今回はその下準備みたいな感じです。過去編は、この次からになります。
『大丈夫か!?前原!神崎さん!」
『夕凪!』『夕凪君!』
『なんだぁテメェは?お仕置きだなぁ!!』
そう言って鷹岡が襲いかかってきた。飛んでくるパンチを、俺は殆ど動かずに避けて見せた。そして…
『ハアァァァッ!!』
気合いとともに、思いっきり鋭い拳を放った。鷹岡は大きく仰け反る。
皆が歓声を上げた。俺は更に追撃を加える為に走り始める。マンガによく出てくる、あんな感じの回し蹴りを決めたい。
『鷹岡ァ!よく聞けェ!!』
『……クッ……クソガキがッ!』
『俺がいる限り、皆は傷つけさせねェ!俺が皆を守る!!』
軽くジャンプして蹴りのモーションに入る。そして………
『俺が主人公だからァァァァァガバッゴホブフブッ!!?!?」
ガラガラドガシャーンっ!!というとんでもない音を出して………落ちた。
「………はえ?」
俺はいつの間にか、保健室にいた。ベットから転げ落ちてる所を見るに、寝てしまっていたのだろう。
部屋を見渡してみる。すると、部屋のドアの方に人影があった。よく見てみると、それは中村、不破、速水、2班の女子の面々だった。ポカーンとした表情から、さっきの気持ち悪い生命体を見てしまったようだった。
……………………………
「行くわよ」
「ちょっと待てぇぇぇい!!」
速水が出て行こうとするのを慌てて止める。無言とか一番傷つくから。
「何?夕凪颯の様子を見にきたけど、アイツは人間よ?」
「俺は人間で夕凪颯だ!そりゃ今のは自分でもないなと思ったけどさ!」
何なのこの子?こんなピンポイントで傷抉ってくるなよ泣いちゃうだろ。
見ると、中村が爆笑していた。不破までも、結構笑っている。なにそんな酷かったの?
「俺が主人公!だって……ププッ……一体どんな夢見てたのさ……ハハハッ!」
「……ププッ……ちょっと、中村さんやめ………ハハハハハッ!」
「うがぁぁぁあぁぁあぁあ!!」
超ハズいよ黒歴史確定だなこれあぁぁあぁあッ!
俺が叫んで頭を抱えていると、殺せんせーが入って来た。
「夕凪君、起きましたか………何でベットから落ちて頭を抱えているんですか?」
「ふぁっ!?いやこれには色々と………」
「聞いてよ殺せんせー、夕凪がさっき寝ぼけて「やめろ中村ァァァ!!」」
このタコにバラすとクラス全体に知れ渡るから。そうなったらマジ泣きしちゃうから。
これ以上この空気のままいるとヤバい。強引にでも話を変えよう。
流れを変えるッ!!
「……そう言えば、あの後鷹岡はどうなったんだ?」
「あぁ、それなら渚君が倒しましたよ」
「マジでか!?」
ほへぇ、渚がやったのか。どうやって倒したのか想像がつかん。
しかし、集会のときのことを思い出すと、何となく分かった気がする。あの時の殺気、あれは偶然でも気のせいでもなかったのだろう。
「あ、夕凪君。起きたんだ」
「おう、渚か?鷹岡倒したらしいじゃん。凄えな!」
「運が良かっただけだよ。烏間先生居なかったら勝てなかっただろうし」
「聞いてよ渚、夕凪がさっき寝ぼけて「やめろ中村ァァァ!!」」
何なの?そんな俺を泣かせたいの?
すると、殺せんせーが言った。
「それでは夕凪君、教室に行きましょう」
「え?何で?」
訳が分からないというような俺に、殺せんせーは続けた。
「皆さんが、知りたいことがあるそうです」
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「夕凪君の過去について、話をしてくれないかな?」
教室に入り教壇に立たされた俺は、渚の言葉に戸惑った。
「……そういえば、鷹岡のヤロウがバラしやがったのか……で、何で俺の過去なんか聞きたいんだ?」
クラスには、寺坂達3バカを除いた全員がいた。ここにいる皆が、俺の話を聞きたいと言うのだ。
「夕凪君、ここに来たばっかの時は、皆との間に壁みたいなの作ってたよね?それは解決したものだと思ってたけど、本当はまだ解決しようとしている途中なんだって気づいた」
「要はさ、俺たちもお前が背負ってるもの、一緒に背負いたいんだ。俺たち、この教室の仲間だろ?仲間の苦しみを少しでも分かりたい。そして、一緒に解決していきたい」
「鷹岡先生に掴まれて殴られそうになって、それを助けられた時にさ、夕凪君、本当に私達のことを大切に思ってくれてるんだって思えた。けど、それは私達も同じなんだよ?」
渚、磯貝、不破がそう言った。クラスの皆も真剣な眼差しで俺を見ている。
「………もう1歩、踏み出す時なのかな?」
「はい、私はそう思いますよ」
呟く俺に、殺せんせーが答える。
ならば、俺はそれに応えよう。
「………1つ1つ説明するか。今までいろんな事黙ってたもんな……俺は、"完全記憶能力"ってのを持ってる」
クラスの皆の頭上に、一斉にハテナマークが浮かぶ。イマイチピンとこないようだ。まぁ、そりゃそうか。
「殺せんせー、社会の参考書あるか?俺たちが見た事ないやつ」
「はい、ありますよ。持って来ます」
そう言うと殺せんせーは、マッハで行って返って来た。
「職員室に置いてあったものです」
俺はその参考書の最後にある、年表のページを開いた。俺はそれを読み、10秒ほどで閉じた。
「………覚えた」
「嘘!?10秒しか経ってないのに……」
茅野が驚いたように言った。そりゃ、常人なら今の時間では到底覚えられるものでは無いだろう。
俺はその参考書を磯貝に渡す。そして……
「……凄い、一字一句間違えずに全部言えてる………」
1ページをそのまま言ってみせた。
おおおーーっ!と声が上がる。やっぱ珍しいもんな。
「だから、社会とか理科とかが得意だったのか」
「でも、なんで黙ってたんだ?」
杉野がそんな事を聞いてきた。
「この能力は、なんでも覚えられる代わりに、何も忘れられない。今までの記憶が、全部残ってる。この事について聞かれて、昔の事を思い出したりしたくなかったからな」
「そうか…………」
「まぁ、どうせ今日話すんだから、もう良いんだけどな」
すこし気まずくさせてしまったので、軽くフォローしとく。
俺は、改めて皆に向き合った。皆真剣に見てきていたので、俺もそれ相応の、真剣な態度で話すとしよう。
一呼吸置いて、俺は口を開いた。
「何も忘れられないから、今までの事は鮮明に覚えてる。この脳に焼き付いた沢山の記憶を、皆にも知ってほしい」
俺は、静かに語り始める。
はい……次から過去編入ります。
スミマセンでしたm(_ _)m