夕凪颯の暗殺教室   作:カゲロー@

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第39話 「カルマの時間 二時間目」

スモッグをテープで縛り、机やイスを使って隠す。そして磯貝は、肩をかして烏間先生を支えていた。

 

「……ダメだ。普通に歩くフリをするので精一杯だ。戦闘できる状態まで、30分で戻るかどうか……」

 

烏間先生は辛そうにそう言うが……

 

「像をも倒すガス浴びて歩ける方がおかしいって……」

 

「あの人も充分化け物だよね……」

 

菅谷と岡野がそう言う。ほんと超人なんだよな……

しかし、これはかなりヤバい状況じゃないだろうか?当初は烏間先生を中心に刺客を迎撃し、俺達はサポート役だった。しかし、こうなるとカルマや俺といった戦闘要員で切り抜けなければならない。幸いここにはそういう生徒が多いが……未知の敵と、戦えるのか?

俺達の中に、不安がどんどん増えていく。

 

 

「いやぁ、いよいよ夏休みって感じですねぇ」

 

 

……………………………………

 

 

「何をお気楽な!!」

 

「一人だけ絶対安全な形態のくせに!」

 

「渚、振り回して酔わせろ!」

 

「にゅやぁあぁーっ!?」

 

殺せんせーにイラッとした皆が一斉にそう言い、渚は殺せんせーの入った袋を振り回していた。

 

「よし寺坂、これねじ込むからパンツ下ろしてケツ開いて」

 

「死ぬわ!?」

 

「あぁ、24時間耐久な。元の形態に戻った時についでに殺せるだろ」

 

「俺のケツは対せんせー物質じゃねぇ!!」

 

カルマと俺で続けて言う。いや対せんせー物質とかじゃなくて、臭いで殺せるだろ。殺せんせー鼻良いし。

そこで見かねたのか、渚が殺せんせーに聞いていた。

 

「せんせー、何でこれが夏休みなの?」

 

 

「先生と生徒は馴れ合いではありません。そして、夏休みとは先生の保護がないところで自立性を養う場でもあります。大丈夫、普段の体育でやっていることをしっかりやれば、早々恐れる敵はいない。君達ならクリアできます。この暗殺夏休みを!」

 

片岡の問題を解決していた時にも思ったが、この先生は体育に関しては容赦がない。無理難題を押し付ける時もある。

でも、状況が状況だ。やるしかない。それに、俺は皆を守る為に特訓してきたんだ。いざとなったら戦ってやるさ!

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

最上階

 

「濃厚な魚介出汁に、たっぷりのネギと人匙のニンニク………」

 

そこには、銃を使う殺し屋ガストロ、ローブを着た少女、そして、彼らの雇い主で、事件の黒幕がいた。

ガストロはつけ麺のスープを用意した。そして……

 

「………そして銃!!あぁ、つけ銃うめぇ……ライフリングに絡むスープがたまらねぇ……

 

ガストロは銃をスープに勢いよく突っ込み、それを舐めていた。

 

「……ガストロさん、それ……美味しいの?」

 

少女はそう尋ねる。声音から、本気で疑問に思っているようだった。

 

「ククク……見てるこっちがヒヤヒヤする。その銃、実弾入りだろ?」

 

「ヘマはしねっす。撃つ時にも何の支障もありませんし、ちゃんと毎晩我が子のように手入れしてます。その日一番美味い銃が、その日一番手に馴染む、経験則ってやつっスわ。俺の」

 

雇い主に、銃を舐めながらガストロはそう言った。

 

「奇特な奴だ。他の奴等もそんなか?」

 

「ええまぁ。使い捨ての鉄砲玉ならいざ知らず、俺等みたいな技術を身につけて何度も仕事をしてきた連中は、何かしら拘りが出てくるもんス。例えば、スモッグの毒は全て自作。洗練された実用性に拘るあまり研究室まで作る始末っス」

 

「変な人達………私には……よく分からない……」

 

少女はそう言って元の座っていた椅子に座り直す。

 

「お前は経験が浅いからだよ。殺しを続けていれば、いつかは俺達の拘りが分かるはずだぜ」

 

「そう……」

 

「ったく、無愛想なガキだな……」

 

ガストロはそう悪態をついた。少女は気にする様子も無かったが。

すると、雇い主はガストロに聞いた。

 

「それより、あと1人のグリップもそうなのか?」

 

「ええ……まぁ、あいつは殺し屋の中でも、ちょっと変わってまして……」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

五階 展望回廊

 

烏間先生が毒にやられたため、索敵能力の高い俺が先頭となって進んでいく。通路から出ようとすると、俺は人がいることに気づいて後ろの皆を制止した。曲がり角から覗くと、金髪の男が窓に寄り掛かっているのが見えた。

 

(……あの雰囲気……)

 

(……あぁ、俺でもいい加減見分けつくようになったわ。どう見ても殺る側の人間だ)

 

矢田と吉田がそう呟く。確かに、殺気がプンプンしている。ここで迎え撃つ気なんだろう。

すると、男が手を当てていたガラスに亀裂が走った。これは……握力か。

 

「……つまらぬ。足音を聞く限り、手強いと思えるものが1人も居らぬ。精鋭部隊出身の引率の教師もいるはずなのぬ……だ。どうやらスモッグのガスにやられたようだぬ。半ば相討ちぬといったところか……出てこい」

 

気配だけで、俺達の存在だけでなく強さまで分かってしまった。これが、殺し屋のプロなのか?

……うん、シリアスとかじゃないね。もっと気になることがある。怖くて言えないけど………

 

 

「“ぬ”多くねおじさん?」

 

(((((言った!良かったカルマがいて!!)))))

 

何でコイツこんな図太いの?俺だってツッコみたくでしょうがなかったのに。

 

「ぬをつけるとサムライっぽい口調になると小耳に挟んだ。カッコ良さそうだから試してみたぬ。間違ってるならそれでも良いぬ。全員を殺してから"ぬ"を取れば恥にもならぬ」

 

男はそう言うと、手の骨を鳴らしていた。うん、殺る気満々ですね。だったら最初から"ぬ"なんてつけんなよ誰だよ?間違ったジャパニーズカルチャー教えたの。

それを見た殺せんせーが、言った。

 

「素手……それがあなたの暗殺道具ですか」

 

「こう見えても需要があるぬ。身体検査に引っ掛からぬのは大きい。近づきざま脛椎を一捻りだぬ。しかし、人殺しのための力を鍛えるほど、暗殺以外にも試したくなる。すなわち、強い敵との殺し合いだ……だががっかりぬ。お目当てがこのザマでは試す気も失せた。雑魚ばかり1人で殺るのも面倒だ、ボスと仲間を呼んで皆殺しぬ……」

 

そう言って携帯を取り出し、連絡をしようとした。ヤバい!連絡を取られたら終わり……

 

バキィィン!!

 

その瞬間、カルマが観葉植物を掴み、鉢の方を思いっきり振って携帯を弾き飛ばす。それはそのままガラスに叩きつけられ、ボロボロになってしまった。

 

「ねぇ?おじさんぬ。意外とプロってフツーなんだね。ガラスとか頭蓋骨なら俺でも割れるよ。て言うか、即効仲間呼んじゃうあたり、中坊とタイマン張るのも怖い人?」

 

カルマがそう挑発する。しかし、いくらカルマでも無理ではないだろうか?

 

「カルマ、俺も加勢してやろうか?」

 

「問題無いよ。夕凪君は温存しといて」

 

「……分かった。危険だと思ったら加勢するからな」

 

「オーケー」

 

俺の言葉にカルマはそう返してきた。

 

「よせ、無謀だ!」

 

「ストップです。烏間先生……アゴが引けている」

 

烏間先生が止めようとしていたが、殺せんせーがそう言って烏間先生を止めた。

確かに、いつもの……いや、前までのカルマなら、もっと余裕ぶっていたはずだ。言動は変わらないけど、しっかり相手を警戒している。

それに、面倒くさがりで頭の回転が速いカルマだ。負ける勝負なんて絶対しない。だったら、信じてみよう。

 

 

先に動き出したのはカルマ、観葉植物をおじさんぬに向かって振るが、おじさんぬはそれを右手で掴むと握り潰していた。

 

「柔い。もっと良い武器を探すべきだぬ」

 

「……必要ないね」

 

カルマはそう言うと観葉植物を捨て、迎撃態勢に入った。

おじさんぬは素早くカルマに近づき、頭を摑もうとする。それをカルマは頭を最低限動かすことで避けた。次におじさんぬは首元を掴みに掛かるが、今度は手首を使って捌いていた。

その後も、カルマはおじさんぬの攻撃を、最低限の動きで避けるか捌くかして防いでいた。

俺は、この動きが何なのか分かった。それは、今までずっと見てきた動きだった。

 

「烏間先生の防御テクニックですねぇ」

 

殺せんせーがそう呟いた。そう、烏間先生が訓練でやる時の防御と酷似しているのだ。

烏間先生は、俺達に防御術は教えていない。殺せんせーは俺達にこうげきすることは無いので、まず使わないからだ。でも、カルマが使っているという事は、きっと見て盗んだんだろうな。

すると、おじさんぬが攻撃を止め、言った。

 

「……どうした?攻撃しなくては永久にここを抜けれぬぞ」

 

「どうかな~、あんたを引き付けるだけ引き付けといて、そのスキに皆がちょっとずつ抜けるのもアリかと思って………安心しなよ、そんなコスいことは無しだ。あんたに合わせて正々堂々、素手のタイマンで決着つけるよ」

 

そう言って、カルマは戦闘態勢に入った。

 

「良い顔だぬ、少年戦士よ。お前とならやれそうぬ………暗殺家業では味わえないフェアな闘いが」

 

おじさんぬがそう言うと、再び戦いが始まった。

今度はカルマから動き出す。跳び蹴りを食らわせるが、おじさんぬはそれを腕で防いだ。その後も死角からの攻撃、目潰しなどを繰り出すが防がれてしまう。

しかし、繰り出した脛蹴りが効いたのか、おじさんぬは体勢を崩す。そしてカルマに背中を見せていた。

 

「くっ……」

 

カルマはすかさずに追撃を加えようと殴りかかった。

次の瞬間……

 

プシュッ!

 

おじさんぬはポケットからあるものを取り出し、カルマに至近距離でガスを吹きかけた。それをまともに食らったカルマは倒れ、おじさんぬはカルマの髪の毛を掴んでいた。

あのガスは……毒使いの奴か……

 

「一丁あがりぬ。長引きそうだったんで、スモッグの麻酔ガスを試してみることにしたぬ」

 

「き、汚ぇ……そんなもん隠し持っといてどこがフェアだよ……」

 

「俺は1度も素手だけで戦うとは言ってないぬ。拘ることに拘り過ぎない、それもまたこの仕事を長くやってく秘訣だぬ」

 

吉田の反発におじさんぬはそう答えていた。確かに、拘りなんてものは殆ど邪魔でしかない。おじさんぬが間違っているとは思わない。

けど、問題無いな。

 

「なぁ寺坂」

 

「あ?なんだよ夕凪」

 

俺は寺坂に尋ねた。緊迫感の無さから、こいつも気づいているんのでは無いだろうか。

 

「このクラスで、一番"正々堂々"が似合わない奴って、誰だと思う?」

 

「そりゃあ……」

 

寺坂が言う前に、おじさんぬは喋り出した。

 

「至近距離のガス噴射……予期してなければ絶対に防げぬ……」

 

その瞬間、

 

プシュッ!

 

おじさんぬの顔に、思いっきりガスが噴射される。カルマはニタァという笑みを浮かべて言った。

 

「奇遇だね。2人とも同じこと考えてた」

 

おじさんぬはモロに食らったのか、膝をガクガクと震わせていた。それでも諦めず、折り畳みナイフを取りだしてカルマを刺そうとした。

しかし麻痺しているのか躱わすのは簡単で、カルマはその腕を掴むと、関節を決めて床に押さえつけた。

 

「ほら寺坂、早く早く。ガムテと人数使わないとこんな化けもん勝てないって」

 

カルマの言葉に、寺坂は短く溜め息を吐いた。そして言う。

 

「……そりゃああの赤髪中二病患者だろうよ。素手のタイマンとか絶対無いわな」

 

そう言って駆け寄る寺坂に続いて、俺達も駆け寄る。そして、全員でおじさんぬに乗っかり、押さえつけた。ミシミシ言ってるよこのおじさんぬ。

 

 

 

その後、ガムテープでぐるぐる巻きにした。おじさんぬは納得いかないのか、カルマに尋ねていた。

 

「何故だ……俺のガス攻撃、お前は読んでいたから吸わなかった。俺は素手しか見せてないのに、何故……」

 

「とーぜんっしょ、素手以外の全部を警戒してたよ」

 

さも当然というようにカルマは言った。そして続ける。

 

「あんたが素手の闘いをしたかったのはほんとだろうけど、この状況で素手に固執し続けるようじゃプロじゃない。俺等を止めるためにはどんな手段でも使うべきだし、俺があんたの立場でもそうしてる………あんたのプロ意識を信じたんだよ。信じたから警戒できた」

 

カルマはしゃがみながらおじさんぬに言う。いつものカルマじゃなく、相手に敬意を持った顔だった。

あいつも、変わったのだろうな。

 

「……大した奴だ少年戦士よ。負けはしたが、楽しい時間を過ごせたぬ」

 

よし、これで一件落着だ。どうなるかと思ったが、上手くまとまって良かった。

 

 

「え?何言ってんの?楽しいのはこれからじゃん」

 

 

…………what's?

 

カルマはそう言った。生わさびと和がらしを持って……

 

「……何だぬ?それは」

 

「わさび&からし、おじさんぬの鼻の穴にねじ込むの」

 

「なにぬ!?」

 

そう返すと、カルマは鼻フックやら猿ぐつわやらを取り出して、おじさんぬに装着していく。え、ちょっとそれはマジでヤバい……

 

「さっきまではきっちり警戒してたけど、こんだけ拘束したら警戒もクソもないよね。これで口の中に唐辛子の1000倍辛いブート・ジョロキアぶちこんでぇ………」

 

「お、おいカルマ……」

 

「ん?何夕凪君?一緒にやる?」

 

「い、いや、いい……」

 

ふぅんと言うと、カルマはさらに弄っていく。ああ、どんどんおじさんぬの顔が酷いことに……俺も、これにはついて行け無さそう……

 

「さぁ、おじさんぬ。今こそプロの意地を見せるときだよ!」

 

そう言って、カルマはわさび&からしのチューブを鼻の両穴に突っ込み、思いっきり噴射した。ああ、アカン……船上で食べたディナーを戻しそう。

 

「不破……俺が吐いたら、この小説に嘔吐表現ありのタグ付けてくれ……」

 

「作者に頼んで……てか、私もヤバい……」

 

皆が気持ち悪そうにするなか、カルマは無邪気な笑顔でからし2本目を鼻の穴に突っ込む。

 

変わったと言ったがあれは嘘だ。赤羽カルマは、いつまでも赤羽カルマだった。

 

 

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