組はその惨状から目を逸らすように受験組の検挙を行っていく。

 

「仇と匂いは取るぞ……必ず!」

 

押田ルカは目尻に涙をため、決意を新たにする。こんな事が起こりだしたのはつい3日前からになる。正確にはずっと前から小規模ながらもあったが、最近は活発になり、今ではこんな有様だ。

 

「制圧完了!」金糸の様な金髪を振り、押田は部屋の奥へと進む。勿論フラッシュライトとフランスパンを構え、最大限に警戒しつつ、進む。皆が肩で息をし、疲労とストレスで瞳を揺らす中で、押田は毅然として最奥の部屋の前に立つ。

 

「……おそらくこの中かと」

「……ああ」

 

押田は喉を鳴らした。部屋の外からでも嗅ぐことが出来る匂いに、だ。それは自分の人生ではかつて経験したことがなかった匂いであった。

 

彼女は知らないが、それは様々な漬物と発酵食品の混ざったそれで、分かりやすく言うと、田舎で農業を営むおばあちゃんの匂いである。だが、それが何を意味するのか。彼女は理解していた。

 

意を決してドアを蹴破る。そこには彼女達にとって驚くべき光景が広がっていた。

 

「何だ?! これは!」

 

口元を抑え、絶句する。暗い部屋を占めているのは圧倒的漬物の戦列であった。天井に吊り下げられた干された大量の大根。ブラウン管テレビの上に並べられた藁の塊。床を我が物顔で占領しているのは糠の入ったタルであった。

 

藁を興味本位で開くと自家製の納豆が糸を引いて、その様を見せつけ、隊員が腰を抜かして尻餅をついた。

 

「ヒィ!!」

「触るな! 何も触るな!」

「ルカ様!こ、コレを!」

 

大型の冷蔵庫の中を開けるとルカは二歩退いた。恐ろしいことに完成されたたくあん漬けと浅漬けがタッパーにぎっしりと、しかも刻み唐辛子まで添えられているではないか。

 

これこそ、BC自由学園で散見される“違法発酵物製造プラント”である。匂いと外観がおフランスな空気感を損なうので、生産と販売には許可が必要なのだが、売られても高値なのでこうして受験組による闇製造が行われている。

 

「こんなに作られているなんて、受験組め!外様め!」

「ヒドイ、このアパルトメントはもう納豆菌の海に沈んだ…」

 

「くそう!」押田は悪態を吐き、ヘルメットを床へと叩きつけた。こんな時に安藤は何をしている。これを抑えるのが奴の仕事だ! あの健康チックな褐色肌で、素敵な三白眼を持ち、レモンの良い香りのする黒い癖っ毛をした受験組はどこで何をしているんだ!

 

押田ルカは独り、無力感を覚えつつも皆に消毒する旨を伝え、部屋を後にした。

 

 

 

「きゅうり、お塩、昆布…ジップロックに付けて重しで圧しつける…これでBC自由学園法違反ですわ!」

 

てきぱきと作られた浅漬けをまえに受験組達が歓声を上げ、拍手をする。

 

「おお!なんて手際だ!流石謎のファーマーヒップさん!

「勉強になります!」

 

学園艦の底の底。別の所では受験組の前で謎の赤毛の漬物名人による講義が行われていた。三日前から行われている、このご家庭の知恵講義は評判で、受験組の救いの神となっていた。いかにネットでレシピを見ることができてもノウハウはやはり人伝に限る。

 

故にこの講義で美味しい漬物が次々と量産されていくのはBC自由学園受験組にとって待ち望んだ瞬間であった。

 

それを遠巻きにルクリリと薫子(共に仮面で仮装済み)が憮然とした顔で見ていた。

 

「なぁ。これって」

「これが必殺、裏からの黒幕――第一次漬物ブリティッシュ作戦。またの名をピクルスマーケットガーデン作戦と…」

「そういうことを聞きたいんじゃないなくてさ」

「これで対立を煽りに煽って、仲直りが出来るかで奴らの仲を測定するんです」

「だからさ」

 

ルクリリは呆れ顔で言った。

 

「コイツ等バカなんじゃないかな」

 

薫子は大きく頷いた。

 

「全くですね。紅茶以外でこんな騒動起こすなんて野蛮もいいとこです」

 

ルクリリは「そうだな」と乾いた笑いを浮かべ、ミルフィーユをフォークで掬う。

 

上品な甘さが口一杯に広がり、妖精のようであった。しかし、ルクリリの心は晴れなかった。自分らが戦って来た相手には敬意を払って来たが、それを向けるべきか疑問になった。

 

おそらく路上でタイヤキを作っていたら、革命が起きるだろうと皮肉気味に笑った。

 

「終わりましたわー!」

「おかえりですローズヒップ。どうでした?」

 

講義を終えたローズヒップは手早く炭酸水の瓶を一気飲みし、ロールケーキを口に放り込む。「うん!美味い!」と豪快に明言し、彼女はあっけらかんと言った。

 

「BCの方たちってきっとおバカさんなんですわ!」

「ですよねー」

 

ルクリリは頬杖をついて、アハハと笑う二人をただ見ていた。

 

 




これからも遅れるとは思いますがよろしくお願いします。

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