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南の島での暗殺が一週間後に迫り、今日はその訓練と計画の詰めに集まった。なのだが……
「まぁまぁガキ共、汗水流してご苦労なことねぇ」
若干一名はそうでは無いようだ……
「ビッチ先生も訓練しろよ。射撃やナイフは俺等と大差ないだろーにさ」
そう言う三村君に対し、ビッチ先生は笑う。
「大人はズルいのよ。あんた達の作戦に乗じてオイシイとこだけ持っていくわ」
ビッチ先生はそう言った。確かにビッチ先生らしい。
「ほほう、偉いもんだなイリーナ」
しかしその声を聞いた瞬間、ビッチ先生は体をビクッと振るわせる。振り向くと、そこには……
「ロッ、ロヴロ師匠!!?」
ビッチ先生の師匠、ロヴロさんがいた。
「あの人、この作品では初登場だね」
「不破さん?」
原作と特に変わらなくなるからって初登場回飛ばされたとか言っちゃダメだよ?
「夏休みの特別講師で来てもらった。今回の作戦にプロの視点から助言してくれる」
「1日休めば指や腕は殺しを忘れる。落第が嫌ならさっさと着替えろ!!」
「へ、ヘイ喜んで!」
はは、あの人にはビッチ先生、頭上がらないんだな……
ロヴロさんは暗殺の計画書を開き、内容をチェックし始めた。
「触手を破壊、その後クラス全員で攻撃して仕留める、それはわかるがこの精神攻撃とは何だ?」
ロヴロさんの疑問に僕は答えた。
「まず動揺させて動きを落とすんです。殺気を伴わない攻撃には殺せんせー脆いとこあるから」
「この前さ、殺せんせーエロ本拾い読みしてたんすよ。クラスの皆には内緒でってアイス配られたけど……今時アイスで口止め出来るわけねーだろ!クラス全員でいびってやるぜ!」
「揺するネタは大量に確保してますから、それを三村くんと岡島くんで編集して追い込みます」
「残酷な暗殺方だ………」
殺せんせーチキンだしね。かなり効くんじゃないかと思ってる。
「そして肝心の止めを刺す最後の射撃、正確なタイミングと精密な狙いが不可欠だが……」
「不安か?このクラスの射撃能力は」
「いや逆だ、特にあの2人は素晴らしい」
ロヴロさんはニヤリと笑いながら千葉君と速水さんをみた。
「他の者も良いレベルになっている。短期間でよく育てたものだ。これなら合格点だ……彼等なら、充分に可能性がある」
僕達の作戦は、プロのお墨付きをもらった。上手くいけば、きっと……殺すことだって出来るはず!
「そういや、夕凪はどこ行ったんだ?」
すると杉野がそんなことを聞いてきた。今日の訓練、夕凪君は来ていない。ある所に行っている。
「ああ、それなら………」
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「……シッ!」
「危ねえっ!」
玄斗さんの拳を紙一重で躱す。少し頬を掠めた。
残りは大体30秒程だ。一週間前から、ここ位までなら耐えられるようになってきたのだが、玄斗さんはこの30秒でさらに攻撃を加速させる。反応するので精一杯だ。
「最初に比べると成長したね。今日こそ第1ステージクリアかな?」
「おかげさまで!玄斗さんみたいな超人との実戦特訓とか、嫌でも強くなりますよッ!」
俺の声は余裕が無いのに、玄斗さんの声は余裕そのものだ。くそぅ、完璧超人め!
そんな会話の途中も、玄斗さんの猛攻は続いた。最初の頃より無駄な動きが消え、普通の攻撃なら捌くことが出来ている。だが、所々で弱点を突いた強攻撃をしてくるので、油断は絶対できない。
「そろそろ、3分まであと10秒だ……夕凪君」
「ハァッ、ハァ……何ですか……?」
玄斗さんは一旦、攻撃を止めた。
すると、玄斗さんの気配が変わった。今までの、いつもの玄斗さんと違う、とても鋭利な気配だ。
「……ッ!!」
思わずバックステップで距離をとる。ヤバい、こちらが獲物だと一瞬で錯覚させる、そんなヤバさが玄斗さんから溢れ出てる。
「少し本気出すよ………くれぐれも、気を付けてね」
すると………玄斗さんは一瞬で間合いを詰めた。
…………は?
両手の拳を合わせて振り上げている。危機を感じ、俺は咄嗟に胸の前で腕を交差させ、守りに入った。
そして玄斗さんは、その拳を思いっきり振り下ろした。
「グハッッ!!」
腕でガードしたにも関わらず、全身に衝撃が駆け巡る。ヤベェ、これはまともに食らったら意識飛んでたかもしれん。
しかし痛みに悶えてる場合じゃない。時間はあと少しだが、玄斗さんは蹴りで追撃をしてこようとしている。俺は体制を整え、大きく退いた。
その後、とんでもない攻撃を放って来たが、全て避けることができた。そして………
「ふぅ……これで3分、第1ステージクリアだね」
「ゼェ……ゼェ……ゼェ……」
俺はその場に倒れるように寝転んだ。戦闘しながら時間計ってみると分かるが、ほんと長く感じるのだ。それだけ集中してたのだろうが、疲れも半端じゃない。
「というか、よく最後の攻撃を避けてたね」
「……ゼェ……まぁ……攻撃の威力上がってたけど、やる事変わらないですし……」
「いや、最後のはそれだけじゃないんだよ」
玄斗さんはまだ余裕なようで、普通に話してくる。対して俺はもう話すのもままならない。
しかし、それだけではない?どういう事だ?
「最後の10秒、僕は君に対して、明確な敵意を持って、倒すつもりで攻撃を放った。それを恐怖に感じたりはしなかった?」
「……さぁ?まぁ、雰囲気変わったのはわかりましたけど、恐怖は別に」
「じゃあ、最近強い人に襲われたりとかした?その人と戦ったりとかした?」
強い人に襲われて……戦う?……あ、鷹岡だ。
「心当たりがあるみたいね。多分それで、敵意に慣れたんだろうね。普通なら避けられないよ。あの攻撃は」
へぇ……鷹岡が初めて役に立った……
「まぁ、これでこの特訓はクリア。少し休憩しててね。戻って来たら、次の特訓を教えるよ」
そう言って、部屋を出た。俺も休憩する為に、タオルを持って部屋を出た。
まぁ、こんな訳で特訓中だ。暗殺の訓練は大切だが、玄斗さんの予定上、今日の特訓は貴重だった。なので、暗殺の訓練の方を休ませてもらったのだ。
「何か無いかなぁ……」
大広間に行き、少し本棚を見てみた。休憩と言っても手持ち無沙汰なのだ。
「……ん?」
すると、ある本が目に留まった。背表紙には、"暗殺大全 世界のアサシン達"と書かれていた。前からあったのだろうが、なんか今は身近に感じる本だった。
俺はその本を手に取り、ページをペラペラと適当に開く。
「へぇ……意外といるんだな」
まあまあ厚い本だが、歴史上の暗殺者から最近起きた奴まで沢山載っていた。まぁ、殆ど処刑されてるけどな。
「興味あるのかい?暗殺に」
「ふひゃあぁぁあい!?」
いつの間にか、後ろには玄斗さんがいた。
てか、驚いた時この叫び方する癖、直さないと……恥ずかしさで死ねる………
「ま、まぁ少し気になっただけですよ。てか、何で暗殺の本なんてここにあるんですか?」
孤児院に置くには相応しく無いだろうに。
「まぁ、僕の趣味だよ。少しその業界に興味があってね。知識だけだけど」
へぇ。てことは、殺し屋とかには悔しいんだ。
ふと、気になる事があった。一人の暗殺者となった身として、純粋な興味が湧いた。
「玄斗さん、知ってたらで良いんですが、聞いて良いですか?」
「ん?なんだい?」
「暗殺者の世界の中で、一番強い奴って、どんな奴なんですか?」
「……そうだね。聞いた話だけど、良いかい?」
「はい……」
「一番強い、優れている殺し屋、その人の本名は知られていない。そして、ただ1つの仇名で呼ばれている……」
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「曰く、"死神"と」
とてもありふれた仇名、だけど、殺し屋の業界では最高の仇名に相応しい、そう思った。
「神出鬼没、冷酷無比、夥しい数の屍を積み上げ、死そのものと呼ばれるに至った男。君らがこのまま殺しあぐねているなら……いつかは奴が、姿を現すだろう」
そんな人が……いよいよ、南の島のチャンスは逃せない!
「そういえば、彼らも死神に迫るほどの殺し屋だったな」
「え!?そんな凄い人が、まだいるんですか?」
「まぁ、彼らは超生物暗殺には興味無いだろう。それに、もう活動していないと聞いた」
最も優れた殺し屋に近い殺し屋、どんな殺し屋なんだろう。
「ただ……君達が日本に住んでいる以上、無関係とは言えないかもな。ついでだ、話してやろう」
日本に住むから、関係がある?どういうことだろう。
「彼らはこう呼ばれていた……」
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「"サクリファイス"、国家の生贄とね」
一番強い暗殺者に最も近い殺し屋、どんな奴かと思ったが、呼ばれた名からはあまり良い印象は無かった。
「何で、国家の生贄なんですか?」
「……国家の上層部の人間、その一部の中で秘密裏に行われていた計画があったんだ。内容は、優れた暗殺者の育成。国同士の争いの中で、役に立つという考えだったんだろうね。サクリファイスは、その計画によって生み出されたんだ」
「へぇ……けど、何で生贄なんですか?」
「……問題があったのはその計画の内容だ。それはただの筋トレや特訓じゃない。集められた人間は孤児だったけど、人体実験は当たり前、副作用の強い薬は毎日飲まされ、人体を改造された人もいるらしい。そして……育てた殺し屋同士で、殺し合わせた」
「……酷い……話ですね……」
聞いただけで分かる。正気の沙汰じゃない。
「そして勝ち残ったのは、二人組の殺し屋だった。その実験だけでも100は屍を積んだ二人は、すぐに有能な殺し屋として活動をし始めた。だから、国家の生贄なんだ」
sacrifice、英語で"生贄"。なるほど、そういう理由だったのか。
「しかし、その計画は明らかになってしまった。計画の責任者は全て裁かれ、サクリファイスは活動出来なくなってしまった」
まぁ、そんな計画で生み出された暗殺者を、国が使う訳ねぇよな。
「一人は安堵した。もう、人を殺めなくて済む。やっと、解放されたのだと。
一人は激怒した。自分達は国家の為に、地獄のような実験に耐えてきたのに。用無しだと言われ、簡単に切り捨てられたと。
結局、暗殺者としての活動はそれ以来していないらしいよ」
「なんか……やるせないですよね」
「ああ。だけど、僕達にはどうしようもない。もう一人のサクリファイスが新しい人生を探すのを願うしかないよ」
まぁ、それがベストなんだろうな。だけど話を聞く限り、もう一人のサクリファイスは何か危ない気がする。
「全部聞いた話だよ。本当とは限らない。まぁ、夕凪君が国のお偉いさんになるつもりなら、気を付けておいた方が良いかもね。もう一人のサクリファイスは日本国家を恨んでるだろうから」
「ハハ……気をつけます」
まぁ、別にそんな職に就く気は無いけどな。
「じゃあ、特訓再開といこう」
そう言ってトレーニングルームに入っていく。俺はその後を追った。
「さて、君はこれまで、ひたすら守りの特訓をしてきたね。多分そっちはもう実用レベルだよ。次は攻撃の特訓だよ」
そう言って取り出したのは、胴に取り付けるタイプのミット(衝撃吸収するやつ)だった。玄斗さんはそれを自分に取り付ける。
「夕凪君の長所は観察眼とそれに伴う見切り能力だよ。恐らくチンピラに多数で襲われても、冷静に対処すれば無傷で切り抜けられるよ」
だから、と玄斗さんは続ける。
「君に教えるのは、強敵を倒す為の技だ。君に合った、一撃必殺にもなり得る必殺技を、教えてあげるよ……」
強敵を倒す為の……一撃必殺……待ってたんだ。そういうのを!絶対、俺の必殺の刃にしてやる!
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死神、そしてサクリファイスの事を一通り話し終えると、ロヴロさんはジッと僕を見た。そして……
「少年よ。君には必殺技を教えてやろう」
「!?……ひっさつ……?」
「そうだ。プロの殺し屋が直接教える………"必殺技"だ」
こうして、僕の特訓が始まる。プロの殺し屋からの、殺す為の技を学ぶのだった。
そして南の島の、僕等の暗殺ツアーが幕を上げるのだった。