学説においては、それは弱者が強者に対する戦い方を意味する。
たとえば、ベトナム戦争におけるベトコン(南ベトナム解放戦線)のゲリラ攻撃、あるいはアフガンにおけるムジャヒディンのゲリラ攻撃のように。
では今回は?
どうだろうね・・・?
1943年3月・南太平洋ビスマルク海
三回目の大きな揺れが船体に襲い掛かった。
「船長、本船はもう無理です。」
「そうか・・・」
船長の残念な、それでいてなんだか誇らしい表情に、報告をした航海長は笑みを浮かべた。
「私たちはいつか来ると覚悟はできていたが、
「知っていましたか?船長。もともとこの作戦は無理があると言って海軍部内でも反対があったとか・・・」
怒るのではないかと思っていた船長の表情に変化はなかった。
「航海長、海軍なんていつでもそんなものだよ。ガ島だって、ソロモンだってそうじゃなかったかな?そうだ、そこにウィスキーがある。最後の飲み物としては良いじゃないか?君は退船したまえ。」
そう言われて退船した航海長が最後に見た船長の姿は、燃え盛る
1943年2月・御蔵島沖
「船長!機関室浸水!」
「航海長、この嵐じゃ助からないな・・・」
大荒れの中航行していたこの船に魚雷が命中した。米軍はそんな技術まで持っていたのか・・・海軍の護衛はいったいどこにいるのだろうか?
「これじゃあ救命艇も下ろせないな。」
「船長!浸水が止まりません!下層部水没!」
その船が荒天のなか、米軍の魚雷攻撃を受け撃沈された。救助者はいなかった。
1944年2月・トラック島
「米軍艦載機接近!」
数秒後、船の中央部で大きな爆発がした。
「米軍爆撃機なおも接近!」
爆弾が命中したのか、さらに中央部で大きな爆発があった。
「船長、もう駄目ですね・・・」
「ああ、航海長、一本もらえんか?あと火も。」
航海長は船長に煙草を一本差出、火をつける。
「あぁ、うまいな。」
「船長、海軍主力はなぜここにいないのでしょうか?」
「大方、保身のために逃げ出したのだろう。ガ島でもソロモンでもニューギニアでもそうだったじゃないか?大本営なり軍令部なり連合艦隊のお偉方は、作戦ばかり立てていて、
その時、さらに大きな揺れが船体を包んだ。
「君は行け!そして、日本郵船客船の最後の姿を伝えるんだ!」
その船は、トラック島に横たわる残骸と化した。
9月3日・余市警備府内・宿舎
私は悪夢にうなされて目が覚めた。ここ最近悪夢ばかりよく見る。自分が経験したことじゃないのに、自分が感じたかのように見る。
キッチンに移動した私は、冷蔵庫から水を取り出して一気に呷った。
「また悪夢を見ていたの?“こじま”いや“志賀”。」
「ええ、
「ねぇ、ハーブティーを入れるから飲んで?」
同居している“宗谷”がハーブティーを入れる準備をしている。
その様子をぼーっと見ていると、私はあることに思いあたった。
「ねえ、“宗谷”。これから私の話すこと、聞いてもらえるかしら。」
そういって私は、今自分が考えていたことを話す。
「間違っていないと思う?」
しばらくの静寂の後、“宗谷”が口を開いた。
「私は間違っていないとおもう。でも、それであなたはどうする気なの?」
「私は・・・私の思っていることをぶちまけるわ。それで量刑がどうなってもいいと考えている。私の考えが正しければ。」
「もし違っていたら?」
「私が腹を切って済ませればいい話。深海棲艦の巣に突撃して、死ぬわ。」
「その時は私も一緒よ。」
彼女が悲しげな表情を浮かべました。
「あなたまでわたしのそんな無茶に付き合うことはないよ。」
「私はあなたがこっちに来てずっと苦しんだことを知っている。
「そうか・・・ごめん。今日は無茶してしまうかもしれない。」
「大丈夫よ。きっとできるわ。そして、いい結果になるわ。」
深夜三時、こうして私たちの深夜のお茶会は終わった。
翌朝・警備府内・大法廷
「検察官入廷!」
入ってきた二人の検察官に、私は大きなため息をつきました。いつも着ている海保の制服をモデルにした服装ではなく、戦時中のもんぺ姿です。一体何を考えているのでしょう・・・
「そういえば“青葉”さんはあの戦争を生き延びたのですね?」
「はい。戦後、あの服を着た多くの人を呉の町で見かけました。」
「そうですか・・・これはひと波乱ありそうですね。」
その後、弁護団、裁判長と入廷しました。
「これより、論告求刑があります。検察官、どうぞ。」
「ありがとうございます、裁判長。」
“こじま”さんが一口、グラスの水を含みました。
「さて、被告人についてまず根本的なところから判断しなければなりません。私もそうですが、艦娘・船娘には「公的機関」もちろんこれには軍隊を含む「公的機関」の艦艇の地位が保障されております。これは、海洋法における国際条約において想定されておりませんが、例外的に適応されるとします。さて、本条約では軍艦は下記の通りに定義されます。」
「一の国の軍隊に属する船舶であって、当該国の国籍を有するそのような船舶であることを示す外部標識を掲げ、当該国の政府によって正式に任命されてその氏名が軍務に従事する者の適当な名簿又はこれに相当するものに記載されている士官の指揮の下にあり、かつ、正規の軍隊の規律に服する乗組員が配置されているもの。」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BB%8D%E8%89%A6#cite_note-warship-1)
「公海上の軍艦は、旗国以外のいずれの国の管轄権からも完全に免除され、この免除は他国の排他的経済水域においても認められる。軍艦が公海または自国領水にある場合、臨検・拿捕・追跡の権限を行使できる。また、軍艦が公海(排他的経済水域を含む)または自国領水にある場合、亡命者等の庇護を求める外国人を庇護する権限を有する。これは、国際法上認められた領域内庇護の一種と解される。なお、軍艦が外国領海にある場合、亡命者等の庇護は外交的庇護と解され、国際法上認められていない(ただし、暴徒から避難する者を一時的に保護することは認められる。)。公海上の軍艦は、他の船舶と同様、公海の自由を享受し、遭難に対する援助の義務を負う。」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BB%8D%E8%89%A6#cite_note-warship-1)
「また、漁業法では以下の通り定義されます。
農林水産大臣または都道府県知事の許可をうけずに許可を要する漁業を営み、密漁で検挙された場合は3年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金が科せられる。日本における「漁業を営む」の解釈は、「営利の目的で反復継続の意思をもって行う行為」とされ、漁獲の有無については問われない。つまり、例え漁が空振りであったとしても「営利の目的で反復継続の意思」で行ったのであれば、漁網を使う漁業であれば投網、潜水器漁業であれば潜水の時点で既遂となる。
また漁業者が漁業監督官、海上保安官、警察官等の立入検査を忌避した場合は、漁業法の規定により6ヶ月以下の懲役若しくは30万円の罰金が科せられる。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%86%E6%BC%81#.E6.97.A5.E6.9C.AC.E4.BA.BA.E3.81.AB.E3.82.88.E3.82.8B.E5.AF.86.E6.BC.81.E3.81.AE.E5.AE.9F.E6.85.8B)
特定の人(漁業協同組合関係者)だけが、漁業権の免許権者である都道府県知事から免許されることによって、一定範囲の漁業を独占排他的に営みその利益を享受することができる、というしくみになってしまっている(利権性)。ここで言う「排他性」は、あくまで漁獲行為の排他性を指し、水面そのものに対する排他性を指すものではない。また、漁業権を有していても具体的な漁法については別に許可を要する場合がある。(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BC%81%E6%A5%AD%E6%A8%A9)」
「つまり、被告人が軍艦籍を有するのであれば、漁業行為を行うことは不当であります。また、その漁獲量をかんがみれば、環境調査や資源調査の範疇を大きく逸脱したものであります。よって、ます被告人に三年以下の懲役もしくは2,000万円以下の罰金を要求いたします」
また“こじま”さんが口に水を含んだ。
「さて、被告人はなぜこのような行為に及んだのでしょうか?まず考えられるのは、連合艦隊司令部からの指示によるものでありましょう。当方の調査では、この指示は連合艦隊司令部の
「僚艦娘“加賀”にたいしても同様だと言わざるを得ません。今回の件では、“加賀”にはその“赤城”を止める機会が数度にあったものの、それを実行してはおりません。よって、共同でこの行為を行っていたと考えられます。」
法廷がざわついています・・・
「よって、検察官としては、漁業法違反で懲役三年、罰金2,000万円の実刑をまず漁業法違反で求刑します。また、その後の行動に関しては、仮に被告人が心身喪失の状態だとすれば、軍籍はく奪の上、民間刑務所にて療養。その後札幌地方裁判所にて過失致傷で裁判にかけるのが適当であると考えます。また、意図的に銃撃を行った場合、敵対意思つまりは反乱行為として不名誉除隊以上の処置が妥当だと考えております。」
法廷内では何一つ物音がしません。
「裁判長、私見をお許しください。」
「どうぞ。」
「
「分かりますか?狭い船室に押し込められ、沈没する船から必死に脱出しようと数百人が狭い入口に殺到する陸軍将兵の姿が?大切な物資を守りきれずに沈んでいく商船の乗組員の気持ちが。海防艦は国を守る生命線だ、と言われているにもかかわらず、配属されたのは商船学校での士官。
「そしていま、“一航戦の誇り”“艦隊決戦、楽しみだな”と、内地の艦娘たちはそういっているそうです。どうでしょうか?あの時代、あの連中が言っていた言葉と何が違うのでしょうか?私には同じ言葉に聞こえます。私は、そいつらの存在を消したい。そいつらの一緒にいることは不快だ。できれば、あの深い水底に沈んでいてほしい。自分のやってきたこと、言ってきたことを後悔しながら。いかなる形であれ、二度と浮上しないように。ただそれだけを祈るだけです。深海棲艦になって甦るのであれば、今度はあれで姿かたちなく焼き払ってください。旧約聖書における、ソドムとゴモラのように、以上です。」
「私たちが今、ここになぜあるのか?それは、深海棲艦などという、任務を忘れた艦艇のなれの果てであるふざけた連中を叩きのめすためであり、断じてIJN艦娘のためであるのではありません。
“こじま”さんがグラスの水を一気に呷ります。
「裁判長、ありがとうございました。これで、検察側の論告求刑を終わります。」
同日・夕方・余市警備府・AVANTI
「“こじま”さん、ぶち切れていたな・・・言いたいことは言い切った、ということか。」
正直、“青葉”も妹の“衣笠”も、今、顔が青いと自覚しています・・・あの“こじま”さんの血を吐くような論告求刑、いえ、あの演説に反論できる
「“こじま”さん、結構言いたいこと言いましたね。まぁ、いつも言っていることではありますが、一航戦を目の前にして、ついに堪忍袋の緒が切れた、ということでしょうか?」
「いやぁ、よく持ったと思うよ。あいつ、相当たまっていたみたいだから・・・」
紳士の言葉に、“青葉”は疑問を持ちました。
「紳士さん、“青葉”はよく分かりません。なんで“こじま”さんはあそこまで切れたのでしょうか・・・?」
すると、紳士は、“あぁ、そうか”という表情を浮かべました。
「“青葉”君、君の鋼鉄の船としての最後は確か呉で大破着底だったね?」
「はい。」
「“衣笠”君はソロモン海で撃沈、だったね。」
「そうです。」
「うむ・・・“衣笠”君、君の撃沈後、日本軍は泥沼を転げ落ちるように戦局が悪化した。その中で、ソロモン海やニューギニアに将兵を送るべく海軍は輸送計画を何回も立案した。ただ、“貴重な艦船は艦隊決戦第一であり、輸送船護衛任務になど割けない”という理由で護衛もほとんどなく送られ、そして沈んで行った。それだけではない。資源輸送の任務に就いた輸送船の多くが護衛もなく、しかも単独航海で
紳士の言葉に、“青葉”も“衣笠”も言葉がありません・・・
「彼女が医務官に言ったそうだ。夜、眠れません。眠っていると声がするのです。“お母さん、助けて”“まだ死にたくない”“妻よ、子供を頼む”その言葉で目が覚めるのです。私が直接経験したわけでもないのに、言葉が聞こえるのです。とね。あえて酷いことを言うが、“敵”が一航戦で良かった。これが“長門”や“大和”だったら、おそらく彼女は刃物を持っていたかもしれない。彼女は、あなた方IJN艦娘を文字通り死ぬほど憎んでいる。深海棲艦とは違った意味で。
そういって、紳士は“よなよなエール”の缶を一気に飲み干しました。
“青葉”は、正直に言って自分たちがそこまで嫌われていることを知りませんでした。ここまで明確な“殺意”を論理的に組み上げる人がいたでしょうか?いえ、いませんでした。
“青葉”は今まで自分たちが言っていたことが、如何に空虚なものかもしれない、ということが分かったのかもしれません・・・
同時刻・根室市・根室シティホテル
「まずいわ・・・」
珈琲の味ではありません。今の状態がです。
私、鳳翔型軽航空母艦娘“鳳翔”はこのホテルのラウンジでとある人を待っています。“赤城”さんと“加賀”さんの裁判の映像は、録画という形でほぼ毎日確認できます。正直にいって、あまり面白い物ではありません。検察官がなぶりものにしている感じがします。
そう思っていると、釧路業務管理センターの職員に付き添われて、根室漁港の工藤漁協事務長がいらっしゃいました。
「初めまして、私、鳳翔型艦娘“鳳翔”と申します。」
「根室漁協事務長の工藤です。」
そういって座った私たちは雑談の後、本題に入りました。
「“鳳翔”さん。あなたは確か大戦を通じて沈まなかったそうですね。」
「はい。」
「であれば知っているでしょう?
私はとっさに答えられません。知らないのですから・・・すると工藤さんは言葉を続けました。
「あなたが答えたら、私はあなたを殴っていたでしょう。
そういって工藤さんは煙草に火を付けました。
「タバコがお嫌いならすみません。米軍の艦載機で家内を無くしましてね。それ以来、これが離せないのです。」
そういって工藤さんは紫煙を吐き出しました。
「“鳳翔”さん。
私は、何か言ってかえすべきなのでしょうが、何も言えませんでした。
「だから私たちは余市に軍が基地を作るといったときにも信用できなかった。信じるもんか、軍なんて命令一下で私たちを徴用し、虫けらのように扱い、終戦になったらその事実さえも忘れる、そんな存在だと思った。でも、
工藤さんの口調がだんだん荒くなっています。私は何も言えません。言ってはいけません、言ったら私は自分で自分を殺すことになってしまいます。そんなこと、思ってすらいなかったのに・・・
「私には、あなた方“日本海軍”の艦娘が、日本海軍そのものとダブってなりません。あなた方、何者なのですか?ひょっとしたら深海棲艦じゃないのですか?いや、こういいましょうか?
同時刻・余市警備府
「そんなつもりはないのよ!そんなつもりは!」
“加賀”さんの叫び声がします。幸いなことに、ここは鉄格子のついた独房などではなく、普通の私たちが使っているような官舎の私室が与えられていることでしょうか・・・
もっとも、今の一航戦にとってはそのようなことは関係ないかもしれません。かなり取り乱しています。あんな形で、深海棲艦よりもより強い形で敵意と憎悪を向けられたのです。まぁ、無理もありませんが・・・
わたし、ずいかく級制海艦“ずいかく”は一航戦が取り乱した様子を呆然と見ていました。あの誇り高く、毅然とした一航戦が泣き叫んでいます。“赤城”さんは、自分の手をつよく握りしめたままボロボロ泣いていますし、“加賀”さんは私に縋り付いています。正直、こんな“加賀”さんは見たくなかった・・・
「五航戦、いや“瑞鶴”。私たちにそんな気はなかった。なかったのよ!あんな風に思われていたなんて思いも、考えてもいなかった!それが、それが・・・」
わたしを厳しく指導していた、あの“加賀”さんがこんなになるなんて・・・
わたしは加賀さんをあやして、泣きつかれた彼女たちをベッドに寝かすとそっと部屋を出ました。部屋の外では、“りゅうきゅう”さんが私のことを待っていました。
「どう?彼女たちは?」
「酷く混乱しています。怯え、の方がいいのかもしれません。明確な殺意をあそこまであからさまに向けられたのですから無理はありませんが・・・」
「じゃあ、行きましょうか。」
そういって、私たちはある部屋に向かった。そこは警備府内でも秘密の部屋であり、防音効果が大きいと聞いている。そんな部屋で密談しないといけないとは・・・
私達がその部屋に入ると、見知った顔が何名かいるのに気付いた。
「よ!」
“ミディ”さんが私に合図した。
「じゃあはじめようか?」
この会は、私達弁護団のために、私たちを支援していただいている艦娘が開いたものだった。
「さて、始めようかね。」
「あそこまで“こじま”さんが仕掛けてきたことを考えると、彼女にもそれなりの勝算があるように思われます。」
“ヒューストン”さんが口火を切った。
「しかし、正直に言って“こじま”さんが言っていることは本音だし、ある意味においては事実だ。それを覆すことは難しい。そうじゃないかね?“くまの”さん。」
「・・・・ええ、私もそう思いますわ。」
「ちょちょっと“くまの”。」
「“すずや”、いまさら偽ったところで、歴史、いえ数字は変えられませんわ。」
“くまの”の指摘に私たちは黙ってしまった。
「どうやら、
“タイコンデロガ”さんが眼鏡を押しやってそういいました。この席には
「
「知っているでしょう?今回の件は最初から仕組まれた
「しかし、一航戦のあの行動でシナリオは崩壊したはずじゃあ・・・」
「
一航戦終了のお知らせ(存在/論理)になってしまいました(笑)
法的な文面などに関しては、引用したもともとのURLを貼り付けましたので、ご参照ください。
しっかし、解釈はやっぱりガバガバだなぁ・・・
2015/3/5追記
何点か加筆・削除・修正をしました。
一番大きかったのは「過失致傷」が「過失致死」になっていた・・・・
おいおい。それだったらもう誰も制御できないって・・・