「……っと、ここまで来れば大丈夫だろ」
早歩きで教室を出て、山を降りてきた。ここは山の真ん中くらいだし、あいつらも走って追っかけてくることは無いだろう。
「急がせて悪いな。躓いたりしなかったか?」
「大丈夫……それよりも……」
「ん?」
不破は少し俯いている。心なしか顔が赤い気がする。
「………手……//」
「ん?……ああ、悪いな」
手を引っ張ってきたことに今気づいた。強めに握り過ぎたのかと思い、離してやる。
てか、手を握ってこの反応、もしかしたら…………菌が、とか思われてる?
「……比企谷菌みたいなあだ名は勘弁な……」
「???」
「何でもない……それよか、行きたい店ってどこだ?」
「え?……そ、そうだったね、少し前に出来たカフェなんだけど、そこのパフェが食べたくて……」
「ん?本屋とかじゃないんだな。俺は良いけど、茅野とか誘った方が良かったんじゃないか?」
「ま、まぁたまには夕凪君と行くのも良いかなぁって思って………」
「ふぅん……まぁいいか」
少人数で行くのも悪くないしな。
「急に誘ってゴメンね。夕凪君こそなんか用事あったんじゃないの?」
「ん?大丈夫大丈夫、どうせ大した用事じゃないし………」
ピロリン♪
「………確かもうすぐで新しい味が出るから、その時に買った方が喜ぶと思うんだピロリン♪……」
「……LINEが鳴ってるよ?」
「……大丈夫大丈夫、多少無視ピロリン♪しても呪われるピロリン♪訳じゃないし、二人とも心ピロリン♪が広いから許してピロリン♪くれるピロリン♪よ。てか、その位心ピロリン♪が広くないとピロリン♪ハーゲンピロリン♪ダッツを与えるピロリン♪資格は無いしそれにピロリン♪うるせぇ!!」
携帯を開くと、通知が100を超えていた。スタ爆してやがる……
LINEを開き、二人の個チャの通知をオフにした。これでうるさいのは無くなる。面倒なので既読はつけなかった。
皆さん、スタ爆は相手の携帯を壊すので止めましょう。
「よし、これで大丈夫」
「……それは大丈夫なの?」
「………多分」
気にするな俺よ。多分今日は無事でいられるから。明日は知らんがな……
そんな不安を残しながら、俺達は目的地へ向かうのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「おぉ、ここか」
やっと、私達は目的地に着いた。
椚ヶ丘駅から少し離れたところ、飲食店が立ち並ぶ通りの1つに、その店はあった。
『行く店が思いつかなかったら、こことか良いんじゃない?パフェが美味しいらしいよ』
そう言って中村さんに勧められた。その時の悪い笑みがちょっと気になるけど……
「なぁんだ、だから俺と二人で来たかったのかぁ。それなら最初から言ってくれれば良かったのに」
「え?どういうこと?」
いきなり意味深なことを言い出す夕凪君。何故この店だと夕凪君と二人なの?
「え?だってここ……カップル推奨の店だろ?」
…………え?
「えぇええぇえ!?どゆこと!?」
「いや、ここカップルで来ると割引されるんだよ。知らなかったのか?」
「うん………てか、何で夕凪君はそんなこと知ってるの?」
「殺せんせーが律に、世界のスイーツ大全とかいうアプリをダウンロードしたんだよ。開発者に外された後もう一回。それで、近場にある美味しい店を教えてくれたってわけ」
「そうなんだ………えっと、夕凪は嫌じゃないの?」
私はちょっと気になって聞いてみた。
「ん?何が?」
「その、私と……ふりだけどカップルになるなんて……」
私も割引のことは知らなかった。多分中村さんは分かってて勧めたんだろうけど、それで夕凪君が気分を害するならやめようと思った。
「いんや、全然」
しかし、夕凪君は即答した。
「ふりだったら別に何とも思わんだろが。友達だし、気分悪くなるなんてことはありえねぇよ。割引受けられるなら役得だ」
そう言って店のドアを開ける。その言葉に、私は安心した。
すると、夕凪君は振り向いて……
「それに、不破可愛いから、カップルのふりだけでも得してるよ」
「……っっ!!////」
笑顔でそんなことを言い出すのだ。その顔には若干の悪戯心が見えた。
「……もうっ!からかわないでよ…」
「はは、悪い悪い」
そんなやり取りをしながら、店に入る。冗談と知ってても止まらない、顔の火照りを隠しながら。
「あの二人、店前であんなイチャコラぶって………リア充爆発しろ!」
「すんごいニヤニヤしながら言ってるから、面白がってるようにしか見えないよ中村さん……」
「でも、夕凪君涼しい顔してるねぇ。ほんと鈍感なのかなぁ」
「ねぇ、何で僕まで付き合わされてるの?」
「「特に理由はない」」
「(゜Д゜#)」
「お、席に着いたようね」
「俺達も入ろっか」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「どれにしようかな~♪」
「このチョコのやつ美味しそう!」
「おお、こっちのイチゴと迷うな……」
メニューを見てみると、結構種類があって驚いた。どれも美味しそうで困る。私もこう見えてスイーツ好きだ。
LINE♪
「ん?私のだ……」
携帯を開いて見てみる。相手は中村さんだった。
RIO:不破ちゃーん!これ頼んでみなよ~ψ(`∇´)ψ
そう言って送られてきたのは、バニラ、チョコ、ストロベリーのアイスやチョコ、クリームのパフェなのだが………ところどころにあるチョコがハートの形をしていたりして、完全にカップル用なのだ。しかも、他のパフェに比べて二倍の大きさで、つまり………
不破優月:ゼッッッタイ無理!!!
そう送り返す。あんなの無理に決まってるでしょ……あれを食べてる私達を想像するだけで恥ずかしさで死ねる。
というか、やっぱ尾行してきたんだ……
「あ、やべぇ、このフルーツミックスの奴超美味そう………」
しかし、メニューの方のさっきのパフェを見てみると………安っ!?
さっきのパフェは、他のパフェ2つの値段に比べ、3割引きの値段なのだ。しかも男女二人組でしか頼めないとまで書かれていた。そんなにイチャイチャしてるの見たいの?
「俺これにしよ~。不破は決まったのか?」
「うん。もう決まったよ」
さっきのチョコの奴で決めていたのでそう答える。夕凪君がすみませーんとウェイターさんを呼んでいた。夕凪君はフルーツパフェ、私はチョコパフェをオーダーした。
「さっきのLINE、誰だったんだ?」
「え?ああ、夕凪君は気にしないで」
「??」
さっきから向こうの席でニヤニヤしてる人達見たら、パフェどころじゃなくなるから。てか、渚君が不遇過ぎる…
「やっぱりこのパフェは頼まなかったか……」
「ハードル高いって………渚君、このデカいパフェ一緒に頼もっか」
「頼まないよそんなの!僕男だし!」
「あ、私このイチゴ~」
「え~俺それ頼もうとしてたのに。一口あげるから別のにしてよ~」
「三口で手を打とう」
「二人はそういうの抵抗無さそうだよね………」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「お~来た来た」
時々、メニューの写真よりも遥かに少ない量で出てくる時があるが、そんなこともなく、写真に見劣りしない、とても美味しそうなパフェが運ばれてきた。
スプーンを手に、早速一口頂く。
「……美味しい!!」
チョコアイスの濃厚な甘みが口に広がる。
「やば、超美味い……」
夕凪君の方も同じようだった。
「凄え……アイスやクリームにもフルーツの味が付いてて、酸味と甘味が……なんか凄いんだよ!」
「へぇ……」
「不破も食べてみるか?」
「え?ああ……じゃあ、一口……」
そう言って自分のスプーンを持つ。そして夕凪君のパフェに手を伸ばそうとしたのだが………
「……はぐっ!?」
夕凪君は、自分のスプーンで私に食べさせてきた。急に口の中に入れられたので、抵抗する間もなくやられてしまう。
「どうだ?美味いだろ」
「………美味しい」
屈託の無い笑顔で言う夕凪君に、そう返すしかなかった。
確かに、アイスやクリームにもフルーツの味が付いていて、変に甘くない、フルーツのさっぱりとした味が口に広がる。
だけど、私はそれどころじゃなくなってる。だって、さっきのは完全に、カップル達がやると言われてるあーん的なアレな訳で………
「その……さっきの………/////」
「ん?………ああ、悪い。昔の癖が出ちまった」
「昔の?」
「ああ。昔レストランとか行ったりするとさ、必ず此衣がこう言うんだ。"一口ちょーだい!"ってさ。それで俺達はアイツの口に突っ込んでやってた」
そうなんだと納得した。幼い頃からずっと一緒にいる仲だったのだから、気にせずやってたのだろう。
なんか、私だけ恥ずかしがってるのが悔しい………
「それよか、不破の奴も一口くれよ。チョコの奴美味そうじゃん」
「うん、いいよ」
そう言うと、夕凪君は持っていたスプーンで私のパフェから一口分すくった。
え?お返し?やる訳無いじゃないですかハハ………許して恥ずかしくて死んじゃう。
「ん~、こっちも美味いな!」
「でしょ!」
喜んでもらえて何よりだ。
その後は食べるのに夢中になった。そして、美味しいパフェはあっという間に無くなっていくのだった。
「ふぅ~、食った食った」
「今度、茅野さんと陽菜乃ちゃんにも食べてもらいたいなぁ」
「ああ。あいつらなら狂乱乱舞するんじゃねぇか?」
「あはは、はしゃぐ二人が思い浮かぶよ」
そう言い、アイスティーを飲み干す。
「ふぅ、食い終わったけどどうする?」
「じゃあもう行こっか」
「………撮れてた?」
「ああ。バッチリ」
「マジか。いきなりで撮れなかった」
「にしても、夕凪君もやるねぇ。あ、ほら渚君。あーん」
「やらないよ!?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
店を出て歩き始める。途中までは道が同じなので、話しながら歩き始めた。
「美味かったなぁあの店。今度また行こうぜ」
「うん。今度は皆で行こっか」
「ああ。そうだな」
あの味を私達だけが味わうのは勿体無い。その位美味しかった。皆も喜んでくれると思う。
ふと、気になった事があったので聞いた。
「夕凪君?」
「ん?」
「今日、楽しかった?」
私と二人(遠くに三人居たけど)だけで、本当に楽しめたのだろうか。ちょっと変かもしれないけど、気になった。
「ただ学校帰りに寄っただけなんだが……まぁ、楽しかったよ」
「そっか。変なこと聞いてゴメンね」
「おう………じゃあ、ここら辺で」
いつの間にか、別れる所まで来ていた。
「うん。今日はありがとね」
「おう。また行こうぜ!」
そう言って別れた。歩きながら思う。
平気で可愛いなんて言ったり、気にせずあんな事出来る所を見ると、夕凪君が私のことを友達だと思っていることは分かる。
だけど、やっぱ私は夕凪君の事が好きだ。ただ学校帰りに寄っていっただけだけど、これで一歩踏み出せたと思う。それが、嬉しかった。
「そう言えば、中村さんとカルマ君に後押しされたんだよね……」
多分二人は面白がってるだけだけど、きっかけを作ってくれたのにはかわりない。二人には感謝しないとな。
LINE♪
「ん?」
携帯を開いてみる。カルマ君からだった。開いてみると……
「……っ!?///」
それは、夕凪君が私に食べさせてる所だった。あんな急だったのになんでこんな綺麗に撮れてるのさ……
少し踏み出せた私は、顔を赤くしながら帰路につくのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
ジュウゥゥウゥウ……
「♪〜」
夕飯作りなう。今日はパフェを食べてきたので少なめだ。今まで料理の描写が無かったが、これでも自炊してる人間なのだよ。
今日のメインは野菜炒めだ。楽で良いんだよなこれ。というか、この家のメニューは野菜炒めとカレーが多い気がする。
「♪〜〜……あっぢぃ"!?」
間違えてフライパンの、鉄のとこを触ってしまった。名曲が途切れてしまったではないか。
まぁ火傷は無かったので、仕上げに入っていた野菜炒めを皿に移す。そして、リビングに全て運んだ。
「いただきます」
これが俺の夕食の風景だ。一人寂しい。てか、孤児院に戻っても良いんだがな。実際もう修行で通ってるし。
まぁ、ここは学校から近いし、なんだかんだで住み心地良いから、このままで良いか。
「夕凪さん、こんばんは!」
すると、いきなり俺のスマホが喋り始めた。だけど俺は声の主をもう知っている。
「律か。どうしたんだ?」
「夕凪さんのLINE通知がとんでもないことになっているので、知らせた方が良いかと思いまして」
「げっ!?」
そう言えば忘れてたな……うん。僕知らない。
「千葉さんと速水さんですか。開きますね」
「ちょぉおぉおい!?」
勝手に開いてしまった。ヤバい、寝てたぁテヘペロ☆とか言うつもりだったのに、既読付いたらダメじゃん……
「えーと、千葉さんからは、怒ったスタンプがいっぱい送られて来てます。」
「あぁ、テヘペロ☆って送っといてくれ」
千葉にはこの返しで良いだろ。
「了解しました!それと、速水さんから。"お詫びに明日ハーゲンダッツ3個ずつ買って来ないと、眉間に対せんせー弾100発撃ちこむわよ?"だそうです」
怖ぇよ!
「……善処しますって送っといてくれ……」
「了解しました!」
千葉みたいな返しをしたらマジで殺されそう。俺に対してはツンデレのツンしか発動しねぇよなアイツ。
てか、律が有能すぎる。画面見なくてもメールのやり取りできるし。
「律は凄ぇな。結婚してくれよ」
冗談で言ってみたのだが……
「夕凪さん。浮気はダメですよ?」
「ブフォッ!?」
吹き出してしまった。なに変な事言ってるんだかこの子は。
「何だよ浮気って……」
「今日、不破さんとカルマ君のLINEにこのような画像を確認しました」
「ん?………はあぁぁあぁあ!?」
そう言って映し出されたのは、俺が間違えて不破にあーんしちゃった時の奴だ。これを持ってるって、アイツら尾行してきやがったな……
「データによると、これは恋人同士が行う愛の儀式だそうです。つまり二人はそういう関係だと「ストップストップ!」」
何だよ愛の儀式って。どこのガセ情報だよ……
「とにかく、俺と不破はそう言うんじゃないよ。間違ってもバラすなよ?」
「そうですか。了解しました」
そう言って画面から消える。若干つまらなそうだったのは気のせいだろうか。
改めて、今日を思い返す。
………俺だって鈍感ではない。ラノベ読んでてそう言う描写はよくあるし、それなりに知識はある。だから、不破の態度が急にそれになったことくらい分かってしまう。手を繋ぐだけで照れるのもおかしいだろう。
不破は充分魅力的な女の子だ。漫画の話をするときは目を輝かせながら語る。けど、俺がラノベのアレ系なシーンのことを言ったりすると、顔を赤くしてしまう。出会って3ヶ月ばかりだけど、色んなことに気づいた。
「………ありえないか」
それでも、気づいていても、俺は目を背けた。そんなことないと決めつけた。
だって、俺と、朋樹と此衣を引き離したのは、ただの恋心だったのだから。
俺は不破が好きだが、皆も好きだ。千葉や速水、渚やカルマ、E組の皆が好きだ………もちろん友達的な意味でな。
また、またこの関係が崩れるくらいなら、俺は目を背け続ける。
オリ回を挟みました。よく分からない所があったらスミマセン。
次は一学期期末テストです。
*少し変更しました。歌詞を入れておくと著作権に引っかかることがあるらしいので。