夕凪颯の暗殺教室   作:カゲロー@

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第24話 「追憶の時間 三時間目」

 

小4の春休み、終業式を終えて、今は春休みに入っている。

俺は今宿題をやっている。少ない春休みの宿題がもうすぐ終わりそうだ。

春休みってのはいいな。夏や冬にはあんなに宿題出るのに、春だけ少ないんだよなぁ。他の学校だとどうかは知らんけど。

 

「……んん~っ、終わったぁ」

 

これで全部だ。俺は軽く伸びをした。これで思う存分遊べる。フィーバータイムだぜ!

 

 

 

とりあえず大広間に向かった俺は、辺りを見渡す。

 

「おお、颯か。どーした?」

 

……早速暇そうな奴発見。

奏矢は、手をソファの上に広げて足を伸ばし、ふんぞり返っている。股間にライダーキックしてやりたい。

 

「宿題終わらせたから遊びに来た」

 

「早っ!!?!?」

 

「お前が遅いだけだ………それよか、朋樹と此衣はどこ行った?」

 

部屋で宿題してるはずだが、まだ終わってないのかな。

 

「朋樹さんはまだ。此衣さんはさっきあっちの方向かってったけど……」

 

そう言う奏矢は何かに気づいたようで、俺の後ろの方を指差した。見ると、玄斗さんの部屋の方から此衣が来たので、話しかけた。

 

「此衣、宿題終わったか?」

 

「……え!?あ、う、ううん……まだ………」

 

なぜか凄い驚かれた。

 

「……じゃあ、何でこんなとこほっつき歩いてんだよ………」

 

「い、いやぁ……ハハハ……」

 

「……早く宿題終わらせて遊ぼうぜ?」

 

「……ゴメンね、今日はちょっと無理そうかな……じゃあね」

 

そう言って部屋の方へ走っていく。

 

「あ、おい!……ったく、何遊んでんだか……」

 

宿題早く終わらせて遊ぼうって言ったのアイツだぞ?

 

「おい、颯」

 

すると、奏矢が話しかけて来た。

 

「何か此衣さんの様子、おかしくなかったか?」

 

「まぁ、なんか挙動不審だったな……まぁいいや、どうせ大したことじゃないよ」

 

「そうだと良いんだがな……じゃあ、二人が来るまで遊ぼうぜ!」

 

「お前は宿題やらねぇのかよ……まぁいっか、じゃあ、何して遊ぶ?」

 

こうして、二人が来るまでという事で奏矢と遊んだ。しかしその日、夜までずっと二人が来ることはなかったのだった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「それでさ〜、ずっと奏矢の奴とオセロしてたんだぜ?アイツ弱いのに何度も挑戦してくるんだよ」

 

次の日、俺達は今朝飯を食べている。飯の時は大体3人でいる。今日もそうだったので、昨日のことを2人に話していた。

 

「てか、昨日なんで来なかったんだよ。此衣はともかく、朋樹まで」

 

「……え?ああ、ちょっと宿題が長引いてたんだ。ゴメンね」

 

言いながら朋樹を見ると、何故か朋樹も驚いていた。どうしたんだろうか、2人とも昨日から様子がおかしい。

 

「……2人ともなにかあったのか?」

 

「何でもないよ!気にしないで……」

 

「そんなこと言ってもやっぱ変「ゴメンね颯、私達もう行くよ。あと、今日は遊べなさそう」……あ、おい!」

 

俺の言葉は遮られてしまい、2人は部屋に戻っていった。

 

「何なんだよ……ったく」

 

何があったかは知らないが、2人が変だ。このまま追いかけて、問いただしても良いかと思った。それで駄目なら、尾行でもしようかと思った。

だけど、まぁ大丈夫だろう。きっと、明日になれば元通りだ。そうしたら、また遊べばいい。いつも通り話せたらいい。そう思っていた。

 

 

だけど、それは叶わなかった。

それからの2人はずっと、何故か俺との間に壁を作っていた。喋る時に驚かれたり、挙動不審になったりすることはなかったが、話しているときもどこかぎこちなく、不自然だった。それが半年近く続いた。

もしかしたら、他から見たら全く気付かないくらいの変化なのかもしれない。実際奏矢は、元に戻ってよかったじゃん、と言っていた。

でも、ずっと2人と一緒にいた俺にとって、その変化は大きかった。2人が、とても遠くに行ってしまった気がした。

なのに、なんでこうなってしまったかが分からない。俺には心当たりがなかった。

 

とにかく、このままでは嫌だ。そう思った。ギクシャクしたまま、2人と一緒にいたくない。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

小5の夏、学校の帰り道で俺は2人と一緒だった。朋樹と此衣が前に並んで、俺が一歩ほど後ろで歩くような構図だ。2人は今も笑いながら話している。学校のことだろうから、1学年下の俺は会話に参加していない。

もう、こんなギクシャクした関係は嫌だ。前みたいに、3人で、心の底から笑い合えるような関係でいたい。

だから、聞いてみることにした。

 

「なぁ、2人ともどうしたん………!」

 

言いかけた瞬間、俺はある事に気づいて立ち止まった。

2人が話す姿、それを見て、あの言葉を思いだした。

 

『お前、朋樹さんと此衣さんがくっついたらどう思うんだよ』

 

だって、そんな事でこの関係が壊れるなんて、思わないじゃないか。ずっと一緒にいたこの3人が、たかが色恋で壊れるなんて。

 

『良いじゃねぇか。お似合いだと思うぞ』

 

だけど、目の前の此衣と朋樹は、これ以上ないくらいお似合いだった。

俺を置いて、2人は行ってしまう。たかが数メートル先なのに、俺には絶対に届かない気がした。

 

邪魔してはいけない、そう思った。

 

「ごめん2人とも!俺ちょっと忘れ物しちゃったから一回学校戻る!」

 

そう言って、来た道を走ってもどった。後ろで朋樹が何か言っていたが、構わずに走った。

もちろん、忘れ物というのは適当に作った嘘だ。これから向かうのは学校ではない。俺はかなり遠回りして施設に帰った。2人より早く帰るために、走って、走って、走りまくった。

施設に着いた俺は、中にも入らずに森の中に入っていった。ここでも走り続けた。乳酸が溜まって痛む足を無理矢理動かす。

 

着いたのは、あのデカい大木のある場所だ。俺達3人の、始まりの場所。

夏のこの場所は、あの頃と違って緑が一面にあった。相変わらず、美しい場所だった。

何故ここに来たかは、俺にもよく分からない。頭に浮かんだのがこの場所だった。俺は大木に近づき、背中を預けて腰を下ろす。

あの日、二人に会ってから、ずっと一緒だった。離れるなんて、夢にも思わなかった。特別だと、勘違いしてた。

二人は行ってしまった。俺を置いて、絶対に届かない所に。だけど、それで二人が幸せならば、受け入れよう。俺は一度救ってもらえたんだ。俺が邪魔になるなら、二人の為に、潔く離れよう。

 

 

「……くそっ………くそくそぉぉおぉぉぉおおお!!!!!」

 

思いっきり泣いた。みっともなく泣いた。構わない。ここには誰も来ない。

悔しかった。悲しかった。だけどこの気持ちはこれっきりだ。俺は、笑って二人から離れる。そう決めたんだ。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

一年と半年が経った。もうすぐ小学校を卒業する。俺は残り少ない学校生活を送っている。今は帰りのHRだ。

あれから、俺は朋樹と此衣から少しずつ離れていった。同じ屋根の下に住んでいるので縁を切ることは無理だが、話す時間も遊ぶ時間も、どんどん減っていった。

中学生になった二人は、椚ヶ丘中学に入った。私立で高いが成績も良かった二人は、玄斗さんの勧めがあったので入ることにしたらしい。

ちなみに俺も、玄斗さんに椚ヶ丘への入学を勧められた。小学校の勉強は殆ど暗記で済んでしまうので、クラスの奴らには知られていないが成績は良いのだ。実際頭はそんなに良くない。

 

「それじゃあ連絡はここまで」

 

「起立、礼!」

 

「「「ありがとうございました」」」

 

日直が号令をかけ、挨拶をする。それが終わると、クラスが一斉にうるさくなった。大方遊ぶ約束でもしているのだろうが、俺には無縁だ。黙って教室を出た。

 

廊下を歩きながら、中学について考える。今日中に進学の結論を出せと、玄斗さんに言われているのだ。

やはり、普通の公立校にしよう。結構遠いが、勉強は普通でいい。何より、椚ヶ丘には朋樹と此衣がいる。離れるならば、絶好の機会ではないか。というより、それが主な理由になる。

そんなことを考えながら、靴を履き替えて校舎を出る。そして校門に向かうと、良く見知った顔があった。

 

「……朋樹……此衣………」

 

「……久しぶりに一緒に帰らない?」

 

そう言って、二人は笑うのだった。

 

 

 

いつもの帰り道。車の通りの多い道を、三人で歩いている。

久しぶりに三人で並んで歩いた。だけど、会話はない。微妙な空気が流れていて、正直気まずい。そんな空気を察したのか、此衣が話し始めた。

 

「……颯はさ、中学どこに行くの?」

 

「まぁ、迷ったが公立にする。俺、そんなに頭良くないしな」

 

「……そっか………」

 

会話が終わってしまった。また微妙な空気が流れ始める。どうして誘ったりしたのだろうか。

 

「……椚ヶ丘での生活はどうだ?」

 

「勉強が大変だよ。良く知らないけど、成績取れないと特別強化クラスって言うのもあるらしいよ」

 

「そうなのか。まぁ、二人なら大丈夫だろ。学年ツートップじゃねぇか」

 

「うん、まぁね……」

 

話しかけると今度は朋樹が答えたが、これも長く続かない。

ちなみに、この二人が主席と次席を毎回とっていると聞いた時は驚いた。本当に頭良かったんだな。

とにかく、このままこの雰囲気で帰るのは嫌だ。用が無いなら理由をでっち上げて、先に帰るつもりで話しかけた。

 

「なぁ、何も無いなら俺先に帰……「危なあぁあい!避けてえぇ!!」」

 

言おうとした瞬間、誰かの叫び声が聞こえた。振り向くと、トラックがガードレールを突き破って迫っていた。

 

死を直感した。時間が凄くゆっくりに思えた。直撃すれば、間違いなく即死だろう。このまま、三人一緒に死ぬのか、そんなことを直感で思った。

 

……いや、駄目だ。俺はまだ動ける。最期の力を振り絞ってでも二人を救うんだ。それが、俺の恩返しなんだ。

そう思い二人に手を伸ばした瞬間……

 

 

 

ドンッ

 

「………………え?」

 

俺の体は、二つの手に突き飛ばされた。

俺は大きく飛ばされる。ここならトラックは当たらない。けど、そんなことはどうでもいい。

倒れる瞬間、力を振り絞って振り返る。そこには、笑った此衣と朋樹がいた。

 

なんでだよ。何にも分からねぇよ。

何でそんなに笑えるんだよ。今から死ぬんだぞ?何で俺なんか助けたんだよ。二人で、幸せになりたいから、俺から離れようとしたんじゃなかったのかよ。

………お願いだから、もう置いてかないで……本当は離れたくなんてなかった………せめて、俺が代わりに死ぬから……それが俺の恩返しだから……

 

 

きっと、俺の顔は醜いと思えるほど必死だっただろう。そして必死に伸ばした手は、二人に………届かなかった。

 

 

「っっ!……ちくしょおぉぉぉぉおおおおぉぉおおお!!!」

 

 

ゴンッッッ!!

 

鈍い音が響き、辺りに鮮血が舞った。

 

 

 

 

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