夕凪颯の暗殺教室   作:カゲロー@

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第28話 「水泳の時間」

 

「まず問題は、殺せんせーが本当に泳げないのか」

 

昼休み、俺達は暗殺の計画の為に集まっていた。

 

「湿気が多いとふやけるのは前にも見たよね」

 

「さっきも倉橋が水をかけたとこだけふやけてた。もし仮に全身が水でふやけたら…………死ぬまではいかなくても極端に動きが悪くなる可能性はかなり高い」

 

「ああ、夕凪が蹴り落とした時も極端に焦ってたもんな」

 

岡野、磯貝、前原が意見を出し合う。

それを聞いた片岡は立ち上がり、口を開いた。

 

「私の考えた計画なんだけど、この夏の間、どこかのタイミングで殺せんせーを水中に引き込む。そしてふやけて動きが悪くなった所を水中で構えてた人がグサリ!水中にいるのが私だったらいつでも任せて。バレッタに仕込んだナイフで、さっきみたいに殺ってみるから」

 

「おお~、昨年度の水泳部クロール学年代表、片岡メグ選手の出番ってわけだ」

 

前原の言葉で納得した。どうりであんなに速く動けたわけだ。

 

「まず大事なのは殺せんせーに水場の近くで警戒心を起こさせないこと。夏は長いわ。じっくりチャンスを狙っていこう!!」

 

「「「「「おうっ!」」」」」

 

片岡の言葉に皆が賛同する。全く、うちの委員長は頼もしい。

 

「さすがはイケメグ!」

 

「イケメグ?」

 

聞きなれない言葉が聞こえたので、思わず聞いてしまった。

 

「あぁ、文武両道で面倒見が良くて、爽として凛々しいからイケメグってアダ名がついたんだよ」

 

「へぇ〜……」

 

三村の言葉に納得した。確かにイケメグだ。俺は後ろを見てみた。

片岡は、矢田達と楽しそうに話していた。それは教室でもそうだ。いつも注意しているどうしようもない岡島に対してだって、しっかりと接している。

 

このクラスにいると、時々不思議に思うことがある。どうしてこの人がE組に落ちたのかだ。特に、磯貝や片岡辺りは落ちる要素が見当たらない。勉強も十分できてるしな。

 

「どうしたんだ夕凪?」

 

「ん?……いや、何でもねぇよ」

 

まぁ、詮索はしない。知られたくないことだってあるだろうしな。

そんなことを思いながら、俺は教室に戻った。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

放課後、とある本屋。

 

「う〜〜む……どれもイマイチだな」

 

面白そうなラノベを探しているのだが、これといって面白そうなものがない。今読んでる奴の最新刊の発売はまだ先だ。

 

「はぁ……他のとこ行ってみるか」

 

そう言って店を出た。

駅のとこの店は家から比較的近いのでよく行くのだが、あまりラノベとかが売ってない。やはり、二次元娘達はまだ社会から敬遠されているのか……

 

「……ん?」

 

すると、見知った顔を見つけた。

駅の近くのファミレスに、片岡が何やら同級生らしき女子といたのだ。

 

「……こうして見ると、やっぱE組ってレベル高いよな」

 

モデルでと通用しそうな片岡の隣にあの女子である。雲泥の差とはこのことだな。

すると、もう1つ気づいた。

 

「……何やってんだあいつら……」

 

その隣の席には、渚と茅野、そして我らが殺せんせーがいた。グラサンかけて変装しているつもりなのだろうが、怪しいことこの上ない。しかし、片岡達を観察しているのは何か訳があるのだろうか。

 

「………何か、事情がありそうだな」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「いらっしゃいませ!何名様ですか?」

 

ファミレスに入ると、店員のお姉さんが元気良く聞いてくる。

 

「一人です。あと、知人がいるのでその席でお願いします」

 

「かしこまりました!」

 

そう言って店の中に案内された。すると……

 

「じゃーねーめぐめぐ♪これからもずっと私だけのイケメグだよ!!」

 

片岡といた女子がそう言って、俺の横を通り過ぎていった。全く、顔だけでなく頭も低レベルかよ。

軽く溜息を吐いて、俺は片岡に近づく。

 

「……夕凪君?」

 

「たまたま通ったんでな。それよりも………」

 

そう言って、俺は変質者共の方をみた。片岡も気づいていたらしく、軽く溜息を吐いて言った。

 

「そこの不審者3人組は何か御用?」

 

「ば、バレてましたか。我ながら完璧な変装だと思ってたのですが……」

 

「どこがだよ!大体外から見たら変質者丸出しなんだよ!」

 

「へ、へん!?………コホン、今はそれよりも……片岡さん、話してくれませんか?」

 

「……うん、分かった」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

ファミレスを出た俺達は、歩きながら話すことにした。

片岡が言うには、多川心菜というその女子に、去年の夏に好きな男子含むグループで海に行くことになり、カッコ悪いとこを見せたくないと言う理由で泳ぎの指導を頼まれたのだそうだ。

最初のトレーニングでプールで泳げるぐらいには上達したが、それで満足したのか思い上がったのか、多川は何かにつけて練習に来なくなった。

案の定、海流に流されて溺れた所を救助される結果になったということだ。

 

「それ以来、"死にかけて大恥かいてトラウマだ。役に立たない泳ぎを教えた償いをしろ"って。テストの度につきっきりで勉強を教えてる間に、私の方が苦手科目で失敗してE組行きよ」

 

「……それって片岡悪くねぇじゃん」

 

何であんなのの言いなりになってんだ?

 

「うん、彼女ちょっと片岡さんに甘えすぎじゃ………」

 

「いいよ、こういうの慣れっこだから」

 

……なんか、それは駄目な気がする。

そう思っていると、突然殺せんせーが笛を鳴らした。

 

「いけません片岡さん。しがみつかれる事に慣れてしまうと、いつか一緒に溺れてしまいますよ。例えばこんな風に」

 

そう言って見せてきたのは、紙芝居だ。題名は主婦の憂鬱、駄目な亭主が稼ぎを使い果たし、奥さんに泣きついて奥さんがそれを許してしまうという話だ。駄目な方もしっかりした方も、お互いに依存し合っているということだろう。

ふむ、よく出来た紙芝居だ。特に配役だな。この亭主だと苛立ち倍増だ。

 

「いわゆる共依存というやつです。

片岡さん、あなたの面倒見や責任感は本当に素晴らしい。ですが、時には相手の自立心を育てる事も必要ですよ」

 

「………どうすればいいかな?殺せんせー」

 

すると殺せんせーが、マッハでライフセーバーの格好に早着替えした。

 

「決まってます。彼女が自力で泳げるようにすればいい。このタコが、魚も真っ青のマッハスイミングを教えてあげましょう……」

 

頼もしいのだが、殺せんせーって体育教えるの下手なんだよな。片岡の方が教えるの上手いと思うのだが……

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「………なぁ、これって犯罪だよな」

 

「でも、殺せんせーもう連れて来ちゃったし……」

 

「もうやるしかないよ………」

 

時刻は深夜、なぜか俺達は学校のプールにいる……よく分からん魚のコスプレをして………

すると、ベッドで寝ていた多川がいきなり起きた。慌てて俺達は水遊びを始めた。

 

「ここ……ああ、夢か……」

 

よかった。幸いなことにバレてはなかったようだ。

 

「目覚めたみたいだね」

 

すると、片岡が多川に近づいて話しかけた……魚の格好で。

 

「えーと、ここは魚の国!!さぁ、私たちと一緒に泳ごうよ!!」

 

「……あんたメグメグに似てない?」

 

ヤバいな、やっぱり片岡とは付き合いがあるだけ分かるのか。さて、どうする……

 

「…………違うし。メグメグとか知らないし……魚魚だし」

 

「なにその居酒屋みたいな名前!?」

 

恥ずかしながら言う片岡。てか、魚魚て……

すると、殺せんせーがさりげなく片岡に近付いて注意をする。

 

(堂々と魚を演じなさい片岡さん。夢の中だと思わせなければ、我々の行為は拉致監禁です)

 

「僕の名前は魚太」

 

「私の名前は魚子だよ」

 

「魚子は魚なのに浮き輪なの!?」

 

「お、俺の名前は魚丸……筋肉痛で溺れてたところを魚太に助けられたんだ……」

 

「魚って筋肉痛になるの!!?」

 

「そして私が魚キング。川を海を自在に跳ねる水世界最強のタコです」

 

「タコかよ!!」

 

中々のツッコミスキルだな……まぁ、こんな状況普通ないしな……

 

「素晴らしい連続突っ込み。良い準備運動になってますね」

 

ツッコミって運動なのん?

 

「入念なストレッチに早着替え!」

 

「ん"ぶぅ!!?」

 

ひでぇ!絶対あれ痛いだろ……

昔奏矢に海パンで同じことやられたときには殺意が湧いた。

 

「そして入水!」「ぎゃあ!!」

 

いきなりかよ!溺れかけてんじゃねぇか!!

急いで片岡が水に入り、慌てる多川を落ち着かせる。その後も、片岡の丁寧で熱心な指導によって、多川は泳げるようになったのだった。

てか、このタコ体育教えるの下手すぎんだろ。死ぬまで泳げとかなんなの?

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

プールで待っていると、片岡がやってきた。

 

「どうだった?」

 

「大丈夫。心菜、しっかり泳げてたよ」

 

「そりゃ良かったな」

 

そう、特訓の成果を確認するためだ。これで、片岡は多川に対して責任を感じることはないだろう。

 

「これからは、手を取って泳がせるだけでなく、あえて厳しく手を離すべき時もあると覚えて下さい」

 

「はい。殺せんせーも突き放す時、あるもんね」

 

「スパルタすぎてついて行けない時もあるけどな」

 

「にゅやっ!そんなことないですよ」

 

そう言って、皆で笑った。すると、殺せんせーがいきなり、指を水の中に入れた。その部分はふやけて膨れ上がったのだ。

 

「それと、察しの通り先生は泳げません。水を含むと殆ど身動きがとれなくなります。弱点としては最大級と言えるでしょう」

 

そう言えば、それを確かめるのも目的の1つだったな。なんか、殺せんせーのやり方が無茶苦茶すぎて、すっかり忘れていた。

 

「とは言え、先生は大して警戒していない。落ちない自信がありますし、いかに水中でも片岡さん1人なら相手できます。ですから皆の自力を信じて皆で泳ぎを鍛えてください。昨日の暗殺のような連携プレーも良いでしょう」

 

その為にプールを作ったのだと言う。全く、何から何まで先生の思惑通りかよ。

何はともあれ、こうしてE組専用のプールはオープンした。

 

……まだ体が痛い………

 

 

 

 

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