修学旅行も終わり、いつもの学校生活が始まる。
あの夜聞いたことの整理はまだつかない。それに、聞いたことであのタコは誤魔化すだけだろう。
「・・暗殺してりゃ、そのうち分かるだろ・・・」
そう結論付け、俺は教室のドアを開ける。
「ふあぁっ、おはよー」
「お、おう、夕凪か。おはよう・・」
盛大なあくびをしながら教室に入ると、杉野の返事が何かおかしかった。
教室を見渡すと、皆何か戸惑っているようだ。
「どしたん?」
「今日、転校生来るって烏間先生からメールきたろ?」
「おう。またどうせ暗殺者だろ?」
「まぁそうなんだが・・・あれ見てみ?」
「ん・・・・何だあれ?」
デカくて黒い箱にモニターが付いた、前まで無かった物体が置いてあった。
近づくと、いきなりモニターがつく。
「今日から転校してきた、自律思考固定砲台と申します。よろしくお願いします」
「・・・そう来たか・・」
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「紹介する、ノルウェーから来た、自律思考固定砲台さんだ・・・」
「よろしくお願いします」
「烏間先生も大変だね〜」
「ああ、俺だったらおかしくなりそうだな」
タコにビッチに、人工知能か・・・
「プークスクス」
ウゼェ・・
「お前が笑うな、同じイロモノだろうが。
言っておくが、彼女はれっきとした生徒として登録されている。だから、お前は彼女に反撃できない」
ほぉ、契約を逆手に取ったと。
「いいでしょう。自律思考固定砲台さん。あなたをE組に歓迎します」
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「・・であるから、ここの文法は・・」
1時間目が始まる。さて、お手並み拝見だ。
ガシャガシャ!ガキン!
いきなり銃が展開された。そして打ちまくる訳だが・・・うるせぇ!!
これじゃ授業もクソもねぇよ!
「授業中の発砲は禁止ですよ」
「気をつけます。続いて攻撃に移ります」
何でだよ!今禁止って言ったろ!
砲台はまた銃を殺せんせーに向ける。
「凝りませんねぇ」
またさっきのように打ちまくる。それを殺せんせーが同じように避ける訳だが・・・
ブチャッ!!
「・・・んなっ!」
今明らかに殺せんせーは、玉をチョークで弾いた。にも関わらず玉が当たったのだ。
「右指先破壊、増設した副砲の効果を確認しました」
チョークで止めることを予測した隠し玉か!
「卒業までに殺せる確率、90%以上」
また、とんでもない転校生が来たもんだ。だが・・・授業ができん・・・
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翌日
「朝8時半、システムを全面起動・・・!?」
固定砲台は、ガムテープでぐるぐる巻きにされていた。
「これでは銃の展開が出来ません。明らかに生徒への加害であり、契約で禁じられているはずですが?」
「ちげーよ俺だよ。
どー考えたって邪魔だろ。常識ぐらい身につけておけポンコツ」
まぁ、そりゃこうなるだろうな。
俺達は受験生な訳で、授業が出来ないのは困る。
ん?サボってた奴が何を言う?ハハハ、中学3年生で授業サボるやつがどこにいるってんだ。ハハハ・・・
・・・ともかく、迷惑な射撃がなくなるなら、それでいい。
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そのまた翌日
「・・・何だこれ・・」
またあの射撃があるのかと思い、ため息を吐きながら教室に入った訳だが、
「おはようございます!夕凪さん!」
何か固定砲台が、色々変わっていたのだった。
殺せんせーが改造したのだろう。協調性を学んだ固定砲台は、暗殺の大きな戦力になるだろう。
いや、今はそんなことどうでもいい。
今重要なのは・・・
「固定砲台が可愛い過ぎるっ!!」
「「「!!?」」」
俺は走りよってまじまじと見つめる。
だって2次元やぞ?2次元娘と話せるんだぞ?全オタクの夢を俺は叶えたんだヒャッハー!
飛び跳ねる俺をクラスメイトが白い目で見ているが知ったことか!
「あの・・・そんなに見つめられると・・・恥ずかしいです・・」
「めっさ可愛いやんけぇ!!」
俺は発狂した。
やべぇ、固定砲台超可愛い。やべぇ、俺超キモい。
「何騙されてんだよ。全部あのタコが作ったプログラムだろ。
愛想良くても機械は機械、また空気読まずに射撃すんだろポンコツ」
「・・・おっしゃる気持ち、分かります寺坂さん。確かに昨日までの私は、皆さんのことも考えずに迷惑な射撃を、ポンコツと言われても仕方ありません・・・」
「あーあ、泣かしちゃった」
「寺坂君が2次元の女の子泣かした」
「誤解される言い方やめろ!」
俺は下手人の肩を後ろから叩く。
「・・・死ぬか地獄に堕ちるか、どっちがいい?」
「何でだよ!?」
「固定砲台ちゃんを流せた罪、万死に値するナリ!」
「「「お前は朝からどうしたんだ!?」」」
一斉に突っ込まれた。
はっ!いかんいかん、キャラが変わってしまった。
「いいじゃないか、2次元。Dを一つ失うところから女は始まる」
「「「竹林!お前それが初セリフだぞ!?良いのか!!?」」」
ここにもオタクがいたようだ。
俺は、竹林の手を握る。
「・・同志よ!」
「・・!ああ、君もか!」
「「変な同盟出来ちゃったよ!」」
「共に目指そう!」「2次元の高みを!」
「「「・・・何だこれ?」」」
俺達の周りにはキラキラしたエフェクトが見えた。
だから見えないもん、クラスメイトが白い目で僕を見ているのなんて。
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新しくなった固定砲台は、休み時間の人気者となっていた。
「そうだ。この子に名前付けてあげない?いくら何でも自律思考固定砲台じゃあね・・・」
「んじゃ、一文字とって"律"で!」
「安直だな」
「お前はそれでいい?」
「嬉しいです!では、律とお呼び下さい!」
「なんか、馴染めて良かったじゃん」
「さぁ、どうだろうねぇ」
「ん?どういうことだカルマ?」
あれで万々歳じゃねぇのか?
「寺坂も言ったけど、機械自体に意思がある訳じゃない。あいつがこの先どうするかは、開発者が決めることだよ」
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さらにそのまた翌日
「おはようございます、皆さん」
・・・何・・・・だと・・・?
「今後は改良行為も危害と見なすと言ってきた。
君らも、彼女を縛って壊れでもしたら賠償を請求するそうだ」
開発者からすれば、殺せんせーが入れたプログラムは邪魔でしかないのか。
ああ、俺の律ちゃん・・・
「開発者とは厄介な、出来れば生徒の意思を尊重したいんですがねぇ」
「攻撃準備を始めます。どうぞ授業に入って下さい殺せんせー」
はぁ、またあの射撃か。開発者だか知らんが、こっちのことも考えてほしいもんだ。
(((来るぞ!!)))
射撃が始まると思った次の瞬間、
銃ではなく、沢山の花束が出てきた。
「・・・え?」
「花を作る約束をしていました。
殺せんせーの改良のほとんどは、暗殺に不必要と判断され削除されてしまいました。
しかし、私自身は"協調能力"が暗殺に不可欠な要素だと判断し、消される前に関連ソフトを隠しました」
「素晴らしい!つまり律さん、あなたは・・・」
「はい、私の意思で開発者に逆らいました。
こういった行動を反抗期と言うのですよね?律は悪い子でしょうか?」
「とんでもない、中学生らしくて大いに結構です」
こうして、ちょっと変わった姿の転校生は、俺達のクラスメイトとなった。