「・・ハァ・・・ハァ・・・」
イトナの猛攻撃に対して、殺せんせーは脱皮をして逃げた。頭など数ヶ所刺されたが、結果的に殺せんせーは攻撃を回避したようだ。
しかし、殺せんせーの奥の手を一撃で使わせるとは・・・
「そういえばそんな手もあったね。けどその脱皮は、エネルギーの消耗が激しく、直後のスピードは遅くなる」
確かに、見てとれるほど消耗が激しいのが分かる。
そして二撃目、イトナは触手を広げ、天井から降りてきた殺せんせーに攻撃を仕掛ける。殺せんせーは細かく逃げているが、左右からくる攻撃によって、手と足の触手を切り落とされてしまった。
「さらに言えば初手で触手を飛ばして再生したね。それも能力を低下させてしまう。今のを入れて合計3本、それでイトナのスピードについてこられるかい?」
そしてまたシロが圧力光線を放ち、殺せんせーは硬直した。
イトナがまた攻撃を展開する。突き刺すように狙った正面からの攻撃を、殺せんせーはバックステップで避けようとする。しかし硬直があったため、横薙ぎの攻撃を避けきれずまた1本飛ばされてしまう。
ここで殺せんせーは、触手4本を再生させた。
「触手を再生したか・・・しかし、それも大きくエネルギーを消費する。そして、触手は精神状態にも左右されるんだよ」
シロの言うように、最初よりもさらにスピードが遅い。
そして、イトナが回転しながら殺せんせーに迫る。すんでのところで避けるが、回転を乗せた下段攻撃に、また足が2本切り落とされた。
「安心した。俺はお前より強い」
このままいけば、殺せんせーを殺せるかもしれない。地球を救えるかもしれない。
だけど何なんだろう。すげぇ悔しい。
たった2、3ヶ月の暗殺教室だった。そこで得た暗殺技術は、別に他から見たら大したものじゃないかもしれない。少なくとも、地球と比べられるほどのものではないだろう。
だけど俺は、この教室で生き方を教わった。俺にとって、この出会いはかけがえのないものだったんだ。それを、後から入った奴や部外者に、今終わられられそうになっている。
・・・そんなのは嫌だ。俺はまだ、この教室にいたい。今のE組でいたい。いつか来る終わりも、自分達の手で終わらせたい。
見渡してみると、皆俯いている。大なり小なり、思うことがあるのだろう。皆、この教室で、あのタコに変えられたのだから。
「おいおい、マジで殺されるんじゃねぇか?」
そんなことを考えているうちにも、イトナの猛攻は止まらない。
・・・どうする?俺達がイトナ達の暗殺を成功させないようにするために、俺は何ができる?
考えろ。そうしているうちにも殺せんせーは消耗している。今だって、また殺せんせーの手が、イトナの斬り上げで弾き飛ばされた・・・・・!?
待て、何で俺は今まで、ここまで細かく戦況が把握出来ている?
目の前で展開されているのは、マッハで行われている、常人には理解出来ないものだ。
しかし、俺は理解している。攻撃方法や回避方法まで全て。それは何故だ?
初めの方は曖昧だったものが、攻撃の回数を重ねる度に鮮明になっていく。
それは、回数を重ねて見てきたから。そしてそれは、同じ攻撃だから・・・!?
「さらに1本、そろそろ終わりかな」
そうだ、イトナの攻撃は単調なのだ。だから、回数を重ねるごとにパターンが読めるようになってきたんだ。
単調なのは触手で細かい動きが出来ないからか、それともする必要がないと思っているのか、どちらにせよ好都合だ。
俺はエアガンを顔の高さまで持ち上げた。今なら皆戦いに集中していて、俺の方は見ないはずだ。トドメを刺すベストタイミングの直前を狙うんだ。その時なら発砲音にも気づかず確実に殺れる。
イトナの初動を観察しろ、そして予測するんだ。エアガンの腕は心許ないし予測に至ってはやった事すらない。
だけど、成功させるんだ。俺達の暗殺教室を続ける為に・・・
「もうちょっと高めに持ったほうが良い」
後ろから声をかけてきたのは千葉だった。どうやら真後ろにいて目に入ったらしい。
「ちょうどこの位置で構えろ。かなり狙いやすくなるはずだ」
「・・本当だ。ありがとな、千葉」
「・・・頑張れよ」
さっきまでの緊張が嘘みたいだ。今なら外す気がしない!・・・フラグじゃないぞ?
「・・・ここまで追い込まれたのは初めてです。実に周到に計算されている・・・しかしシロさん、1つ計算に入れ忘れてる事があります。」
「無いね。私の性能計算は完璧だから。・・・殺れイトナ」
シロが命令し、イトナが動き出す。そして、触手で殺せんせーを刺そうとする直前・・・
・・・・今だッ!!
イトナの触手が弾け飛んだ。
「・・なッ!何をしてるんだ君は!」
「何って、イトナ君の頭ドロドロに溶かしてるんだよ」
そう言って、俺はイトナが動揺している隙にもう2発、対殺せんせー弾を撃ち込んだ。これでまともな攻撃は出来ないだろ。
「あんたらが殺せんせー殺しても、俺達には賞金入ってこないわけ。だから邪魔した。俺達が殺せなくて地球の危機が迫ってきたらまた来てよ」
俺達が殺したいんだー!的な事は割愛した。だって恥ずいもん。
「勝負ありです」
リングの方を見ると、殺せんせーがイトナを脱皮した時の皮で包み、窓の外に放り投げていた。
「老獪な先生の勝ちですねぇ。ルールに照らせば君は死刑。もう2度と先生を殺れませんねぇ」
「俺が・・・負け・・・?」
「先生を殺したいのなら、共に学びなさい。このE組でね」
殺せんせーのその言葉は届かなかったようで、イトナは怒りだし、殺せんせーを殺さんと襲いかかった。
殺せんせーが構えた瞬間、シロが麻酔銃でイトナを眠らせた。
「すいませんね殺せんせー。この子はまだ登校できる状態じゃなかったようだ。しばらく休学させてもらいます」
「待ちなさい!担任として、イトナ君は放っておけません・・・それにシロさん、あなたにも聞きたいことが山ほどある」
「嫌だね、帰るよ。それとも力ずくで止めてみるかい?」
殺せんせーは顔に青筋を立てながらシロの肩を掴んだ。
その瞬間、殺せんせーの手は溶けていた。対殺せんせー物質か・・・
こうして、2人目の転校生は去って行ったのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「千葉」
「ん?夕凪か、どうした?」
「さっきはありがとな。流石射撃一位だぜ」
「大したことないぞ。何なら今度教えてやろうか?」
「マジか!頼むよ・・・なぁ、あのタコ何やってんだ?」
「さぁ?」
さっきから顔を隠して何かブツブツ言っている。気味が悪いことこの上ない。
「シリアスに加担したのが恥ずかしいのです。先生どちらかと言うとギャグキャラなのに」
(((一応自覚あるんだ・・・)))
「・・ああもう!んなクッソどうでもいいこと忘れてやるからマッハでこの教室片付けろ!」
「クッソどうでも良いこととは何ですか!大体夕凪君は忘れないで後々弄ってくるじゃないですか!」
「当たり前ださっさと片付けろ!」
「酷い!?」
「それはそうとさ、あの2人との関係を説明してよ」
「先生の正体いつも適当にはぐらかされてたけどさ」
「あんなの見せられたら聞かずにいられないぜ」
「ねぇ、俺達先生の生徒だよ?」
「私達にも知る権利あるでしょ?」
クラス全員が殺せんせーに近づく。
「・・仕方ありませんねぇ。実は先生・・・人工的に作り出された生物なんです!」
・・・・・・・・・・
「「「「「だよね。で?」」」」」
「にゅやっ!?反応薄っ!え、これ結構衝撃告白じゃないですか!?」
「いや、だって自然界にマッハ20のタコとかいないだろ」
「宇宙人でも無いのならその位しか考えられないよね」
「で、あのイトナ君は弟だと言ってたから、先生の後に造られたと想像がつく」
(察しが良すぎる!!恐ろしい子達!)
ズバリ当てられたのか、殺せんせーは白目をむいて畏怖していた。目あるんだ・・・
「僕達が知りたいのはその先だよ。どうしてさっきイトナ君の触手を見て怒ったの?殺せんせーはどういう理由で生まれてきて、何を思ってE組に来たの?」
渚はそう言った。それは、E組が始まってから誰もが知りたかったことだ。
この問いに、殺せんせーは・・・
「残念ですが今それを話したところで無意味です。先生が地球を爆破すれば全て無意味になりますからねぇ」
「「「!?」」」
俺達は思い出した。俺達と先生は、暗殺者と暗殺対象。そして、先生に出された問題は、暗殺で答えるのだと。
「もし君達が地球を救えば真実を知る機会がいくらでも得られます。知りたいのなら行動は1つです。殺してみなさい。先生の中の大事な答えを探すなら、君達は暗殺で聞くしか無いのです」
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「はあぁぁぁっ!疲れたぁ!」
烏間先生のスパルタ教育が終わり、俺は全身に疲労を感じながら家に向けて歩いていた。
あの後、何人かの生徒が放課後の訓練を希望したのだ。かく言う俺もその一人なわけで、その訓練を受けてきた。
てかあの人、模擬戦の俺を投げ飛ばしてたとき笑ってたよ。超怖かったよあの人の笑顔。
・・・でも、なんか清々しいな。
今までは、訓練を半強制的にやっていた気がした。だが今日の一件があり、おそらく皆も認識が変わったのだと思う。
「・・絶対、殺してやる。俺達の手で・・・」
自分で言って苦笑した。自分を変えてくれた恩師を殺すと言っている。そしてそれが恩返しだとも。
本当に、奇妙なクラスだな。
「・・・ん?」
そうこうしているうちにアパートに着いたようだが、入り口の壁に誰かが寄りかかっていた。帽子を深く被っているので顔が分からない。
どうやら待ち人がいるようだ。それとも不審者か?心当たりが無いのでそのまま通ろうとする。
「久しぶり。颯」
すると、いきなりそいつに話しかけられた。声からして男のようだ。背丈は俺と同じくらい。
俺には全く心当たりが無かった。本当に不審者なのか?いつでもキ◯タマ蹴り飛ばせるようにしとこう。
俺は足を引いて、軽く身構えた。
すると、
「僕だよ」
簡素な言葉とともに、その男は帽子を脱いだ。そしてその顔は、とても見覚えのある顔だった。
「・・・紫苑か?」
橘川紫苑(きっかわしおん)。俺と同じ孤児院にいた同い年の男だ。そして・・・此衣の弟だ。
どちらかというとインドア派であり、当時から本をよく読んでいたのが印象的だ。野山を駆けずり回っていた俺達とはあまり遊んだりはしなかったが、此衣を通じて話すことはあった。
此衣と紫苑の家庭事情はここでは割愛するが、紫苑は此衣にとても懐いていて、此衣も紫苑を大切にしていた。たった一人の家族だからなのだろう。だからこそ、此衣と朋樹の事故の時、俺以上に悲しんでいたのを覚えている。
その後は話していない。俺が紫苑を避けていた。二人が死んだ原因には、俺の存在もある。だから俺は、紫苑と向き合うことを躊躇っていたのだ。
「ひ、久しぶりだな、調子はどうだ?」
「・・・・・」
俺はそんな後ろめたさからか、声が上ずってしまった。
対する紫苑は、静かに俺を見つめていた。その瞳は、とても冷たかった。
「そうだ、孤児院の皆はどうだ?俺しばらく行ってないから分からないんだよなぁ、ハハハ・・・」
「・・・孤児院なら、もう出たよ。あそこにいると、姉さんを思い出す」
「そ、そうか・・・」
思い出したくないのは、コイツも同じなのか・・・
ますます俺は、話せなくなってしまった。俺は悪くない。だけど、俺がいなかったのなら、二人はまだ生きてたのかもしれない。そう考えると、自分の中でも整理がつかなくなる。
「・・・悪い」
つい、口からこぼれていた。
「それは、何に対して?」
「俺がいなければ、お前の姉さんは・・・」
「ああ、それなら大丈夫だよ」
その言葉に、俺は少しばかり安堵する。そして紫苑は歩きだし、俺とすれ違いざまに、こう告げた。
「僕は、君を許さないから」
そして紫苑は歩いて行ってしまった。
その怨嗟の声は、いつまでも俺の中で響いていた。ただ俺は、その場に立ち尽くしていたのだった。
オリキャラ追加しました!
これからどうなっていくのか、楽しみに見て下さると、とても嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。