夕凪颯の暗殺教室   作:カゲロー@

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いよいよ島編ですね!


第36話 「決行の時間」

グサリ

 

生々しい音が聞こえる。

目の前には、ローブ姿の少女。その中は幼いながらも端正な顔立ちをしていた。

その少女が持つのは、刃渡り20センチ位のダガーナイフ。そのナイフが、刺さっていたのだ。

………俺の身体に。

 

「……夕凪颯……死んで」

 

そう言って、少女はナイフを引き抜く。

意識が遠のく。朦朧とした視界は、どんどん近づく地面を捉えていた。身体が、倒れていく。

痛みよりも、先に眠気を感じた。俺はまどろみの中に、落ちていった。

彼らの悲痛な叫び声も、聞こえることは無かった。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「にゅやぁ……船はヤバい……」

 

暗殺リゾート当日、俺達は船に乗って島に向かっていた。いたのだが……

 

「先生、頭の中身が全部飛び出しそうです……」

 

殺せんせーは、すでに船でグロッキー状態だった。

 

「あ、見て見て!殺せんせー!」

 

倉橋がナイフを振りながら言う。皆デッキの柵に近寄り、離島を見た。

 

「東京から6時間、せんせーを殺す場所だぜ!!」

 

「「「「「島だぁーー!!」」」」」

 

 

 

 

 

ホテルに着いた俺達は、早々にチェックインを済ませて荷物を置いた。

その後、俺達はホテルのテラスでひと休憩するために座っている。

 

「ようこそ普久間島リゾートホテルへ。サービスのトロピカルジュースでございます」

 

ホテルの従業員はそれを配っていた。俺は少し席を立つ。あることを済ませ、元の席に戻った。

 

「なんだか、暗殺しにきたって気がしないね。茅野さん」

 

神崎さんがジュースを一口飲んで言う。ほんと、楽園みたいだからな。

俺は、そんなことを思いながらジュースを飲んだ。しかし……

 

「辛ええぇぇぇえぇ!!」

 

飲んでた分を思わず吐き出す。水、水をくれぇ!!

急いで外にあった水道で水を飲む。唐辛子っぽかったが、痛ぇ……ヒリヒリする……

席に戻ると、カルマが笑いを堪えてプルプルしていた。コイツか………

 

「カルマァ、何入れたんだ!?」

 

「えぇ?知らないよ……プッ……い、言いがかりは良くないよぉ?………ププッ……」

 

認める気は無いようだ。カルマは笑いを堪えながらジュースを飲もうとする………さぁ死ねぇ!!

 

「ブフゥォオッ!!?」

 

カルマは思いっきりジュースを吐き出し、水道に駆け寄った。

 

「……夕凪君、何入れたの?」

 

「センブリ茶だよ。船の中でカルマの悪戯袋からくすねてきた」

 

そう答えると渚が苦笑いしていた。

 

「一袋足りないと思ってたけど……夕凪の仕業だったんだ……」

 

カルマがハンカチで口を拭きながら戻ってきた。

 

「えぇ?僕知らないなぁ?言いがかりは良くないと思うよぉ??」

 

青筋立ててピクピクしてたが知ったことか。日頃のお返しだ。

 

「にゅやあぁぁあぁっ!何ですかこのジュース辛いぃいぃ苦いぃいい!!」

 

ふんぎゃあぁぁ!と飛んで行き、海に突っ込んだ。あの先生なら海水飲んだって大丈夫だろうからな。

 

「……やるな」

 

「……夕凪もね」

 

「「「「「お前らは普通にリゾート満喫出来ねぇのか!!」」」」」

 

何を言っているのだよ。こういう油断した時こそ引っかかりやすいんだよ。

すると、殺せんせーがげっそりした顔で戻ってきた。

 

「………酷い目に遭いました……」

 

「ま、まぁ気を取り直して、まずは遊ぼうぜ殺せんせー」

 

「例のアレは夕食の後にやるからさ」

 

「え、ええ、賛成です……」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「殺せんせーは?」

 

「今、3班と海底洞窟巡りしてる。こっちの様子は絶対見えないよ」

 

1つの班が準備している間、他の班が暗殺の準備をする。俺達2班は、トドメとなる狙撃のスポット探しだ。

 

「じゃあ今なら、射撃スポット選び放題か」

 

「サクッと決めちゃいますか」

 

千葉と速水はそれだけ言葉を交わすと、黙々とスポットを探し始める。

 

「……シブいなあの二人……」

 

「ああ、もはや仕事人の風格だ」

 

「まぁ、二人共行動で主張するタイプだしな」

 

それに、二人共大役を任されて少し緊張してるかもしれないな。

 

「なぁ夕凪」

 

すると、岡島が耳打ちをしてきた。

 

「何だ?」

 

「お前あいつらとよくいるだろ?どの位進んでるのかわかるのか?」

 

どの位って……ああ、付き合ってるかとかそういうやつか。

 

「本人達は全くその気が無いらしいぞ?」

 

「マジか!?あんな気が合って一緒にいるのに!?」

 

「ああ。まぁでも、手を出しただけでとって欲しいもの分かったり、連携とか一瞬のアイコンタクトでできるし……なんかもう、夫婦以上の団結力だぞ?」

 

「えぇ……そんなんでお互いに脈無しかよ……」

 

「ああ。俺は似合ってると思うんだがな……早くくっ付けばいいのに」

 

まぁ、これは本人達の問題だからな。口出しなんて不毛なことはしないさ………多分……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「いやぁ、遊んだ遊んだ。おかげで真っ黒に焼けました」

 

「「「「黒過ぎだろ!!」」」」

 

歯まで焼けるってどういうことなんだよ………

 

「で、この船で酔わせて戦力を削ごうという訳ですか……」

 

俺達は今、船の中だ。暗殺をする水上パーティルームにはこれに乗って行く。

 

「当然です。これも暗殺の基本ですから」

 

磯貝がそう答えると、殺せんせーはジュース片手に言う。

 

「実に正しい。ですが、そう上手くいきますかねぇ?暗殺を前に気合を入れた先生にとって、船酔いなど恐れるに足りませ「「黒いわ!!!」」…」

 

全く表情が分からない殺せんせーに思わず中村と片岡がツッコむ。

 

「……そんなに黒いですか?」

 

「表情どころか前も後ろもわかんないわ」

 

「ややこしいから何とかしてよ……」

 

「ヌルフフフ、お忘れですか?皆さん。先生には脱皮があることを……」

 

ああそれなら元どお……脱皮ィ!?

 

「皮を脱ぎ捨てれば、ホラ元通り!」

 

そう言って黒い皮を脱ぎ捨てる。確かに戻ったが、それって……

 

「月に一回の脱皮……」

 

「こんな使い方もあるんですよ。本来ならヤバい時の奥の手………あっ!、にゅやあぁああ!!」

 

「バッカでー……暗殺前に自分で戦力減らしてやんの……」

 

「どうして未だにこんなドジ殺せないんだろ……」

 

馬鹿だ……馬鹿の極みだ………

そんなこんなで、暗殺決行の時間が迫ってきた。皆、やる気をみなぎらせている。

ここで殺せんせーを殺せれば……

 

………殺す?

 

あれ?殺すって、そういうことだよな?殺せんせーが、死ぬんだよな?

 

ズキン!!

 

今まで気にしていなかったけど、殺したら、この異常な日常が終わるんだよな?それって、俺が望むものなのかな?

 

「夕凪君?」

 

「ひゃい!??」

 

「夕凪君、どうしたの?そんなぼうっとして」

 

「え?ああ、大丈夫だ不破。少し考え事してただけだ」

 

「ならいいけど……夕凪君」

 

「ん?」

 

「………絶対、成功させようね!」

 

「……おう」

 

そうだ、ここにいる皆が、今日の為に頑張ってきた。俺の勝手な思いで無駄にしちゃいけない。

両手で頬を叩き、気合を入れる。暗殺決行まで、あと少し!

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「さぁて殺せんせー。メシの後はいよいよだ」

 

「会場はこちらですぜ」

 

夕食が終わり、俺達は水上パーティルームに向かった。ちなみに殺せんせーはやっぱり酔った。

パーティルームに入ると、そこにはテレビと、その準備をした三村と岡島がいた。

 

「楽しい暗殺」

 

「まずは映画鑑賞から始めようぜ」

 

二人がそう言って、殺せんせーを座らせた。

 

「まずは、三村が編集した動画を見て楽しんでもらい、その後8人が触手を破壊して、それを合図に暗殺を始める、それで良いですね?殺せんせー」

 

「ヌルフフフ、上等です。君達の全力の暗殺を期待してます。遠慮は無用……ドンと来なさい!」

 

「言われなくとも、始めるぜ殺せんせー!」

 

そう言って岡島は明かりを消した。三村が映像を流し始める。

映像が流れている間、俺達は小屋を出入りし始める。これは殺せんせーの人数と位置の把握を困難にする為だ。まぁ、それだけではこのタコは誤魔化せないだろう。多分、ここに千葉と速水が居ないこともバレている。

しかぁし!これを見てもまだ他のことに気を配れるほど余裕で居られるかな?

 

【……先ずはご覧頂こう。我々の担任の恥ずべき姿を】

 

「…………にゅやあぁああ!!!?」

 

そこには、トンボのコスプレ……?みたいなものをして、山のようにあるエロ本を拾い読みしていた。これで擬態のつもりなのか………

 

【おわかり頂けただろうか。最近のマイブームは熟女OL。この本は全てこのタコが1人で集めたエロ本である】

 

「違っ……ちょっ岡島君達!皆に言うなとあれほど……」

 

【お次はこれだ。女子限定のケーキバイキングに並ぶ巨影…………誰であろう、奴である】

 

間髪入れずに次のネタが殺せんせーを襲う。反論の余地すら与えない。これ、思ったより残酷だな。因果応報なわけだけど。

 

【給料日前の奴である。分身でティッシュ配りに行列を作り、そんなに取ってどうすんのかと思いきや……何と唐揚げにして食べ出したではないか。教師……いや、生物としての尊厳はあるのだろうか?】

 

「ねぇねぇ殺せんせー、ティッシュって美味しいのか?」

 

「聞かないでぇ!私なりの節約術なんです……そんな心底不思議そうな顔しないで下さいぃ!いつもの馬鹿にされた感じより何倍も傷つきます!」

 

いやだって、これはドン引くでしょうよ。ティッシュだぞ?

 

【こんなものでは終わらないこの教師の恥ずかしい映像を1時間たっぷりとお見せしよう】

 

「あと1時間も!?」

 

その後も殺せんせーの痴態は続いた。全く、どんだけ人に言えないことしてんだこのタコは……

そして、

 

【完】

 

「……死んだ、先生死にました……あんなの知られてもう生きていけません……」

 

殺せんせーは船酔いの時よりもずっとグッタリとしていた。

 

【さて、秘蔵映像にお付き合い頂いたが、何かお気付きで無いだろうか殺せんせー?】

 

終わったと思っていた映像から、ナレーションの問いかけがあった。殺せんせーは下を見ると、やっと自分の足が、水浸しになっていることに気づいた。

これは満潮だ。あらかじめこの建物の支柱を短くしておいた。結果、誰も何も動かずに水を流し込むことができた。

 

「船に酔って、恥ずかしい思いして、海水吸って、だいぶ動きが鈍ってきたよね」

 

中村の言葉と共に、俺達は殺せんせーに近付いていった。

触手破壊権を持った8人が銃を構える。

 

 

「……じゃあ本番だ、避けんなよ?」

 

その寺坂の言葉と共に、7つの銃弾が放たれる。そして破壊した後、部屋の壁に亀裂が走り始めた。壁が崩れそれを合図に、今度はフライボート組が飛び上がる。外からはホースで水を撒き、さらに倉橋がイルカを従えて水飛沫を起こし、水の隙間を埋めていく。暗殺エリアを水で覆い囲み、水圧の檻を完成させた。

 

「せんせーの周囲1メートルへの射撃を開始します」

 

すると、律が水の中から浮かび上がり、それを合図に俺を含む射撃組が射撃を始める。しかしこれはダメージを与える為ではない。殺せんせーは当たる攻撃には敏感なので、周囲を撃つことで退路を更に狭くしていく。

が、じきに弾は切れる。水圧の檻にも対応でき始めているし、そうすれば逃がすだけだ。

だから………頼んだぜ二人共!

千葉と速水が水の中から出て、エアガンを構える。

そう、昼間探しに行った狙撃スポットはフェイクだ。殺せんせーは鼻が異常に良いので、そっちを警戒しているのだろう。

 

(せんせーの注意はフェイクが全て引きつけてる)

 

(私達の匂いも、発砲音も全て水が消してくれる)

 

((……もらった!!))

 

そして、2つの銃弾が放たれた。殺せんせーが気づいた時には、その弾はもう目の前だ。

 

(よくぞ……ここまで………!)

 

 

その瞬間………

殺せんせーの体が、閃光と共に弾け飛んだ。俺達は吹っ飛ばされ、海に落ちる。

これまでにはない手応え、やったのか?

 

「油断するな!!奴には再生能力がある。片岡さんを中心に水面を見張れ!!!」

 

烏間先生の指示が飛び、捜索を始める。すると倉橋があっ!、と、何かに気づいた。

そっちを見ると、泡がブクブクと出ていた。俺は銃を構えながら警戒すると………何やらオレンジ色と透明の殺せんせーが出てきた。

…………何あれ?

困惑していると、その丸い物体は言うのだった。

 

 

「これぞ先生の奥の手中の奥の手、完全防御形態です!!」

 

 

 

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