原作では6月15日なのですが、この作品では6月末ということでお願いします。
球技大会の冒頭の1日前ですね。
「おはようございます」
梅雨がもうすぐ終わりそうなこの頃、今日は雨が降っている。
そして、今日は2人目の転校生がやってくるらしい。烏間先生から、そのことは昨日メールで伝えられた。
「転校生って、どうせ殺し屋だろ?」
「律さんのときは少し痛い目を見ましたからね。今回は油断しませんよ」
どっちでもいいけど、またうるさいのは勘弁だな。
「そういや律、何か聞いてないの?」
「はい、少しだけ。
当初は私と彼の両方を同時に投入する予定でしたが、理由がありキャンセルされました。彼の調整に予定より時間がかかったのと・・・・私が、暗殺者として彼に圧倒的に劣っていたからです」
律だって、卒業まであの射撃を続けていれば、殺せる確率はかなり高かったろう。
その律に対して圧倒的に差をつける転校生って、どんな化け物が来るんだ?
そのとき、教室のドアが開いた。どんなやつが来るのか、全員が身構えたが、入って来たのは・・・
・・・何か、全身真っ白の奴だった。
白装束の男(?)は、入ってくるといきなり手を出し、白い鳩を出した。
・・・何なんだこの白手品男?
「ごめんごめん驚かせたね。私は転校生の保護者だよ。まぁ白いし・・シロとでも呼んでくれ」
じゃああの手品何だったんだよ。ちょっとビビっちゃったじゃねぇかよ。
「ちょっと性格とかが特殊な子でね、私が直で紹介させてもらおうと思いまして」
そういえば律が、調整がなんとかって言ってたな。頼むから人間であってほしい。この教室は烏間先生のsan値をゴリゴリ削っていくからな。
「では紹介します。おーいイトナ、入っておいで!」
今度こそ、どんな奴が来るのだろうか。俺たちの視線がドアに集まる。そして・・・
転校生は後ろの壁を突き破ってきた。
(((((ドアから入れ!!)))))
もう何なの?何で普通に入れないの?馬鹿なの?
「堀部イトナだ。名前で呼んであげて下さい。あと、私も少々過保護なのでね。少しの間見守らせてもらいますよ」
どうでもいいよ。壁直せ壁を。雨ちょっと飛んでくるんだよ。
「ねぇイトナ君、何で外どしゃ降りの雨なのに、何で一滴たりとも濡れてないの?」
カルマがそう言うと、イトナは辺りを見回して、それからカルマの頭を掴んだ。
「お前は、多分このクラスで一番強い。だけど安心しろ。俺より弱いから、俺はお前を殺さない」
おーおー、よっぽど自信があるようで。・・・どうでもいいんじゃあ!!
「なぁ、どうでもいいけど壁直してくれよ。湿気凄いし俺近いからちょっと雨当たるんだよ」
俺がそう言うと、イトナは俺を値踏みするように見て、言った。
「・・お前は、甘過ぎる。それでは、どんなに技術を磨いたところで、あのタコは殺せない」
・・・酷評をされてしまった。
「俺が殺したいと思うのは、俺より強いかもしれない奴だけ。この教室では、殺せんせー、あんただけだ」
「ヌルフフフフ、力比べでは先生と同じ次元には立てませんよ」
そりゃそうだ。天体一つ破壊出来るパワーがあるんだから。
「立てるさ。だって俺たち、血を分けた兄弟なんだから」
・・・・は?
「「「「「兄弟ィ!!?」」」」」
「兄弟同士、小細工はいらない。放課後、この教室で勝負だ」
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昼休み
殺せんせーとイトナの兄弟疑惑について、思い浮かぶのはあの言葉だ。
"それは、お前の手足が2本ずつの時の話か?"
殺せんせーが、元は人間だとしたら、2人が兄弟だという可能性はあり得なくない。そんで、幼いうちに別れて、殺せんせーは自分を一人っ子だと思い、イトナは殺せんせーを探してた訳だ。
・・・肝心なとこ説明できてないな。これじゃ何で殺しにきたか分からん。
使命感?兄弟が地球を破壊するなら止めなきゃ、みたいな?
・・・そんなんで中学生は本命の殺し屋なんかになれんだろ。できたら俺が百億ぶんどってる。
まあ動機はともかく、兄弟説はそれで合っているんではないかと思う。あくまで、俺の足りない頭で考えた一つの推測でしかないため、皆には言わないが。
そろそろ昼休みも終わる。放課後になったら、答え合わせと見物の時間だ。
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6時間目が終わり今は放課後、約束の時間だ。
教室には、机で四角い囲いが作られ、それはまるでリングのようだった。
そして試合のルールは、リングの外に足が着いたら死刑というもの。つまり、この狭いスペースの中でしか戦えないということだ。
普通の暗殺なら、殺される側が殺す側にルールを決められてハイそうですかなんて言うはずがない。というより、こんなリングで戦おうとしない。
だが、これは殺せんせーには良く効くのだ。カルマも言ってたが、ルールを破れば先生としての信用が落ちる。先生として死ぬのは、殺せんせーにとって何よりも、死ぬことより避けたいことなのかもしれないからだ。
とにかく、この暗殺なら殺せんせーの自慢のスピードが活かしにくい。それでも殺せんせーが負けるのは想像がつかないが、今までの暗殺より確率が高いのは事実だろう。
あとは、イトナ自身の能力なわけだが・・・
「観客に危害を与えたら負け。それでいいですね?」
「構わないよ。では合図で始めようか」
俺達、ここにいる全員の視線が、ある一点に集められた。それは切り落とされた触手ではなく、イトナに。正確には、イトナの頭に生えたモノにだ。
「「「触手!?」」」
そういうことか。触手を持つ前に兄弟だったんじゃない、触手を持ったから兄弟なんだ。これなら血は繋がっていなくても兄弟だということの説明がつく。
それにしても厄介だ。触手ってことは、おそらく殺せんせーと同等のスピードの攻撃を繰り出せる。生徒であるイトナを傷つけることはできないため、おそらく防戦一方になるだろう。
・・・圧倒的不利だ。ハンデが多すぎる。
「・・・どこだ」
・・っ!このピリピリとした空気、前に一度感じたことのあるものだ。
寺坂が渚を使って暗殺を試みたとき、殺せんせーは顔を真っ黒にして怒った。
けれど今回は、あのときの比ではない。この場の生徒や、先生達までこの殺気に戦慄した。
「どこでそれを手に入れたッ!その触手を!!」
殺せんせーは、ブチ切れていた。
何故そこまで怒っているのか、それは分からない。そこには俺達の知らない危険があるからなのかもしれない。
とにかく、触手は危険なものなのだろう。マッハを出せるエネルギーがあるのだから、それくらいありそうだ。
「君に言う義理はないよ殺せんせー。
それにしても怖い顔をする。何か嫌な事でも思い出したかい?」
「・・どうやら、あなたにも話を聞かなければいけないようだ」
「聞けないよ。死ぬからね」
そう言ってシロは、何か光線を裾から発射した。そしてその瞬間、殺せんせーの体は一瞬硬直した。
「この圧力光線は、君の体を一瞬硬直させる。ダイラタンシー現象と同じさ。
全部知ってるんだよ。君の弱点は」
「死ね。兄さん」
そして、イトナの無慈悲な言葉とともに、殺せんせーの体は滅多刺しにされた。